ベトナムの野菜:食文化を彩る多様な恵みと健康への貢献
ベトナム料理に欠かせない、彩り豊かな野菜たち。その種類は驚くほど豊富で、日本でおなじみのものから、名前も知らない珍しいものまで、食文化を深く物語っています。気候風土に育まれた新鮮な野菜は、料理に独特の風味と食感を与え、健康的な食生活を支える源です。本記事では、ベトナムで愛される代表的な野菜の種類や特徴、栄養価を詳しく解説。食を通してベトナムの文化に触れ、日々の食卓をさらに豊かにするヒントをお届けします。

はじめに:ベトナム野菜の奥深さ - 食文化を彩る魅力

ベトナム料理は、その活気あふれる食文化を支える基盤として、多様な野菜やハーブが世代を超えてベトナムの人々の食生活を豊かにしてきました。これらの食材は、素晴らしい風味、食感、そして健康への恩恵をもたらします。日本ではあまり馴染みのない野菜も豊富に使われており、身近な空芯菜から珍しい苦瓜まで、新鮮な食材がベトナム料理ならではの味、彩り、栄養の絶妙なバランスを生み出しています。近年、日本でもパクチーをはじめとする様々な種類のベトナム野菜が輸入され、その独特な風味と美味しさが注目を集めています。ベトナムの野菜文化は、旬の食材を大切にするという考え方が根底にあり、多くの家庭では毎日のように市場へ足を運び、その日一番の新鮮な野菜を選びます。ベトナム料理では、野菜、ハーブ、そしてタンパク質の調和が重視され、栄養バランスが良く、見た目にも美しい食事が提供されます。温暖な気候のおかげで、ベトナムのほとんどの野菜は一年を通して栽培が可能であり、常に新鮮な食材が手に入ります。ベトナムにおける野菜の扱いは、西洋料理とは大きく異なり、単なる付け合わせではなく、料理に不可欠な要素として捉えられています。新鮮なハーブや野菜は、調理された料理と一緒に生のまま提供されることが一般的で、食べる人が自分の好みに合わせて味や食感を調整できます。このようなスタイルは、栄養価を最大限に引き出すだけでなく、家族の絆を深める、会話が生まれるような食事体験をもたらします。ベトナムに住んでいる方やこれから訪れる方の中には、食卓に並ぶ野菜の名前や種類が分からず、興味を持っている方もいるのではないでしょうか。ハノイでの生活を経験した人々からは、スーパーマーケットで目にする野菜の種類の多さに驚きの声が上がることもあります。この記事では、ベトナムでよく食べられている代表的な野菜やハーブの名前、種類、特徴、栄養価、そして多くの人が気になる農薬の安全性について詳しく解説します。

1. パクチー (Rau mùi)

パクチーは、その独特な香りで好みが分かれるハーブです。ベトナムでは「ラウムイ(Rau mùi)」と呼ばれており、「パクチー」という名称はタイ語に由来するため、ベトナムのレストランで「No パクチー」と言っても、通じないことが多いので注意が必要です。ベトナム料理にはなくてはならない存在で、様々な料理の風味付けや彩りとして広く用いられています。その爽やかな香りは、フォー、生春巻き、サラダなど、多くのベトナム料理に欠かせないアクセントとなり、食欲をそそります。ベトナムの市場では、新鮮なパクチーが手軽に入手でき、家庭料理から屋台料理まで幅広く活用されています。

2. 空心菜/モーニンググローリー (Rau muống)

空心菜は、ベトナム語で「ラオムオン(Rau muống)」と呼ばれ、ベトナムで非常に人気のある野菜の一つです。ベトナムの温暖な気候でよく育ち、中空の茎と矢じり型の葉が特徴的です。学名Ipomoea aquaticaで知られるこの半水生植物は、水辺や湿った土壌で生育し、年間を通して収穫できます。空心菜は、あっさりとしていて、ほんのりとした甘みが特徴で、柔らかい葉とシャキシャキとした茎が、心地よい食感のコントラストを生み出します。日本では中華料理店でよく見かける野菜として知られていますが、ベトナムでも空心菜を使った料理は数多く存在し、食卓には欠かせない存在です。栄養面では、空心菜はビタミンA、C、Kが豊富で、鉄分、カルシウム、抗酸化物質も含まれています。食物繊維も豊富で消化を助け、低カロリーなので、体重管理にも適しています。ただし、関節痛や高血圧の方は、摂取量に注意が必要です。最も人気のある調理法は、「空心菜のニンニク炒め(Rau muong xao toi:ラオムオンサオトイ)」で、そのシャキシャキとした食感とニンニクの香りが食欲をそそる定番料理です。その他、canh chua(酸っぱいスープ)の具材や、麺料理に添える野菜としても使われます。茹でてヌクマム(魚醤)のタレで食べることも多く、炒め物だけでなく、新鮮なものはサラダとして生で食べるのもおすすめです。市場での価格は、およそVND 15,000 / kg(USD 0.60 - 1.60)程度です。

