イチゴ 虫

甘くて美味しいイチゴは、家庭菜園でも人気の果物です。しかし、イチゴは様々な害虫に侵されやすく、適切な対策を怠ると、生育が悪くなったり、収穫量が減ったりする原因になります。この記事では、イチゴ栽培で特に注意が必要な害虫の種類、それらによる被害の特徴、そして効果的な予防方法と対処方法を詳しく解説します。美味しいイチゴをたくさん収穫するために、害虫対策の知識をしっかりと身につけましょう。

イチゴ栽培で注意すべき主な害虫の種類

イチゴ栽培では多くの害虫に注意する必要がありますが、ここでは特に発生しやすい代表的な4種類の害虫、ミナミキイロアザミウマ、コナガ、アブラムシ、ハダニについて、それぞれの生態、もたらす被害、具体的な対策方法を詳しく説明します。

ミナミキイロアザミウマ:生態と対策

ミナミキイロアザミウマは、体長が約1.2mmと非常に小さい害虫で、イチゴだけでなく、キュウリ、メロン、ナス、ピーマンなど、多くの作物に被害を及ぼします。1979年に宮崎県で初めて確認されて以来、その生息範囲は広がり、現在では40以上の都道府県に分布しています。成虫と幼虫が、作物の葉や茎から汁を吸うことで食害を引き起こし、被害を受けた実は黄色く変色して硬くなることがあります。さらに、ミナミキイロアザミウマはトスポウイルス属のウイルスを媒介し、イチゴの葉を灰白色に変色させ、果実の生育を妨げるという深刻な被害をもたらす可能性もあります。

ミナミキイロアザミウマは薬剤に対する抵抗力が強いため、総合的な対策が求められます。天敵であるカメムシを利用して捕食させる生物農薬、寒冷紗を使ってビニールハウスの開口部を覆い、栽培施設への侵入を防ぐ物理的な防除、太陽光を反射するマルチを作物の株元に敷き、アザミウマの発生を抑制する方法などが有効です。

コナガ:生態と対策

コナガはガの幼虫で、体長は約5mm~10mmほどの小さなイモムシです。春から冬前まで発生し、葉の裏側から葉の表皮だけを残して食害するため、被害を受けた部分は白く変色し、その後穴が開きます。コナガの発生初期に適切な対策を講じることが非常に重要です。

コナガ対策としては、まず、作物の周辺の雑草を徹底的に除去し、コナガが隠れる場所をなくすことが大切です。薬剤を使用する場合は、コナガの発生初期に登録されている殺虫剤を散布します。また、防虫ネットを使用することで、成虫の飛来を防ぎ、産卵を抑制する効果が期待できます。

アブラムシ:生態と対策

アブラムシは体長0.5~3mm程度の小さな昆虫で、葉や茎に大量に発生します。体色は黄色、緑色、黒色、灰色など様々です。成虫、幼虫ともに葉や茎から汁液を吸い、株の生育を妨げます。大量に発生すると、アブラムシの排泄物が原因でカビが発生し、すす病を引き起こしたり、モザイク病を媒介したりするなど、二次的な被害が発生する可能性もあります。

アブラムシの対策としては、まず、定期的に株を観察し、早期発見に努めることが重要です。発生量が少ない場合は、粘着テープで捕獲したり、水で洗い流したりするだけでも効果があります。天敵であるテントウムシを放つことも有効な手段です。薬剤を使用する場合は、アブラムシに登録されている殺虫剤を使用します。シルバーマルチを使用すると、アブラムシの飛来を抑制する効果が期待できます。

ハダニ:生態と対策

ハダニは成虫、幼虫ともに食害をもたらす非常に小さなダニで、体長は0.5~1mm程度です。葉の裏に寄生して汁を吸い、吸汁された葉は葉緑素が抜け、白く見えるようになり、最終的には枯れてしまいます。被害が拡大すると光合成が阻害され、株全体の生育が著しく妨げられます。乾燥した環境で発生しやすいという特徴があります。

ハダニの対策としては、まず、葉の裏側を定期的に観察し、早期発見に努めることが大切です。ハダニは水に弱い性質があるため、葉の裏に水をかけるだけでも効果があります。薬剤を使用する場合は、ハダニに登録されている殺ダニ剤を使用します。また、雨が少ない時期には、定期的に葉水を与え、湿度を保つように心がけましょう。

イチゴを健康に育てるための総合的な対策

害虫が発生すると、作物の生育が妨げられるだけでなく、病気の発生にもつながる可能性があります。美味しいイチゴを育てるためには、害虫対策だけでなく、病気対策も並行して行うことが重要です。病害虫に強い株を育てるためには、適切な栽培環境を整えることが何よりも重要です。日当たりと風通しの良い場所を選び、水はけの良い土壌で栽培しましょう。また、適切な肥料を与え、株の生育を促進することも大切です。ただし、窒素肥料の与えすぎは害虫を呼び込みやすいため、肥料のバランスには十分注意が必要です。病害虫による被害を最小限に抑えるためには、早期発見と早期防除が非常に大切です。日頃から株の状態をよく観察し、異常が見られた場合は速やかに対処しましょう。被害が拡大する前に対応することで、農薬の使用量を減らすことにもつながります。病害虫の発生を未然に防ぐためには、予防策を徹底することが重要です。防虫ネットの設置、コンパニオンプランツの活用、定期的な消毒など、様々な予防策を組み合わせることで、病害虫による被害を大幅に軽減することができます。特に、連作障害を避けるために、同じ場所でのイチゴ栽培は避けるようにしましょう。

