【家庭菜園】トマト栽培の時期と育て方|初心者でも失敗しないコツを解説
家庭菜園の人気者、トマト。自分で育てたもぎたてトマトは、お店で買うものとは比べ物にならないほどおいしいですよね。でも、いざ育てようと思っても、時期や育て方、肥料のことなど、わからないことが多い…という方もいるのではないでしょうか? この記事では、初心者さんでも安心してトマト栽培を始められるよう、植え付け時期から収穫までの育て方を徹底解説!失敗しないためのコツや、よくあるトラブルの解決策もご紹介します。この記事を読めば、きっとあなたもおいしいトマトを育てられますよ!

家庭菜園で始めるトマト栽培:初心者でも安心!ミニトマトの育て方と成功の秘訣

肥料管理の基本と注意点

トマト、特に大玉トマトのように、一つの株から多くの大きな実を収穫する品種は、生育の過程で大量の栄養を必要とします。そのため、適切な肥料を適切なタイミングで与えることが、甘くて美味しいトマトを育てる上で非常に大切です。肥料が足りないと、「肥料切れ」という状態になり、若い葉が黄色っぽく変色したり、茎が細くなったりといった生育不良のサインが現れます。このような状態になったら、すぐに肥料を追加して、植物が栄養不足にならないように注意しましょう。しかし、肥料を与えすぎるのも良くありません。「肥料過多」になると、トマトの若い葉が内側に丸まったり、茎が異常に太くなって内部が空洞化したりすることがあります。これは、植物が生育に必要な栄養を過剰に吸収し、葉や茎ばかりが成長する「つるぼけ」という状態になるためです。つるぼけが進むと、花が咲かなかったり、実がつきにくくなったり、実が大きくならなかったりします。したがって、ただ闇雲に肥料を与えるのではなく、トマトの成長段階(特に実がつき始めるまでの初期段階と、実が大きく成長し始める時期)をしっかりと把握し、植物が本当に必要としているタイミングと量を理解して肥料を与えることが重要です。この繊細な肥料管理こそが、トマトを元気に育て、甘くて品質の良い実を安定して収穫するための秘訣です。

トマト栽培の年間スケジュールと主な作業

トマト栽培は、適切な時期に正しい手順で進めることで、初心者の方でも十分に成功させることができます。ここでは、春に苗を植え付けた大玉トマトを例にとり、種まきから収穫までの一連の栽培期間(約4ヶ月)と、それぞれの段階で成功するための具体的なコツや注意点について詳しく解説します。ミニトマトの苗の植え付けは一般的に5月から6月にかけて行われ、その後の手入れを経て7月頃から美味しい実の収穫を楽しめます。栽培する環境や地域によって時期は多少異なりますが、これからご紹介するスケジュールは、トマト栽培を行う上での一般的な目安として参考にしてください。

トマト栽培の主な時期

トマト栽培に適した主な時期は以下の通りです。種から育てる場合は、種まきの時期は3月~4月がおすすめです。この時期に種まきを行うことで、苗の植え付け時期である5月~6月までに、苗が十分に大きく育ちます。苗は、早い時期から販売しているお店もありますが、4月頃はまだ気温が不安定で、急に寒くなることもあるため、苗が傷んだり、成長が遅れたりして失敗しやすい傾向にあります。ミニトマトは、比較的高い気温を好む植物なので、気温が安定するゴールデンウィーク(5月上旬)以降に苗を購入して植え付けるのがおすすめです。収穫時期は、一般的に7月~9月頃ですが、土の状態や適切な管理を行うことで、秋から初冬にかけても収穫を続けることができる場合もあります。ご自身の栽培環境や地域に合わせて、種から育てるか、苗から育てるかを検討し、最適な時期にトマト栽培をスタートしましょう。

トマト栽培のステップ一覧

トマトを種から育てる場合は、一般的に以下のようなスケジュールで栽培を進めていきます。これらのステップを事前に把握しておくことで、栽培全体の計画が立てやすくなり、効率的に作業を進めることができます。ミニトマトと大玉トマトでは、一部の作業(摘芯や摘果など)の必要性が異なりますが、基本的な栽培の流れは共通しています。
1. 種まき: 5月の植え付けに間に合うように、3月頃から種まきを開始します。
2. 土作り: 畑に直接植える場合と、プランターで栽培する場合とで、それぞれ適した土壌を準備します。
3. 植えつけ: 育った苗を畑やプランターに植え付けます。
4. 仕立て: 支柱を立てて、茎を支え、株の形を整えていきます。
5. 雨よけの設置: 雨による過湿を防ぎ、病気や実のひび割れを予防するために設置します。
6. 芽かき: 余分な脇芽を摘み取り、養分が実に集中するようにします。
7. 追肥: 株の成長と実の大きさに合わせて、肥料を与えます。
8. 摘果: 実を大きく育てるために、実の数を調整します(主に大玉トマト)。
9. 葉かき: 株の下の方の葉や、不要な葉を取り除き、風通しと日当たりを良くします。
10. 収穫: 実が十分に熟したら収穫します。
11. 摘芯: 茎の先端を摘み取り、実に栄養を集中させます(主に大玉トマト)。
これらのステップを順番に進めていくことで、健康なトマトを育てることができ、豊かな収穫へと繋げることができます。各ステップの詳細については、この後のセクションで詳しく解説していきます。

トマト栽培の事前準備と土作り

ミニトマト栽培を始めるにあたり、適切な道具や資材を事前に揃えることは、その後の生育を円滑に進める上で非常に大切です。特に、プランター、土、そして支柱の選定と準備は、ミニトマトが健康に育ち、豊かな収穫を得るための重要な要素となります。これらの準備を丁寧に行うことで、栽培期間中に起こりうる問題を未然に防ぎ、初心者の方でも安心してトマト栽培に挑戦できます。

プランターの選び方

ミニトマトを栽培する際には、根が十分に伸びるスペースを確保するために、できるだけ大きめのプランターを選ぶことが大切です。具体的には、1株あたり直径と深さの両方が30cm以上あるプランターがおすすめです。これよりも小さいプランターでは、根の成長が十分にできず、株全体が大きく育たないため、結果として収穫量が減ってしまう可能性があります。また、プランターが小さすぎると、土の量が少なくなり、水切れや肥料切れを起こしやすくなるという問題も発生します。安定した生育を促し、たくさんの実を収穫するためには、初めから適切なサイズのプランターを用意することが成功へのカギとなります。

