酸っぱい香りと可愛らしい見た目で、老若男女問わず愛されるいちご。その歴史は意外と古く、江戸時代末期にオランダから伝わったとされています。当初は「オランダイチゴ」と呼ばれ、珍しい舶来品として一部の人々に親しまれていました。明治時代に入り、本格的な栽培が始まると、品種改良も進み、現在では様々な種類のいちごが私たちを楽しませてくれます。時代を超えて愛され続けるいちごの、知られざる魅力に迫ります。
いちごの歴史:日本での食用の始まりは?
私たちが普段口にしているいちごが日本で食されるようになったのは、江戸時代の後期、1830年代のことだと伝えられています。オランダからの船によって日本に持ち込まれたことから、当初はオランダイチゴという名で親しまれていました。そして、明治時代に入り農業の近代化が進むにつれて、欧米各地から様々な品種が導入され、20世紀初頭には海外の品種を用いた商業的な栽培がスタートしました。
いちごの分類:その正体は野菜?果物?
園芸学の世界では、一般的に木になる実を果物、草になる実を野菜と区別します。いちごは草になる実であるため、分類上は野菜に該当します。農林水産省が実施する作物の統計調査においても、いちごは野菜として扱われています。しかし、実際の食され方は果物とほとんど変わらないため、「果実的野菜」という呼び方もされることがあります。
いちごの構造:表面の粒々の正体とは?
いちごの表面に見られる小さな粒々は、実は種ではなく、それぞれが独立した果実なのです。そして、それぞれの粒の中に種が含まれています。つまり、私たちが普段いちごと呼んでいる一粒は、200個から300個もの小さな果実が集まってできた「集合果」なのです。また、私たちが果実として味わっている甘い部分は、実際には茎の先端にある花床と呼ばれる部分が肥大化したもので、「偽果」と呼ばれています。
いちごの栄養:豊富なビタミンCとその健康効果
いちごはビタミンCを豊富に含んでおり、その量はみかんやグレープフルーツの約2倍にも相当します。さらに、ビタミンB群の一種である葉酸も多く含まれています。また、ポリフェノールの一種であるアントシアニンも豊富で、目の機能をサポートしたり、眼精疲労を和らげたりする効果が期待されています。一般的に、糖度が高いイチゴほどビタミンCの含有量も多い傾向にあります。
美味しいいちごの見分け方:色、ヘタ、形、種を詳しくチェック!
美味しいいちごを選ぶためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、色だけで判断するのは避け、全体的なツヤをよく確認しましょう。十分に熟したいちごは、ヘタの裏側、つまり根元付近まで鮮やかな赤色をしています。また、ヘタは生き生きとした緑色で、ピンと上に反り返っているものが新鮮である証拠です。さらに、糖度が最高レベルに達すると、ヘタの下の部分が伸びてくることがあります。驚くことに、糖度が限界を超えると、ヘタの下の部分に微細な亀裂が入ることがあります。表面にある種のように見える粒の色にも注目しましょう。黄色や白っぽい色ではなく、赤みを帯びたものが完熟しているサインです。これらの粒が果肉に埋もれているように見えるものを選ぶのがおすすめです。なぜなら、果肉自体が水分と豊富な養分(糖分)で満たされ、粒が表面に食い込んでいる状態だからです。粒と粒の間隔も重要なチェックポイントです。間隔が密集しているものよりも、やや間隔が広いものの方が熟している傾向があります。一般的に、糖度が高いほどいちごは大きくなる傾向があります。先端部分が3つに分かれているような、少し変わった形のいちごは、特に甘い先端部分が多いので、見つけたらラッキーです。
白いちご:その秘密と美味しさ
一般的に赤い色をしているいちごは、光合成によって作られる「アントシアニン」という色素によって赤く発色します。しかし、白いちごは、遺伝的な要因によりアントシアニンを十分に合成できないため、赤くならずに白い状態で熟します。白いちごは見た目から「甘くないのでは?」と思われがちですが、実際には赤いいちごと同じくらい、またはそれ以上に甘くて美味しい品種も存在します。
いちごの最適な食べ方:一番甘い場所は?
