栃木県が誇る「とちおとめ」は、その名の通り栃木県生まれのいちごです。1996年の品種登録以来、安定した美味しさと豊富な収穫量で、東日本を中心に広く愛されてきました。栃木県は「いちご王国」と称されるほど、いちご栽培が盛んな地域。そのルーツは足利市にあり、戦後の食糧難の時代に、農家の新たな希望としていちご栽培が始まりました。この記事では、とちおとめの誕生秘話から、栃木県がいちご王国として発展を遂げた歴史、そしてその魅力に迫ります。
とちおとめとは:品種特性と成り立ち
「とちおとめ」は、栃木県農業試験場で育成され、1996年に品種登録されたいちごです。安定した食味のよさと収穫量の多さから、東日本で高いシェアを誇り、長年にわたり多くの人々に親しまれています。栃木県は「いちご王国」として知られており、足利市がその発祥の地です。戦後、稲作中心だった足利で、新たな収入源としていちご栽培が導入され、県内、そして東京への出荷をいち早く実現しました。
とちおとめの特徴:味わい、外観、保存性
とちおとめは、糖度が高く、ほどよい酸味があり、果汁も豊富です。甘さと酸味のバランスが良く、コクのある味わいが特徴です。また、ビタミンCも豊富に含まれています。果実はしっかりとしており、比較的日持ちが良いのも魅力です。形は美しい円錐形で、光沢のある鮮やかな赤色をしており、果肉も中まで赤く染まります。ケーキなどの加工品にもよく使用され、特に逆三角形の形が見栄えを良くします。
とちおとめの誕生秘話:親品種と開発ストーリー
とちおとめの両親は、当時の優良品種である「久留米49号」と「栃の峰」です。母親の久留米49号はサイズが大きく多収性があり、父親の栃の峰は大果で甘い品種でした。栃木県ではそれまで「東の横綱」と呼ばれた「女峰」が主流でしたが、女峰よりも果実が大きく食味の良い品種を目指して育成が行われ、とちおとめが誕生しました。名前には、栃木県のイメージを表しつつ、「いちごの持つ女性らしさと多くの人に親しみをもたれるように」という願いが込められています。
とちおとめの選び方:色、形、ヘタの様子
とちおとめを選ぶ際は、まず色づきを確認しましょう。熟したとちおとめはつやつやとした鮮やかな赤色になります。表面がしんなりしたものや色が薄いもの、ヘタ周りに白色が目立つものは避けるのがおすすめです。基本的には、果実が大きめでふっくらとした円錐形のものが良品とされています。ただし、自宅用であれば形にこだわる必要はありません。小粒でも甘くて美味しいものもあります。ヘタがきれいな緑色でピンと張ったものが、新鮮な証拠です。
とちおとめの旬と出回り時期:最高の味わいを知る
とちおとめは11月頃から出始め、6月頃まで出回ります。最も多く出回るのは栃木県産で、そのほか茨城県や愛知県などでも栽培されています。ビニールハウス栽培のとちおとめが最も甘いのは、お正月明けから2月下旬頃までです。いちごは熟すまでの日数が開花からの積算温度で決まるため、気温が低い時期ほど積算温度に到達するまで日数が必要になります。普段は30日ほどですが、その時期は40日以上かかるので、糖度の高いいちごになります。
美味しいとちおとめを見分けるコツ:農家直伝の選び方
いちご狩りなどで食べるときは、ヘタの下まで赤くなっているものが甘いと言われています。ヘタ側から食べた方が最後までおいしいとも言われますが、全体が赤ければどこから食べても美味しいでしょう。また、最初はヘタがいちごに密着していますが、完熟が近づくと反り返って離れてくるものも甘いサインです。形が崩れているいちごは受粉がうまくいかなかったものなので、完熟までに時間がかかるためにとても甘いことがあります。
とちおとめの保存方法:美味しさを長持ちさせるには
買ってきたとちおとめは冷蔵庫の野菜室で保存し、できるだけ早く消費しましょう。とちおとめの果肉は比較的かためですが、真っ赤に完熟したものはそれほど日持ちしないため、鮮度のよいうちに味わうのがおすすめです。
とちおとめの食べ方:生で、加工して、様々に楽しむ
とちおとめは甘酸適和で香りが良いので、そのまま生食で味わうのが一番です。練乳をつけなくても十分に甘味を感じられます。もちろん、好みに応じて練乳や溶かしたチョコレートをつけたり、イチゴミルクにしても美味しくいただけます。ケーキやパフェ、いちごジャムやソースなどにも向いています。果肉が淡い赤色なので、断面を見せて飾ってもきれいです。
まとめ
今回は、栃木県を代表するいちご「とちおとめ」について、その特徴や美味しい選び方、おすすめの食べ方などをご紹介しました。甘みと酸味の調和がとれたとちおとめは、そのまま味わうのはもちろん、お菓子作りに活用するなど、様々な楽しみ方が可能です。旬の時期にはぜひ、とちおとめを味わってみてください。そして、とちおとめを通して、栃木県の豊かな自然や、生産者の方々の情熱を感じていただけたら幸いです。