家庭菜園の定番、キュウリ。みずみずしい食感と手軽さで、初心者にも人気の野菜です。実は、キュウリには様々な種類があり、それぞれに異なる特徴と栽培のポイントがあります。この記事では、定番の品種から珍しい品種まで、キュウリの世界を深掘り!栽培方法の基本から、より美味しいキュウリを育てるためのコツまで、初心者から上級者まで役立つ情報を満載でお届けします。あなたにぴったりのキュウリを見つけて、栽培を楽しみましょう。
きゅうりの基礎知識と魅力
まずは、きゅうりに関する基本的な情報と、その魅力的な特徴について詳しく見ていきましょう。
きゅうりの歴史と植物としての特徴
きゅうりは、ウリ科に属するつる性の植物で、原産地はインド北部のヒマラヤ山麓からネパール周辺とされています。西アジアでは3000年以上も前から栽培されていたと考えられており、中国へは紀元前120年頃にシルクロードを通じて伝わったと言われています。日本には6世紀頃に伝来したと考えられており、10世紀の書物には「加良宇利(からうり)」という名前で記述されていることから、それ以前に中国から伝わっていたと考えられています。当初は食用としてではなく、主に薬として利用されていましたが、江戸時代までは苦味が強かったため、あまり人気はありませんでした。しかし、江戸時代末期から明治時代にかけて、日本の気候や食文化に適応させるための品種改良が盛んに行われるようになり、現在では一年を通して食卓に欠かせない、人気の野菜としての地位を確立しました。「黄瓜」と書くように、完熟すると黄色くなる野菜で、昔は完熟したものも食べられていましたが、現在は若い緑色の状態で収穫するのが一般的です。その生育の旺盛さと育てやすさから、家庭菜園でも気軽に栽培できることが、多くの人に愛される理由の一つです。
きゅうりの栄養成分と健康への効果
きゅうりの大きな特徴は、実の約95~96%が水分でできていることです。きゅうりは「世界で最も低カロリーな野菜」としてギネス記録に認定されていることからもわかるように、非常に低カロリーでありながら、健康を維持するために役立つさまざまな栄養素を含んでいます。主な栄養成分としては、体内の余分なナトリウムを排出し、高血圧やむくみの予防に効果が期待できるカリウム、免疫力を高めたり抗酸化作用があるビタミンC、血液の凝固や骨の健康に関わるビタミンK、そして腸内環境を改善し便秘の解消を助ける食物繊維などがあります。このように、きゅうりは夏の暑い時期の水分補給だけでなく、ミネラルやビタミン、食物繊維を手軽に摂取できる、栄養的にも優れた野菜と言えるでしょう。
キュウリの表面:イボの役割と種類、ブルームについて
キュウリには、表面に特徴的なイボがあるものと、滑らかな表面を持つものがあります。イボがあるタイプは、さらに「白イボ系」と「黒イボ系」に区別され、一般的に多く流通しているのは白イボ系です。イボは、キュウリが野生だった頃、外敵から身を守るためのトゲの痕跡と考えられています。そのため、イボがしっかりしているキュウリは、新鮮さの目安とされています。近年では、食味が良く、病害虫に強い白イボ系のキュウリが広く栽培されています。一方で、サラダなどで生食する際に、イボの感触が気になるという声に応え、イボなしの品種も開発され、市場に出回っています。
また、白イボ系の中でも、表面に白い粉状の物質(ブルーム)が出ない「ブルームレス」タイプが増加傾向にあり、シャキシャキとした食感が好まれています。ブルームはキュウリ自身が生成する天然の保護成分で、鮮度維持に役立ちますが、農薬と誤解されることもあったため、ブルームレスキュウリが主流になりつつあります。
キュウリの適切な保存方法
キュウリを長持ちさせるには、表面の水分を丁寧に拭き取り、ラップで包んで冷蔵庫の野菜室で保存するのがおすすめです。ただし、キュウリは低温に弱い性質があるため、冷蔵保存が長すぎると、表面にへこみができ、品質が劣化する「低温障害」を起こすことがあります。美味しさを損なわずに食べるためには、購入後できるだけ早く消費することが大切です。
キュウリの主な病気と対策