支柱の準備

ミニトマトの苗を植え付ける際には、同時に支柱を立てることが非常に大切です。ミニトマトは成長するにつれて茎が長く伸び、たくさんの実をつけるため、自力で立つのが難しくなります。そのため、茎が折れたり、苗全体が倒れたりするのを防ぐために、長さ150cmから180cm程度の丈夫な支柱を用意し、苗の近くに立てて茎を固定し、安定させることが重要です。最初からしっかりと支柱を立てて苗を固定することで、風による揺れや実の重さから苗を守り、根が早く土に定着し、安定して成長することができます。安定した生育環境は、植物がストレスを感じることなく成長し、健康な実をたくさんつけるために欠かせません。

適切な土作り

トマト栽培において、土は植物が栄養を吸収し、根を張り巡らせるための基礎となるため、土の品質が植物の成長に大きく影響します。庭に直接植える場合とプランターで育てる場合では、それぞれ適した土作りが必要です。
畑にトマトの苗を直接植える場合は、植え付けの約2週間前までに、土を深く耕しましょう(トマトは根を深く伸ばすため)。土壌の酸度を調整することも大切で、1平方メートルあたり100gの苦土石灰を混ぜ込み、土壌のpHをトマトが好む弱酸性から中性(pH6.0~pH6.5)に調整します。さらに、土壌の物理的な性質を改善し、有機物を補給するために、20リットルの牛糞堆肥または腐葉土を混ぜ込みます。植え付けの1週間前には、約50gの緩効性化成肥料を元肥として施し、再度しっかりと耕します。排水性を良くし、根腐れを防ぐために、畝は幅1.5m、高さ30cm程度の高畝にすることをおすすめします。また、雨水の侵入を防ぎ、泥はねによる病気の発生や雑草の繁殖を抑制するために、畝を立てる際にマルチシートを張っておくと効果的です。敷きワラを使用することも、雨はね防止に有効な手段となります。
プランターでトマトを栽培する場合、特に重要なのが「土」の選択です。園芸店などで販売されている安全で高品質な野菜用の培養土を使用するのが一般的で、最も手軽です。安価なものや品質が良く分からない土は避け、適度な保水性、排水性、通気性を兼ね備えた良質な培養土を選びましょう。自分で土を作る場合は、赤玉土(小粒)7割、腐葉土2割、牛糞堆肥1割の割合で混ぜ合わせます。この配合によって、根張りが良くなり、必要な栄養を適切に供給することができます。トマト1株を育てるには、前述したように、直径・深さともに30cm程度のプランターを用意することが重要です。また、プランターの準備が難しい場合は、市販の「袋栽培」用の土を利用すれば、袋に入ったまま手軽にトマトを育てることができます。

トマトの苗の準備と植え付け

トマト栽培を成功させる上で、苗の準備と植え付けは非常に重要なステップです。良質な苗を選び、適切な方法で植え付けることが、生育を促進し、豊かな収穫へと繋がります。ここでは、種から育てる方法、生育の良い苗の見分け方、地植えとプランターそれぞれの植え付け方、そして、より高度なテクニックである寝かせ植えについて詳しく解説していきます。

1. 種まきから育苗する

トマトの種まきは、5月の植え付けに間に合うように、通常3月頃から始めます。種まきから植え付けまでの育苗期間は約2か月間です。トマトの発芽に最適な温度は20℃~30℃とされていますが、3月はまだ気温が低い日もあるため、発芽温度をしっかりと確保することが大切です。小型の「ビニールハウス」や簡易温室を利用したり、夜間は屋内に移動させたりして、温度管理を行いましょう。ただし、日中は温度が上がりすぎる可能性があるので、ビニールハウスから出すなど調整が必要です。
種まきを行う前に、トマトの種、直径9cmのポット(または育苗箱、セルトレイ)、種まき用の土、そして発芽後の管理に役立つビニールハウスを用意します。育苗中に苗が大きくなった場合は、「鉢上げ」という作業が必要になるため、あらかじめ12cm~15cm程度の少し大きめのポットも準備しておくと便利です。

トマトの種まきのやり方

トマトの種まきは、以下の手順で行います。まず、**STEP1**として、種を一晩水に浸けておくと、発芽率を高めることができます。次に、**STEP2**で、ポットに種まき用の土を、縁から少し下まで入れます。**STEP3**では、直径3cm、深さ1cmほどの小さな穴をいくつか作ります。**STEP4**として、種が重ならないように注意しながら、一つの穴に3粒ずつ種をまきます。**STEP5**で、種が隠れる程度に、土を軽くかぶせて浅く植えます。最後に、**STEP6**で、種が流れないように注意しながら、ジョウロなどで優しく水をたっぷりと与え、土全体を湿らせてください。

種まき後~発芽までの管理方法

トマトの種は、早い場合は3日、遅くても1週間程度で発芽します。確実に発芽させるためには、発芽に適した温度(20℃~30℃)を維持することが重要です。種まき後は、夜間の気温が低い時や寒い日には、ビニールハウスに入れたり、室内に移動させたりして、苗を寒さから守りましょう。一方で、晴れた日中はビニールハウス内の温度が非常に高くなることがあるため、高温による障害を防ぐために、温室から出すなどの対策が必要です。発芽するまでは、土の表面が乾燥しないように、毎日、土の湿り具合を確認しながら水やりを続けてください。

発芽後の管理方法と育苗のコツ

トマトの種が発芽したら、「温度変化への対応」と「間引き」を行いながら苗を育てていきます。温度変化への対応とは、発芽後、徐々に温度を下げていくことで、苗を強く育てる手法です。日中はたっぷりと日光を浴びさせ、夜間は少し温度を低くすることで、苗がひょろひょろと伸びるのを防ぎ、丈夫な苗に育てます。温度調節器や育苗機を使うと、この温度管理がより容易になります。育苗期間の間引きは、合計で2回行います。1回目の間引きは、本葉が出始めた頃に行い、生育の悪いものや小さいものを間引いて2本にします。2回目の間引きは、本葉がさらに増えてきた頃に行い、一番元気なものを残して1本にします。間引き後、1本になった苗は、本葉が4枚から5枚になった頃に、少し大きめの鉢に「鉢上げ」をして、根が伸びるスペースを確保します。発芽後の水やりは、苗がしっかりと根を張るまでは、鉢底から水を吸わせる「底面給水」が効果的です。本葉が増えてきたら、土の表面が乾いたタイミングで上から水を与えるようにし、やや乾燥気味に育てることを意識しましょう。

