お菓子のシベリア:どこで買える?その由来と多様な魅力
どこか懐かしい味わいで、幅広い世代から愛されるお菓子「シベリア」。カステラと羊羹の絶妙な組み合わせは、まさに和洋折衷の魅力が詰まっています。今回は、そんなシベリアがどこで買えるのか、そのルーツや知られざる多様なバリエーションに迫ります。伝統的な製法を守りつつ、地域やお店によって独自の進化を遂げてきたシベリアの世界へ、一緒に足を踏み入れてみましょう。きっとあなたのお気に入りのシベリアが見つかるはずです。

シベリアとは?その基本的な定義と多様なバリエーション

「シベリア」という名前で親しまれているお菓子は、ふんわりとしたカステラ生地で、甘さ控えめの羊羹や小豆餡を挟んだ日本の伝統的なお菓子です。「シベリヤ」とカタカナで表記されることもありますし、「羊羹カステラ」という名称で販売しているお店もあります。この和と洋の要素が融合した独特の味わいが、「どこか懐かしい」「ほっとする」と、幅広い世代から再び注目を集めています。シベリアの食品分類は、製造元や原材料によって異なり、「洋生菓子」「和生菓子」と区分されたり、「洋菓子」「和菓子」として扱われたりと、その多様性が伺えます。シベリアに挟まれる羊羹や餡は、とろけるように柔らかい餡子状のものから、寒天でしっかりと固められた羊羹そのものまで、お店によって製法や風味が異なります。羊羹の色も、定番の茶色だけでなく、抹茶のような緑色や、可愛らしい赤色など様々で、カステラの層の数も、2層、3層、贅沢な4層とバリエーションがあります。カットの形状も、一般的な四角形の他に、扇形にカットされているものもあり、見た目にも楽しませてくれます。例えば、埼玉県さいたま市岩槻区にある「関根製菓」では、定番のこしあん羊羹を挟んだプレーン味に加え、「柚子」、「いちご」、「モカ」、「キャラメル」など、季節の味やお客様の要望に合わせたユニークなフレーバーを開発し、常時10種類以上のシベリアが店頭に並んでいます。餡子が苦手な方のために、爽やかな風味の「オレンジ&マンゴー」や、夏にぴったりの「ラムネ」味を提供するなど、お客様が選ぶ楽しさを大切にしています。このように様々なバリエーションが存在するのは、シベリアがそれぞれの地域やお店で独自の進化を遂げてきた証であり、一つとして同じものはない、その個性が愛される理由です。

シベリアの独特な製法:手間暇かかる製造プロセス

シベリアの大きな特徴は、その独特な羊羹や小豆餡の挟み方にあります。一般的なサンドイッチのように、スライスしたものを挟むのではなく、まず型にカステラを敷き、その上に溶かした状態の羊羹や小豆餡を流し込み、さらにその上から別のカステラを被せるという製法が用いられています。この工程によって、羊羹とカステラがしっかりと密着し、単なる層構造ではなく、一体となった独特のしっとりとした食感が生まれます。例えば、横浜市桜木町に本店を構える、大正5年(1916年)創業の老舗「コテイベーカリー」では、この伝統的な製法を100年以上も守り続けています。具体的には、お店で丁寧に焼き上げたカステラを冷ました後、水羊羹の生地を流し込み、固まる直前にもう一枚カステラを重ねます。そして、水羊羹が完全に固まるのを待って、三角形にカットされます。コテイベーカリーでは、この一連の工程に「完成まで6時間」もの時間をかけるそうです。このように、シベリアの製造は、カステラを焼いたり、小豆や寒天を煮て羊羹を手作りしたりすることから始めるため、非常に手間と時間がかかります。6時間もの手間暇をかけて作られたシベリアは、ふわふわのカステラと、つるんとした水羊羹が一体となり、口の中で優しい甘さのハーモニーを奏でます。コテイベーカリーの三代目店主である馬中俊夫さんによると、カステラの優しい黄色は卵本来の色であり、添加物などを使っていたら、これほど長く愛されることはなかっただろう、とのことです。様々な食品が登場し、消費者の好みが多様化している現代において、手間のかかるシベリアを作るお菓子屋さんは少なくなってしまいましたが、その希少性もまた、シベリアの魅力の一つとなっています。

