甘酸っぱくて美味しい苺。ケーキやデザートに彩りを添える人気のフルーツですが、実はバラ科の植物であることをご存知でしょうか? バラ科の植物には、アレルギーを引き起こす可能性のあるものがいくつか存在します。この記事では、苺がバラ科であること、そして苺をはじめとするバラ科の植物によるアレルギーについて詳しく解説します。アレルギーの症状や対策を知り、苺を安心して楽しめるようにしましょう。
「いちご」(バラ科)の語源、漢字表記、英語名の由来
「いちご」という言葉の起源は、明確には特定されていません。古い文献である『本草和名』(918年頃)や『和名類聚抄』(934年頃)には、「以知古(イチコ)」という記述が見られます。また、『新撰字鏡』には「伊致寐姑(イチビコ)」、『類聚名義抄』には「一比古(イチビコ)」という表記があり、これらが古い形であると考えられています。『本草和名』では、蓬虆(キイチゴの一種)の和名が「以知古(イチコ)」、覆盆子(クマイチゴの一種)の和名が「加宇布利以知古(カウフリイチコ)」とされており、オランダイチゴが日本に導入される以前は、「いちご」という言葉は野いちご全般を指していたようです。漢字表記には「苺」と「莓」がありますが、字源をたどると「苺」が本来の字であるとされています。ただし、辞書によっては「莓」を見出し語とし、「苺」を本字として解説している場合もあります。現代の日本では主に「苺」の字が使われ、中国では「莓」が一般的に使用されます。英語名のstrawberry(ストロベリー)は、「straw(藁)のberry(実)」と直訳できますが、なぜそう呼ばれるようになったのかについては諸説あります。「藁を敷いて栽培したから」「麦藁に包んで販売されていたから」「ランナー(匍匐茎)が麦藁に似ているから」といった説のほか、strawは藁ではなく、散布する・覆うという意味の古い英語strewに由来するという説も存在します。
バラ科アレルギーと花粉症の深い繋がり:交差反応のメカニズムと大豆アレルギーとの関係性
食物アレルギーは、特定の食物に含まれる成分と花粉の構造が類似している場合に、花粉症に付随して発症することが少なくありません。特に、学童期から成人期にかけて発症するケースが多いとされています。バラ科の果物に含まれるアレルゲンは、カバノキ科(シラカンバ、ハンノキなど)の花粉のアレルゲンと構造がよく似ています。そのため、近年増加傾向にある花粉症患者さんの多くが、バラ科の食物に対してもアレルギー反応を示すことがあると考えられています。また、カバノキ科の花粉症を持つ人に多く見られる大豆アレルギーの方も、バラ科の果物に対してアレルギー症状が出やすい傾向にあります。豆乳を飲んだ際に口に違和感やかゆみを感じた経験がある方は、バラ科の果物を摂取する際にも注意が必要です。
加工食品におけるバラ科アレルギー表示の現状と食品提供時の留意点
バラ科の食品に関するアレルギー表示には、細心の注意を払う必要があります。現在のアレルギー表示制度では、バラ科の食品のうち、りんご、もも、アーモンドのみが「表示推奨品目」として指定されており、その他の多くのバラ科食品は表示の義務や推奨の対象外となっています。バラ科の食品は非常に多岐にわたるにもかかわらず、表示対象となっている食品が限られているため、加工食品を購入・使用する際は、原材料表示を隅々まで確認し、慎重な判断が求められます。また、バラ科アレルギーを持つ人の中には、加熱や加工によってアレルギー反応が軽減され、食べられるようになるケースも存在しますが、安全に摂取できる状態となる加工の度合いは人によって大きく異なります。したがって、バラ科の食品を原材料として使用した加工食品を提供する際には、事前にアレルギーを持つご本人や保護者の方に、どの程度の加工であれば問題なく食べられるのかを詳細に確認することが非常に重要です。例えば、りんご一つをとっても、りんごジュース、りんごジャム、焼きりんご、パイやケーキの具材など、様々な形態があります。どこまで加工すれば安全に食べられるかを正確に把握し、それを遵守することが、食物アレルギー事故を防ぐ上で最も大切なことと言えるでしょう。
まとめ
バラ科アレルギーは、りんご、もも、アーモンド、そして詳しく解説したイチゴなど、バラ科の食品を摂取することで、口の中の違和感や口腔アレルギー症候群を引き起こし、重篤な場合にはアナフィラキシーショックに至る可能性もあります。特に、カバノキ科の花粉症との交差反応が深く関連しており、大豆アレルギーとの関連性も指摘されています。イチゴは栄養価が高く人気のある果物ですが、その多様な品種や栽培方法、歴史的背景、そして国際的な流通や栽培の課題などを理解することは、アレルギーを持つ人が安全に食品を選ぶ上で重要な要素となります。加熱・加工食品に対する反応には個人差が大きく、表示推奨品目が限られているため、加工食品の利用や食品を提供する際には、十分な注意と事前の確認が不可欠です。万が一、症状が現れた場合は、速やかに医師の診断を受け、適切な対応を行うことが健康を守る上で最も重要です。
バラ科アレルギーではどのような症状が出ますか?
バラ科の食物を摂取すると、一般的に口の中や喉のかゆみ、腫れ、ピリピリとした刺激感などが現れます。重症化すると、じんましん、アナフィラキシーショック、呼吸困難などの深刻な症状を引き起こすこともあります。
バラ科の主要な食用植物にはどのようなものがありますか?
バラ科には、多様な果実や種実が含まれます。例えば、リンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、イチゴ、アンズ、ウメ、プルーンといった果物のほか、ナッツ類ではアーモンドがよく知られています。
バラ科の食品は、加熱や加工によってアレルギー反応を回避できますか?
加熱や加工によってアレルゲンが変質し、摂取可能になるケースも存在しますが、その効果には個人差があります。ご自身で判断せず、必ず専門医に相談し、指示に従うようにしてください。
バラ科の食品は、アレルギー表示の義務がありますか?
バラ科の食品のうち、リンゴ、モモ、アーモンドはアレルギー表示が推奨されていますが、それ以外のバラ科食品は表示義務の対象外です。したがって、加工食品を選ぶ際には、原材料表示を隅々まで確認することが重要です。
口腔アレルギー症候群とは
口腔アレルギー症候群(OAS)とは、ある種の果物や野菜を食べた際に、口内や喉の粘膜に痒みや腫れなどが現れるアレルギー症状を指す医学用語です。特に花粉症との深い関わりが知られています。
大豆アレルギーとバラ科アレルギーの関係
大豆アレルギーとバラ科アレルギーには関連性があると考えられています。特に、シラカンバなどのカバノキ科花粉症を持つ人が大豆アレルギーを発症している場合、リンゴやモモといったバラ科の果物に対してもアレルギー反応を起こしやすい傾向にあります。
イチゴはバラ科の植物?
その通りです。イチゴ(学名:Fragaria)は、バラ科オランダイチゴ属に分類される植物です。したがって、バラ科アレルギーをお持ちの方は、イチゴの摂取にも注意を払う必要があります。
イチゴの食べられる部分はどこ?
私たちが普段果肉として認識しているイチゴの赤い部分は、実は花托(かたく、花を支える部分)が大きく膨らんだもので、偽果(ぎか)と呼ばれます。そして、表面にある小さなツブツブこそが、それぞれ果実である痩果(そうか)なのです。