米粉の価格動向とその背景:需要増加の理由を探る

近年、米粉の価格は世界的に上昇傾向にあります。この変動は、一見すると農作物の供給の不安定や気候変動といった外的要因だけに起因するように思われますが、実際にはそれ以上の複雑な要因が絡み合っています。健康志向の高まりとグルテンフリー製品の人気が後押しし、米粉の需要が急速に拡大していることがその一例です。本記事では、米粉の価格変動の背景にある要因を探り、特に需要増加の理由に焦点を当てて詳しく解説します。

小麦価格の上昇で注目を集める「米粉」の魅力、飲食店にとっての利点も

パンやうどん、ラーメン、ケーキ、お好み焼きなどは、日本人にとって米と同様に重要な主食となっています。ところが、近年の価格上昇により、小麦製品の値上げが相次いでいます。このような状況で、「米粉」が代替品として注目を集めています。この記事では、米粉が選ばれる理由や利点、米粉を活用した商品例、さらに飲食店が米粉を利用する際のポイントについても詳しく解説します。

止まらぬ小麦価格の上昇!

最近、小麦の価格が上昇している理由として、主に次の三つが考えられます。まず、小麦輸出で知られるアメリカとカナダの天候不順が影響しています。次に、新型コロナウイルスの影響で物流コストが増加しました。さらに、ロシアとウクライナの政治的な緊迫が挙げられます。ロシアとウクライナはアメリカやカナダとともに世界有数の小麦生産地であり、ロシアは輸出量で世界一位、ウクライナは五位を占めています。しかし、ロシアがウクライナを軍事攻撃したため、ロシアは様々な国から経済制裁を受け、ウクライナは経済活動が困難になりました。この状況が小麦の供給不足を招き、価格の上昇を引き起こしています。日本では、小麦の約90%を輸入に頼っており、この価格高騰の影響を大きく受けています。従来、日本政府が小麦を購入して製粉会社に販売していますが、2022年4月にはその価格が約17%上がりました。これは過去二番目の高さです。この結果、製粉会社は業務用小麦粉の値上げを決定し、小麦製品の価格も上昇しています。次回の輸入小麦の価格改定は10月に予定されていますが、これ以上の価格上昇が予想され、小麦製品の値上げが続く見込みです。

新たな可能性を秘めた「米粉」の活用

麺やパンの価格がさらに上昇することで家計への影響が懸念される中、「米粉」が代替品として注目を浴びています。日本では米の自給率がほぼ100%であるため、国際情勢の変化による影響を受けにくく、他の食品に比べて米の価格が安定しています。米粉用の米の需要は年々増加傾向にあり、農水省のデータによれば、2022年度の需要量は4.3万トンに達し過去最高を記録する見込みです。食品メーカーに加えて、飲食業界でも米粉を使用した商品開発が活発に進められています。

米粉とは何か?

米粉はお米を細かく粉砕して作られる粉です。一般的な種類には、うるち米から生成される「上新粉」、もち米からの「もち粉」「白玉粉」「道明寺粉」などがあります。これらの米粉は、昔から団子や大福、まんじゅうなどの和菓子の材料として親しまれてきました。近年は製粉技術が向上し、さらなる微粉化が実現したことで、洋菓子やパンにも適した米粉が登場し、これによって商品のバリエーションが一段と広がっています。米粉は小麦粉を上回るアミロペクチン(デンプンの一種)を含み、しっとりとしたもちもち感が特徴です。また、スープに米粉を使用すると片栗粉の代わりにとろみが加わり、クッキーに用いるとカリッとした食感が楽しめるなど、調理方法によってさまざまな食感を引き出すことができます。

ライスフラワーブレッド

「米粉入りパン」は小麦粉と米粉の絶妙な組み合わせによって、外はカリッと、中はしっとりとしたもちもちの食感が特徴です。一方で、「米粉パン」は小麦粉を含まないため、グルテンフリーを求める人々や小麦アレルギーの方にも安心して楽しんでいただけるパンとして支持されています。ただし、焼きたてはふわふわとしているものの、時間が経つにつれて硬くなりやすく、食感が劣化してしまうことがあります。それに対し、最近では米粉100%でもふんわりとした食感が長持ちするパンの開発が進行しています。

