タンゴールとは?ミカンとオレンジの交雑種の特徴と選び方の注意点
柑橘類の中でも特に人気のタンゴール。その名前を聞いたことはあっても、どんな果物なのか詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。タンゴールとは、「ミカン」と「オレンジ」を掛け合わせた柑橘類の総称です。ミカンのように手軽に剥けて、オレンジのようにジューシー。そんな良いとこ取りのタンゴールですが、実は奥深い魅力が隠されています。この記事では、タンゴールの特徴から、美味しいタンゴールを選ぶ際の注意点まで、プロの視点から徹底解説します。

タンゴールとは何か?定義と特徴

タンゴールは、柑橘類のハイブリッド種を指す言葉で、主に「ミカン」(マンダリン、タンジェリン)と「オレンジ」の交配によって生まれた品種群の総称として用いられます。これは特定の品種を指す固有名詞ではなく、交配の系統を示す分類名であるため、商品名として表示されている場合は注意が必要です。タンゴールには、マンダリンの持ち味である皮の剥きやすさや芳醇な香りと、オレンジの魅力である豊富な果汁と大きな果実、これらの両方の良い点が備わっていることが期待されています。

タンゴールの名前の由来と日本の代表的な品種

「タンゴール」という名称は、タンジェリン(tangerine)の "tang" と、オレンジ(orange)の "or" を組み合わせた造語に由来します。この名前が示すように、タンゴールは両品種の優れた性質を受け継いでいることを意味します。日本でよく知られているタンゴールには、「清見」や「伊予柑」などがあります。これらの品種は、それぞれの親品種から特徴を受け継ぎつつ、独自の風味や食感を持つ人気の柑橘類として広く食されています。特に清見タンゴールは、その高品質と、数多くの新品種の開発に貢献した実績から、日本を代表するタンゴール品種として広く知られています。

タンジェロとの違いについて

柑橘類の交雑種には様々な種類が存在しますが、タンゴールとよく似た名前の「タンジェロ」という品種があります。タンジェロは、「ミカン」と「ブンタン」の交配種です。一方、タンゴールはマンダリンとオレンジの交雑種であるため、この点が明確な違いとなります。それぞれの親品種の特性が、果実の外観、風味、食感に独自の個性を与えています。

清見タンゴールの概要と開発秘話

清見タンゴールは、日本の温州みかんの優れた点と海外の柑橘の特性を融合させ、新たな時代の柑橘を生み出そうとした国の研究機関の努力の結晶です。温州みかんの一種である宮川早生と、オレンジの一種であるトロビタオレンジを掛け合わせて誕生した、日本初のタンゴール品種です。この品種は、みかん由来のまろやかな甘さと、オレンジ由来の爽やかな香りととろけるような果肉を兼ね備えており、その風味の良さと食べやすさから多くの人々に愛されています。清見タンゴールの美味しさの秘密や、誕生から現在に至るまでの歴史を知ることで、その魅力をより深く感じることができるでしょう。

とろける果肉とあふれる果汁

清見タンゴールは、温州みかんの上品な甘さと、オレンジの爽やかな香りを良いとこ取りした、非常に食べやすい柑橘です。とろけるように柔らかな果肉は、ナイフを入れた瞬間に果汁が溢れ出すほどジューシー。酸味が穏やかなため、口の中に広がる甘みが際立ちます。この独特の食感と、口いっぱいに広がる芳醇な香りと甘さこそが、多くの人々を魅了する理由です。

瀬戸内海の恵みが育む、奥深い味わい

清見は、もともと温州みかんの甘さとオレンジの香りを持ち合わせていますが、その美味しさの秘密は栽培方法にあります。樹上でじっくりと熟成させることで、水分をたっぷり含んだまま、濃厚で旨味のある味わいに仕上がります。農家が一つ一つ丁寧に袋掛けを行い、越冬させてから収穫される果実は、まさに自然の恵みそのもの。ナイフを入れると、きめ細かく、果汁が詰まった実が顔を出します。手間暇を惜しまない栽培と、瀬戸内海の温暖な気候が、清見の潜在的な美味しさを最大限に引き出しているのです。