キュウリは病気にかかりやすい野菜であり、家庭菜園で栽培する際は、病気の予防と早期発見が重要となります。代表的な病気としては、「べと病」と「うどんこ病」が挙げられます。べと病は、カビの一種が原因で発生する病気で、初期には葉に淡い黄色の斑点が現れ、徐々に茶褐色へと変化します。放置すると株全体に広がり、最終的には枯れてしまうこともあります。高温多湿の環境で発生しやすく、葉が濡れると症状が悪化しやすいのが特徴です。一方、うどんこ病は、葉の表面に白い粉をまぶしたような斑点が現れる病気です。この白い斑点が広範囲に広がると、光合成を阻害し、生育不良を引き起こします。比較的冷涼で湿度の高い環境で発生しやすいとされています。これらの病気を防ぐためには、風通しの良い環境を保ち、適切な薬剤を使用するなど、予防対策が重要です。
キュウリの収穫時期:「冬春キュウリ」と「夏秋キュウリ」
キュウリは、収穫時期によって「冬春キュウリ」と「夏秋キュウリ」の2つのタイプに分けられます。冬春キュウリは、主に12月から6月にかけて収穫されるもので、夏秋キュウリは7月から11月頃に収穫されるものを指します。本来、キュウリは夏が旬の野菜ですが、品種改良や栽培技術の進歩により、一年を通して安定的に供給されるようになりました。これにより、私たちは季節に関わらず新鮮なキュウリを味わうことができ、生産者も安定した収入を得ることが可能になっています。
家庭菜園で楽しむキュウリ栽培:苗選びから収穫までの道のり
家庭菜園に挑戦するなら、キュウリは特におすすめの野菜です。栽培方法としては、種から育てる方法と、ある程度成長した苗を植え付ける方法の2種類があります。家庭菜園では、苗から栽培を始める方が比較的容易で成功しやすいとされています。ここでは、苗の植え付けから収穫までの基本的な手順と、各段階における重要なポイントを詳しく解説します。これらのステップを踏むことで、初心者の方でも美味しいキュウリを収穫できるはずです。
苗選びと植え付け:成功への第一歩
キュウリの栽培は、種まきから始める場合、通常4月から5月が適期です。しかし、初めて挑戦する方には、苗から育てる方法がより簡単で失敗しにくいでしょう。苗を選ぶ際には、茎が太く、葉の色が鮮やかで、全体的にしっかりとした健康なものを選ぶことが大切です。病害虫の被害がないか、間延びしていないかなどを確認しましょう。植え付けの時期は、地域によって異なりますが、一般的には霜の心配がなくなる5月上旬から6月中旬頃が目安です。植え付け前に、苗の根を覆っている土の塊(根鉢)を水に浸し、十分に吸水させておくことで、新しい土への定着を促進できます。植え付けと同時に、キュウリのつるを支えるための支柱をしっかりと立てましょう。支柱に固定することで、風による転倒を防ぎ、株元の通気性を高め、病害虫のリスクを軽減します。このように、支柱はキュウリの健全な成長をサポートする上で重要な役割を果たします。
成長を支える肥料と水やりのコツ
キュウリは生育が旺盛なため、多くの肥料を必要とします。最初の実がつき始めたら、最初の追肥を行いましょう。その後は、2週間に一度を目安に定期的に追肥を行うことが、生育を促進し、安定した収穫につながります。肥料が不足すると、実の成長が遅れたり、収穫量が減ったりする原因となります。また、キュウリは乾燥に弱いので、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。特に夏場の乾燥しやすい時期には、朝夕の涼しい時間帯に水やりを行うのが効果的です。水分が不足すると、果実が大きくならなかったり、変形したりする可能性があります。
病害虫から守る予防と対策
キュウリは病害虫の影響を受けやすい作物です。そのため、健康な状態を保つためには、日頃からの予防と、早期発見・早期対策が欠かせません。病気の予防策として最も重要なのは、適切な肥料を与え、水はけの良い健康な土壌を作ることです。日々の観察を怠らず、葉に異常な変色や変形が見られた場合は、速やかにその部分を取り除き、病気の拡大を防ぎましょう。また、アブラムシやコナジラミなどの害虫は、キュウリの成長を妨げる要因となるため、発見次第駆除することが重要です。市販の園芸用殺虫殺菌剤も有効ですが、製品ごとに効果や対象となる病害虫が異なるため、事前に確認し、適切なものを選んで使用しましょう。
