春の暖かな日差しとともに、私たちの心をときめかせる「桜餅」。ふわりと香る桜の葉、そして上品な甘さの餡を包むもちもちの生地は、まさに日本の春を象徴する味わいです。雛祭りのお供えとしても愛され、その可愛らしい姿は、食卓を華やかに彩ります。一口食べれば、冬の寒さを忘れ、新しい季節の訪れを感じさせてくれるでしょう。今回は、そんな桜餅の魅力に迫ります。
桜餅とは
桜餅は、日本の春を象徴する伝統的な和菓子です。塩漬けにした桜の葉で餅を包んでおり、ひな祭りのお菓子としてもお馴染みです。一年を通して販売されていますが、桜を連想させる色合いから、春に特に人気が高まります。
桜餅の二つのスタイル:関東風と関西風
桜餅として知られているものには、大きく分けて関東風と関西風の二つのタイプがあります。関東風は長命寺、関西風は道明寺が発祥とされています。製造方法や外観が異なり、地域によってよく食べられているスタイルも様々です。
関東風桜餅について
関東風桜餅は、小麦粉などを水で溶いた生地を薄く焼き、その中に餡を包んだものです。平たい鍋で焼いたクレープのような生地が特徴で、長命寺の近くにある桜餅専門店が起源とされています。
関東風桜餅の見た目
関東風桜餅は、薄く焼き上げた生地で餡を包み、塩漬けの桜の葉で巻いた形をしています。餅というよりも、クレープのような外観が特徴です。
関東風桜餅の作り方
関東風の桜餅を作るには、塩漬けされた桜の葉、生地の主原料となる小麦粉、そして餡が欠かせません。生地は、白玉粉や餅粉などをブレンドし、水、砂糖、ほんの少しの塩で味を調えます。塩漬けの桜の葉は水に浸して塩分を抜き、薄く焼き上げた生地で餡を包み、桜の葉で丁寧に巻いて仕上げます。関東風の桜餅は、1枚の葉を用いているという特徴があります。
関東風桜餅の由来
関東風桜餅は、江戸時代中頃の享保2年(1717年)に、長命寺の門番であった山本新六によって生み出されたと言われています。隅田川の堤に桜が植えられ、花見に訪れる人が多くなったことがきっかけで、長命寺の門前で桜餅を販売したところ、評判を呼んだそうです。境内の落ち葉掃除で大量に出る桜の葉を何かに活かせないかと考えたことが、桜の葉で餅を包むというアイデアにつながったとされています。
関西風桜餅について
関西風桜餅は、蒸したもち米を乾燥させて細かく砕いた道明寺粉を使い、その生地で餡を包んだ和菓子です。道明寺粉が生まれた場所である道明寺が、そのルーツとされています。
関西風桜餅の見た目
関西風桜餅は、道明寺粉ならではのつぶつぶとした食感が特徴的な餅で餡をくるみ、桜の葉で上品に包んだ形をしています。その外観は、おはぎに似ていると言えるでしょう。
関西風桜餅の作り方
関西風桜餅を作るには、塩漬けされた桜の葉、道明寺粉、そして餡が欠かせません。道明寺粉とは、もち米を水に浸けて蒸し、乾燥後に粗く砕いたものです。この道明寺粉に水分を含ませて蒸し、餡と混ぜ合わせてから薄く伸ばし、餡を包んで形を整え、最後に桜の葉で優しく包みます。
関西風桜餅のルーツ
関西風桜餅は、関東風桜餅の人気を受けて、大阪で江戸時代の天保年間(1830~1844年)に誕生したとされています。もち米を使用する製法は、日本の伝統的な和菓子の流れに沿っており、その美味しさが各地へと広まりました。
桜餅の構成要素:桜の葉、餅、餡
桜餅の主な構成要素は、桜の葉、餅、そして餡です。これらの素材が組み合わさることで、桜餅独特の風味と食感が生まれます。
桜の葉について
桜餅に添えられる桜葉は、独特の香りを付与し、餅の乾燥を防ぐ役割を担っています。塩漬けにすることで、その特有の香りが引き出されます。中でも、葉が柔らかく毛の少ないオオシマザクラの葉が良質とされ、塩漬け桜葉の国内生産量の約7割が伊豆地域で生産されています。関東地方では大きめの葉、関西地方では小さめの葉が好まれる傾向が見られます。
桜餅特有の芳香は、桜葉に含まれるクマリンという成分によるものです。桜葉は食べても体に害はありませんが、お菓子本来の風味を味わうために、葉を取り除いて食べることを勧める人もいます。ただし、クマリンは大量に摂取すると肝臓に負担をかける可能性があるため、食べ過ぎには注意が必要です。また、桜餅の淡いピンク色は、本来、葉から溶け出したカロテノイドという色素によるものです。
餅と餡について
桜餅に使われる餅は、関東風では小麦粉を主原料とした生地が、関西風では道明寺粉が用いられるのが一般的です。餡については、こしあんが広く使われていますが、つぶあんを用いる地域やお店も存在します。餅と餡の組み合わせによって、桜餅の食感や味わいが大きく左右されます。
まとめ
桜餅は、春の訪れを感じさせる日本の伝統的な和菓子です。関東風と関西風という異なるスタイルが存在し、それぞれ独自の歴史と製法を持っています。材料、形状、風味の違いを堪能しながら、桜の季節を心ゆくまでお楽しみください。。
桜餅はいつ食べるのが一般的ですか?
桜餅は、春の和菓子として広く親しまれており、特に雛祭りの時期によく食されます。しかし、近年では年間を通して販売されていることも珍しくなく、いつでもその風味を楽しむことができます。
桜餅:関東と関西、その違いとは?
桜餅と一口に言っても、関東風と関西風では見た目も食感も大きく異なります。関東風は、水で溶いた小麦粉ベースの生地をクレープのように薄く焼き、その中につぶあんなどを包み、最後に塩漬けの桜の葉でくるりと巻いたもの。一方、関西風は道明寺粉という、もち米を粗めに砕いたものを使って餅を作り、あんこを包んで桜の葉で包みます。この生地の作り方の違いが、それぞれの桜餅の独特な風味と食感を生み出しているのです。
桜の葉、食べる?食べない?
桜餅を包んでいる桜の葉ですが、食べるかどうか迷う方もいるかもしれません。基本的には食べても大丈夫です。あの独特の香りが桜餅の風味をより一層引き立ててくれます。しかし、桜の葉の風味よりも、お菓子そのものの味をじっくり楽しみたいという方は、葉を取り除いて食べるのがおすすめです。ただし、桜の葉にはクマリンという成分が含まれており、大量に摂取すると肝臓に負担をかける可能性があります。風味付けとして少量食べる分には問題ありませんが、食べ過ぎには注意しましょう。