柑橘界のパイオニア、「新品種の祖」

清見タンゴールは、今や人気の「せとか」や「デコポン」だけでなく、「はれひめ」「西之香」「たまみ」「天草」など、数々の後続品種を生み出した、まさに日本の柑橘史に名を刻む品種です。その優れた品質から「柑橘界のサラブレッド」とも呼ばれ、日本の柑橘品種改良において重要な役割を果たしました。清見の登場がなければ、現在のような多様で豊かな柑橘類のラインナップは実現しなかったと言っても過言ではありません。

戦後、本格始動した柑橘新品種育成への挑戦

新しい柑橘品種の開発は戦前から行われていましたが、本格的に始まったのは戦後のことです。当時、日本の品種改良は海外に大きく遅れをとっており、その状況を打開するため、海外から多くの品種を取り寄せ、交配による品種改良が始まりました。この大規模な研究プロジェクトの目標は、栽培しやすく高品質な新品種を生み出すことであり、清見タンゴールはその主要な成果の一つです。温州みかんの甘さや食べやすさに加え、オレンジ類の香りや上質な果肉を兼ね備えた品種の開発が目指されました。

国産初のタンゴール「清見」の誕生

温州みかんと他の柑橘類との交配が、清見誕生のきっかけとなりました。昭和24年頃、静岡県静岡市清水区興津にあった旧農林水産省園芸試験場東海支場(現在の国立研究開発法人農業・食品産業総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点)で、数千を超える交配が試みられました。しかし、その結果生まれた新品種は、わずか数十本だったそうです。その中に、後に興津21号という系統番号を与えられた、No.6781という有望な個体がありました。日本の宮川早生温州みかんと、アメリカ・カリフォルニア原産のトロビタオレンジを両親に持つこの個体は、昭和38年(1963年)に初めて実を結びました。その後、昭和40年代には全国各地で栽培試験が行われ、その結果、優れた新品種であることが確認されました。そして昭和54年6月29日、興津21号は農林水産省育成の新品種、タンゴール農林1号として登録され、その生まれ故郷に広がる風光明媚な「清見潟」にちなんで「清見(きよみ)」と名付けられ、発表されました。清見は、甘くて果汁が多く、オレンジの香りと風味が特徴で、鮮烈なデビューを飾りましたが、その味を消費者に届けられるようになるまでには、全国の産地で様々な試行錯誤が繰り返されました。有望な品種であっても、どこでもその特性が十分に発揮されるとは限らず、栽培する場所を選び、農家や技術指導者の創意工夫によって、初めて商品として成立するものだったのです。

柑橘品種改良の障壁:多胚性の問題

清見の誕生を喜んだのは、農家だけではありません。実は、新品種を育成する果樹関係の研究機関にとっても、非常に喜ばしい出来事でした。なぜなら、柑橘類には珍しい「単胚性」という性質を清見が持っていたからです。親とは全く異なる新品種が、自然な状態で発見されることはほとんどありません。現在存在するほとんどの新品種は、果樹を研究する国(現在は独立行政法人)や県の試験場が交配によって生み出したものです。通常、農作物で新品種を生み出すには、母親とは異なる品種の花粉を受粉させます。これを交配と言います。その結果得られた果実は、両品種の交雑種となり、親とは違う性質を持つようになります。しかし柑橘類では、これがなかなかうまくいきません。受精すれば種の中に交雑した胚が形成されますが、それとは別に「珠心胚(しゅしんはい)」と呼ばれる、受精なしに形成される胚を多数作り出す性質があるのです。これを「多胚性」と言います。珠心胚には父親の遺伝子は全く含まれていないため、珠心胚から育った芽は、母親と同じ品種になってしまいます。珠心胚は、多い品種では50個近くもでき、しかも1つしかない交雑胚の生育を抑制してしまうため、多胚性の品種を母親に使うと、新品種の育成はほぼ失敗に終わる可能性が高かったのです。