イチゴ栽培における有機農薬の活用

イチゴ栽培において、化学農薬の使用をできるだけ避けたい場合は、有機農薬を活用することができます。有機農薬は、天然由来の成分で作られているため、環境への負荷が少なく、安心して使用することができます。木酢液は、木材を乾留する際に発生する煙を冷却して得られる液体で、殺菌効果や害虫の忌避効果があります。うどんこ病などの病気の予防や、アブラムシなどの害虫を寄せ付けない効果が期待できます。使用する際は、必ず希釈して使用し、濃度が高すぎると植物に害を及ぼす可能性があるため注意が必要です。ニームオイルは、インド原産のニームという樹木から抽出されるオイルで、殺虫効果や忌避効果があります。アブラムシ、ハダニ、コナジラミなど、様々な害虫に効果があります。ニームオイルは、害虫の神経系に作用し、食欲を減退させたり、成長を阻害したりすることで、害虫を駆除します。使用する際は、必ず希釈して使用し、高温時や乾燥時には使用を避けるようにしましょう。BT剤は、バチルス・チューリンゲンシスという細菌を利用した生物農薬で、チョウ目害虫に対して効果を発揮します。コナガ、ヨトウムシなどの幼虫に効果があり、これらの害虫がBT剤を摂取すると、消化器官が破壊され、死に至ります。BT剤は、人や家畜、環境への影響が少ないため、比較的安心して使用することができます。

イチゴ栽培を助けるコンパニオンプランツ

コンパニオンプランツとは、複数の植物を隣り合わせで栽培することで、互いの成長を助け合う関係のことです。イチゴ栽培においても、コンパニオンプランツを利用することで、害虫対策や生育促進といった効果が期待できます。ここでは、イチゴ栽培に特におすすめのコンパニオンプランツと、その効果について詳しく解説します。

  1. マリーゴールド:マリーゴールドの根から放出される成分は、土壌中の有害な線虫を抑制する効果があります。また、独特の香りはアブラムシなどの害虫を寄せ付けません。イチゴの根元に植えることで、土壌由来の病気や害虫被害を軽減する効果が期待できます。
  2. ネギ:ネギなどのアリウム属植物は、特有の強い香りがアブラムシやダニといった害虫を遠ざけます。イチゴを植えた畝の周囲にネギを植えることで、これらの害虫による被害を少なくすることができます。さらに、ネギは土壌の微生物バランスを改善し、イチゴの生育をサポートする効果も期待できます。
  3. バジル:バジルが持つ独特な香りは、アブラムシやアザミウマといった害虫を寄せ付けない効果があります。イチゴの株間にバジルを植えることで、これらの害虫による被害を減らすことができます。また、バジルはイチゴの風味を向上させる効果もあると言われています。

イチゴ栽培における自然の力:天敵の活用

天敵とは、害虫を捕食したり、寄生したりすることで、その数を減らす生物のことです。イチゴ栽培で天敵を利用することで、農薬の使用を減らし、環境に配慮した害虫対策が実現できます。アブラムシ対策には、テントウムシが効果的です。テントウムシは、アブラムシを好んで食べる代表的な天敵であり、大量発生時に放つことで、アブラムシの数を効果的に減らすことができます。幼虫も成虫もアブラムシを捕食します。ハダニ対策には、カブリダニが有効です。ハダニが多発している場合にカブリダニを放つことで、ハダニの数を減らすことができます。カブリダニはハダニだけでなく、コナジラミも捕食します。アザミウマ類には、タイリクヒメハナカメムシなどの天敵が有効です。これらの天敵はアザミウマ類を捕食し、その個体数を抑制する効果があります。

イチゴ収穫後の管理:来年に向けて

イチゴの収穫が終わった後も、次年度に向けて適切に手入れを行うことが大切です。収穫を終えた株は、古くなった葉や伸びすぎたランナーを整理しましょう。これにより、風通しが改善され、病害虫の発生を抑えることができます。また、株の老化を遅らせ、次年度の生育を促進する効果もあります。収穫で疲れた株に、追肥を行いましょう。緩効性の有機肥料を使うのがおすすめです。追肥によって株の栄養状態を回復させ、次年度の生育をサポートします。イチゴを栽培した土壌は、養分が不足している可能性があります。堆肥や腐葉土などを混ぜ込み、土壌の状態を改善しましょう。これにより、土壌の通気性、保水性、排水性が向上し、次年度のイチゴ栽培に適した土壌を作ることができます。

まとめ

イチゴ栽培における害虫対策は、美味しいイチゴを収穫するために非常に重要な作業です。害虫の種類、被害の特徴、効果的な予防法と対策を理解し、適切な対策を行うことで、害虫被害を最小限に抑え、美味しいイチゴをたくさん収穫することができます。この記事でご紹介した情報を参考に、ぜひイチゴ栽培に挑戦してみてください。

イチゴ