2. 元気な苗の選び方と購入タイミング

ミニトマト栽培を始める際、種から育てるのは、発芽の管理や初期の生育に手間がかかるため、初心者には難しいかもしれません。そのため、ある程度育ったミニトマトの苗を購入するのがおすすめです。苗は、早い店では4月頃からホームセンターや園芸店で販売されますが、この時期はまだ気温が不安定で、寒さが戻ることも多く、苗が傷んだり、生育が遅れたりして失敗しやすいです。ミニトマトは、比較的高い温度でよく育つ植物なので、気温が安定するゴールデンウィーク(5月上旬)以降に苗を購入して植え付けるのがベストです。この時期なら、気温が安定し、苗がスムーズに新しい環境に馴染みやすくなります。健康な苗を選ぶことが、その後の生育に大きく影響するため、以下の点を参考に、良い苗を選びましょう。
初心者がミニトマトの苗を選ぶ際に重要なポイントがいくつかあります。まず、**「一番花が咲いていて、つぼみがついているもの」**を選ぶことが大切です。一番花が咲いているということは、苗がある程度成長し、実をつける準備に入っているサインであり、その後の生育が順調に進む可能性が高いです。次に、**「葉が8枚程度あり、葉と葉の間が間延びしていないもの」**を選びましょう。葉の数が十分にあり、葉の間隔が詰まっている苗は、光合成が活発で栄養をしっかりと蓄えている証拠です。葉の間隔が伸びている苗は、光不足などで徒長している可能性があり、生育が不安定になることがあります。さらに、苗の双葉の色が鮮やかな緑色をしているか、茎がしっかりしていて、太すぎず細すぎず、ほどよく充実していることも重要です。購入する際は、葉の裏などをよく見て、病気や害虫の被害がないかをチェックしてください。トマトだけでなく、ナス、ピーマンなどのナス科の植物も、同じようにこれらの条件(特に一番最初の花房に花やつぼみがついていること)を満たす苗を選ぶと、その後の栽培がスムーズに進みやすくなります。

3. トマトの苗を植え付ける

トマト栽培用の土の準備ができたら、いよいよ苗の植え付けです。植え付け時期は、種まきから約2か月後、具体的には5月上旬から遅くとも6月上旬までに行うのが理想的です。ちょうど一番最初の花房が咲き始めた頃が植え付けに適した時期で、この時期に植え付けることで、苗が夏の暑さが本格化する前にしっかりと根を張り、生育の基礎を築くことができます。植え付け作業は、根への負担をできるだけ少なくするため、晴れた日の午前中に行うのが良いでしょう。植え付けと同時に、あらかじめ用意しておいた長さ150cmから180cmの支柱をしっかりと立てて、苗を支えることが大切です。苗がまだ小さい段階で支柱を立てておくことで、成長して倒れるのを防ぎ、風による被害からも守ることができます。植え付け後、急に気温が下がり、生育に適さない15度以下になるような寒い日がある場合は、苗を寒さから守る対策が必要です。例えば、夜間だけ苗全体に不織布をかけたり、プランターで育てている場合は、軒下などに移動させたりして、冷たい空気から苗を守りましょう。特に植え付け直後の苗は環境の変化に敏感なので、急な温度変化には注意が必要です。適切な寒さ対策を行うことで、苗が冷害を受けることなく、順調に育ち始めることができます。

【地植え栽培】植え付けの手順

畑にトマトを植える場合の植え付けの手順は以下の通りです。まず、**STEP1**として、マルチを張った畝に植え穴を掘ります。株の間隔が50cmになるようにマルチに穴を開け、植え穴は幅と深さが30cmくらいになるように掘りましょう。次に、**STEP2**で、掘った植え穴にじょうろなどでたっぷりと水をやり、土を十分に湿らせます。**STEP3**では、根を傷つけないように注意しながら、ポットから苗を丁寧に取ります。**STEP4**で、植え穴に苗を植え付けますが、深植えにならないように、接ぎ木をしている苗の場合は、接ぎ木の部分が土に埋まらないように浅く植えるのがポイントです。ちなみに、苗の向きは、花房がある方を畝の外側に向けて植えると、実が同じ方向につき、収穫しやすくなります。最後に、**STEP5**で、植え付けが終わったら、土にしっかりと根付くまで、土が乾かないようにたっぷりと水やりを続けましょう。

【プランター栽培】植え付けの手順

プランターでトマトを育てる際の植え付け方をご説明します。まず、STEP1として、プランターの底に軽石などを敷き詰めて排水性を高め、その上に培養土をプランターのふちから5cmほど下まで入れ、水やりのためのスペースを確保します。次に、STEP2で、水をたっぷりと与え、土全体をしっかりと湿らせます。STEP3では、苗を植えるための穴を掘ります。穴の大きさは、幅と深さがそれぞれ30cm程度が良いでしょう。STEP4で、根を傷つけないように丁寧にポットから苗を取り出し、STEP5で、掘った穴に苗を浅めに植え付けます。接ぎ木苗を使用する場合は、接ぎ木部分が土に埋まらないように注意が必要です。最後に、STEP6で、プランターの底から水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えます。植え付け後は、根がしっかりと活着するまで、土の表面が乾かないように水やりを続け、日当たりの良い場所で管理しましょう。

トマトの寝かせ植え(上級者向け)

「寝かせ植え」は、トマト栽培の経験者が、より丈夫な苗を育て、収穫量を増やすために試す植え方です。トマトには、茎や根の節から新たな根を生やす性質があります。この特性を利用して、苗を横向きに寝かせた状態で植えることで、土に触れている茎からも新しい根が伸びてきます。これにより、根の総量が増え、水や養分の吸収力が向上します。豊富な根を持つ苗は、生育が旺盛になり、病害虫への抵抗力も高まり、安定した収穫が期待できます。ただし、この方法は、市販の「接ぎ木苗」には適していません。接ぎ木苗の接ぎ木部分を土に埋めてしまうと、台木の特性が現れたり、病気が発生する原因になるため、避けるべきです。自家栽培の苗(実生苗)を、より強く育てたい場合に推奨される植え方と言えるでしょう。

