トロペジェンヌ:南仏サン・トロペ発祥、魅惑のブリオッシュクリームパン

南仏の宝石、サン・トロペ。その輝きを象徴するスイーツが「トロペジェンヌ」です。ふんわりと焼き上げられたブリオッシュ生地に、口どけなめらかな特製クリームがたっぷり。一口食べれば、オレンジの香りが優雅に広がり、まるで南仏の風を感じるかのようです。あのブリジット・バルドーも愛したという、歴史と伝統が詰まった魅惑のブリオッシュクリームパン。今回は、トロペジェンヌの誕生秘話から、その美味しさの秘密まで、余すところなくご紹介します。

トロペジェンヌとは?南フランス生まれの伝統的なお菓子

「トロペジェンヌ」(またはタルト・トロペジェンヌ)は、南フランスのサン・トロペという港町で生まれたお菓子で、地元の小さなパン屋さんが発祥と言われています。ふっくらと焼き上げたブリオッシュ生地に、オレンジの香りがするカスタードクリームとバターを混ぜ合わせたクレーム・ムースリーヌをたっぷりと挟んだパン菓子です。かつて、女優のブリジット・バルドーがこのお菓子をとても気に入り、名前を付けたことで一躍有名になったと言われています。「トロペジェンヌ」という名前には、「サン・トロペの娘」という意味が込められており、その優雅な歴史を今に伝えています。近年、日本でもいくつかのパティスリーやコンビニエンスストアで商品化され、徐々に知られるようになってきました。

マリトッツォとの違い:トロペジェンヌならではの構成と食感

見た目が似ていることから比較されることが多いマリトッツォは、バターをふんだんに使った柔らかく濃厚なブリオッシュ生地に、たっぷりの生クリームを挟んだイタリアのお菓子です。一方、トロペジェンヌもブリオッシュ生地を使用しますが、いくつかの点で異なっています。まず、ブリオッシュ生地の上には、ワッフルシュガー(あられ糖)がまぶされて焼き上げられることが多く、生地のふんわりとした食感に、シャリシャリとしたアクセントが加わります。次に、クリームは生クリームではなく、カスタードクリームがベースになっている点が特徴です。このカスタードクリームにバターを加えてホイップした「クレーム・ムースリーヌ」や、ホイップした生クリームを合わせることで、ふんわりと軽い食感と、カスタードの優しい味わいがブリオッシュ生地と見事に調和します。本場南フランスでは、古くから使われている「オレンジフラワーウォーター(オレンジ花水)」でクリームに上品な香りを加えることもあり、シンプルながらも奥深い味わいが楽しめます。

本場サン・トロペでは、一人でも食べやすい小さめのサイズだけでなく、お祝いの席などで切り分けて食べるホールタイプのものもあります。地元にはトロペジェンヌの専門店もあるほど、広く愛されているお菓子です。トロペジェンヌは、カスタードクリームがたっぷりと挟まれていますが、生クリームだけとは異なり、意外にもあっさりと食べられます。まるで上品なシュークリームのように、ぺろりと食べられてしまうのが魅力です。特に、生地にシロップを染み込ませたタイプは、よりジューシーで、冷やして食べると夏にもぴったりの爽やかなケーキとして楽しめます。

トロペジェンヌのクリームバリエーションとフレーバー

トロペジェンヌの魅力の一つは、クリームやフレーバーの多様なバリエーションにあります。定番のトロペジェンヌでは、カスタードクリームにバターを加えてホイップした「クレーム・ムースリーヌ」を挟むのが一般的ですが、より濃厚な味わいが好みであれば、バタークリームを挟んで作っても良いでしょう。逆に、カスタードクリームにホイップした生クリームを加えれば(これを「クレーム・レジェール」と呼びます)、より一層ふわっと軽い仕上がりにすることができます。 また、クリーム自体に風味を加えることもでき、南フランスでよく使われるオレンジフラワーウォーターなどの香料や、様々なリキュールでフレーバーをつけることで、風味の幅が広がります。カスタードクリームをベースに、チョコレート味や抹茶味にアレンジするのも人気があります。フレッシュ感をプラスしたい時には、いちごやマンゴー、オレンジなどの旬のフルーツを小さくカットして少し挟むのもおすすめです。ただし、あくまで主役はブリオッシュ生地とたっぷりのカスタードクリームですので、フルーツは「ほんのり」加える程度がバランスを保つ秘訣です。他にも、クリームのくぼみに自家製や市販のジャムやフルーツソースを入れて挟んだり、オレンジやパイナップルなど好みのフルーツを大胆に挟んでトッピングして、見た目にも華やかに仕上げることも可能です。さらに、紅茶風味のブリオッシュ生地にクリームとラズベリージャムを挟むアレンジや、ピスタチオペーストを加えたクリームにラズベリーを添えて、よりリッチで洗練された味わいにするなど、創造性を活かした無限のアレンジが楽しめます。