清見の単胚性が拓いた新品種の可能性

一方、単胚性の品種から育った芽は、確実に交雑種となります。そのため、交配による新品種育成には、母親に多胚性の品種を使わないのが一般的でした。しかし、単胚性の品種は少なく、実際に交配に使える品種はごくわずかしかありませんでした。そこに温州みかんの血を引く清見が加わったことで、みかんの良さを引き継いだ新品種を開発する上で、非常に重要な役割が期待されることになったのです。ちなみに、清見の母親は多胚性でした。この時得られた交雑種(新品種)は、交配した数千本のうち、わずか数十本だったと言われています。さらに当時は、現在のようにDNA鑑定を行う技術がなく、樹が成長してから、見た目で交雑種かどうかを判断していたそうです。清見は、想像を絶する苦労と時間をかけて誕生した、待望の新品種であり、その単胚性の性質が、その後の日本の柑橘品種改良に大きな貢献をもたらしたのです。参考文献として、『’清見’は偉大な母 -カンキツの良食味・高品質品種の育成-松本亮司 農業及び園芸第72巻7号』および『果樹試験場報告B第10号 カンキツ新品種’清見’について』が挙げられます。

第一世代から第三世代にわたる豊かな血統

清見タンゴールは、その優れた特性から多くの新品種の親として利用されており、「柑橘界のサラブレッド」と称されるほど、非常に優秀な品種です。実際に、日本の多くの人気柑橘品種のルーツを辿ると、清見タンゴールにたどり着くことが多いです。例えば、第一世代(子供)には「せとみ」「陽香」「はるみ」「津之輝」「たまみ」「津之望」「あまか」「南津海」「春峰」「甘平」など多数の品種が存在し、第二世代(孫)には「あすみ」「あすき」、さらに第三世代(曾孫)には「みはや」などが存在します。このように、清見タンゴールは日本の柑橘品種改良において、非常に重要な役割を果たしてきたのです。

品質維持のための先進的な栽培・貯蔵技術

清見タンゴールは、その卓越した品質を保持するために、栽培段階から細心の注意が払われています。通常、果実一つひとつに袋をかけ、丁寧に育てられます。そして、一般的には3月まで樹上で冬を越させてから収穫されます。この袋掛けと樹上越冬により、果実は寒さや鳥害から保護され、ゆっくりと成熟が進みます。さらに、適切な貯蔵方法を採用することで、収穫後も6月頃まで長期間にわたり市場への供給が可能となります。このような精密な栽培管理と高度な貯蔵技術が、清見タンゴールの優れた品質を支えているのです。

昭和50年代中期における苗木の導入と産地の反応

清見の苗木が初めて三崎地域に導入されたのは、昭和50年代中頃のことでした。ある農家が個人的な関心から、九州地方より少量の苗木を取り寄せたのが始まりです。当時、三崎地域は甘夏みかんの主要産地であり、高糖度の柑橘栽培の経験がほとんどなかったため、清見タンゴールに対する関心はそれほど高くありませんでした。

試験栽培段階での課題と導入への消極的な意見

その後、甘夏みかんに代わる将来の三崎地域を支える新しい品種を検討することになり、その際、農業協同組合本所の営農指導部長から「清見の導入を検討してはどうか」という提案があり、候補の一つとして加えられました。伊予柑やネーブルオレンジとともに試験栽培を行い、栽培上の問題点や果実の品質を調査しました。しかし、この段階で清見の導入に対して否定的な意見が大半を占めました。試験栽培の結果、食味が期待外れだったのです。その原因は、試験場が推奨していた成熟期である3月中下旬頃よりも早く収穫してしまったことにありました。その時期まで樹上で越冬させると、凍害や鳥による食害によって全滅するリスクがあるため、厳冬期に入る前に収穫することを前提に試験栽培を行ったのです。美味しく、将来有望な品種として紹介されても、共同選果という形で農家に栽培を推奨する以上、経済的に見合うものでなければなりません。安定した収穫が見込めない状況で推奨することはできず、やむを得ない判断でした。

樹上完熟品との感動的な出会い

産地化は困難だと考える人が多かった清見でしたが、試験栽培を行った農家はすぐに伐採することはありませんでした。せっかく購入し育てた樹であるため、もう少し様子を見たいという思いや、試行錯誤を重ねることで新たな発見があるかもしれないという期待がありました。そのような秘めたる熱意が産地化への原動力となっていきます。そして、ついに清見本来の価値が明らかになる時が訪れます。誰が最初に発見したかは定かではありませんが、春先まで樹に残っていた清見を試食したところ、その美味しさは格別で、当時販売されていた他の柑橘類とは明らかに異なり、甘く、オレンジの芳醇な香りが際立つ絶品だったのです。

