紫実(ムラサキシキブ):秋を彩る日本の美
秋の深まりとともに、日本の野山を彩るムラサキシキブ。その名の通り、紫色の美しい実が特徴的な落葉低木です。古くから日本に自生し、山地の湿地や森林で見ることができます。緑の葉が紫色に変化し、やがて黄色く紅葉する中で、鮮やかな紫色の実が輝きを増す様は、まさに日本の秋の美を象徴するかのようです。英名ではJapanese beautyberry(日本の美しい実)とも呼ばれ、その魅力は世界にも知られています。

ムラサキシキブの概要と魅力

ムラサキシキブは、秋に美しい紫色の実をつける、日本原産の落葉低木です。古くから日本の山地や森林に自生しており、その存在は自然の中でひっそりと輝いています。葉は、実がなり始める初秋には緑色をしていますが、秋が深まるにつれて紫色へと変化します。黄色く色づく紅葉と紫色の実のコントラストは息をのむほど美しく、英名ではJapanese beautyberry(日本の美の実)とも呼ばれています。実は落葉後も比較的長く枝に残りますが、冬になると自然に落下します。

コムラサキの特性と園芸での普及

ムラサキシキブの近縁種として、コムラサキという園芸品種があります(コムラサキシキブと呼ばれることもあります)。市場では、コムラサキもムラサキシキブとして販売されていることが多く、園芸店で見かけるムラサキシキブの多くはコムラサキです。そのため、一般家庭や公園などで見られる、紫色の実がたわわに実った庭木のほとんどはコムラサキです。また、花屋さんで枝物として販売されている、実がたくさんついた枝も、コムラサキであることがほとんどです。枝垂れる枝を生かしたフラワーアレンジメントやリースの材料としても人気があります。ムラサキシキブとコムラサキは、樹高や枝ぶり、実の付き方などに違いがありますが、育成方法に大きな差はありません。ここでは、庭に植えられている木がムラサキシキブなのか、それともコムラサキなのか、その見分け方をご紹介します。

花丈(樹高)による見分け方

ムラサキシキブは樹高が2~3mになるのに対し、コムラサキは1~2mと、比較的コンパクトで低めの樹高です。

実のつき方による見分け方

ムラサキシキブは枝に実がまばらにつきますが、コムラサキは枝に密集して、びっしりと実がつきます。

枝ぶりで見分ける

[紫実]の代表格であるムラサキシキブは、どちらかというと上方向や横方向に枝を伸ばします。一方、コムラサキは枝がしだれるように垂れ下がって成長するのが特徴です。ムラサキシキブの枝が大きく枝垂れることはありません。したがって、[紫実]が密集して付き、枝がしだれているように見える場合は、コムラサキである可能性が高いでしょう。

葉の形状で見分ける

ムラサキシキブの葉の縁は、全体にわたって鋸歯、つまりギザギザの形状をしています。対して、コムラサキの葉は、先端部分の半分程度に鋸歯が見られます。実がまだついていない時期には、この葉の形状の違いが、[紫実]の種類を見分ける上で重要なポイントとなります。

葉と実の位置関係で見分ける

ムラサキシキブは、葉と実がほぼ同じ場所から生えてくるように見えますが、コムラサキの場合、葉と実を結ぶ茎の付け根が、2~3ミリほど離れているのが特徴です。もし散歩中に見かけた[紫実]がどちらの種類かを知りたい場合は、葉や実がついている時期であれば、これらの違いを知っておくと容易に見分けられます。冬に葉が落ちている時期は見分けが難しいかもしれませんが、樹高が高く、枝が上や横に広がっているようであればムラサキシキブ、樹高が低く、枝が垂れ下がっているようであればコムラサキと判断すると良いでしょう。園芸店などで購入する際は、プランツタグに「ムラサキシキブ」と記載されていても、実際には「コムラサキ」であることが少なくないようです。もしも「ムラサキシキブ」を確実に手に入れたい場合は、両方の種類を扱っているお店で購入することをおすすめします。

9月13日の花言葉:タマスダレ

タマスダレは、細長い葉と純白の6枚の花びらが上向きに咲く姿が印象的な、夏から秋にかけて開花する常緑の球根植物です。一度植えれば、その後何年も植えっぱなしでも花を咲かせ、環境が適していれば分球やこぼれ種によって自然に増えていくこともあります。花一つ一つの寿命は短いものの、次々と花茎が伸びて開花するため、長期間にわたって楽しむことができます。群生して咲く姿は美しく、花壇や芝生の縁取りなどにまとめて植えられることが多いです。タマスダレは丈夫で日本の気候にも順応しやすく、よく増えるため、半野生化している場所も少なくありません。寒冷地では冬に葉が枯れてしまうことがありますが、温暖な地域では常緑のまま越冬し、毎年美しい花を咲かせてくれます。タマスダレの別名である「レインリリー」は、乾燥した状態が続いた後に雨が降ると一斉に花を咲かせることに由来しています。また、和名は、純白で宝石のような花を「玉」、細長い葉が集まっている様子を「すだれ」に見立てて名付けられたと言われています。タマスダレの学名「ゼフィランサス(Zephyranthes candida)」は、タマスダレがアメリカ大陸からヨーロッパへと伝わった際に、「西風が運んできた花」と解釈されたことから、ギリシャ語で西風を意味する「zephyros」と、花を意味する「anthos」を組み合わせて命名されたそうです。種小名のcandidaは「純白」を意味します。タマスダレの「純白な愛」という花言葉は、その純白な花の色に由来するとされ、「期待」という花言葉は、学名Zephyranthesが「西風が運んできた花」という意味を持つことから、「風が便りを運ぶ(期待)」という連想によって付けられたと言われています。タマスダレはヒガンバナ科の植物であり、全体に毒性があるため注意が必要です。葉がニラに、球根がラッキョウやノビルに似ているため、栽培する際には、食用植物と区別できるよう、植える場所を考慮することが大切です。

要注意!紫色の実をつける有毒植物:ヨウシュヤマゴボウ

熟した紫色の実を潰すと、まるでブドウジュースのような濃い色の液体が出てきます。子供の頃、その汁で色水遊びをしたことがある方もいるかもしれません。「ゴボウ」という名前が付いていますが、根には有害な成分が含まれており、誤って口にすると、下痢や嘔吐といった中毒症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。花は主に9月頃に見られ、私たちが普段食べているゴボウとは全く異なる植物です。ゴボウはアザミに似た花を咲かせるキク科の植物です。ヨウシュヤマゴボウは、場所によっては2メートルほどの高さまで成長し、こんもりと茂りますが、冬には枯れてしまう一年草です。原産地は北アメリカで、実だけでなく茎も赤みを帯びています。この赤い色素はベタシアニンと呼ばれ、オシロイバナやホウレンソウ(茎の根元部分)、ビーツ(根)などにも含まれる成分です。特に注意が必要なのは根で、有害な成分が多く含まれています。しかし、葉にも同様の成分が含まれており、若葉の頃はつややかで美味しそうな野草に見えるため、誤って食べてしまう人もいます。しかし、驚くことに、実にはほとんど有害な成分が含まれていません。これは、鳥に実を食べさせて種子を運んでもらうための、ヨウシュヤマゴボウの生存戦略と考えられています。ヨウシュヤマゴボウの「ヨウシュ」は、外来種であることを意味しています。ちなみに、「ヤマゴボウ」と表示されて販売されている漬物は、多くの場合モリアザミの根を使用しています。モリアザミはキク科に属しており、ヨウシュヤマゴボウとは全く異なる植物です。
紫実