最高のキュウリを収穫するタイミング
キュウリは開花後、わずか1週間から10日という短期間で収穫適期を迎えます。そのため、畑やプランターをこまめにチェックし、適切なサイズ(一般的に20~25cm程度)になったら速やかに収穫することが大切です。20センチ程度になったら、収穫を逃さないようにしましょう。放置すると、果実が大きくなりすぎて果肉が硬くなったり、種が大きくなり風味が損なわれたりするだけでなく、皮が硬くなり生食には適さなくなります。また、株への負担が増し、次の実の生育にも影響を及ぼす可能性があります。通常、収穫時期は6月から8月ですが、美味しいキュウリを長く、たくさん収穫するためには、適切なタイミングで収穫する習慣を身につけましょう。
収穫量アップと病害虫対策のためのキュウリのお手入れ(摘芯)
キュウリを元気に育て、美味しい実をたくさん収穫するには、適切な「摘芯」などの手入れが不可欠です。摘芯とは、キュウリの生育点や余分なつるを切り取ることで、株への栄養配分を調整し、風通しを良くすることで病害虫のリスクを軽減し、収穫量の増加につながる重要な作業です。ここでは、家庭菜園で一般的な「節なりタイプ」のキュウリを例に、具体的な手入れ方法を説明します。
摘芯の具体的な手順とコツ
まず、キュウリの株元から数えて4~5節目までのわき芽は、すべて取り除きましょう。また、最初にできた実も、株全体の生育を促進するために摘果することがおすすめです。この初期段階の手入れによって、株はより強く成長します。その後、5~6節目以降に伸びるわき芽はそのまま伸ばし、実をつけさせます。実をつけたわき芽は、実の先の葉を2枚残してカットします。さらに孫づるが出てきた場合も、同様に葉を2枚残して摘み取ります。親づるが支柱の先端に達したら、先端をカットして成長を止めます。親づるを切ることで、わき芽や孫づるへの栄養供給が促され、生育が促進され、結果的に収穫量の増加につながります。最後に、古くなった葉や病気の葉は適宜取り除き、株全体の風通しを良くすることで、病気の発生を抑えることが大切です。
家庭菜園に最適!人気のキュウリの品種
キュウリが日本で広く栽培されるようになったのは昭和初期頃からですが、それ以前にも薬用として利用されてきた歴史があり、日本の気候や食文化に適した品種改良が重ねられてきました。現在、市場には多種多様なキュウリが出回っていますが、ここでは特に代表的な品種とその特徴を紹介します。家庭菜園で栽培する品種を選ぶ際の参考にしてください。
白イボキュウリ:食卓の定番と多様な品種
日本のスーパーマーケットで最もよく見かけるのが、この白イボキュウリです。国内で流通するキュウリの大部分を占めており、多くの人にとって馴染み深い存在でしょう。その名の通り、表面に白い小さなイボが均等に分布しているのが特徴で、このイボは鮮度を測る目安となります。イボがピンと立っているものほど新鮮であるとされています。皮は比較的薄く、シャキシャキとした食感とみずみずしい果肉が魅力で、アクが少ないため生食にも適しています。サラダや和え物の他、漬物や炒め物、煮物など様々な料理に使える汎用性の高さから、広く親しまれています。「アンコール」や「夏すずみ」などが代表的な品種として知られています。
白イボキュウリの中には、「四葉(すうよう)キュウリ」と呼ばれる種類もあります。「四川」などの四葉系キュウリは、硬くしっかりとしたイボが全体にあり、表面には深いシワが刻まれているのが特徴です。見た目は硬そうですが、皮は薄く歯切れが良く、パリパリとした食感を楽しめます。通常のキュウリよりも大きく育ち、長さ25〜30cm程度が最も美味しいとされています。暑さに強く育てやすいため、家庭菜園でも人気です。
近年では、果実の表面に白い粉(ブルーム)が出ない「ブルームレス」タイプの白イボキュウリも増えています。ブルームはキュウリが自然に分泌するもので鮮度を保つ役割がありますが、農薬と誤解されることもあったため、ブルームレスキュウリが主流になりつつあります。ブルームレスキュウリも歯切れが良く、人気を集めています。
