さつまいも図鑑:人気品種から珍しい品種まで!食感別おすすめレシピも紹介
秋の味覚の代表格、さつまいも。自然な甘さとホクホクした食感は、老若男女問わず多くの人々を魅了します。焼き芋やスイートポテトといった定番スイーツから、ご飯やおかずまで、様々な料理でその美味しさを楽しめます。しかし、スーパーの店頭には多種多様な品種が並び、「どれを選べば良いか分からない」という方もいるのではないでしょうか。この記事では、人気の品種から珍しい品種まで、さつまいもの世界を深掘りします。食感別に分け、おすすめのレシピもご紹介するので、ぜひさつまいも選びの参考にしてください。

さつまいもの主要な食感タイプ:ほくほく、ねっとり、しっとり

さつまいもは、食感によって大きく3つのタイプに分けられます。それは、「ほくほく系」「ねっとり系」「しっとり系」です。これらの食感の違いは、さつまいもに含まれる水分量や甘さ、でんぷんの性質によって生まれます。それぞれの特性を理解することで、調理方法や味わいに合わせた最適な品種を選ぶことができ、さつまいもの美味しさを最大限に引き出すことが可能になります。

【ほくほく系】さつまいもの種類と食べ方|焼き芋・天ぷら・レモン煮に

ほくほく系のさつまいもは、粉質でしっかりとした食感と、控えめながらも優しい甘さが特徴です。このタイプは、昔ながらのさつまいもの風味を堪能したい方におすすめです。2000年代初頭までは、国内で生産されるさつまいもの主流でしたが、近年ではしっとり系やねっとり系の人気が高まっています。しかし、その素朴でどこか懐かしい味わいは、今もなお多くのファンを魅了し続けています。焼き芋はもちろんのこと、その食感を活かして天ぷらや煮物、炒め物、サラダなど、幅広い料理に活用できます。

青果用国内シェアNo.1「ベニアズマ」

ベニアズマは、青果用さつまいもとして国内で最も高いシェアを誇る、非常に人気のある品種です。正式名称はカタカナで「ベニアズマ」と表記されますが、「紅あずま」や「べにあずま」と表記されることもあります。この品種は、ほくほくとした食感としっかりとした甘さが特徴で、茨城県や千葉県といった東日本を中心に栽培されています。その美味しさから全国的に広く普及し、長年にわたり多くの人々に愛されています。ベニアズマは、どこか懐かしさを感じさせる素朴な味わいが魅力で、焼き芋にすると、そのほくほくとした食感と優しい甘みが口の中に広がります。また、煮物や天ぷらにしても、素材本来の味が引き立ち、美味しくいただけます。

【ねっとり系】さつまいもの種類とおすすめの食べ方|焼き芋からスイーツまで

安納いもがきっかけで人気が広まった、ねっとり系のさつまいも。特徴は、水分を多く含んだ、まるで蜜があふれるような強い甘さと粘り気のある食感です。スイーツのように濃厚な甘さと、とろける口どけは格別で、焼き芋はもちろん、スイートポテトや大学芋などの甘さを活かしたお菓子や、干し芋にしても美味しくいただけます。ペースト状にしてお菓子作りに活用したり、スムージーにするのもおすすめです。

ねっとり系さつまいもの代表格「安納紅(安納いも)」

安納紅は、「安納いも」として知られるねっとり系さつまいもの代表的な品種です。「安納いも」は、種子島の安納地域で栽培されていた安納在来いもから選抜された安納紅と安納こがねの2つの品種を指します。戦後インドネシアから導入されたさつまいもを改良して生まれ、品種開発地の種子島安納地域にちなんで名付けられました。クリーミーでねっとりした食感と、コクのある甘みが特徴で、ねっとり系さつまいもの人気を牽引しています。皮は赤みがかっており、加熱すると果肉は鮮やかな黄色になります。

貯蔵することで甘さが増す「べにはるか」

べにはるかは、人気の高い品種です。収穫後しばらく貯蔵することで、安納いもに匹敵する甘さと、とろけるようなねっとり感が生まれます。2007年に品種登録されて以来、全国的に人気を集め、定番品種となりました。見た目も美しく、紅色の外観と濃い黄色の果肉が特徴です。焼き芋にした際の見栄えも良く、食感はしっとりとしています。蜜のような甘さがあり、作付面積も年々増加傾向にあります。名前の由来は「はるか」においしいことから。上品な甘さで、和菓子や洋菓子などお菓子作りにも適しています。加熱すると甘みが増し、しっとりとした食感になるため、様々な調理方法で楽しめます。

【しっとり系】さつまいもの種類と食べ方|幅広い料理に使える万能タイプ

しっとり系のさつまいもは、「ほくほく系とねっとり系の中間」と評される食感が特徴で、上品でなめらかな口当たりが人気です。甘さも両者の中間程度で、しっかりとした甘さを感じながらも、比較的さっぱりと食べられます。バランスの取れた食感と甘さで、焼き芋はもちろん、お菓子作りや煮物、サラダなど、様々な料理に使える万能さが魅力です。家庭での利用頻度も高く、重宝されています。

