紅白まんじゅうのルーツと込められた意味
紅白まんじゅうは、入学や卒業、結婚といった人生の転換期や、家を建てる際の上棟式といった慶びの席でよく見かける和菓子です。ある通販サイトのスタッフも、めでたい時に配られる紅白まんじゅうを、人生の節目となるイベントでよく目にした記憶があり、幼い頃には上棟式で紅白の餅と小銭が撒かれるのを楽しみにしていたそうです。また、紅白まんじゅうはお土産としても人気があり、ちょっとしたおやつとして親しまれています。しかし、お祝いの席でよく見かける紅白まんじゅうですが、その由来や意味について詳しく聞かれると、答えられない人もいるのではないでしょうか。ここでは、紅白まんじゅうの歴史的な背景や、紅白の色が持つ意味、そしてまんじゅうの形が選ばれた理由について詳しく解説していきます。

「紅白」の歴史:源平合戦から競技での使用へ

紅白まんじゅうに使われている紅白の色には、古い時代からの歴史と特別な意味が込められています。この色の始まりは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて起こった源氏と平家による戦い、「源平合戦」まで遡ると言われています。源平合戦は、1177年から1185年にかけて全国各地で繰り広げられた、源氏と平家という武士のリーダー同士の戦いです。この戦いで、源氏は白い旗を、平家は赤い旗をそれぞれのシンボルとして使用しました。この出来事がきっかけとなり、日本では紅白が対立する二つのグループを区別する色として使われるようになったとされています。運動会で紅組と白組に分かれて競い合った経験がある人もいると思いますが、その色のルーツは源平合戦にあるのです。さらに、柔道や剣道などの武道では、選手が紅白の帯やタスキを着け、審判が紅白の旗で判定する場面が多くあります。このように、紅白は競技の場で両者を区別し、勝敗を決める色として、日本の社会に深く根付いています。

「赤」ではなく「紅」?その理由と「赤飯説」

紅白という組み合わせは、とても分かりやすいですが、なぜ「赤」ではなく「紅」が使われることが多いのでしょうか。これは、中国で「紅」がおめでたい色とされていることが関係しています。日本語では、「赤字」や「赤の他人」のように、あまり良くない意味で「赤」という言葉を使うことがあります。一方で、「紅一点」や「紅葉」のように、「紅」は美しさや華やかさを表す言葉として使われることが多いです。 また、紅白が縁起が良いとされる理由には、様々な説がありますが、特に有力なのが「赤飯説」です。この説では、白い色がお米を象徴するとされています。日本は古くから稲作が盛んな国であり、豊作を願って収穫の際には神様に感謝を捧げてきました。赤い色は、昔から悪いものを避ける力があると信じられており、風水では生命力や活力を象徴する色とされています。日本では、昔からお祝いの時に赤飯を炊く習慣があり、赤飯の色と白米の白をとって紅白を縁起の良い組み合わせにしたという考え方です。この説は、日本の食文化と古い信仰が結びついた興味深い話と言えるでしょう。

紅白が示す人生の区切りと日本の伝統的な幕

源平合戦に由来する色の伝統に加えて、紅白がおめでたい場面で使われるのには、昔からの色の意味が関係しています。日本では古くから、赤色は命の誕生や祝い事など、おめでたいことを意味する色とされてきました。一方、白色は死装束の色にも見られるように、死や別れ、清らかさ、神聖さを意味する色として捉えられています。このように、赤が「生」や「喜び」を、白が「死」や「別れ」を象徴することから、紅白の組み合わせは「人生そのもの」を表している、あるいは「人生の節目」を表現していると考えられ、お祝い事だけでなく人生のあらゆる場面を表す色として、めでたい席で使われるようになったのです。 日本では、幕の色でイベントを演出する習慣があります。入学式や卒業式、結婚式といったお祝いの席では、紅白幕がよく使われます。地鎮祭や上棟式などの神事では、青白幕(浅黄幕)が使われます。浅黄とは、水色よりも少し濃い青色のことで、神様と繋がるための神聖な色とされています。また、お葬式などの弔事では、黒白幕(鯨幕)が使われます。黒は元々高貴な色でしたが、西洋文化の影響で弔いの色としても認識されるようになりました。その他にも、歌舞伎で使われる定式幕(黒、柿、萌黄の三色)や、神社やお寺で使われる五色幕(青、黄、赤、白、黒)など、日本には様々な色の組み合わせの幕があります。これらの幕は、「白」との組み合わせが多いことに気づかされます。古代から日本人にとって白は特別な色であり、悪いものを祓う意味や、新しく生まれ変わるという意味が込められています。結婚式の白無垢や死装束が白いのはその象徴です。白に別の色を加えることで、その色がより強調されているように感じられます。このように、源平合戦で紅白の組み合わせが定着し、中国でおめでたい色とされる「紅」と「白」の組み合わせがお祝いの場で使われるようになったと考えられています。