市場からの評価と産地化への挑戦

試験的に収穫した清見を青果市場へ出荷したところ、「ぜひ栽培してほしい」との要望が寄せられました。これは、清見が魅力的な商品として認められる可能性を示唆していました。しかし、産地化を実現するためには、多くの課題を克服する必要がありました。栽培に取り組むべきか否か、技術指導員や中心的な農家の間で意見が分かれ、議論が重ねられました。最終的には、清見の魅力に惹かれた農家の熱意が勝り、試験的ながらも産地化を目指すことになりました。

三崎地区独自の環境を活かした露地栽培技術の確立

当時、清見の栽培は九州などの地域ですでに行われていましたが、冬を越して収穫する特性から、主に温室栽培が採用されていました。しかし、三崎地区は細長い半島であり、急傾斜地が多く、強風が吹き付けるため、温室の設置は困難でした。幸いにも、愛媛県内でも積雪や霜の被害が少ない地域であったため、露地栽培に適した技術を確立することで、産地化を目指すことになりました。

凍霜害・鳥害対策:標高制限と丁寧な袋掛け

露地栽培における凍霜害を防ぐため、清見の栽培地は標高100m以下の地域に限定されました。この基準は、過去の試作結果や経験に基づいて決定されました。さらに、寒さや鳥から果実を守るため、すべての果実に袋をかけるという対策を徹底しました。試験場のデータによると、袋掛けによって外気温よりも約1度高い保温効果が期待できることが示されていました。現在では、冬に収穫を迎える柑橘類が多くなり、袋掛けは一般的な手法となっていますが、当時は収穫以外の作業で全ての果実に触れることは、非常に手間のかかる作業であり、清見導入における最大の課題でした。しかし、清見の潜在能力を信じ、農家は困難な作業を乗り越える決意をしました。ちなみに、枝や木全体を布で覆う方法も検討されましたが、光合成が妨げられ、果実の品質が低下したため、現在は採用されていません。

品質の均一化への取り組み:共同選果と地域区分

新品種の栽培は、樹の育て方が確立されていないため、毎年研究を重ねる必要がありました。また、収穫後の品質管理も重要な課題でした。清見は品質にばらつきが出やすい品種であるため、農家個別の選別では、市場が求める品質基準を満たすことが困難でした。その後、生産量が増加し、共同選果が可能になったことで、品質はある程度改善されました。さらに研究を進めた結果、園地の標高や環境条件と成熟時期に相関関係があることが判明し、地域区分を設けて収穫開始日を調整する制度を導入しました。この制度によって出荷される清見は高い評価を得ており、現在も地域区分を維持し、収穫に適した時期を見計らって収穫を行っています。

光センサー選果機による品質管理の徹底

近年では、先進技術として光センサー選果機が導入されています。この技術革新により、糖度と酸度を測定するために果実を傷つけ果汁を採取する必要がなくなり、非破壊で計測が可能となり、出荷される全ての果実を詳細に検査することができます。この革新的な技術の導入は、高品質の果実のみを選別するという、かつてない品質管理を可能にし、清見タンゴールの品質は著しく向上しました。

食べ方の提案による消費者へのアピール

さらに、清見タンゴールは、その独特な食体験を消費者に伝える必要がありました。当初、開発者は温州みかんのように手軽に皮がむける品種を目指しましたが、実際にはやや剥きにくいという特徴がありました。そこで、カットフルーツとして提供する方法を提案し、その手順を記載したリーフレットを同梱して出荷することにしました。日本では手で皮をむいて食べる習慣が一般的ですが、カットすることで果汁や香りが手に付きにくくなるため、清見タンゴールに限らずおすすめの方法です。

