秋から冬にかけて旬を迎える干し柿は、日本の伝統的な保存食品の一つです。乾燥によって甘みが凝縮され、風味豊かな味わいが楽しめます。干し柿には、産地や製法によって様々な種類があり、それぞれに特徴があります。干し柿の種類と製造方法、味わいの違いなどを紹介します。
干し柿の種類は「あんぽ柿」と「枯露(ころ)柿」の2種類
日本の伝統的な保存食品である干し柿には、製造方法の違いから「あんぽ柿」と「枯露柿」の2種類があります。 あんぽ柿は、渋味の強い渋柿を原料に米糀や石灰で渋抜きをした後、乾燥させて作られます。乾燥の際に硫黄燻蒸を行うことで変色を防ぎ、中に40~50%程度の水分を残すセミドライ状態に仕上げられます。このため、ゼリーのようなとろりとした食感と上品な甘味が特徴的です。岐阜県の名産品である蜂屋柿などが使われることが多いです。 一方の枯露柿は、渋柿をそのまま乾燥させて作られるため、渋味が残りますが、濃厚な香りと歯ごたえがあり、自然な味わいが楽しめます。水分含有量は20~30%程度とあんぽ柿よりも低く、もっちりとした食感と濃厚な甘みが特徴です。長野県の特産品・市田柿は、表面に付く「柿霜」が魅力的な一品です。柿の揉み作業によって浮かび上がった水分が乾燥すると、柿霜となります。
干し柿におすすめの品種一覧とそれぞれの特徴を紹介
ここでは、干し柿作りに適した柿の品種をご紹介します。産地や外観、味わいの違いにもふれながら、それぞれの特徴をお伝えします。 富有柿は渋みが少なく、果肉がしまっているのが魅力です。保存性に優れ、色づきも良好な美しい干し柿に仕上がります。 平核無柿は種がなく食べやすい品種です。適度な渋味と柔らかな果肉が、上品な味わいの干し柿を生み出します。 黒柿は名前の通り黒い外観が特徴的な種なし品種です。風味豊かで上品な味わいと、シャキッとした食感が人気です。 紀州渋柿は干し柿の老舗品種で、しっかりした渋みと奥深い味わいが自慢です。保存性も高く、長期間美味しさが持続します。 こうした品種の違いを活かしながら、お好みの食感や風味の干し柿を選んでみるのはいかがでしょうか。
干し柿を自分で作るなら平核無柿がおすすめ
秋の味覚の代表ともいえる干し柿。その中でも、ご家庭で干し柿作りに挑戦するなら平核無柿がおすすめです。平核無柿は、種が小さく皮が薄めなので食べやすく、糖度が高く上品な甘みと香り高い味わいが魅力です。さらに、柔らかめの果肉で水分量が多いため、ねっとりとした食感とシャキシャキとした歯ごたえを併せ持つ絶妙な干し柿に仕上がります。何より、スーパーなどで手軽に手に入れられるのが最大の利点です。旬の今こそ、新鮮な平核無柿を使って干し柿作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。手間はかかりますが、その工程を家族で楽しめば、素敵な思い出となるはずです。
まとめ
干し柿は地域によって製法が異なり、個性豊かな味わいを楽しめる日本の伝統食品です。柔らかい食感の「なつめ干し」、ドライフルーツのような味わいの「黒柿」、香り高い「輪っか干し柿」など、産地ごとの気候風土を反映した多彩な種類があります。干し柿作りは季節の移り変わりを感じさせる風物詩でもあり、日本人の"旬"を大切にする心を感じさせてくれます。