いちごは、先端部分から徐々に熟していく性質があるため、ヘタに近い部分よりも先端部分に糖分がより多く蓄積されます。したがって、ヘタに近い部分よりも中央部分、そして中央部分よりも先端部分が最も甘くなります。美味しく食べるためには、ヘタを切り落とし、中央部分から食べ始めるのがおすすめです。こうすることで、最後に最も甘い先端部分を味わうことができ、満足感が向上します。
いちごの洗い方:風味を損なわずに美味しく
いちごを洗う際には、ヘタを切り落とす前に手早く洗うことが重要です。ヘタを先に切ってしまうと、切り口から水分が果肉内部に浸透し、いちご本来の風味が損なわれてしまう原因となります。また、いちごを長時間水に浸けておくと、ビタミンCなどの貴重な栄養素が水に溶け出してしまう可能性があります。そのため、流水でサッと洗い流す程度にとどめましょう。食べる直前に洗うことで、栄養素や美味しさを最大限に保ったまま、いちごを堪能することができます。
生で味わうための保存術
パックを開封したら、いちごが重ならないように丁寧に並べ、アルミホイルでそっと包んで冷蔵庫へ。洗ってしまった場合は、傷みの原因となる水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取ってから冷蔵してください。
長く楽しむための冷凍術
10日以上保存したいなら、冷凍保存が最適です。いちごを軽く水洗いし、ヘタを取り除いたら、しっかりと水分を拭き取り、フリーザーバッグに入れて冷凍庫へ。少し自然解凍すれば、シャリシャリとした食感が楽しいシャーベットとして味わえます。また、凍ったままお鍋に入れ、砂糖と一緒に煮詰めれば、手軽にいちごジャムが完成。生のいちごを使うよりも、なめらかな仕上がりになります。
最高のタイミング:時間帯
いちごは、夜の間に甘み(糖分)を蓄えます。そのため、太陽が昇り光合成を始める前の時間帯が、最も美味しいタイミング。午後は気温が上昇し、日光を浴び続けると、いちごが温かくなってしまうこともあります。気温の高い時間帯に収穫されたいちごは、果肉が柔らかく傷みやすいので、持ち帰りには十分注意が必要です。
最高のタイミング:天気
いちごは、冬の寒さの中でゆっくりと成長し、甘み(糖分)を蓄えます。太陽の光を浴びて光合成を行う量が増えるほど甘くなるため、数日間晴天が続いた後にいちご狩りに出かけるのがおすすめです。
選び抜かれたイチゴを見つける秘訣
イチゴ狩りのビニールハウスに入ると、赤く色づいたイチゴがたくさん目に飛び込んできますが、よく観察すると、畝の奥の方にはまだ誰にも摘まれていないイチゴが残っていることがあります。直射日光を浴びすぎたイチゴは味が落ちやすいので、葉陰やハウスの奥など、日の当たりにくい場所を探してみましょう。そういった場所には、株の中心に近い場所に実った、最初の実やそれに近いイチゴが隠れている可能性があります。株の中心に近いほど栄養分が豊富にいきわたり、甘みが凝縮されていることが多いのです。
1月15日は特別な「いちごの日」、そして毎月22日は「ショートケーキの日」
「1(いち)1(いち)5(ご)」という語呂合わせから、1月15日は「いちごの日」として親しまれています。特に1月中旬はイチゴの収穫が最盛期を迎え、市場への出荷量も増えるため、まさに「いちごの日」にふさわしい時期と言えるでしょう。面白いことに、カレンダー上で22日のちょうど一週間前が15日です。この配置から、15(イチ・ゴ)が上に乗っている22日をショートケーキに見立て、毎月22日を「ショートケーキの日」と制定したそうです。
イチゴの花言葉:愛情と幸せを象徴する美しい言葉
イチゴの花言葉には、「あなたは私を喜ばせる」「幸福な家庭」「尊重と愛情」「先見の明」などがあります。可愛らしいイチゴのイメージにぴったりの、心温まる花言葉ですね。
イチゴは追熟しない:購入後は新鮮なうちに味わおう
イチゴは一度収穫してしまうと、その後は甘みが増すことはありません。摘み取るまでは糖分が蓄積されて糖度が上がっていきますが、収穫後は見た目が赤く色づくだけで、追熟はしないのです。そのため、イチゴは購入したらできるだけ早く食べるのが、美味しく味わうための秘訣です。
まとめ
この記事では、いちごに関する様々なトリビアをお届けしました。そのルーツから、美味しいいちごの見分け方、そして鮮度を保つための保存方法まで、いちごをより深く堪能するための情報が満載です。さあ、これらの知識をあなたのいちごライフに役立て、格別な味わいを心ゆくまでお楽しみください。
質問:購入後、いちごはさらに甘くなりますか?
回答:残念ながら、いちごは収穫された時点で熟成がストップします。最高の状態で味わうためには、購入後はお早めにお召し上がりください。
質問:白いちごは、赤いいちごに比べて味が劣りますか?
回答:そんなことはありません。白いちごも、赤いいちごに引けを取らない甘さと美味しさを持っています。色の違いは、アントシアニンという色素の有無によるものです。
質問:いちごをできるだけ長く保存するためのコツはありますか?
回答:いちごを長持ちさせるには、冷蔵または冷凍保存が効果的です。冷蔵する場合は、いちご同士がぶつからないように丁寧に並べ、冷凍する場合は、ヘタを取り除いてから冷凍するのがおすすめです。