4.トマト栽培の管理

トマト栽培における「誘引」と「整枝」は、丈夫な株を育て、たくさんの実を収穫するために欠かせない作業です。誘引とは、伸びてくる茎を支柱に結びつけ、株の形を整えることです。特に大玉トマトは、成長すると重くなるため、支柱で支えることが大切です。支柱は、実の重さを支えるだけでなく、茎や葉が密集するのを防ぎ、風通しを良くすることで、病害虫の発生を抑制する効果もあります。整枝の目的は、余分な枝葉を取り除き、株全体の風通しと日当たりを良くすることです。枝葉が密集すると、光合成が阻害され、湿気がこもりやすくなり、病気の原因となります。また、日当たりが悪いと、花が咲かなかったり、実が大きくならなかったり、色づきが悪くなったりします。これらの問題を解決するために、定期的に株を観察し、不要な枝や葉を剪定する「整枝」が重要です。

一本仕立てのポイント

トマト栽培では、1本仕立てが基本です。これは、主となる茎をまっすぐ上に伸ばしていく方法です。特にミニトマトは、主茎を1本に育てることが一般的です。1株につき1本の支柱を立てて育てます。手順は以下の通りです。まず、STEP1として、1.5m~2m程度の支柱を用意します。次に、STEP2で、株元から少し離れた位置に支柱を立てます。STEP3で、主枝が支柱に届くようになったら、茎を8の字を描くように支柱に結び付けます。この際、茎を締め付けすぎないように、少しゆとりを持たせて結びましょう。

二本仕立て(応用編)

トマト栽培といえば一本仕立てが一般的ですが、工夫次第で二本仕立てに挑戦することも可能です。二本仕立てにする場合は、主となる茎と、そこから伸びるわき芽それぞれに支柱が必要になります。適切に管理すれば、一本仕立てよりも多くの収穫を見込めます。しかし、枝が増える分、栽培の難易度は上がります。二本仕立てで成功させるには、着果を促す工夫、摘果による樹勢の維持、そして二本仕立てに適した品種選びが重要です。二本立てには、一段目の花房の下から出るわき芽を伸ばす方法と、苗が小さいうちに摘芯してわき芽を伸ばす方法があります。家庭菜園には、前者の花房の下のわき芽を伸ばす方法がおすすめです。STEP1として、1株あたり1.5m~2mの支柱を2本用意します。STEP2では、支柱同士の間隔を十分に空けて設置します。STEP3で、主枝が支柱に届いたら、片方の支柱に誘引します。STEP4で、第一花房の下から伸びるわき芽を側枝として育てます。最後に、STEP5で、側枝がもう一方の支柱に届いたら誘引します。

5.トマト栽培の雨よけ

トマトは、多湿に弱い野菜として知られています。湿度が高い状態が続くと、カビなどが原因で病気が発生しやすくなるだけでなく、「裂果」と呼ばれる生理現象も起こりやすくなります。裂果とは、雨の多い時期に実が水分を急激に吸収することで、果皮の成長が追いつかずに割れてしまう現象です。せっかく育てたトマトが収穫前にダメになってしまう原因の一つとなります。このような多湿によるトラブルを防ぐために、雨よけの設置が効果的です。特に大玉トマトの栽培では、裂果を防ぎ、病気のリスクを減らすために雨よけが推奨されます。
雨よけ以外にも、畑に直接トマトを植える場合は、過湿対策として工夫できる点があります。まず、排水性を高めるために「高畝」にすることが有効です。畝を高くすることで、根元に水が溜まりにくくなり、過湿状態を回避できます。また、雨水の侵入を防ぐために、株の根元を覆うように「マルチシート」を張ることもおすすめです。マルチシートは、土からの水分の蒸発を抑えつつ、雨水が直接土に当たるのを防ぎ、泥はねによる病原菌の拡散を抑制します。さらに、「敷きわら」を敷くことも、雨はねを防ぎ、土壌の乾燥を和らげる効果があります。これらの対策を組み合わせることで、トマトが苦手な過湿環境を避け、健全な生育を促し、高品質な実を安定して収穫することができます。

雨よけの作り方

畑でトマトを栽培する場合、市販の雨よけ栽培用キットを利用すると手軽です。しかし、自分で雨よけを作ることも可能です。自作する場合は、トマトの仕立てに使う支柱よりも長い、2m以上の支柱(6~8本程度)、透明な園芸用ビニールシート(または大きめのゴミ袋)、ビニールを固定するための紐を用意します。
自作雨よけの作り方は以下の通りです。STEP1として、トマトの仕立て用支柱の外側に、用意した長い支柱を垂直に立てます。ビニールシートがたるまないように、ある程度の幅と高さを確保して配置しましょう。STEP2では、ビニールシートに支柱を通す穴を開け、支柱の上から被せます。STEP3で、ビニールシート全体をピンと張り、風で飛ばされないようにしっかりと固定します。最後に、STEP4で、紐を使ってビニールシートを支柱に結び付け、ずれたり飛ばされたりしないように固定します。特に風の強い日は、補強するなどして、ビニールが飛ばされないように注意してください。この雨よけを設置することで、トマトに直接雨が当たるのを防ぎ、過湿による生育不良や病気のリスクを大幅に軽減できます。

6.トマト栽培の芽かき

トマトの生育に合わせて行う重要な作業が「芽かき」です。わき芽とは、トマトの主茎と葉の付け根から生えてくる小さな芽のことで、これらを放置すると養分が分散し、実の肥大が悪くなったり、収穫量が減ったりする原因になります。ミニトマトの場合、わき芽をあえて伸ばして収穫量を増やす「放任栽培」という方法もありますが、大玉トマトの場合は、大きな実を収穫し、株全体の生育を安定させるために、成長過程でわき芽を摘み取る作業が不可欠です。芽かきは、株全体に養分を行き渡らせて花芽を付きやすくするだけでなく、風通しを良くして病気を予防する効果もあります。

芽かきのやり方

トマト栽培において、わき芽の処理は欠かせない作業です。わき芽は、主となる茎と葉の付け根から生えてくる新しい芽のことで、放置すると養分が分散し、トマトの生育を妨げる原因となります。理想的なのは、わき芽が小さく柔らかいうちに摘み取ることです。具体的には、5cm程度の長さに成長した時点で、手で摘み取るのがおすすめです。摘み取る際は、わき芽を指でつまみ、根元から思い切って折り取るようにします。ハサミやカッターなどの刃物を使うと、切り口から細菌が侵入する可能性があるため、できる限り素手で行うようにしましょう。わき芽が大きく育ってしまうと、主枝との区別がつきにくくなり、摘み取る際に誤って主枝を傷つけてしまうリスクも高まります。そのため、こまめにわき芽をチェックし、早期に対処することが大切です。芽かきの作業を行う時間帯も重要です。晴れた日の午前中に作業を行うことで、切り口が乾燥しやすく、病気のリスクを減らすことができます。特に、花房のすぐ下から生えてくるわき芽は成長が早いため、見落とさないように注意しましょう。適切な芽かきは、トマトの株を健康に保ち、豊かな収穫へと繋がる重要なポイントです。