病気に強い「夏すずみ」とその改良品種
「夏すずみ」は、キュウリ栽培における悩みの種である病気への耐性が強いことで知られる人気の品種です。特に、キュウリがかかりやすいべと病とうどんこ病の両方に対して抵抗力があります。この耐病性により、真夏の暑い時期でも安定した栽培が可能となり、高品質なキュウリを効率的に収穫できます。「夏すずみ」をさらに改良した「VR夏すずみ」も開発されており、家庭菜園初心者にもおすすめです。
黒いぼキュウリ:昔ながらの風味を受け継ぐ伝統品種
黒いぼキュウリは、厚い皮と黒いトゲ(いぼ)が特徴的な、昔ながらのキュウリです。かつては全国で広く栽培されていましたが、生食に適した白イボキュウリが主流となった1960年代以降、栽培は減少しました。現在では、主に九州や四国地方などでわずかに栽培されており、貴重な存在となっています。皮が厚く歯ごたえがあり、濃厚な味わいがあるため、炒め物や煮物などの加熱料理に最適です。古くから栽培されている在来品種の半白キュウリには黒いぼ系が多く、神奈川県の「相模半白節成きゅうり」や江戸東京野菜の「馬込半白節成きゅうり」、奈良県の「奈良半白きゅうり」など、生産量は少ないながらも、各地で「伝統野菜」として栽培が続けられています。
いぼなしキュウリ:手軽さとマイルドな味わいが魅力
いぼなしキュウリは、一般的なキュウリに比べてやや短く太めで、表面がツルツルしているのが特徴です。濃い緑色の皮は光沢があり、歯切れが良く、シャキシャキとした食感を楽しめます。イボがないため洗いやすく調理しやすいという利点があり、傷みにくいことから業務用としても人気があります。代表的な品種には「フリーダム」やミニサイズの「ラリーノ」などがあり、どちらも生食に最適で、サラダやスティック野菜としての利用がおすすめです。
特に「フリーダム」は、直径約3cm、長さ17~19cm程度、重さ約100gと、コンパクトなサイズ感が特徴です。キュウリ特有の苦味や青臭さが少なく、すっきりとした甘みのある味わいを楽しめる点が魅力です。また、うどんこ病にも強い耐性を持つため、減農薬や無農薬での栽培が可能であり、安全志向の家庭菜園愛好家からも支持されています。生食はもちろん、様々な料理でキュウリ本来の美味しさを楽しみたい場合に最適な品種と言えるでしょう。
半白キュウリ:日本の伝統を受け継ぐ品種
半白キュウリは、独特な緑から白へのグラデーションを持つ皮が特徴的な、昔ながらの黒イボ系キュウリです。その歴史は古く、日本各地で広く栽培されてきました。現在では、神奈川県の「相模半白節成」や、江戸東京野菜として知られる「馬込半白節成」や「高井戸半白」、そして奈良県のブランド野菜「大和野菜」の一つである「半白きゅうり」など、地域ブランドとして大切に育てられているものが多く見られます。その味わいは、キュウリ本来の風味を色濃く残し、みずみずしさと心地よい歯ごたえが魅力です。漬物やサラダにすれば、その美味しさが際立ちます。皮が柔らかく、口当たりの良さも特徴で、薄切りにしてそのまま食べるのもおすすめです。日本の食文化に深く根ざした、貴重な品種と言えるでしょう。
奈良漬けに欠かせない「大和三尺(やまとさんじゃく)」
「大和三尺(やまとさんじゃく)」は、奈良県で長い間栽培され、改良が重ねられてきた伝統的なキュウリです。収穫時の長さは約30〜40cmですが、驚くことに成熟すると90cm以上にも成長します。果肉は種が少なく、柔らかい皮と、シャキシャキとした食感が特徴です。主に奈良漬けの原料として利用されており、その独特の風味と食感が、奈良漬けならではの美味しさを引き出す上で重要な役割を果たしています。そのため、一般のスーパーや八百屋ではほとんど見かけることがなく、特定の産地や専門店でのみ手に入れることができる、珍しい品種です。
最新キュウリ品種と注目の機能性
キュウリの品種改良は、今もなお盛んに行われており、栽培のしやすさ、美味しさ、そして病気への強さを追求した新しい品種が次々と誕生しています。ここでは、近年開発され、特に注目を集めている最新のキュウリ品種をいくつかご紹介し、その革新的な特徴を探ります。これらの品種は、今後のキュウリ栽培に新たな可能性をもたらすと期待されています。