歴史と多様性を持つ主要品種「高系14号(なると金時・紅さつま等)」

1945年に品種登録された高系14号は、長い歴史を持つ品種です。現在でもベニアズマと並び、西日本を中心に広く栽培される主要品種の一つとして知られています。中部地方以西の西日本で古くから栽培されており、各地で独自の選抜や改良が重ねられ、数多くのオリジナルブランドが誕生しました。例えば、石川県の「五郎島金時」、徳島県の「なると金時」、宮崎県の「宮崎紅」、鹿児島県の「紅さつま」、高知県の「土佐紅」、そして「紅高系」などがその代表例です。高系14号とその派生品種は、ホクホク感とねっとり感のバランスが取れており、調理方法を選ばない汎用性が魅力です。様々な料理やお菓子に活用でき、その安定した品質と美味しさで、長きにわたり多くの人々に親しまれています。

絹のようになめらかな舌触り「シルクスイート」

近年特に注目されているのが、絹のような滑らかな舌触りが特徴のシルクスイートです。「シルクスイート」は登録商標であり、正式な品種名は「HE306」といいます。比較的新しい品種ながら人気が高まっており、その名前は、水分が多く、加熱すると絹のようにしっとり滑らかになる食感に由来します。従来のさつまいものイメージを覆すような、ふんわりとした口どけは、まるで上質なスイーツのようです。2012年に生まれた新しい品種ですが、その独特の食感と上品な甘さが評価され、メディアでも頻繁に取り上げられるようになり、今ではしっとり系さつまいもの代表的な存在となっています。収穫後しばらく置くと、よりしっとりとした食感が際立ちます。焼いたり蒸したりすることで、そのなめらかさを存分に楽しむことができ、贅沢な味わいを堪能できます。

バランスの取れた味わい「べにまさり」

べにまさりは、しっとり感とホクホク感の調和がとれた、バランスの良い食感が特徴的な品種です。紡錘形の中くらいの大きさで、さっぱりとした甘さが、さつまいも本来の風味を豊かに感じさせてくれます。実は、近年人気の高い「シルクスイート」の親品種でもあり、その優れた特性を受け継いでいます。ホクホク系とねっとり系の良いところを兼ね備えているため、様々な調理法に適しており、昔ながらのさつまいもの味わいを求める方におすすめです。

手軽さが魅力の時短品種「クイックスイート」

電子レンジ調理に特化しているというユニークな特徴を持つのが、クイックスイートです。名前の通り、手軽に調理できるのが魅力です。この品種は、低温でも糖化しやすい特殊なでんぷんを含んでいるため、電子レンジで加熱しても甘味が損なわれにくいのが特徴です。通常、電子レンジ加熱では甘味が落ちてしまいがちですが、クイックスイートなら手軽に甘さを引き出すことができます。すぐに食べられる手軽さは、忙しい現代人にとって大きなメリットで、ちょっとした空腹を満たしたい時や、手軽にさつまいもを味わいたい時に最適です。しっとりとした食感と自然な甘さが特徴で、調理時間を大幅に短縮しながらも、さつまいもの美味しさをしっかりと味わえます。

さつまいもの種類で変わる?カロリーと糖質の違い

さつまいもの品種によって味が異なると、気になるのはカロリーや糖質の差ではないでしょうか。一般的に、ホクホク系のさつまいもよりも、甘みが際立つねっとり系やしっとり系のさつまいもの方が、カロリー・糖質は高めである傾向が見られます。これは、甘い品種ほど多くの糖分を含んでいるためです。ただし、さつまいもの栄養成分は、収穫後の保存状態や、蒸かし、焼き、揚げといった調理方法によっても大きく変動します。そのため、一概には言えません。例えば、加熱方法によってはデンプンが糖に変わり、甘さが増すことで糖質量が多少変化することもあります。各品種の正確な栄養価を知りたい場合は、個々の品種に関する具体的な栄養成分表示を確認することをおすすめします。

紫・オレンジ・白!カラフルな品種と用途、その魅力

さつまいもの色といえば黄色が一般的ですが、多様な品種の中には、驚くほど色とりどりのものも存在します。これらのカラフルな品種は、見た目の美しさに加え、それぞれ異なる栄養素や特徴を持ち、様々な用途で利用されています。ここでは、紫色、オレンジ色、そして白色のさつまいも品種が持つ個性的な魅力と、具体的な活用方法について詳しくご紹介しましょう。