7.トマト栽培の追肥

トマト、特に大玉トマトのような大きな実をたくさんつける品種を育てるには、生育段階に応じた適切な追肥が不可欠です。トマトは成長の過程で大量のエネルギーを消費するため、肥料が不足すると生育不良の原因となります。肥料不足のサインとしては、若葉が黄色く変色したり、茎が細くなったりすることが挙げられます。このような状態に気づいたら、速やかに追肥を行い、必要な栄養を補給しましょう。しかし、肥料の与えすぎも禁物です。過剰な肥料は、トマトの葉が内側に巻かれたり、茎が太くなりすぎて空洞になったりする「つるぼけ」という状態を引き起こすことがあります。つるぼけになると、花が咲きにくくなったり、実がつきにくくなったりと、収穫量に悪影響を及ぼします。追肥を行う際は、トマトの成長段階を考慮し、適切なタイミングと量を守ることが重要です。特に、実がつき始めるまでの初期段階と、実が肥大し始める時期は、肥料の要求量が高まります。大玉トマトの場合、中玉トマトやミニトマトに比べて実を大きく育てる必要があるため、開花後、実がつきはじめた頃から追肥を開始するのが一般的です。適切な肥料管理は、トマトを健康に育て、甘くて美味しい実を収穫するための重要な要素です。

追肥の具体的な方法とタイミング

追肥は、トマトの成長に合わせて適切なタイミングで行うことが重要です。最初の追肥は、苗を植え付けてから、一番花についた実がピンポン玉くらいの大きさに成長した頃に行います。化成肥料を使用する場合は、一株あたり約15gを目安に、株元に均等に散布します。液体肥料を使用する場合は、製品の指示に従って希釈し、プランターの底から流れ出るくらいたっぷりと与えましょう。液体肥料の中でも、「ハイポネックス原液」は速効性があり、追肥に最適です。最初の追肥後は、定期的な肥料供給が大切です。化成肥料であれば3週間ごと、液体肥料であれば1~2週間ごとに、適切な量を追肥することで、トマトは栄養不足になることなく、次々と実をつけてくれます。特に、三番花の実がピンポン玉くらいの大きさになったタイミングで、二回目の追肥を行うと効果的です。緩効性肥料を使用する場合は、株元から少し離れた場所に円を描くように施肥します。トマトの生長を観察し、葉が大きくなりすぎたり、茎が太くなりすぎたりする場合は、肥料の量を調整しましょう。「実が付くまでは控えめに、実が付き始めたら定期的に」という追肥の原則を守ることで、安定した収穫が期待できます。

肥料の調整と活力剤の使用

トマト栽培に限らず、野菜を育てる上で、根の健康状態は収穫量に大きく影響します。特に、三次根と呼ばれる細根を増やすことが重要です。三次根は、主根から生える二次根からさらに分岐した根で、養分や水分を吸収する役割を担っています。植物の状態を注意深く観察し、適切な対応をすることで、豊かな収穫に繋がります。例えば、花が落ちてしまったり、葉の色が薄かったり、土の表面を少し掘ってみても細根が見当たらない場合は、根の生育が不十分である可能性があります。また、下葉は濃い緑色なのに、上の葉の色がまだらになっている場合は、微量要素が不足しているサインです。このような症状が見られた場合は、すぐに追肥をするのではなく、まずカルシウムなどのミネラルが豊富に含まれている植物活力剤「リキダス」などを与え、根の健全な成長を促し、微量要素の欠乏を補いましょう。植物の状態が改善されてから、追肥を再開するようにしてください。一方、下葉が黄色くなっている場合や、葉が上を向いている場合は、窒素、リン酸、カリウムなどの主要な栄養素が不足しているサインです。この場合は、「ハイポネックス原液」などの液体肥料を規定の希釈率で薄めて追肥し、速やかに栄養を補給することが重要です。

8. トマト栽培における摘果作業

大きく甘いトマトを実らせるために重要なのが「摘果」です。特に大玉トマト栽培では欠かせない手入れと言えるでしょう。ミニトマトの場合は基本的に不要ですが、大玉トマトは一つの株に多くの実をつけすぎると、養分が分散してしまい、結果的に小ぶりで品質の低い実が多くなってしまいます。摘果の目的は、養分を無駄なく残った実に集中させ、大きく美味しいトマトを育てることにあります。

摘果の方法

摘果のタイミングは、一段目の花房(一段果房)についた実がピンポン玉くらいの大きさになった頃が目安です。この時、各花房から形の良い、生育の進んだ実を3~4個選び、それ以外の、形が悪かったり、小さい実を手で摘み取ります。その後も、実がピンポン玉程度の大きさになるたびに、同様に摘果を行います。定期的な摘果によって株の負担を減らし、残された実が最大限に成長できる環境を整えましょう。

9. トマト栽培における葉かき作業

トマトの実が色づき始めたら「葉かき」を行いましょう。収穫間近の実の下にある葉は、既に実への養分供給を終えていることがほとんどです。これらの不要な下葉を取り除くことで、株全体の通気性と日当たりが大幅に改善されます。風通しが良くなると湿気がこもりにくくなり、うどんこ病や疫病などの病害発生を抑制できます。また、日当たりが向上することで、残った実が十分に光合成を行い、着色や糖度アップに繋がります。

葉かきの方法

一度に全ての葉を取り除くと株に大きな負担がかかるため、1週間に1回程度のペースで、数枚ずつ(例えば一度に半分ずつ)葉を取り除くのがおすすめです。下葉だけでなく、密集して風通しを悪くしている内側の葉や、地面に触れている葉も、病気の原因となる可能性があるため、適宜取り除くようにしましょう。

10.トマト栽培の収穫

ミニトマトが順調に生育すれば、開花から約50日前後でいよいよ収穫時期を迎えます。標準的なトマトの場合は、開花後55~60日程度が目安です。実の色が鮮やかな赤色に変わったら収穫のサインです。収穫は、梅雨明け後の晴れた日に行いましょう。完熟したトマトを一つ一つ丁寧に収穫します。ミニトマトの収穫期間は比較的長く、多くの地域で8月末頃まで収穫を楽しめます。良質な土壌で育て、適切な肥料を定期的に与えることができれば、株の活力が維持され、秋から初冬にかけても収穫できる場合があります。特に、日中の日差しが穏やかになり、夜間の気温が下がる時期に収穫されるミニトマトは、甘みが凝縮されて格別な味わいになります。