3. リモノフィラ (Rau ngổ / Rau ôm)

リモノフィラは、日本ではあまり馴染みのない東南アジア原産のハーブで、ベトナム料理において重要な役割を果たしています。ベトナム国内では地域によって呼び方が異なり、北部では「ザウゴー(Rau ngổ)」、南部では「ラウオム(Rau ôm)」と呼ばれています。特に、ベトナムのローカルな食堂でフォーを注文した際に、付け合わせの野菜として提供されることが多く、その独特の香りがフォーの風味をより一層引き立てます。さわやかな香りとわずかな苦味が特徴で、様々なスープや鍋料理にも使われます。消化を助ける効果があるとも言われており、その薬効も注目されています。

4. クレソン (Xà lách xoong)

ベトナムでは「サーラッソン(Xà lách xoong)」の名で親しまれるクレソンは、フランス統治時代にベトナムへ持ち込まれたとされています。日本ではサラダや肉料理の付け合わせとして一般的ですが、ベトナムではスープの具材として重宝されています。栄養価が非常に高く、健康維持に役立つとされ、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンA、鉄分、カルシウムなどが豊富に含まれています。これらの栄養素は、免疫力の向上や骨の健康をサポートします。ベトナム国内ではダラットが主要な産地であり、ダラット産のクレソンは特に高品質であることで知られています。ダラットを訪れた際には、ぜひ新鮮なクレソンを味わってみてください。

5. ウスバスナコショウ (Rau càng cua)

「ラウカンクア(Rau càng cua)」と呼ばれるウスバスナコショウは、日本のスーパーマーケットではほとんど見かけることがありません。ベトナムのスーパーマーケットでも、実はあまり一般的ではありません。なぜなら、この植物は肥沃な土地と水があれば容易に育つため、多くの家庭で自家栽培されているからです。ベトナムでは、フォーの付け合わせとして添えられたり、炒め物に使われたりします。独特の風味とわずかな苦味があり、好みが分かれる野菜ですが、ビタミンやミネラルを豊富に含み、栄養価も優れています。

6. ゴーヤ (Kho Qua)

表面に凹凸のある独特な形状が特徴のゴーヤは、強烈な苦味が特徴的な野菜であり、ベトナム料理においては、その苦味が親しまれています。ベトナムは温暖な気候であるため、沖縄と同様にゴーヤが栽培されており、日本でも広く知られています。その独特の苦味にもかかわらず、ベトナム文化においては「苦難の後に良い時が来る」という信念を象徴する縁起の良い食材とされています。外見は緑色で、表面にデコボコがあり、内部には大きな種が入っています。栄養面では、ゴーヤは血糖値の調整に効果があり、糖尿病の管理に役立つとされています。また、ビタミンC、葉酸、ミネラルが豊富で、ダイエットや肝臓の健康をサポートする天然化合物も含まれています。冷却効果があるため、暑いベトナムの気候に適した食材と考えられています。代表的な料理としては、ゴーヤスープ(canh kho qua)、豚肉を詰めて煮込んだ料理(kho qua don thit)、卵炒め(kho qua xao trung)などがあります。特にテト(旧正月)の時期には、人生の困難を乗り越えるという意味を込めて食卓に並びます。市場価格は1kgあたり約35,000VND(約1.40〜2.40USD)程度です。

7. タケノコ (Mang)

タケノコは、竹の若くて柔らかい芽であり、そのシャキシャキとした食感とほのかな土の香りがベトナムで珍重されています。甘味、酸味、苦味など、さまざまな種類があり、特に北部の山岳地帯で豊富に収穫される季節の味覚です。新鮮なタケノコは、剥がせる層を持つクリーム色の内部が特徴です。栄養面では、タケノコは低カロリーでありながら、食物繊維、カリウム、抗酸化物質が豊富に含まれています。体重管理や消化器官の健康をサポートし、体に必要な必須ミネラルを提供します。特に豊富な食物繊維は満腹感を促進し、健康な腸内細菌の育成にも貢献します。一般的な調理法としては、豚肉と炒めた料理(mang xao thit)、アヒル肉とタケノコの麺料理(bun mang vit)、ベトナム風キムチとして食べられるタケノコの漬物などがあります。タケノコは、伝統的な高地料理に欠かせない食材としても知られています。市場価格は1kgあたり約40,000VND(約1.60〜3.20USD)程度です。