あざやかな「紫色」さつまいも:栄養と利用方法

「紫いも」として知られる、赤紫~紫色のさつまいもは、その鮮やかな色味が際立ちます。この美しい色は、視力改善効果などで知られるポリフェノールの一種、アントシアニンによるものです。生食用として栽培される品種には、皮も中身も赤紫色で見た目が美しく、味も良い「パープルスイートロード」や「ふくむらさき」などがあります。これらは焼き芋やスイーツ、サラダなどにすると美味しく、食卓を鮮やかに彩ります。ちなみに、「パープルスイートロード」の“ロード”は、英語で《lord:貴族》から名付けられたと言われています。また、加工用としては「アヤムラサキ」や「ムラサキマサリ」などがあり、特にアヤムラサキは、色鮮やかな紫いもブームの火付け役として有名です。アヤムラサキはホクホクとした食感で、甘さ控えめなので加工しやすく、その豊富なアントシアニン色素を活かしてジュース、ペースト、パウダーなどに加工され、食品の着色料や健康食品として広く活用されています。美容と健康に関心のある方にもおすすめの品種です。

β-カロテン豊富な「オレンジ色」さつまいも:美容と健康効果、活用方法

緑黄色野菜に多く含まれる栄養素・β-カロテンを豊富に含むさつまいもは、カボチャのような濃いオレンジ色をしています。β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持、視機能の正常化に役立つとされています。生食用のアヤコマチやハロウィンスウィートといった品種は、加熱するとさらに鮮やかなオレンジ色になるため、焼き芋やスイーツにした際の彩りが非常に美しく、見た目にも食欲をそそります。その他、ジュース用のジェイレッドやパウダー用のサニーレッドなどが加工用として知られています。β-カロテンには高い抗酸化作用があるため、健康維持はもちろんのこと、美容にも嬉しい効果が期待できます。

芋焼酎の原料にもなる「白色」さつまいも:加工用途の主力品種

白い果肉を持つさつまいもは、豊富なでんぷん質を活かして、主に加工食品の原料として利用されています。中でも代表的な品種がコガネセンガンです。名前を聞いたことがなくても、実は国内で最も多く栽培されているさつまいもであり、芋焼酎の原料として広く使われています。見た目はジャガイモに似ていますが、現在流通している芋焼酎の多くはこのコガネセンガンを原料としているため、日本の焼酎文化を語る上で欠かせない存在です。焼酎の原料としての需要が高いため、主に鹿児島県や宮崎県で栽培されています。焼酎好きの方は、意識せずとも口にしているかもしれません。その他、白いさつまいもには、シロユタカやこなみずきといった品種もあり、これらは清涼飲料の甘味料や春雨の原料など、私たちの食生活を支えています。生食用としての流通は少ないものの、加工食品業界では重要な役割を担っています。

まとめ

さつまいもの魅力は、ホクホク、ねっとり、しっとりといった多様な食感に加え、品種ごとに異なる豊かな甘み、紫、オレンジ、白といった彩り豊かな色合いです。ベニアズマ、安納芋、べにはるか、シルクスイート、べにまさりなど、各品種の特徴を知ることで、焼き芋、煮物、お菓子作り、芋焼酎の原料など、様々な用途に合わせて最適な選択ができるようになります。コガネセンガンの作付面積が最大であることや、カロリーや糖質の傾向、アントシアニンやβ-カロテンといった栄養素の有無も、品種選びの重要な判断材料となります。この記事を参考に、あなたの食卓を豊かにするお気に入りのさつまいもを見つけて、その奥深い世界を体験してみてください。品種ごとの個性を理解し、最高のさつまいもライフを楽しみましょう。

質問:さつまいもの種類はどれくらいありますか?

回答:現在、栽培されているさつまいもの品種は、確認されているだけでも40~60種類ほど存在するとされています。そのうち、ある程度の規模で栽培されているものは30品種以上あり、さらに地域限定で栽培されている品種も数多く存在します。これらの品種は、食感(ほくほく、ねっとり、しっとり)、甘さ、色、用途(生食用、加工用など)によって大きく異なります。

質問:「ほくほく」「ねっとり」「しっとり」の食感はどのように違うのですか?

回答:「ほくほく系」は、粉質でしっかりとした食感と、あっさりとした甘さが特徴です。「ねっとり系」は、水分が多く粘り気があり、焼き芋にすると蜜が溢れるほどの強い甘みが特徴です。「しっとり系」は、ほくほく系とねっとり系の中間的な食感で、上品で滑らかな口当たりと、バランスの良い甘さが魅力です。また、「べにまさり」のように、しっとりしすぎず、ほくほく感も併せ持つ、バランスの取れた食感の品種も存在します。

質問:最も甘いさつまいもの品種は何ですか?

回答:一般的に、しっとりとした食感が特徴の「安納紅(安納芋)」や、収穫後の貯蔵と熟成を経ることで甘さが増す「紅はるか」などが、際立って甘味が強い品種として有名です。これらの品種を焼き芋にすると、蜜がたっぷりと溢れ出し、まるでデザートのような濃厚な甘さを堪能できます。

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