ブランド価値の確立と未来への継続的な挑戦

三崎地区で清見タンゴールの栽培が始まってから約10年後の昭和60年代後半、ついに樹上で完熟させた清見タンゴールをお届けできるようになり、以前は酸味が強いと評価されていた三崎産の清見タンゴールは、多くの人々が出荷を待ち望むほどの人気商品へと成長しました。平成に入ると本格的な生産が始まり、現在に至っています。しかしながら、導入当初から懸念されていた鳥獣害や凍害の問題は依然として解決されておらず、消費者のニーズも時代とともに変化しています。現在も、品質を向上させるためにマルチ栽培を導入するなど、安定した品質の製品を毎年提供できるよう、 끊임없이研究を重ねています。今後とも、清見タンゴールをはじめとする三崎共選の柑橘類に変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

清見タンゴールの至福の味わい方

清見タンゴールの、とろけるような食感を存分にお楽しみいただくには、外皮がしっかりしているため、ナイフでカットするのがおすすめです。一般的なオレンジと同様に、放射状にカットすると良いでしょう。特に、横方向にカットするよりも、縦方向にカットする方が、果肉のみずみずしい食感をより一層ご堪能いただけます。薄い内皮は、そのままお召し上がりいただいても全く気になりません。また、果汁が非常に豊富なので、半分にカットしてスプーンで掬って食べるのも良いでしょう。この方法なら、ジューシーな果汁を余すところなく味わえ、口の中に広がる爽やかな甘みを満喫できます。かつては温州みかんのように皮が剥きづらいという声もあったため、カットして食べる方法を積極的に推奨し、箱に説明書きを添えるなど、より手軽に清見タンゴールの美味しさを楽しめるよう工夫してきました。

まとめ:清見タンゴールが切り開いた柑橘の未来

世界で初めて誕生した清見の原木は、今もその故郷である、農研機構果樹研究部門カンキツ研究拠点(静岡市)で大切に守られています。清見タンゴールはもちろんのこと、デコポン、はるみ、せとかも、この原木がなければ誕生しなかったでしょう。そう考えると、感慨深いものがあります。消費者のニーズが多様化する以前の時代に、未来を見据えて、成功の可能性が低い品種改良に挑戦した試験場の研究者の方々。その先見性と、高い志には敬服せざるを得ません。美味しい柑橘を届けるために、生産地だけでなく、国や県の試験研究機関、指導機関の方々も、日々努力を重ねています。清見タンゴールは、誕生から今日に至るまで、多くの人々の情熱と努力によって育まれ、日本の柑橘産業に多大な貢献をしてきました。皆様の地道なご尽力に敬意を表し、ここに清見誕生までの道のりを広くご紹介させていただきます。

質問:タンゴールとはどんな柑橘ですか?

回答:タンゴール(tangor)とは、主に「ミカン」(マンダリン、タンジェリン)と「オレンジ」を交配した品種の総称です。特定の品種名ではなく、交配の系統を示す分類上の名称であり、マンダリンの剥きやすさや芳香と、オレンジの果汁の多さや大きな果実という特徴を兼ね備えていることが期待されます。名前の由来は、タンジェリンの「tang」とオレンジの「or」を組み合わせたものです。

質問:清見タンゴールはどのようにして生まれたのですか?

回答:清見タンゴールは、昭和24年頃に静岡県興津にあった旧農林水産省園芸試験場東海支場(現在の農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点)で、日本の温州みかんの一種である宮川早生と、アメリカ・カリフォルニア原産のトロビタオレンジを交配して生まれました。数千を超える交配の中から選抜された№6781(後の興津21号)が、昭和54年6月29日にタンゴール農林1号として登録され、「清見」と名付けられました。

疑問:なぜ清見タンゴールは「数多くの新種のルーツ」と言われるのですか?

回答:清見タンゴールは、その卓越した品質から、様々な人気柑橘類の交配親として重用され、「柑橘のサラブレッド」と形容されることもあります。とりわけ、柑橘類としては珍しい「単胚性」という特徴を持つため、交配による新しい品種の開発において、親の性質が子に確実に伝わる可能性が高く、効率的な品種改良に大きく貢献しました。事実、「せとか」や「デコポン」、「はるみ」といった、非常に多くの品種のルーツを調べていくと、清見タンゴールにたどり着きます。
タンゴール