トマトの収穫のタイミング

トマトは、日中に太陽光を浴びて光合成を行い、養分を生成します。生成された養分は夜間に実に蓄えられるため、収穫は朝の早い時間帯が理想的です。ヘタの近くまで赤くなったら収穫の目安です。収穫時期を迎えた完熟トマトを長く放置すると、実が割れてしまうことがあるため、早めに収穫しましょう。

トマトの収穫のやり方

収穫する際は、実を傷つけないように丁寧に、ヘタの部分から摘み取るようにしましょう。こまめに収穫することで、株への負担を減らし、新しい実がつきやすくなるため、収穫期間を長く保てます。トマトを収穫する際は、園芸用ハサミを用いて軸の部分をカットします。軸はできるだけ実に近い位置で切り、他の実に傷がつかないように注意しましょう。切断箇所から病気に感染するリスクがあるため、清潔なハサミを使用し、晴れた日に収穫するか、収穫後に消毒を行うと良いでしょう。完熟したトマトは、手で優しく包み込み、軽く揺らすだけで簡単に収穫できます。落下を防ぐために、手を添えて支えながら切り取りましょう。トマトのヘタと房の接続部分を離層部と呼びますが、品種によっては離層部ごと収穫できるものと、ヘタの部分から収穫する品種があります。自家栽培の新鮮なミニトマトは、サラダや料理のアクセントとしてはもちろん、そのままおやつとしても楽しめ、家庭菜園ならではの喜びを味わえるでしょう。

11.トマト栽培の摘芯

摘芯は、特に大玉トマトの栽培において、安定した収穫を得るために重要な作業です。摘芯とは、トマトの主枝の先端を切除する作業のことです。摘芯を行うことで、主枝の成長に使われていた養分が、花や実に集中して供給されるようになります。その結果、株全体が充実し、実が大きく育ち、甘くて高品質なトマトを収穫することが可能になります。ミニトマトの場合は、株の成長を促進し、収穫量を増やすために摘芯を行わないこともありますが、大玉トマトでは実を大きく育てるために欠かせない手入れとなります。

摘芯の方法

摘芯とは、トマトの主枝が伸びすぎないように、その先端をカットする作業です。適切なタイミングは、主枝が目標とする高さに達した頃、具体的には4段目から6段目の花房が見え始めた時期です。先端を摘む際には、一番上の葉を2~3枚残すことが重要です。こうすることで、主枝の成長に使われていた栄養が花や実に集中し、株全体が充実し、大きく美味しいトマトを収穫することができます。

トマト栽培における水やり

「トマトを甘くするには、水やりを控えるべき」という話を聞くことがありますが、これは一面的な見方であり、誤解を招きやすい情報です。特に初心者の方が安易に実践すると、栽培を失敗する原因になりかねません。収穫間近の時期に一時的に水やりを減らすことで、トマトの糖度を上げることが期待できるのは事実ですが、これは株が十分に成長し、健康な状態であることが前提です。生育初期や、まだ株が小さい段階で水やりを極端に減らすと、植物が必要な水分や栄養を吸収できず、深刻な問題を引き起こす可能性があります。水不足は、まず根の活動を弱め、植物全体の成長を妨げます。その結果、株が弱り、病気への抵抗力が低下し、様々な病害に侵されやすくなります。さらに、トマトが十分な水分を吸収できないと、カルシウムなどの特定の栄養素が不足し、「カルシウム欠乏症」を発症するリスクが高まります。カルシウム欠乏症の代表的な症状が「尻腐れ症」です。これは、まだ青いトマトの実の先端部分が黒く変色して凹んでしまう生理障害で、発生した実は食用には適しません。このような問題を避けるためにも、ミニトマト栽培では、土の表面が乾いたら、プランターの底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えるという、基本的な水やりのルールをしっかりと守ることが大切です。

水やりのタイミングと注意点

トマトの水やりは、生育段階に合わせて適切に行うことが重要です。トマトは多湿を嫌いますが、種まきから発芽までの期間は、土の表面が乾燥しないように注意し、こまめに水やりを行います。発芽に必要な水分を絶やさないことが大切です。発芽後は、苗がしっかりと根付くまで、乾燥させないように水やりを継続します。根がしっかりと活着し、本葉が増えてきたら、土の表面が乾いたタイミングで水やりをするように切り替え、やや乾燥気味に育てることを心がけましょう。苗を植え付けた後も、根がしっかりと根付くまでは、土の表面が乾かないように水やりを続けます。苗が根付いたら、水やりを控えめに育てますが、土が常に湿った状態だと、根腐れや生育不良、病気の原因になることがあるため、水やり前に必ず土の状態を確認することが重要です。トマトへの水やりは、基本的に朝に行い、日中の蒸れを防ぎ、植物がしおれない程度の適量を与えるのがポイントです。地植えの場合、1週間に1度雨が降っていれば、基本的に水やりは不要です。トマトは乾燥に強い野菜ですが、実がなり始め、肥大する時期には水分を多く必要とします。この時期に水が不足すると、尻腐れ症などの生理障害を起こす可能性があるため、土が乾いたら毎日水やりを行いましょう。ただし、多湿に弱いトマトには、上から勢いよく水をかけるのではなく、株元に優しく水をあげることで、泥はねによる病原菌の拡散を防ぎ、過湿によるストレスを軽減できます。

トマトの受粉・着果処理について

トマトは基本的に自家受粉をするため、人工的に受粉させる必要はほとんどありません。しかし、特に大玉トマトの場合、より確実に多くの実をつけ、収穫量を安定させるためには、「着果処理」と呼ばれる人工授粉の補助を行うことが有効です。特に1段目の花房が結実しないと、その後の2段目以降の花房にも実がつきにくくなる傾向があるため、最初の花房に確実に実をつけることが、連続的な結実を促す上で非常に重要です。

着果処理のやり方

着果処理を行う最適なタイミングは、晴天が続く日の午前中です。この時間帯は花粉の活動が活発になるため、受粉を効率的に進めることができます。具体的な方法としては、十分に開いたトマトの花房を軽く指で弾いて振動を与えます。この振動によって花粉が雌しべに付着しやすくなり、着果が促進されます。より確実に着果させたい、または着果率を向上させたい場合は、市販のトマト用着果促進剤の使用も有効です。ただし、使用する際には、製品の指示に従い、適切な希釈率と使用方法を守ることが重要です。特に、高温時の使用は避けるようにしましょう。適切な着果処理を行うことで、開花後1週間程度で実がつき始めることが期待できます。最初に実ったミニトマトを観察することは、栽培の成功を実感できる最初の瞬間となるでしょう。