8. マラバルほうれん草 (Rau Mong Toi)

熱帯地方でよく見られるマラバルほうれん草は、肉厚で水分を多く含む茎と、ハート形をした深緑色の葉が特徴です。ベトナムの高温多湿な気候に適しており、加熱すると少しとろみのある独特の食感になります。味はあっさりとしていて、ほのかな甘みがあり、葉は柔らかく、茎は心地よい歯ごたえがあります。栄養価に優れており、ビタミンA、C、Kを豊富に含み、カルシウム、鉄分、抗酸化物質も含まれています。研究では、変形性関節症の症状緩和や、糖尿病患者のコレステロール値の改善に役立つ可能性が示唆されています。葉酸を多く含むため、妊娠中の女性の健康維持や血液の生成を助け、健康全般をサポートします。代表的な料理としては、カニやエビなどと一緒に煮込んだ「canh mong toi(マラバルほうれん草のスープ)」が挙げられます。その他、ニンニク炒めや鍋料理の具材としてもよく使われます。特にベトナム南部で人気があり、その独特の食感と栄養価から日常的に食されています。市場での価格は、おおよそVND 15,000 / kg(約USD 0.60 - 1.60)です。

9. チンゲン菜 (Cai Thia)

チンゲン菜は、太く白い茎と濃い緑色の葉を持つ、コンパクトな形状のベトナム野菜です。穏やかでわずかに甘い風味が特徴で、茎はシャキシャキとしていて水分が多く、葉は柔らかく、すぐに火が通ります。他の葉物野菜に比べて背丈は低いですが、豊富な栄養素を含んでいます。ビタミンA、C、Kが非常に豊富で、カルシウム、カリウム、葉酸も含まれています。定期的に摂取することで、骨の健康、免疫機能、目の健康をサポートします。また、低カロリーであるため、体重管理をしている方にも適しています。一般的な調理法としては、ニンニクで炒めた「cai thia xao toi」や、「canh cai thia(チンゲン菜のスープ)」、鍋料理の具材として幅広く利用されています。牛肉と一緒に炒めたり、麺スープに加えても美味しくいただけます。手軽に入手でき、栄養バランスにも優れているため、ベトナムの食卓に欠かせない野菜の一つです。市場での価格は、おおよそVND 20,000 / kg(約USD 0.80 - 1.80)です。

10. からし菜 (Cai Xanh)

からし菜は、大人の手のひらほどの大きさの、幅広くて大きな葉を持つベトナムの葉物野菜で、独特のピリッとした辛味と、わずかな苦味が特徴です。葉は濃い緑色で、はっきりとした葉脈があり、表面は滑らかなものから、わずかにしわが寄ったものまであります。他の葉物野菜と比較して、より強い風味を持っています。栄養面では、ビタミンA、C、Kが非常に豊富で、カルシウム、鉄分、抗酸化物質も豊富に含んでいます。免疫力の向上や、骨の健康維持をサポートし、抗炎症作用も期待できます。ベトナムの伝統医学では、体を温める効果や、消化を助ける効果があるとして重宝されてきました。一般的な料理では、「バインセオ(ベトナム風お好み焼き)」や「バインコット(ミニお好み焼き)」を包む際に、欠かせない野菜として利用されます。その他、「canh cai xanh(からし菜のスープ)」や、「dua chua(漬物)」としても加工されます。また、焼き肉との相性も抜群で、辛味と苦味が肉の旨味を引き立てます。市場での価格は、おおよそVND 15,000 / kg(約USD 0.60 - 1.40)です。

11. もやし (Gia Do)

