知られざるじゃがいもの栄養価:ダイエットの味方?

「じゃがいもは太る」と思っていませんか?実は、それは大きな誤解です。意外にもカロリーは控えめで、ご飯の代わりに取り入れることでダイエットの強い味方になる可能性を秘めているんです。腹持ちが良い食物繊維や、美容に嬉しいビタミンも豊富。今回は、知られざるジャガイモの栄養価に迫り、賢く活用する方法をご紹介します。調理法に気をつければ、美味しく健康的な食生活をサポートしてくれるはずです。

水溶性ビタミン群:美肌、代謝、ストレスケアに貢献

じゃがいもには、体に必要な水溶性ビタミンが豊富に含まれています。特に代表的なのがビタミンCです。ビタミンCは、一般的に酸味のある果物や緑黄色野菜に多く含まれるイメージがありますが、じゃがいもにも豊富に含まれています。ビタミンCは水溶性で熱に弱い性質がありますが、じゃがいものビタミンCはでんぷんに守られているため、加熱しても比較的壊れにくいという特徴があります。ビタミンCは抗酸化作用があり、体内で発生する活性酸素を抑制することで、細胞の損傷を防ぎ、老化防止や免疫機能の維持に役立ちます。さらに、メラニンの生成を抑えたり、できてしまったメラニン色素を薄くする働きもあるため、日焼けの予防や改善にも効果的です。ただし、じゃがいもの種類によってビタミンCの含有量は異なる場合があります。

その他の水溶性ビタミンとしては、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸などが含まれています。ビタミンB2は、他の水溶性ビタミンに比べて水に溶けにくく、熱にも強いため、加熱調理に適しています。体内で脂質や糖質の代謝を促進する働きがあり、成長を促進し、健康な髪や皮膚の生成にも関与します。ビタミンB6はアミノ酸の代謝を補助する補酵素として働き、タンパク質の合成や分解に不可欠です。ナイアシンは、補助酵素として様々な酵素の働きを助け、皮膚や粘膜の健康を維持し、細胞の生まれ変わりをサポートします。血行促進作用や二日酔いの予防にも効果が期待されるなど、様々な役割があります。パントテン酸も水溶性ビタミンの一種で、補酵素としてストレスを和らげる働きを持つ副腎皮質ホルモンの合成に関与しています。これらの水溶性ビタミンが複合的に作用することで、じゃがいもは体の様々な機能をサポートし、日々の健康維持に貢献します。

ミネラルと食物繊維:腸内環境、血圧、骨の健康をサポート

じゃがいもには、健康に欠かせない食物繊維やミネラル、そして主要なエネルギー源である炭水化物も豊富に含まれています。食物繊維(総量)は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の総称で、腸内環境を整える上で重要な役割を果たします。便秘の解消に繋がり、血糖値の上昇を穏やかにしたり、血中コレステロール濃度を低下させたりする働きがあるため、糖尿病や生活習慣病の予防にも効果的です。また、食物繊維には腹持ちを良くする効果もあります。じゃがいもは、これら2種類の食物繊維に加え、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)も含まれており、食物繊維を摂取するのに適した食材と言えるでしょう。

難消化性でんぷんは、「レジスタントスターチ」とも呼ばれるでんぷんの一種で、食品成分表などでは食物繊維に分類されています。通常のでんぷんは胃や小腸で消化・吸収されますが、難消化性でんぷんは消化されずに大腸まで届くという特徴があります。大腸では善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きがあるため、便秘や下痢になりにくくしたり、免疫力を高めたりする効果が期待でき、健康維持に役立つ成分として注目されています。