トマトの生育不良・生理障害について

トマト栽培中には、様々な生理障害が発生することがあります。これらは病気とは異なり、主に栽培環境や栄養バランスの乱れが原因ですが、適切な対処によって被害を最小限に抑えることが可能です。

尻腐れ症

尻腐れ症は、ミニトマト栽培でよく見られる生理障害の一つで、特に水分不足やカルシウム不足が原因で発生しやすくなります。症状としては、トマトの果実のお尻の部分が黒く変色し、陥没するのが特徴です。この症状は、土壌中のカルシウム不足、乾燥、高温、または過剰な窒素肥料によるカルシウム吸収阻害など、複数の要因が絡み合って発生することがあります。一度尻腐れ症を発症した果実は回復しないため、見つけ次第、速やかに株から取り除くことが大切です。これにより、株が不必要な養分をその果実に供給し続けるのを防ぎ、健全な果実への栄養供給を促します。尻腐れ症の予防には、カルシウムの補給が効果的です。市販のカルシウム剤を利用することで、カルシウム不足によるリスクを軽減できます。特に、手軽に使えるスプレータイプのカルシウム剤は便利です。兆候が見られた場合や予防として使用する際は、葉の裏表に均一に散布することが重要です。葉の裏側からも栄養素が吸収されるため、より効率的な補給が期待できます。植物活力液にはカルシウムなどのミネラルが豊富に含まれており、尻腐れ症の予防に役立ちます。また、梅雨明けに雨が少ない場合は十分な水やりを心がけ、肥料の与えすぎにも注意しましょう。

トマトの葉が巻いていく

トマトの葉が、一見元気に見えるにもかかわらず上向きに巻いている場合、生理障害の可能性があります。この症状の主な原因として考えられるのは、肥料の過多です。特に窒素肥料を過剰に与えると症状が出やすいため、追肥の量を適切に調整し、窒素の与えすぎに注意しましょう。窒素過多に加えて、水やりの量も重要です。水溶性肥料を使用している場合、過剰な水やりは肥料成分を土壌から急速に流出させ、結果として窒素過多を引き起こすことがあります。土壌の乾燥状態を確認し、適切な水やりを心がけることが、葉の巻き込みを防ぐ上で重要です。

トマトの空洞果

トマト栽培における「空洞果」とは、果実内部のゼリー状の部分が十分に発達せず、空洞が生じてしまう状態を指します。空洞果が発生したトマトは、見た目が不揃いになり、切ってみると本来あるべきゼリー状の部分が少なく、隙間が目立ちます。この現象は、気温が急激に上昇した際に、トマトの実だけが急速に成長する一方で、内部の果肉部分に必要な栄養が行き渡らないことが原因で起こりやすくなります。主な原因としては、光合成が十分に行われていない状態で、着果を促進するホルモン剤を過剰に使用すること、養分や水分が多すぎること、あるいは花芽が正常に形成されていないことなどが考えられます。ホルモン剤を使用する際は、花房が十分に開花している状態でのみ行い、気温が高い日の使用は避けるようにしましょう。また、土壌中の養分や水分が過剰にならないように、水やりや肥料の管理を適切に行うことが大切です。トマトの花芽が形成される時期(開花前)に、極端な低温や高温にさらされると、空洞果が発生しやすくなるため、この期間の温度管理にも注意が必要です。

トマトの実のすじ腐れ

トマトの果実に「すじ腐れ」が発生すると、果実が部分的に壊死し、褐色の斑点や、緑色や黄色の筋状の模様が現れます。この生理障害にはいくつかの原因が考えられますが、主なものとしては、日照不足、肥料の過剰または不足、そして窒素肥料の過多による「過繁茂」が挙げられます。過繁茂とは、葉や茎が過剰に茂りすぎた状態を指し、これにより植物全体の栄養バランスが崩れ、花の発育が不十分になったり、果実への栄養供給が滞ったりして、「すじ腐れ」といった生育不良を引き起こします。さらに、過繁茂は株の日当たりや風通しを悪くし、日照不足を悪化させる原因にもなります。この状態を防ぐためには、肥料、特に窒素の量を適切に管理するだけでなく、トマトを日当たりの良い場所に植え、十分な日光を確保することが非常に重要です。適切な剪定(わき芽摘みや葉の整理など)を行い、余分な枝葉を取り除くことで、株全体のバランスを保ち、予防に繋げることができます。

節間が長く徒長している

トマトの株を観察すると、葉と葉の間の茎の部分(節間)が異常に長く伸び、「ひょろひょろ」とした状態になっていることがあります。これは「徒長」と呼ばれる現象です。徒長の主な原因は、多くの場合、日照不足にあります。日当たりの悪い場所で、十分に日光が当たらない状態が続くと、植物は光を求めて茎を伸ばそうとするため、節間が不自然に長くなります。徒長した苗は、茎が細く弱々しくなり、葉の色も薄くなる傾向が見られます。このような状態では、風などの影響を受けやすく倒れやすくなるだけでなく、病害虫に対する抵抗力も低下し、花や実のつきが悪くなることがあります。節間が通常よりも長く伸びていると感じた場合は、速やかに日照不足を解消するための対策を講じましょう。プランターで栽培している場合は、できる限り日当たりの良い場所に移動させることが最も手軽な対処法です。庭植えの場合も、周囲の障害物を取り除くなどして、十分な日光が当たる環境を確保することが重要です。

トマト栽培で気をつけたい病害虫について

トマト栽培において注意すべき病気や害虫は数多く存在しますが、早期発見と適切な対策を行うことが非常に重要です。適切な対策を講じることによって、被害を最小限に抑え、美味しいトマトを収穫することが可能になります。家庭菜園では、可能な限り安全な方法で対策を行いたいと考える方が多いため、食品由来の成分を使用した薬剤などを活用することも有効な手段です。日々の観察を怠らず、病害虫の兆候をいち早く見つけ、迅速に対応することが、トマト栽培を成功させるための鍵となります。