シベリアの地域性と現在の流通経路

シベリアは、関東地方を中心とした東日本で特に親しまれている伝統的なお菓子であり、西日本ではあまり馴染みがないと言われることが多いようです。しかし、この地域性には例外も存在します。例えば、九州の福岡県では、地元の製菓メーカーがシベリアを製造しており、スーパーマーケットや土産物店などで広く販売され、地域に根付いたお菓子として愛されています。また、中部地方でも、地域のお菓子としてシベリアが作られ、販売されていることがあり、これらの地域では、一口サイズのシベリアが多い傾向にあります。これは、シベリアが各地で独自の進化を遂げてきたことを示しています。現代では、山崎製パンなどの大手製パン会社もシベリアを販売しており、一般的なスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも手軽に購入できるようになりました。これにより、以前は一部のお菓子屋さんでしか手に入らなかったシベリアが、より多くの消費者の手に届くようになっています。さらに、インターネット通販の普及により、有名お菓子店のシベリアを全国どこからでも気軽に購入できるようになり、流通経路はさらに多様化しています。しかし、大手メーカーの商品であっても、出荷地域は依然として東日本に偏っていることが多く、地域的な浸透度の違いは完全には解消されていません。また、大手スーパーマーケットでは、プライベートブランド商品として、個包装されたスティック状のシベリアを「しっとりふわふわ 羊羹カステラ」という名前で販売しており、現代の消費者のライフスタイルやニーズに合わせた新しい形態での展開も見られます。このように、シベリアは伝統的な地域性を持ちながらも、大手企業の参入や新しい商品形態の開発によって、その販売網を広げ、多くの人々に愛されるお菓子としての地位を確立し続けています。

シベリアの謎に包まれた歴史:発祥と初期の人気を辿る

シベリアの歴史は古く、その発祥の地、考案者、名前の由来、そして食品分類に至るまで、未だに解明されていない多くの謎に包まれています。まさに「謎多きお菓子」と言えるでしょう。コテイベーカリーの三代目店主である馬中俊夫さんによれば、シベリアが誕生したのは明治時代の終わりから大正時代の初め頃と考えられていますが、正確なことは分かっておらず、発祥のお店も名前の由来も諸説あり、謎が多いそうです。このミステリアスな背景も、シベリアの魅力の一つかもしれません。冷蔵庫が普及していなかった時代、ひんやりとした独特の食感と、異国情緒を感じさせる涼しげな名前が人々に好まれ、一時は「子供たちが食べたいお菓子No.1」だったと言われています。その歴史は古く、大正5年(1916年)創業の老舗ベーカリー「コテイベーカリー」の記録によると、シベリアは明治時代後半から大正時代初期頃に誕生し、当時はパン窯の余熱を利用してカステラを焼き、あんぱんに使う餡を使って、どこのパン屋さんでも作っていたそうです。コテイベーカリー自身も、1916年の創業以来、伝統的なシベリアの製法を守り続けています。シベリアは文学作品にも登場しており、当時の人々の生活に溶け込んでいた様子が伺えます。俳優で作家の古川ロッパの著書『ロッパの悲食記』には、ロッパが明治大学に在籍していた頃によく通ったという「ミルクホール」(喫茶店の前身)の思い出話が綴られています。その中で、“ミルクホールの硝子器に入っているケーキは、シベリヤと称する、カステラの間に白い羊羹を挿んだ、三角形のもの。(黒い羊羹のもあった)……”と記述されており、当時のシベリアの形状や色を知る上で貴重な情報です。さらに、『聞き書 東京の食事』(東京の食事編集委員会 1988)には、シベリアとミルクコーヒーのカラー写真が掲載されており、昭和初期頃の話として、「ミルクホールで、ミルクコーヒーを飲みながらシベリアを食べるのが好きだ。」という記述があります。こちらでも“シベリアはカステラにあんこをはさんだものである”と明記されており、これらの歴史的な記録から、東京や横浜といった関東の都市部で、シベリアが早い時期から日常的に親しまれていたお菓子であったことが強く示唆され、その人気ぶりがうかがえます。手間と時間がかかるため、次第に姿を消していったと言われています。