ライスフラワーケーキ

製菓用の米粉を使うと、パウンドケーキやシフォンケーキ、パンケーキなどが、通常の小麦粉よりも水分をたっぷり含んでしっとりします。一方、スポンジケーキは、米粉で作るともちもちした食感が楽しめ、小麦粉で作ったものとは異なる仕上がりになります。

ライスヌードル

ご飯を利用した麺としては、ビーフンやベトナムのフォーが広く認知されていますが、最近ではうどん、ラーメン、パスタの分野でも米粉を使用した麺のバリエーションが増加しています。米粉ならではの滑らかな舌触りと独特のもちもちとしたコシが、多くの人々を魅了しています。丸亀製麺を運営するトリドールHDは、米粉麺を提供する香港発のスープヌードルチェーン「譚仔三哥(タムジャイサムゴー)」の日本1号店を2022年3月に東京・新宿にオープンしました。さらに、この先も店舗数を増やしていく予定です。

米粉使用のお好み焼きとチヂミ

米粉を用いることで、表面はサクサク、中はしっとりとした食感が生まれます。お好み焼きに使用する際には、長芋や山芋を入れなくてもふんわりとした仕上がりが可能です。

ライスフラワーの餃子

米粉を使った餃子は、特有のもちもちとした皮の食感が魅力です。焼き餃子はもちろん、特に水餃子にするとそのもちもち感がさらに際立ちます。味の素冷凍食品からも小麦・卵・乳不使用の「米粉でつくったギョーザ」が登場し、SNSで注目を集めました。

ライスフラワーグラタン

一般的な小麦粉を使用するホワイトソースと異なり、米粉は粒子が細かくダマになりにくいという特性があります。そのため、米粉と豆乳を使ったホワイトソースは、アレルギーを持つ方はもちろん、健康やダイエットを重視する人々からも人気を集めています。

グルテンを含まない

グルテンとは、小麦粉に存在するタンパク質の一種であり、パン作りの際に生地の弾力や粘りを生み出す重要な役割を果たします。しかし、グルテンは一部の人にアレルギー反応を引き起こしたり、肥満や体調不良の原因となる場合もあります。このため、グルテンを含まない食品を選ぶ「グルテンフリー」が世界的に注目されています。グルテンフリーの一例が米粉であり、米粉を使って焼いたパンは小麦粉のパンよりも水分を多く含むため、満腹感が得られやすく、ダイエット中の人々に人気です。飲食店が米粉を採用することは、小麦粉の価格上昇によるコスト対策に加え、新たな顧客層を引き寄せ、競合店との差別化に寄与します。

油の吸収量が少ない

米粉を使うと、小麦粉よりも油をあまり吸わないため、揚げた料理が軽くて健康的な仕上がりになります。さらに、時間が経っても脂っぽくならず、食感の良いサクサク状態が長持ちします。

豊かな栄養素

お米には炭水化物だけでなく、タンパク質や脂肪、ビタミンB1、ビタミンEなどが含まれており、栄養的にも優れた食品です。また、タンパク質の質を示すアミノ酸スコアは、小麦粉と比べておよそ1.6倍とされています。

経済的負担は大きい

農林水産省の情報によると、2021年度における業務用の1キロあたり価格では、小麦粉が110円に対し、米粉は120〜390円と大きな違いがあります。小麦価格の上昇により、小麦粉と米粉の価格差は縮小しつつあるものの、現在のところコスト面での課題は依然としてあります。米粉が高価である理由は、小麦に比べて生産量が非常に少なく、輸送時のコストが高くなってしまう点にあります。将来的には、米粉の需要増加と生産量の増大により、輸送コストと販売価格の低下が期待できるかもしれません。

汚染のリスクに警戒を

米粉100%の料理を提供する際は、小麦やグルテンの混入を防ぐための対策が重要です。小麦アレルギーが重度の方は、空気中の微量な小麦粉でも強いアレルギー反応を引き起こす可能性があります。そのため、材料にグルテンが含まれていないか確認したり、米粉専用の調理施設や器具を使用するなどの配慮が求められます。

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