複合耐病性を持つ「ネクスター1号改良・ネクスター2号改良」
「ネクスター1号改良」と「ネクスター2号改良」は、久留米種苗園芸によって開発された、革新的な品種です。これらの品種の最大の特長は、国内のキュウリ品種の中で唯一、褐斑病、うどんこ病、黄化えそ病、退緑黄化病という、主要な4つの病気に対して複合的な耐性を持つことです。これにより、複数の病気に同時に対応できるため、農薬の使用量を大幅に削減し、栽培管理の手間を軽減することが可能です。「ネクスター2号改良」は、「ネクスター1号改良」よりも低温への耐性が強化されており、従来のキュウリ栽培が難しかった冬場の栽培にも適しています。周年栽培を可能にする品種として、大きな期待が寄せられています。
生育早く秀品率に優れる「スック」
「スック」は、生育のスピードが速く、果実の形状が安定しているため、高い秀品率を誇る点が特徴的なキュウリの品種です。栽培を始めて間もない時期から生育が旺盛で、つるの伸びが早いため、栽培期間の後半まで植物の活力を良好に保てます。これにより、長期間にわたり安定した品質と収穫量を期待できます。さらに、うどんこ病や褐斑病、べと病といった代表的なキュウリの病気に対する抵抗力も備えており、病気のリスクを減らし、栽培の手間を省きながら、着実に収穫につなげることが可能です。
黄化えそ病抵抗性品種「緑夏(りょっか)」
「緑夏(りょっか)」は、特に「黄化えそ病」への強い抵抗力を持つキュウリの品種として開発されました。黄化えそ病は、一度発症すると治療法がないウイルス性の難病です。感染すると、キュウリの葉が変色したり、果実にモザイク状の模様が現れたりするなどの深刻な症状が現れ、収穫量の減少や品質の低下を招きます。近年、関東以西の主要なキュウリ産地で黄化えそ病による深刻な被害が報告されていることから、農研機構と埼玉原種育成会が共同でこの抵抗性品種「緑夏」を開発し、病害による被害を軽減し、キュウリの安定供給に貢献することを目指しています。
石川県の特産品「加賀太キュウリ」
「加賀太(かがふと)キュウリ」は、石川県を代表する伝統野菜「加賀野菜」の一つであり、その特徴は何と言ってもその大きさです。通常のキュウリの4〜5倍の大きさにもなり、直径6~10cm、長さ22〜27cmの俵型で、重さは600gを超えることもあります。その見た目のインパクトは大きく、市場に出回る期間は4月上旬から11月下旬と比較的長いのも特徴です。果皮は硬めで濃い緑色をしており、イボはほとんど見られません。皮が厚いため、中の種をしっかりと取り除いてから調理するのが一般的です。果肉は肉厚で柔らかく、風味も豊かです。食味が良く、酢の物や漬物として生で食べることもできますが、あんかけ料理などの煮物や、中華風のオイスター炒めといった炒め物、蒸し物など、加熱調理することで、その独特の食感と風味をより一層楽しめます。比較的長期間保存できるのも利点ですが、低温には弱いため、冷やし過ぎには注意が必要です。昭和初期から改良が重ねられ、現在の姿となり、和食、洋食問わず様々な料理に活用される加賀特産のキュウリです。
料亭を彩る「花丸胡瓜(花きゅうり)」
花丸胡瓜は「花きゅうり」とも呼ばれており、特定の品種を指す名称ではなく、キュウリを花のついた若い果実のうちに収穫したものを指します。果実は6~7cmほどの大きさで、先端に鮮やかな黄色の花がついているのが特徴で、用途によっては3cmほどのさらに小さなものが市場に出回ることもあります。一般のスーパーなどではあまり見かけることはなく、主に料亭やレストラン向けに栽培されており、その可愛らしい見た目を活かして、料理の飾り付けや彩り、お弁当などに使われることがほとんどです。味は一般的なキュウリと大きく変わらず、わずかな苦味があり、みずみずしい食感が魅力です。炒め物や漬物としても利用できるほか、花も食べられるため、花をつけたまま調理することで、より華やかな一品に仕上がります。主に愛知県の東三河地域で栽培されています。
山形の宝「鵜渡川原きゅうり」