トロペジェンヌを豊かにするシロップの香りとリキュールの選択

しっとりとした口当たりが特徴のトロペジェンヌを作る上で、シロップは重要な役割を果たします。生地に適度に染み込ませることで、乾燥を防ぎ、全体の調和を高めます。シロップの基本は、砂糖40gと水140gを混ぜて加熱するシンプルなものです。この基本シロップに様々な香りを加えることで、トロペジェンヌの風味を大きく変えることができます。 アルコールを避けたい方には、レモンの皮やオレンジの皮を削ってシロップに加え、柑橘系の爽やかな風味を加えるのがおすすめです。お酒の風味が欲しい方には、カスタードクリームと相性の良いリキュールをシロップに加えるのがおすすめです。リキュールの量はシロップに対して5~8%程度が目安ですが、お好みに応じて調整してください。

トロペジェンヌのカスタードに合うおすすめのリキュール

カスタードクリームの風味をさらに引き立て、トロペジェンヌに深みと個性を与えるリキュールをいくつかご紹介します。

  • コアントロー:爽やかなオレンジの香りが特徴のリキュールで、多くの方に愛される定番の味わいです。カスタードの濃厚な風味に清涼感を与え、全体を軽快な印象に仕上げます。
  • グランマルニエ:こちらもオレンジ風味のリキュールですが、ブランデーをベースとしているため、コアントローよりもさらに洗練された大人な風味をもたらします。特に秋から冬にかけてのシーズンに、落ち着いた味わいのトロペジェンヌを作る際におすすめです。
  • キルシュ:さくらんぼを原料としたブランデーで、カスタードクリームとの相性が非常に良いことで知られています。シュークリームのカスタードに少量加えることも多く、フルーティーでありながらも上品な香りが特徴です。カスタードクリームと一緒にベリー類やチェリーを挟むときには、特にキルシュの風味が良く合い、より美味しくいただけます。

まとめ

南フランス生まれの、素朴な味わいが魅力のトロペジェンヌは、派手さはないものの、一度口にすると、そのしっとりとした食感と、奥深い味わいに魅了されます。長い歴史と職人の技術が凝縮されたこのお菓子を、ぜひ一度味わってみてください。ふわふわのブリオッシュと、爽やかなオレンジ風味のクリームが絶妙にマッチしたトロペジェンヌは、クリームが十分に冷えた状態が一番美味しい食べ頃です。ぜひ、ご堪能ください。

トロペジェンヌとマリトッツォ、何が違うの?

トロペジェンヌとマリトッツォは、どちらもブリオッシュ生地を使った美味しいお菓子ですが、いくつかの点で違いがあります。マリトッツォは、ふっくらとしたブリオッシュ生地に、たっぷりの生クリームを挟んだ、シンプルながらも贅沢なイタリアの伝統的なお菓子です。一方、トロペジェンヌは、ブリオッシュ生地の表面にあられ糖を散りばめて焼き上げ、カリカリとした食感をプラス。そして、中にはカスタードクリームをベースにした、特製クリームがたっぷり。このクリームは、カスタードにバターを混ぜてふんわりとさせた「クレーム・ムースリーヌ」や、さらに生クリームを加えて軽さを出したものなどがあります。また、トロペジェンヌには、生地に柑橘系のシロップを染み込ませ、みずみずしさを加える工夫もされています。

トロペジェンヌは冷やして食べるのが一番?

その通り、トロペジェンヌは冷やしていただくと、より一層美味しく感じられます。濃厚なカスタードクリームがたっぷり使われていますが、生クリームだけではないので、意外にもあっさりと食べられるのが魅力。まるでシュークリームのように、ペロッといただけます。特に、シロップが染み込んだ生地は、冷やすことでジューシーさが際立ち、暑い季節にもぴったりの爽やかなデザートとして楽しめます。冷蔵庫でしっかり冷やして、その美味しさを存分に味わってください。

トロペジェンヌのクリームって、どんな種類があるの?

トロペジェンヌのクリームには、様々なバリエーションがあります。定番は、カスタードクリームにバターを加えて泡立てた「クレーム・ムースリーヌ」。濃厚な味わいが好きな方には、バタークリームを挟んだものもおすすめです。より軽い食感が好みなら、カスタードクリームにホイップクリームを混ぜた「クレーム・レジェール」が良いでしょう。さらに、クリームにオレンジフラワーウォーターなどの香りを加えたり、コアントロー、グランマルニエ、キルシュなどのリキュールで風味をプラスすることもできます。カスタードクリームをチョコレートや抹茶風味にアレンジしたり、いちご、マンゴー、オレンジなどのフレッシュなフルーツを少し加えて、彩りと風味を添えるのも人気です。

トロペジェンヌ