「饅頭」のルーツは中国:孔明の知略と日本への伝播

慶事の席で様々なお菓子がある中、なぜ「まんじゅう」が選ばれるのか。その理由を探るには、言葉の由来と歩みを詳しく見ていく必要があります。「饅頭」という漢字表記に「頭」の字が使われているのはなぜでしょうか。実は、まんじゅうは中国が発祥であり、その語源も「蛮頭(マントウ)」から変化したものなのです。「蛮頭」を生み出したのは、「三国志」に登場する蜀の宰相、諸葛孔明だと言われています。南蛮を平定して帰る途中、孔明率いる軍は瀘水(ろすい)の氾濫によって足止めを食らってしまいます。現地の言い伝えでは、蛮人49人の首を川の神に捧げれば、氾濫が鎮まるとされていました。しかし、孔明は人柱を立てる代わりに、小麦粉を練って牛や羊の肉を詰めた、人の頭に似せた供物を捧げることを決断。すると、川の氾濫が収まったと伝えられています。この故事から、小麦粉で肉を包んで蒸したものを「蛮頭(マントウ)」と呼ぶようになったそうです。ちなみに、現在の中国で「饅頭(マントウ)」といえば、小麦粉を酵母で発酵させて蒸したパンのことで、具は入っていません。小麦栽培に適した中国北部では、今も日常的に食されています。

日本独自の「あんこ饅頭」と「上用饅頭」の誕生秘話

中国生まれの「蛮頭(マントウ)」が日本に伝来したのは、室町時代の奈良のことでした。中国の「元」で禅宗を学び、長年修行を積んだ龍山徳見という僧が帰国する際、彼を慕って来日した弟子の林浄因(りんじょういん)が、日本に饅頭を伝えました。当初の中国饅頭は肉を包んだものでしたが、僧侶であった林浄因は、肉食を避けて小豆を使ったあんこ入りの饅頭を考案しました。これが、現在の日本で愛される饅頭の原型と言われています。 その後、日本に帰化した林浄因の子孫、林紹絆(りんしょうばん)は、中国で製菓技術を学び、小麦粉の代わりに山芋と米粉を使った皮で餡を包んだ饅頭を広めました。これが「上用(じょうよう)饅頭」の始まりです。その子孫は、和菓子店「塩瀬総本家」として、現在もその味を伝えています。ここでいう薯蕷とは山芋のことです。室町時代、饅頭は寺院や貴族の間で広まりましたが、高級品であり、天皇や将軍など限られた人々に献上されるものでした。「上に用いる饅頭」として、薯蕷饅頭が「上用饅頭」と呼ばれるようになったのです。庶民が口にできるようになったのは、世の中が安定し、南蛮貿易や薩摩からの砂糖供給が増えた江戸時代以降です。紅白まんじゅうも上用饅頭の一種で、入学祝いや結婚式の引き出物に使われるのは、「上に用いる」という言葉が示すように、相手への敬意を表す意味が込められているからです。この伝統は、単なるお菓子としてだけでなく、贈る側の心遣いを伝える象徴として、現代に受け継がれています。

小豆の「魔除け」と「縁起物」としてのパワー

まんじゅうが選ばれる理由の一つに、主原料である小豆が持つ意味があります。小豆は古くから、その鮮やかな赤色によって邪気を払い、災いを避ける力があると信じられてきました。そのため、お祝いの席にふさわしい縁起の良い食材とされてきたのです。小豆の持つ力は、人生の節目を迎える人々にとって、新たなスタートを切る際の守り神、幸運を願う象徴としての意味を持っています。古来より、日本では赤い食べ物、特に赤飯がお祝いの席で供されてきたことからも、小豆が持つ「邪気を払う力」と「生命力」の象徴としての価値が、深く根付いていたことが分かります。

他の縁起物との比較:紅白まんじゅうが愛される理由

お祝いの席で選ばれる縁起の良いお菓子としては、紅白まんじゅう以外にもバームクーヘンや金平糖などがあります。しかし、紅白まんじゅうが特に人気を集めるのには、明確な理由があります。バームクーヘンは、年輪のように見えることから長寿や繁栄を願う意味がありますが、縁起物としての認識は世代によって異なり、特に年配の方には浸透していない場合があります。金平糖は、時間をかけて丁寧に作られることから、人生の歩みや努力の結晶を象徴する縁起物とされます。しかし、その小ささや独特の形状から、万人受けするという点では、まんじゅうに及ばないかもしれません。一方、紅白まんじゅうは、伝統的な色合いと小豆の持つ魔除けの意味、そして誰もが知る親しみやすい形から、世代や性別を問わず広く受け入れられています。多くの人に愛され、魔除けの意味も持つ紅白まんじゅうは、お祝いの席で最も選ばれる縁起物として、確固たる地位を築いているのです。