「シベリア」という名の由来:様々な説と類似のお菓子

シベリアを開発した人物は今もって謎に包まれており、その奥深さが人々を惹きつけます。興味深いことに、日本国内でも関東地方以外や、海外の食文化において、シベリアと全く同じ作り方や見た目を持つお菓子は確認されていません。この点も、シベリアが持つ独自の魅力の一つと言えるでしょう。そして、「シベリア」という名前の由来についても、決定的な証拠はなく、いくつかの説が唱えられていますが、どれも推測の域を出ていません。有力な説の一つとして、お菓子の真ん中に挟まれた色の濃い羊羹を、シベリアの広大な土地に広がる「永久凍土」や「凍った大地」に見立てたというものがあります。これは、シベリアの見た目から連想されるイメージに基づいた説です。また、別の説では、上下のカステラの層を「雪で覆われた氷原」に、その間に挟まれた羊羹を「シベリア鉄道のレール」に見立てたという、ロマンチックな情景を表現した説も存在します。さらに、日本の歴史的な出来事である「シベリア出兵」(1918年~1922年)にちなんで名付けられたという説や、実際にシベリア出兵に参加した菓子職人が、故郷を想い、あるいは現地の風景からヒントを得て考案したという説もあります。これらの説は、シベリアというお菓子が持つ、どこか神秘的で、歴史的な背景を感じさせる魅力をさらに引き立てます。一方で、シベリアの起源を探る中で、ポルトガルの伝統的なお菓子であるタルトを日本風にアレンジしたもの、またはその影響を受けて作られたという説も存在します。特に、タルトに近いものとして、「羊羹カステラ」と呼ばれるお菓子の中には、ロールケーキのようにカステラ生地で羊羹を巻いたものがあり、シベリアと関連するお菓子の多様性や、和菓子と洋菓子の融合の歴史を物語っています。このように、名前の由来や起源については不明な点が多いものの、その背景には日本の歴史や文化、そして人々の想像力が複雑に絡み合っており、それがシベリアを魅力的なお菓子にしていると言えるでしょう。


まとめ

シベリアは、カステラやパン生地で羊羹を挟んだ和洋折衷の伝統的なお菓子であり、独特の製法と地域ごとの多様性が魅力です。発祥の地や考案者、名前の由来には謎が多いものの、明治時代後半から大正時代初期には広く親しまれ、古川ロッパの著作にもその存在が記録されています。製法は、溶けた羊羹をカステラで挟み込むという独特なもので、コテイベーカリーのように時間をかけて丁寧に作られることで、しっとりとした食感が生まれます。主に東日本で親しまれてきましたが、福岡や中部地方でも独自の展開を見せており、山崎製パンなどの大手製パン会社からも販売されています。手間暇かけて作られるその味わいと、どこか懐かしさを感じさせる存在は、これからも多くの人々に愛され、語り継がれていくことでしょう。

シベリアとはどんなお菓子?

シベリアは、カステラまたはパン生地で羊羹や小豆あんを挟んだ、和と洋の要素を併せ持つ日本独特のお菓子です。特徴的なのは、羊羹がスライスされた状態で挟まれているのではなく、液状のままカステラに流し込まれ、一体化している点です。これにより、独特のしっとりとした食感が生まれます。「シベリヤ」と表記されることもあり、「羊羹カステラ」という名前でも販売されています。一般的な形状は四角いものですが、扇形やスティック状など、見た目のバリエーションも豊富です。味の種類も多様で、柚子、いちご、モカ、キャラメル、オレンジ&マンゴー、ラムネなどがあります。

シベリアはいつ頃からあるの?

シベリアは、そのルーツが古いお菓子です。正確な発祥地や考案者は特定されていませんが、明治時代末期から大正時代初期にはすでに存在していたと考えられています。大正5年創業のコテイベーカリーによると、当時はパン窯の余熱を利用してカステラを焼き、あんぱんに使う餡を使って、多くのパン屋で作られていたようです。古川ロッパの著書や『聞き書 東京の食事』にも、大正・昭和初期にミルクホールで人気があったという記述があり、特に東京や横浜などの関東地方で早くから広まったことがうかがえます。製造に手間がかかるため、一時姿を消した時期もあったようです。

「シベリア」という名前の由来は?

「シベリア」という名前の由来には、いくつかの説がありますが、どれも決定的なものではありません。有力な説としては、中央に挟まれた羊羹をシベリアの「永久凍土」に見立てたというものや、カステラを「氷原」、羊羹を「シベリア鉄道の線路」に見立てたというものがあります。その他、「シベリア出兵」にちなんだという説や、出兵に従軍していた菓子職人が考案したという説も存在します。ただし、コテイベーカリーの店主は、シベリア出兵とは関係がないとしています。

シベリアは今どこで買えるの?

シベリアは、主に関東地方を中心とした東日本で広く販売されており、スーパーマーケットや昔ながらのパン屋さん、和菓子屋さんなどで見つけることができます。西日本ではあまり馴染みがないようですが、福岡や中部地方でも製造・販売されています。山崎製パンなどの大手製パン会社も販売していますが、販売地域は東日本に偏っているようです。スーパーのプライベートブランドで、スティック状の「しっとりふわふわ 羊羹カステラ」として販売されていることもあります。また、一部の人気店では、インターネット通販を通じて全国どこからでも購入できます。
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