疫病

特に梅雨の時期に注意が必要なのが「疫病」です。これは土壌中のカビが原因で、トマトの葉、茎、そして実に特徴的な病斑が現れます。予防策としては、土壌からの跳ね返りを防ぐためにマルチングや敷き藁を施したり、雨よけ栽培を取り入れたりすることが効果的です。また、水やりの際は、土が跳ね返らないように丁寧に水をやり、事前に土壌消毒を行うことも有効です。もし疫病を発見した場合は、速やかに患部を取り除き、適切に処分することで、被害の拡大を抑えられます。

うどんこ病

「うどんこ病」も、トマト栽培で注意すべき一般的な病気の一つです。これもカビが原因で発生し、葉の表面に白い粉をまぶしたような状態になるのが特徴です。初期段階であれば、市販の薬剤を散布するか、感染した部分を切り取って処分することで、蔓延を防ぐことができます。予防のためには、水はけの良い土を使用し、風通しと日当たりの良い場所で栽培することが大切です。

青枯病

「青枯病」は、細菌によって引き起こされる厄介な病気です。感染すると、トマトの株が急に萎れ始め、最終的には枯れてしまいます。予防策としては、水はけの良い土で栽培すること、過度な湿度を避けるために水やりを調整すること、マルチングで泥はねを防止すること、そして定期的な土壌消毒が挙げられます。もし青枯病が発生してしまった場合は、他の株への感染を防ぐため、残念ですが感染した株を根ごと抜き取り、処分する必要があります。

モザイク病・黄化葉巻病

ウイルス性の病気として注意したいのが「モザイク病」です。一度感染してしまうと治療が非常に難しく、症状が進んだ場合は、他の株への感染を防ぐために、感染株を処分せざるを得ないこともあります。近年、特に問題視されているウイルス病の一つに「黄化葉巻病」があり、感染すると葉が黄色く縮れるなどの症状が現れます。

アブラムシ

アブラムシは、さまざまな種類の野菜に発生する、植物にとって非常に厄介な害虫です。彼らは植物の汁を吸い、その成長を妨げます。特に、窒素過多の状態にある株や、柔らかい新芽の部分に好んで寄生します。アブラムシの困った点は、単に植物の栄養を奪うだけでなく、モザイク病のような深刻なウイルス病を媒介することです。驚異的な繁殖力を持っており、一度発生するとあっという間に大群を形成し、トマトの生育に深刻な影響を与えます。アブラムシを見つけたら、被害が拡大する前に、寄生された部分を切り取って処分するか、粘着テープなどを利用して早めに駆除しましょう。予防策としては、アブラムシが嫌がる反射光を利用し、シルバーマルチを株元に敷くことで、彼らの飛来を効果的に防ぐことができます。また、幼虫が好む窒素過多の状態を避けるために、窒素肥料の与えすぎに注意し、バランスの取れた肥料管理を心がけることが重要です。早期発見と迅速な対応が、アブラムシによる被害を最小限に抑えるための鍵となります。

ハダニ

ハダニもまた、トマト栽培において注意すべき害虫の一つです。特に、高温で乾燥した環境を好む性質があります。繁殖力が非常に強く、主に葉の裏側に寄生し、植物の汁を吸って生きています。ハダニの被害が進むと、葉に白い小さな斑点が現れ始め、最終的には葉が茶色に変色して枯れてしまい、株全体の活力が失われます。梅雨明け後の乾燥しやすい時期に発生しやすいため、この時期は特に注意が必要です。トマトの苗を植え付けた後、ハダニによる被害が多く見られる傾向があるため、初期段階で粘着テープなどを使用して駆除することが効果的です。予防策としては、株全体の風通しを良くし、湿度が高くなりすぎないように環境を整えること、そして霧吹きなどで定期的に葉水を行い、ハダニが苦手とする湿度を保つことが有効です。

オオタバコガ・カメムシ

トマトが実をつけ始める時期になると、「カメムシ」や「オオタバコガ」といった害虫が実を食害することがあります。中でも「オオタバコガ」は、トマトの実の中に侵入して内部を食い荒らし、その被害を次々と隣の実へと広げていく、非常に厄介な害虫です。幼虫はオレンジ色のイモムシのような姿をしており、発見次第、速やかに捕獲して駆除することが重要です。被害の拡大を防ぐために、市販の殺虫剤を使用することも有効な対策となります。オオタバコガの幼虫による食害を防ぐためには、成虫に卵を産み付けさせないように予防することが最も重要です。成虫は6月から8月頃にかけて飛来するため、この時期に防虫ネットを設置して飛来を防ぐことが効果的です。また、オオタバコガの幼虫は窒素過多の環境を好むため、窒素肥料の与えすぎには注意し、適切な肥料管理を行うことが予防につながります。これらの害虫に対しては、初期段階で発見し、迅速かつ適切な対策を講じることが、トマトの健全な成長と豊かな収穫のために不可欠です。

まとめ

家庭菜園でのトマト栽培は、適切な時期に育て方を守れば、初心者でも十分に楽しめます。この記事でご紹介したコツを参考に、美味しいトマトをたくさん収穫してくださいね。太陽の恵みをたっぷり浴びた自家製トマトは、きっと格別な味わいでしょう。

質問:家庭菜園初心者でもミニトマトは育てやすいですか?

回答:もちろんです。一般的に、ミニトマトは大玉トマトに比べて栽培が容易であると言われています。その理由として、実がなりやすく、病気や害虫への抵抗力が比較的高い点が挙げられます。この記事でご紹介している品種の選び方、栽培のポイント、成功のための秘訣を参考にしていただければ、さらに栽培の成功率を高めることができるでしょう。適切な管理を行うことで、初心者の方でも十分に収穫を楽しめるはずです。

質問:トマトの苗を購入するのに最適な時期はいつですか?

回答:ミニトマトの苗は、気温が安定してくるゴールデンウィーク明け頃に購入するのがおすすめです。園芸店などでは4月頃から苗が出回ることがありますが、まだ寒暖差が大きいため、苗が弱ってしまう可能性があります。購入する際は、一番花が咲き始めており、つぼみがいくつか付いている、葉が8枚程度で茎が太く締まっている元気な苗を選びましょう。

質問:トマト栽培における連作障害を避けるにはどうしたら良いですか?

回答:トマトは連作障害を起こしやすいナス科の植物です。露地栽培の場合は、以前にナス科の野菜を育てた土壌での栽培は、少なくとも5年以上の間隔を空けることが望ましいです。プランター栽培の場合は、毎年新しい培養土を使用することで、連作障害のリスクを軽減できます。どうしても同じ場所で栽培したい場合は、病害虫に強いとされる「接ぎ木苗」を使用することも有効な手段となります。
トマト