日本の食文化に深く根ざした「天草(てんぐさ)」と、その恵みから生まれる「寒天」。古くから親しまれてきたこれらの食材は、私たちの食卓を彩るだけでなく、健康を支える力強い味方でもあります。本記事では、ところてんや寒天の原料となる天草の魅力に迫り、その歴史、栄養価、そして現代における活用法までを幅広くご紹介します。日本の豊かな海が育んだ、海藻の恵みを再発見してみましょう。
テングサとは:トコロテン・寒天の材料となる海藻の総称
テングサとは、トコロテンや寒天を作るための原材料となる海藻のグループ名です。特定の種類の海藻を指すのではなく、マクサやオオブサといった様々な種類があり、地域によって利用されるものが異なります。これらの海藻は、昔から食品として、また取引の対象として利用されてきました。石花菜(せっかさい)とも呼ばれています。
トコロテンと寒天:作り方の違いと味の特徴
トコロテンも寒天も、テングサを原料としていますが、製造過程が違います。トコロテンは、テングサを煮詰めて煮汁を冷やし固めたもので、海藻本来の味が楽しめます。それに対し、寒天はトコロテンを凍結させて乾燥させたもので、水分が取り除かれるため海藻の香りが弱まり、色々な料理やデザートに使いやすいという特徴があります。
テングサの生育場所と歴史:万葉集にも記述のある古代食材
テングサは日本の各地や朝鮮半島に広く分布しており、特に太平洋沿岸や伊豆諸島に多く生息しています。その歴史は非常に古く、万葉集にもその名が登場するほどです。奈良時代には、テングサが税として都に納められていた記録が正倉院の木簡に残っています。昔は貴重な交易品として扱われ、「大凝菜卅」(オゴノリ)という名前で記録されていました。また、テングサが自生する地域では「てぐさ」と呼ばれることもあります。
テングサの加工:色の変化と使用の変遷
収穫されたばかりのテングサは赤紫色をしていますが、水に浸し、太陽の下で乾燥させる作業を何度も繰り返すことで色が抜け、最終的には白色になります。この乾燥させたものが利用されます。昔は肥料としても使われていましたが、伊豆の国が肥料としての利用を禁止したため、食用のみに使われるようになったと言われています。
ところてんの熱量と栄養成分:低カロリーと豊富なミネラル
ところてん(100gあたり)のエネルギー量と主要な栄養成分は以下の通りです。 ・エネルギー: 2kcal ・炭水化物: 3g ・食物繊維: 0.6g ・ナトリウム: 2mg ・カルシウム: 4mg ・カリウム: 4mg ・ヨード: 240μg ・水分: 99.1g ところてんはカロリーが低いだけでなく、食物繊維やヨードなどのミネラルも含有しています。
寒天の熱量と栄養成分:豊富な食物繊維とヨード
寒天(100gあたり)のエネルギー量と主要な栄養成分は以下の通りです。 ・エネルギー: 3kcal ・炭水化物: 2g ・食物繊維: 1.5g ・ナトリウム: 1mg ・カルシウム: 2mg ・カリウム: 10mg ・ヨード: 21μg ・水分: 98.5g 寒天もまた低カロリーであり、とりわけ食物繊維が豊富です。ヨードも含まれています。
ヨードの必要性:甲状腺ホルモン生成に不可欠な要素
ところてんや寒天に含まれるヨードは、甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素です。甲状腺ホルモンは、特に乳幼児の成長や妊娠・授乳期において重要な役割を果たします。
現代におけるてんぐさ:寒天質の利用と種類
現代において、てんぐさは寒天やところてんの原料として用いられるだけでなく、寒天質は微生物や藻類を育成するための培地(基本的な素材)としても活用されています。テングサには、マクサ、オオブサ、シマテングサなど、さまざまな種類が存在します。分類に関しては、シマテングサをシマテングサ科(Gelidiellaceae)としたり、オバクサをオバクサ科(Pterocladiaceae)とする説も存在します。
まとめ
天草は、昔から日本の食卓でおなじみのところてんや寒天を作るための大切な原料です。カロリーが低いだけでなく、食物繊維やヨウ素といった体に必要なミネラルも含まれているため、健康を意識する方にもおすすめです。色々な風味や食感を楽しみながら、毎日の食事に取り入れてみてはいかがでしょう。
質問:天草ってどんなもの?
回答:天草というのは、特定の種類の海藻を指すのではなく、ところてんや寒天を作るために使われる海藻全体のことを言います。
質問:ところてんと寒天ってどう違うの?
回答:どちらも天草を原料にしていますが、作り方が違います。ところてんは、天草を煮て固めたもの。寒天は、ところてんを凍らせて乾燥させたものです。
質問:天草にはどんな栄養が入ってるの?
回答:天草から作られるところてんや寒天には、食物繊維やヨウ素といったミネラルが含まれています。中でもヨウ素は、甲状腺ホルモンを作るのに欠かせない栄養素です。
質問:テングサはどんな場所で採取できますか?
回答:テングサは日本全国、および朝鮮半島に分布しています。中でも太平洋沿岸地域や伊豆諸島において、比較的多く見つけることができます。