もやしは、白い茎と小さな黄色の頭を持つ、若くて柔らかい芽で、シャキシャキとした食感と、穏やかでわずかにナッツのような風味が特徴です。これらの新鮮なもやしは、管理された環境下で緑豆を発芽させることによって作られます。生で食べると、非常にシャキシャキとした食感が楽しめ、短時間加熱しても適度な歯ごたえが残り、料理に良いアクセントを加えます。栄養面では、もやしはビタミンC、タンパク質、食物繊維を豊富に含み、カロリーは非常に低くなっています。体に必要な必須アミノ酸を供給し、消化の健康をサポートします。また、水分含有量が高いため、水分補給を助け、豊富なビタミンは免疫機能の維持に役立ちます。ベトナム料理において、もやしはフォー、ブンボーフエ、フーティウなどの麺料理に欠かせない食材です。さらに、「ゴイクオン(生春巻き)」、「ノム(サラダ)」、「バインセオ(ベトナム風お好み焼き)」にも使用されます。他の野菜と一緒に炒めたり、料理の飾り付けとして使用されることも一般的で、その汎用性の高さから広く親しまれています。市場での価格は、おおよそVND 10,000 / kg(約USD 0.40 - 1.00)です。

12. 蓮の根 (Cu Sen)

蓮の根は、「クーセン」と呼ばれ、独特な見た目を持つベトナムの野菜です。外側は薄いクリーム色をしており、内部には縦方向に複数の穴が並んでいます。スライスすると美しい模様が現れます。食感はシャキシャキとしていて、わずかにデンプン質で、ほのかな甘みがあります。蓮の根は水中で育ち、蓮池から収穫されます。栄養価が高く、ビタミンC、カリウム、食物繊維を豊富に含み、脂肪とカロリーは控えめです。免疫力の向上、心臓の健康維持、消化機能のサポートに役立ちます。食物繊維が豊富なため、満腹感を得やすく、血糖値の安定にも貢献します。一般的な調理法としては、「ノム・クーセン」(蓮根のサラダ)、「カン・クーセン」(豚スペアリブと蓮根のスープ)、「クーセン・サオ・ティット・ボー」(牛肉と蓮根の炒め物)などがあります。ベジタリアン料理や伝統的な医療にも用いられます。価格は1kgあたり約30,000 VND(約1.20~2.40米ドル)です。

13. 冬瓜 (Bi Dao)

冬瓜は、「ビ・ダオ」と呼ばれ、大きくて丸い形状が特徴的なベトナムの野菜です。薄緑色の皮に包まれ、果肉は白色をしています。味は非常に淡泊で、かすかに甘みがあります。加熱すると果肉は柔らかくなり、スポンジのような食感に変化し、他の食材の風味を吸収しやすい性質を持ちます。非常に大きく育つため、市場では様々な種類の冬瓜が見られます。ベトナムのスーパーマーケットでは、まだら模様の入ったものや、濃い緑色のもの、太くて白っぽいものなどが見られますが、その大きさが故に家庭で使い切れるか悩む人もいます。冬瓜は低カロリーでありながら水分を豊富に含んでいるため、水分補給や体重管理に最適です。ビタミンC、カリウム、食物繊維を含み、腎臓の健康や消化をサポートします。伝統医学では、体を冷やす効果があるとして重宝されています。一般的な調理法としては、「カン・ビ・ダオ」(冬瓜スープ)、「ビ・ダオ・サオ・トム」(エビと冬瓜の炒め物)、「ビ・ダオ・ハップ」(蒸し冬瓜)などがあります。あっさりとしたスープやベジタリアン料理によく使用されます。価格は1kgあたり約15,000 VND(約0.60~1.20米ドル)です。

14. 春菊 (Cải cúc / Cai Cuc)

春菊は、ベトナム語で「カイ・クック(Cải cúc)」または「タン・オー(Tần ô)」と呼ばれ、特徴的な切れ込みのある葉と小さな黄色い花が特徴です。ルッコラに似た、ほろ苦い独特の風味が魅力的な野菜です。葉は鮮やかな緑色で、繊細な羽毛状の縁を持ちます。日本の春菊と比較すると、丈が長く、根元が太いのが特徴です。葉と柔らかい茎の両方を食用とし、様々な食感を楽しむことができます。日本では特定の季節の鍋料理に使われることが多いですが、ベトナムでは一年を通して親しまれており、その独特の香りと風味が料理に奥深さを与えます。繊維質が豊富なため、十分に加熱して柔らかくしてから食べるのがおすすめです。栄養面では、ビタミンA、C、Kが豊富で、鉄分、カルシウム、抗酸化物質も含まれており、特にベータカロテンを多く含んでいます。目の健康、免疫機能、骨の健康をサポートし、伝統医学では解熱や呼吸器系の不調を緩和する効果があるとして利用されています。一般的な調理法としては、「カン・カイ・クック」(春菊のスープ)、鍋料理の具材、サラダなどがあります。他の野菜と一緒に炒めたり、麺料理のトッピングとしても用いられます。市場での価格は1kgあたり約25,000 VND(約1.00~2.00米ドル)です。