賞味期限と購入時の注意点

紅白まんじゅうは、結婚式や入学式といった人生の特別な日に、お祝いの気持ちを込めて贈られることが多いお菓子です。しかし、注意すべき点があります。それは、一般的な和菓子であるまんじゅうの賞味期限が比較的短いことです。商品の種類や製造方法、保存状態によって異なりますが、製造日から2日~3日程度の商品も少なくありません。そのため、贈られたり購入したりした際は、賞味期限をしっかりと確認し、できるだけ早く味わうようにしましょう。特に大人数に配る場合は、賞味期限を考慮して計画的に準備することが重要です。
また、紅白まんじゅうは、一般的に常時販売されている商品ではなく、特別な注文品として扱われることがほとんどです。そのため、お店に行けばいつでも購入できるとは限らず、事前に予約が必要な場合が多いです。お店によっては購入数の制限があったり、インターネット通販では送料が商品価格よりも高くなる場合もあるなど、購入時にはいくつか注意点があります。例えば、家族のお祝い事で紅白まんじゅうを購入しようとした際、予約が必要だったり、一定数以上の購入が必要となることもあります。したがって、紅白まんじゅうを購入する際は、事前に店舗に確認し、予約するなど計画的に準備することをお勧めします。

まとめ

紅白まんじゅうは、単なるお菓子ではなく、日本の歴史や文化、人々の願いが込められた特別な存在です。「紅白」の色には、平安時代の源平合戦に由来する歴史的背景があり、赤は「生」や「慶び」、白は「死」や「別れ」を意味し、合わせて「人生そのもの」や「人生の節目」を象徴する深い意味が込められています。さらに、「紅」が中国で縁起の良い色とされることや、「赤飯」に由来するという説もあり、その縁起の良さをより一層引き立てています。「まんじゅう」の起源は、中国の諸葛孔明の「蛮頭」の伝説に遡り、日本には室町時代に林浄因によって伝えられ、肉食を避ける僧侶のために小豆あんが考案されました。その後、林浄因の子孫によって山芋と米粉を使った格式高い「上用饅頭」として発展し、かつては限られた身分の人々だけが味わえた高級品として、贈る相手への敬意を表す意味合いもありました。また、主要な材料である小豆には「邪気払い」や「厄除け」の効果があると信じられてきました。バームクーヘンや金平糖など、他の縁起物のお菓子と比べても、紅白まんじゅうは伝統的な色彩と小豆の意味、そして幅広い世代に親しまれる味わいから、お祝いの席に最適と言えるでしょう。人生の門出や節目を祝う際に贈られる紅白まんじゅうは、贈る側の心遣いと、受け取る人の未来への幸せを願う気持ちが込められた、日本の伝統が息づく和菓子です。ただし、賞味期限が短く、予約が必要な場合が多いので、購入の際は事前に確認と計画を立てることが大切です。日本の美しい文化を象徴する紅白まんじゅうを、大切な人との特別な瞬間にお楽しみください。

紅白まんじゅうの「紅白」の色にはどんな意味があるの?

紅白まんじゅうの「紅白」の色には、古くから伝わる深い歴史と象徴的な意味があります。その起源は平安時代の「源平合戦」にあり、源氏の白旗と平家の赤旗に由来するとされています。また、日本では古来より赤色が「お祝い事」「誕生」「生命」を、白色が「純粋さ」「別れ」「死」を象徴すると考えられてきました。この二つの色を組み合わせることで「人生そのもの」や「人生の転換期」を表現すると解釈され、お祝いの席で用いられるようになったのです。さらに、「紅」は中国で縁起の良い色とされており、日本の「赤飯」の色と白米の白を組み合わせた「赤飯説」も、縁起が良いとされる理由の一つと考えられています。

なぜお祝い事には「まんじゅう」が選ばれるの?

お祝い事に「まんじゅう」が選ばれる理由はいくつか考えられます。一つは、まんじゅうの主原料である小豆に「邪気を払う」や「厄を避ける」効果があると信じられ、縁起の良いものとされてきたからです。もう一つは、かつてまんじゅうが貴族などの限られた人々しか口にできなかった高貴な「上用饅頭」であり、お客様を敬う意味を込めてお祝いの席にふさわしいとされてきた歴史的な背景があるためです。さらに、中国の諸葛孔明が民衆を犠牲にしないために肉まんを作ったという伝説も、その起源に深く関わっています。

紅白饅頭、その歴史を紐解く

紅白饅頭に使われる「紅白」という色の組み合わせは、遠く平安時代の「源平の戦い」(1177年~1185年)に起源があると言われています。源氏が白旗、平家が赤旗を掲げて戦ったことから、対立する二つの勢力や、慶事の場で紅白が用いられるようになったと考えられています。一方、饅頭そのものは、室町時代に林浄因によって中国から日本へ伝えられました。彼が肉餡の代わりに小豆餡を使ったことで、日本独自の進化を遂げ、祝いの席に欠かせない存在となっていったのです。


紅白まんじゅう