アレルギー体質の方にとって、日々の食事は常に注意が必要です。食品に含まれるアレルゲンを避けるために、食品表示は重要な情報源となります。日本では、消費者を守るために食品表示基準に基づき、特定原材料等の表示が義務付けられています。しかし、表示を正しく理解し、安全な食生活を送るためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。この記事では、食品表示の見方から、アレルギー対応食品の選び方、外食時の注意点まで、幅広く解説します。
アレルギー表示制度とは
食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれる成分が原因で、体が異常な反応を起こしてしまう状態を指します。こうしたアレルギーを持つ方が安全に食品を選べるよう、日本では食品表示に関するルールが設けられています。この制度では、アレルギーを引き起こす可能性のある物質について、食品に表示することを義務付けており、アレルギー体質の方にとって、非常に重要な情報源となっています。表示する物質は、過去の健康被害の状況などを考慮して、特に注意が必要なものが選ばれています。
必ず表示が必要なアレルギー物質(特定原材料)
食品表示法に基づき、パッケージされた食品には、特定原材料として指定された8品目のアレルギー物質について、その食品に含まれているかどうかを表示することが義務付けられています。これらの品目は、過去の症例数や症状の重さなどから、特にアレルギーを起こしやすいと判断されたものです。現在、必ず表示が必要な特定原材料は下記の8品目です。
- えび
- かに
- くるみ
- 小麦
- そば
- 卵
- 乳
- 落花生(ピーナッツ)
これらの物質を使用した食品には、パッケージに「一部に○○を含む」または「○○由来」といった形で、アレルギーに関する情報が表示されます。
表示が推奨されるアレルギー物質(特定原材料に準ずるもの)
特定原材料に加えて、アレルギー表示が推奨されている品目(特定原材料に準ずるもの)も20品目存在します。これらの品目は、特定原材料ほどではないものの、アレルギー反応を引き起こす可能性があるため、できる限り表示することが望ましいとされています。2024年3月28日には食品表示基準の一部が改正され、アレルギー表示が推奨される品目に「マカダミアナッツ」が追加された一方、「まつたけ」が削除されました。現在、推奨されているのは、下記の20品目です。
- アーモンド
- あわび
- いか
- いくら
- オレンジ
- カシューナッツ
- キウイフルーツ
- 牛肉
- ごま
- さけ
- さば
- 大豆
- 鶏肉
- バナナ
- 豚肉
- マカダミアナッツ
- もも
- やまいも
- りんご
- ゼラチン
表示義務対象品目への追加:くるみ
近年、食物アレルギーに関する表示制度は変化を続けています。特に重要な変更点として、2023年3月9日に「くるみ」がアレルギー表示義務の対象品目に追加されたことが挙げられます。この改正は、くるみによるアレルギー患者の増加や、症状の重さが考慮された結果です。これにより、くるみを使用した食品のパッケージには、アレルギー物質としての表示が必須となりました。
食品関連事業者の皆様へ
食品を扱う事業者の皆様におかれましては、食物アレルギーに関する表示の最新情報を常に確認し、適切な表示に努めていただきますようお願いいたします。特に「くるみ」については、アレルギー表示の義務化が2025年3月31日まで猶予されていますが、可能な限り早急な対応が求められます。また、特定原材料に準ずるカシューナッツについても、アレルギーを発症する事例が増加傾向にあるため、できる限り表示するよう心がけてください。
アレルギー表示義務の対象外:外食や対面販売の場合
アレルギー表示は、主にパッケージされた加工食品に義務付けられています。しかし、スーパーやデパートなどで製造・販売されるお惣菜、お弁当、パン、お菓子など、個包装されていない食品や、レストランなどで提供される料理には、アレルギー表示の義務はありません。これらの食品を口にする際は、お店のスタッフに直接アレルギーに関する情報を尋ねることが大切です。口頭での確認はもちろん、原材料の一覧を見せてもらうなど、積極的に情報を集めるようにしましょう。アレルギー表示義務がない場合の説明における法的責任範囲については、情報の確認が必要です。
食物アレルギーのメカニズム:IgE抗体と非IgE抗体
食物アレルギーは、免疫反応のメカニズムの違いによって、IgE抗体が関わるものと、IgE抗体が関わらないものに分けられます。IgE抗体は、特定のアレルゲンに反応する抗体で、アレルゲンと結合することでアレルギー反応を引き起こします。一方、非IgE抗体型の食物アレルギーは、IgE抗体を介さず、細胞性免疫などが関与して症状が現れます。それぞれのタイプによって、症状の種類や現れるタイミング、原因となる食品が異なることがあります。
猶予期間中の対応と今後の展望
「くるみ」のアレルギー表示義務化には猶予期間が設定されていますが、これは食品事業者側の準備期間を考慮したものです。しかしながら、食物アレルギーを持つお客様の安全を守るためには、猶予期間中であっても可能な限り早期に対応することが望まれます。原材料の変更や表示ラベルの修正など、必要な対策を迅速に進めていくことが重要です。
食物アレルギー表示の重要性
食品に記載されているアレルギーに関する情報は、アレルギー体質の方々にとって食品選択の重要な手がかりとなります。特に「一部に○○を含む」や「○○由来」といった表示は、アレルギー反応を引き起こす可能性のある物質が含まれていることを示唆し、注意が必要です。アレルギーを持つ人々が健やかな食生活を送るためには、正確で分かりやすいアレルギー表示が不可欠です。消費者庁などの関係機関は、アレルギーに関する情報提供や啓発活動を積極的に行い、消費者の安全確保に尽力しています。
まとめ
食物アレルギー表示は、アレルギーを持つ人々が安全に食品を選び、健康被害を防ぐための大切な情報源です。常に最新の表示基準を把握し、正確な情報を提供することで、食物アレルギーによる事故を未然に防ぐことができます。消費者一人ひとりがアレルギー表示を正しく理解し、食品を提供する事業者が正確な情報を提供する努力を続けることが、食物アレルギー対策において最も重要です。
食物アレルギー表示は、すべての食品に必ず表示されていますか?
いいえ、アレルギー表示が義務付けられているのは、基本的に包装された加工食品に限られます。スーパーやコンビニエンスストアなどで販売されているお弁当やお惣菜、レストランなどの外食メニューには、必ずしも表示義務はありません。
アレルギー表示に「一部に○○を含む」と書かれていますが、これは何を意味するのでしょうか?
これは、その食品の原材料の一部として、特定原材料またはそれに準ずるアレルギー物質が含まれていることを意味します。アレルギーをお持ちの方は、この表示を参考にしながら、ご自身の体質に合わせて食品を選択する必要があります。
食物アレルギーの症状が現れた際の対処法
もし食物アレルギーと思われる症状が出た場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。ご自身で判断せずに、必ず専門医の診断と指示に従うことが大切です。