15. オクラ (Dau Bap)

オクラは、「ダウ・バップ」と呼ばれ、特徴的な角ばった外見と、切ると現れるネバネバした内部が特徴的な緑色の莢を持つベトナムの野菜です。内部には小さな白い種子が含まれています。莢は通常、若くて柔らかい状態で収穫され、穏やかで草のような風味が特徴です。天然のムシラージ(粘液質)が増粘剤としての役割を果たします。オクラはビタミンC、葉酸、食物繊維が豊富で、抗酸化物質とミネラルも含まれています。消化機能の健康維持、血糖値のコントロール、心臓の健康促進に役立ちます。豊富な食物繊維は満腹感を高め、健康な腸内環境をサポートします。一般的な調理法としては、「カン・チュア」(酸っぱいスープ)の必須食材として用いられ、カレーや炒め物にも使用されます。一般的にトマトや他の野菜と組み合わせて、ベトナム風ラタトゥイユのような調理法で食べられます。価格は1kgあたり約20,000 VND(約0.80~1.80米ドル)です。

16. ツボクサ (Rau má / Rau Ma)

ベトナムでは「ラウマー」と呼ばれるツボクサは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、ベトナムでは非常に重宝されるハーブです。その特徴は、腎臓のような形の葉と、繊細な茎についた小さな丸い葉。味はさっぱりとしていて、ほんのりとした苦みがあります。鮮やかな緑色の葉は地面に近い場所で育ち、料理の材料としても、薬草としても利用されます。ベトナム版の「青汁」の主な材料であり、体の熱を冷ます効果があるため、暑い日には特に好まれます。その香りは日本のミツバに似ており、ジュース(nuoc rau ma)としてだけでなく、サラダやスープ、炒め物にも使われます。特にジュースは、健康を意識する人々に人気です。ツボクサには、皮膚の健康、血行促進、認知機能のサポートに役立つ抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。また、抗炎症作用や傷の治癒を助ける効果も期待されており、伝統医学では、不安の緩和や記憶力向上にも利用されています。市場での価格は、1kgあたり約30,000VND(約1.20〜2.40USD)です。

17. ヒカマ (Su Hao)

ヒカマは、茶色い皮とシャキシャキとした白い果肉が特徴の根菜で、クワイに似た優しい甘さと爽やかさがあります。果肉は非常に歯ごたえがあり、加熱してもその食感が損なわれません。見た目は大きなカブのようです。ハノイのスーパーなどではどこでも見かけることができ、皮を剥いてそのまま食べられます。かすかな甘みと、サクサク、または少しねっとりとした食感が楽しめます。火を通しても美味しく、おやつとしても親しまれています。ヒカマは低カロリーでありながら、食物繊維、ビタミンC、カリウムを豊富に含んでいます。消化を助け、免疫力を高め、水分補給にも役立ちます。プレバイオティクスとしての食物繊維は、腸内環境を整え、血糖値のコントロールをサポートします。一般的な料理としては、nom su hao(ヒカマのサラダ)やバインミーの具材、漬物などが人気です。炒め物や、生のままディップソースを付けて食べることもあります。価格は1kgあたり約20,000VND(約0.80〜1.60USD)です。

18. ユウガオ (Bau)

ユウガオは、薄緑色の皮と白い果肉を持つ、細長い円筒形のベトナムの野菜で、非常に穏やかで、ほんのりとした甘みがあります。果肉は柔らかく、他の食材の風味をよく吸収します。ウリ科に属し、つるつるした皮が特徴です。ユウガオは非常に低カロリーでありながら、ビタミンC、カリウム、食物繊維を含んでいます。水分補給を助け、消化を促進し、体重管理にも役立ちます。水分を多く含むため、体を冷やす効果があり、爽やかな味わいです。一般的な料理としては、canh bau(ユウガオのスープ)、bau xao tom(エビとユウガオの炒め物)、カレーなどがあります。ベジタリアン料理や煮込み料理にもよく使われます。価格は1kgあたり約15,000VND(約0.60〜1.40USD)です。

19. サツマイモの葉 (La Khoai Lang)

