天草(テングサ):ところてんや寒天の原料となる海藻について
日本の食文化に深く根ざした「ところてん」や「寒天」。これらの原料となるのが、天草(テングサ)と呼ばれる海藻です。しかし、天草とは特定の海藻の名前ではなく、寒天質を抽出できる紅藻類の総称であることをご存知でしょうか?本記事では、あまり知られていない天草の生態や種類、そして私たちの食卓に届くまでの過程について詳しく解説します。この機会に、普段何気なく口にしている天草について知識を深めてみましょう。

天草(テングサ)とは?

天草(テングサ)とは、私たちが良く知る、ところてんや寒天を作る際の原料となる海藻の総称です。紅藻植物門テングサ目に分類されるテングサ科に属し、煮出すことによってゼリー状の寒天質を取り出すことができる海藻を指します。これは特定の海藻の種類を指す名前ではなく、マクサやオオブサなど、採取される地域や種類によって様々なテングサが利用されています。石花菜(せっかさい)と呼ばれることもあります。

ところてん・寒天における天草の役割

天草は、ところてんや寒天を作る上で必要不可欠な原料となります。ところてんは、天草を水と一緒に煮込み、その煮汁を冷やして固めたもので、シンプルな製法であるため、海藻が持つ本来の風味を堪能することができます。それに対して寒天は、ところてんを凍結させて乾燥させたもので、水分を取り除くことによって海藻の匂いが軽減され、色々な料理やお菓子に使いやすくなります。このように、同じ天草を原料として使いながらも、製造方法の違いによって全く異なる食品が生まれるのです。

天草の種類

天草(テングサ)には、およそ30種類が存在すると言われています。主な種類としては、マクサ、オニクサ、ヒラクサ、オバクサ(ドラクサ)、ユイキリ(トリアシ)などが挙げられます。これらの種類は、含まれている寒天質の量や質、そして生育する環境によってそれぞれ異なる特徴を持っています。

天草の生育地と収穫時期

天草は、日本各地と朝鮮半島に広く分布しており、特に太平洋沿岸や伊豆諸島などが主な生育地として知られています。上質な天草は、透明度の高い海と複雑な地形の海岸で育つと言われています。テングサ漁が解禁となる時期は地域によって異なりますが、一般的には4月から始まり、5月頃から本格的なシーズンを迎えます。4月はまだ海水温が低いため、5月以降に収穫量が増加する傾向があります。

天草の採取方法と処理

天草を採取する主な方法として、箱眼鏡を使用し海中を観察しながら、櫛状の道具で岩に付着した天草を採取します。採取後は、真水で丁寧に洗い、太陽光で乾燥させる作業を繰り返すことで、鮮やかな赤色から黄色や白色へと変化させていきます。この脱色作業は、夾雑物を取り除くと共に、天草を製品に適した状態にするための重要なプロセスです。例えば伊豆では、海女が素潜りで採取したテングサを天日で乾燥させる光景が見られます。

国産天草の現状と問題点

近年、国内における天草の収穫量は減少傾向が見られます。その原因として、黒潮の流路変化や長雨などが考えられています。一方で、海外から輸入された天草も流通していますが、その品質は国産のものと比較すると劣ると言われています。国産天草の減少は、地域経済や伝統文化にも影響を与える可能性があるため、資源の保全と持続可能な活用が求められています。2023年の全国の収穫量は268トンでした。

伊豆における天草

伊豆半島は、黒潮の影響を受けた温暖な気候と豊かな自然環境に恵まれ、昔から天草の産地として知られています。伊豆の天草は「伊豆天草」というブランド名で販売されており、高品質なものとして評価されています。伊豆河童のように、伊豆産の天草に特化した業者も存在し、地域ブランドの維持に貢献しています。豊かな森林が海へ栄養を供給することで、肉厚で良質なテングサが育ちます。伊豆のテングサは、地元の人々によって丁寧に天日干しされています。

天草のこれから

天草は、日本の食文化に深く関わってきた貴重な資源です。しかしながら、近年、国内での収穫量が減少し、資源の保護と持続的な利用が課題となっています。地域ブランドの育成や、新しい加工技術の開発など、天草の未来に向けた取り組みが重要です。天草の価値を改めて認識し、次の世代へと繋げていくことが大切です。

まとめ

テングサは、私たちが日頃親しんでいるところてんや寒天といった日本の伝統食品に欠かせない海藻です。その多様な種類、長い歴史、豊富な栄養、そして現在直面している課題について知ることは、この貴重な資源に対する理解を深め、より大切にするための第一歩となります。テングサの恩恵を未来世代へと引き継ぐために、私たち一人ひとりが意識を高めることが重要です。

質問: テングサは、主にどのような場所で採取されるのでしょうか?

回答: テングサは日本列島各地および朝鮮半島にかけて広く分布しており、特に太平洋沿岸地域や伊豆諸島などで多く見られます。一般的に、透明度の高い海水と複雑な地形を持つ海岸で、より品質の良いテングサが育つと言われています。

質問: ところてんと寒天は、どのように違うのでしょうか?

回答: どちらもテングサを原材料として作られますが、製造プロセスに違いがあります。ところてんは、テングサを煮出して抽出した液体を冷やし固めたもの、寒天は、一旦ところてんを作り、それを凍結させて乾燥させたものです。この製造方法の違いが、食感や風味の違いを生み出しています。

質問: テングサには、どのような栄養成分が含まれていますか?

回答: テングサはカロリーが低く、豊富な食物繊維に加え、ナトリウム、カルシウム、カリウム、ヨウ素などのミネラルを豊富に含んでいます。中でもヨウ素は、甲状腺ホルモンの生成に不可欠な栄養素として知られています。
天草