山形県酒田市亀ヶ崎地区で昔から栽培されている鵜渡川原きゅうりは、小ぶりな姿が愛らしい伝統野菜です。「めっちぇこきゅうり」という名前で商標登録されており、これは地元の方言で「小さい、可愛い」という意味の「めっちぇこ」に由来します。短い円筒形で、色は薄緑色、そして太めの形状が特徴です。表面には黒いイボがあり、先端に向かって色が白っぽくなる美しいグラデーションを描きます。生で食べるとわずかな苦味がありますが、特に漬物にすると、その独特の歯ごたえとパリパリとした食感が際立ちます。漬物用として、長さ約5cm、重さ約15gで収穫され、その個性的な風味と食感が珍重されています。限られた農家でのみ栽培されているため、市場に出回ることは少なく、非常に希少な品種と言えるでしょう。鮮度が落ちやすい性質から、収穫後は迅速な出荷体制が整えられています。
まとめ
キュウリは世界中で広く親しまれている野菜であり、そのみずみずしさとシャキシャキとした食感は、夏の食卓に欠かせない魅力的な存在です。以前のキュウリは苦味が強く、板ずりなどの下処理が必要でしたが、品種改良が進んだ現在では、苦味やアクが少ないものが主流となっています。スーパーなどで手軽に購入できる一方で、家庭菜園で丹精込めて育てた採れたてのキュウリは、格別な味わいがあり、何にも代えがたい素晴らしい経験となるでしょう。
キュウリには多種多様な品種が存在し、それぞれに異なる特徴と栽培の適性があります。近年、日本では鮮やかな緑色で生食に適した白イボキュウリが人気を集めていますが、加熱調理に適した黒イボキュウリや、表面が滑らかなイボなしキュウリもその魅力を放っています。さらに、加賀太きゅうりや鵜渡川原きゅうりのように、地域に深く根ざした個性豊かな伝統品種も注目されています。
栽培には多少のコツが必要ですが、基本をマスターすれば決して難しくはありません。適切な水やり、病害虫対策、そして丁寧な摘芯などの手入れを行うことで、立派で健康なキュウリをたくさん収穫することができます。他の野菜と比較して成長が早いので、日々少しずつ成長していく様子を観察することも、キュウリ栽培の大きな楽しみの一つです。ぜひ、この情報を参考に、ご自身にぴったりの品種を見つけて、キュウリ栽培の魅力を存分に味わい、家庭菜園での成功を体験してください。
キュウリのイボは何の役割があるのですか?
キュウリのイボは、野生種であった頃に動物から身を守るためのトゲの痕跡と考えられています。現在、市場でよく見かけるのは白いイボを持つ「白イボ系」のキュウリですが、近年では食感を考慮してイボを取り除いた品種も開発されています。一般的に、イボがしっかりしているものほど新鮮であると判断できます。
キュウリを家庭菜園で育てる時の病気への対策は?
キュウリは、「べと病」や「うどんこ病」といった病気にかかりやすい野菜です。病気を予防するためには、適切な肥料分を含み、かつ水はけの良い土壌を用意することが非常に大切です。また、葉に色の変化や変形が見られた場合は、病気の初期症状として捉え、速やかに除去するなど、早期の対応を心がけましょう。アブラムシやコナジラミなどの害虫にも注意が必要です。
最高のキュウリを味わうための収穫時期
キュウリは開花後、およそ7日から10日で収穫の最適な時期を迎えます。成長スピードが非常に速いため、日々の観察を怠らず、少し早めの収穫を意識しましょう。大きくなりすぎたキュウリは風味が落ちるだけでなく、他の実の成長を妨げる原因となることもあります。
キュウリの摘芯(わき芽取り)のコツ
摘芯は、病害虫の予防や収穫量を増やすために欠かせない作業です。まず、株の根元から4〜5節までのわき芽と一番最初にできた実はすべて取り除き、株全体の生育を促進します。5〜6節より上のわき芽は伸ばして実をつけさせ、実がついた節から葉を2枚残して先端を切り落とします。親づるが支柱の先端に達したら摘芯し、子づるや孫づるの成長を促しましょう。古い葉は適宜取り除き、風通しを良くすることが大切です。
キュウリに含まれる栄養成分
キュウリの果実の9割以上は水分ですが、カリウム、ビタミンC、ビタミンK、食物繊維などのミネラルやビタミンも豊富に含んでいます。低カロリーでありながら、高血圧やむくみの抑制、便秘改善など、健康維持に役立つ様々な効果が期待できます。