サツマイモの葉は、サツマイモのつるから収穫される、ハート型の濃い緑色の葉で、穏やかで、わずかに土のような香りがします。葉は柔らかい食感で、ほのかな甘みがあります。若い芽と葉は、特に柔らかいため好まれます。サツマイモの葉は、ビタミンA、C、Kを非常に豊富に含んでおり、カルシウム、鉄分、抗酸化物質も含まれています。目の健康、免疫機能、骨の健康をサポートします。高いベータカロテン含有量は、強力な抗酸化作用をもたらします。一般的な料理としては、rau khoai lang luoc(茹でたサツマイモの葉)、canh rau khoai lang(サツマイモの葉のスープ)、ニンニク炒めが人気です。鍋料理にもよく使われます。価格は1kgあたり約10,000VND(約0.40〜1.00USD)です。

20. 白菜 (Cai Thao)

白菜は、淡い緑色の葉が重なり、葉脈が白いのが特徴です。味はまろやかで、ほんのりとした甘みがあります。葉の食感は、やわらかく、みずみずしいシャキシャキ感があります。一般的なキャベツに比べて繊細なため、短時間で調理できます。ベトナムのスーパーマーケットでは、日本の白菜に似た小ぶりなものと、炒め物に適した細長いタイプの2種類がよく見られます。ただし、細長い白菜は、煮込んでも日本の白菜ほどには柔らかくならないことが多いです。白菜は、ビタミンA、C、Kが豊富で、葉酸、カルシウム、そして抗酸化物質も含まれています。これらの栄養素は、免疫力向上、骨の健康維持、消化促進に役立ちます。また、低カロリーであるため、体重管理にも適しています。よく使われる料理としては、ベトナム風キムチ、白菜スープ(canh cai thao)、そして鍋料理には欠かせません。その他、炒め物や生春巻きの具材としても利用されます。価格は、およそVND 15,000 / kg(USD 0.60 - 1.40)です。

まとめ

ベトナム料理に不可欠な様々な野菜やハーブは、その独特の風味と栄養価により、食文化を豊かにし、健康維持にも貢献しています。広く親しまれる空芯菜から、苦みがありながらも栄養豊富なゴーヤまで、ベトナムの野菜は、その国の食文化の深さと複雑さを表しています。パクチー、空芯菜、ゴーヤ、タケノコ、ツボクサ、春菊、サウロプスに加え、ハヤトウリ、ヘチマ、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、ビーツ、コールラビ、大根、白菜、キャベツ、そして夜来香の花など、多種多様なベトナム野菜は、それぞれの特性を活かした料理で愛されています。ハノイのスーパーマーケットでは、日本でお馴染みの野菜から、現地ならではの珍しい品種まで、豊富な品揃えで日々の食卓を彩ります。近年、日本でもベトナム野菜の輸入が増え、その魅力が広がりつつあります。ベトナムを訪れる際には、これらの野菜の名前や特徴を知っておくと、より深く現地の食文化を体験し、新しい味を発見できるでしょう。特に、旬の新鮮な野菜は、ベトナム料理の美味しさを際立たせる重要な要素です。ベトナムの豊かな大地が育むこれらの食材を通して、健康的で彩り豊かな食生活を楽しみましょう。

質問:ベトナム料理で頻繁に使われる野菜は何ですか?

回答:ベトナム料理では、空芯菜(Rau muống)、パクチー(Rau mùi)、ヒユナ(Rau dền)などがよく使われます。これらの野菜は、料理の風味付け、食感のアクセント、主菜の材料として幅広く活用されます。特に空心菜は、栄養価が高く、様々な料理に合うため、ベトナムの食卓には欠かせない存在です。

質問:ベトナムでパクチーを避けたい場合、どのように伝えれば良いですか?

回答:ベトナムでパクチーを避けたい場合は、「パクチー」はタイ語なので、「Không cho rau mùi(コン チョー ラウムイ)」または単に「Không rau mùi(コン ラウムイ)」と伝えましょう。「Rau mùi」がベトナム語でのパクチーの呼び方です。注文する際に、はっきりと伝えることで、安心して食事を楽しめます。

質問:ベトナムの野菜はどこで手に入るのでしょうか?

回答:ベトナムの野菜は、身近な場所で簡単に見つけることができます。例えば、現地の市場(チョー)は、種類豊富な新鮮な野菜が並び、活気ある雰囲気を楽しめます。大型スーパーマーケットでは、品質が管理された野菜を安心して購入できます。また、自宅の庭で栽培するのもおすすめです。

ベトナム野菜