ミネラル類では、じゃがいもはカリウムを豊富に含んでおり、可食部100gあたり410mg以上が含まれています。カリウムは、体内の過剰な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあるため、むくみの予防と改善、さらには高血圧の予防に貢献します。加えて、筋肉の正常な収縮と弛緩にも深く関係しており、体の動きをスムーズに保つ上で重要な役割を担っています。マグネシウムも必須ミネラルの一つで、カルシウムとともに丈夫な骨や歯の形成に欠かせない成分です。高血圧や様々な生活習慣病の予防にも役立つことが知られています。そして、炭水化物は、三大栄養素の一つとして、体や脳を動かすための主要なエネルギー源となります。しかし、炭水化物の過剰摂取は肥満の原因となる可能性もあるため、適量を摂取することが大切です。じゃがいもはこれらの栄養素をバランス良く含んでおり、エネルギー供給から体の機能維持、疾病予防に至るまで、幅広い健康効果をもたらす食材と言えるでしょう。上記の主要な栄養素のほか、じゃがいもにはビタミンB群(葉酸含む)なども含まれており、特に成長期のお子さんには積極的に食べさせたい食材です。料理だけでなく、じゃがいも餅やパンケーキ、ピザなどのおやつとしてもおすすめです。

皮に含まれる鉄分とポリフェノール「クロロゲン酸」

可食部だけでなく皮にも多くの栄養素が含まれています。皮を剥いて捨てるのは、栄養素を摂取する上で非常にもったいない行為です。皮には、健康維持に不可欠なミネラルやポリフェノールが豊富に含まれており、これらを余すことなく摂取することで、さらなる健康維持効果が期待できます。具体的には、皮には鉄分が含まれています。鉄は必須ミネラルの一種であり、体内の組織や細胞へ酸素を運ぶ役割を担っており、体を動かす上で重要な成分です。鉄分を積極的に摂取することで、貧血の予防にも繋がります。

また、皮にはクロロゲン酸というポリフェノールの一種も豊富に含まれています。クロロゲン酸はコーヒーの成分として知られていますが、じゃがいもにも含まれており、特に皮と皮に近い部分に多く存在します。クロロゲン酸には抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去することで細胞の損傷を防ぎ、老化防止に役立つことが知られています。さらに、血糖値の上昇抑制や血流改善作用、糖尿病や脂肪肝の予防にも効果を発揮するなど、その健康効果は多岐にわたります。これらの栄養素は皮のすぐ下に集中しているため、じゃがいもを調理する際には、可能な限り皮ごと利用することで、貴重な栄養素を効率的に摂取し、日々の健康増進に役立てることができます。丸ごとふかしてじゃがバターや、皮付きのベイクドポテトなどもおすすめです。

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調理法別の栄養素保持・吸収のコツ

じゃがいもに含まれる豊富なビタミンCやカリウムといった水溶性の栄養素は、調理の過程で水に溶け出しやすいという性質があります。そのため、変色を防いだり、余分なでんぷんを取り除くために水にさらすことが一般的ですが、過度にさらすとこれらの栄養素が失われてしまう可能性があります。ビタミンCやカリウムを効率的に摂取したい場合は、水にさらす時間を最小限に抑えるか、水を使用しない調理法を選択することが望ましいです。また、皮をむいたり細かく切るほど栄養素の流出が促進されるため、丸ごと調理することも有効な手段です。

調理方法としては、カリウムのような水溶性ミネラルは、茹でるよりも蒸し料理、焼き料理、揚げ料理などが適しています。これらの方法では、栄養素が水に溶け出すリスクが低減されるため、効率的な摂取が期待できます。カレーやシチュー、肉じゃがといった煮込み料理は、溶け出した栄養素を汁ごと摂取できるため、理想的な調理法と言えるでしょう。これらの料理では、じゃがいもから溶け出した栄養素が煮汁全体に広がるため、具材と汁を一緒に食べることで、じゃがいも本来の栄養価を最大限に活用できます。じゃがいもに含まれるビタミンCはでんぷんによって保護されているため熱に比較的強いですが、煮込み料理のように長時間加熱する場合でも、煮汁を一緒に摂ることで栄養素の損失を最小限に抑えることができます。したがって、煮込み料理はじゃがいもの栄養素を効果的においしく摂取できる合理的な調理法と言えます。

風通しの良い涼しい場所での保存

じゃがいもの栄養価を保持し、安全に長期間保存するためには、適切な保存方法が重要です。じゃがいもの保存に適した温度は、一般的に5~7℃程度が望ましいとされています。長期保存の場合は冷暗所で5~7℃程度が推奨されますが、4℃以下になると低温障害が発生する可能性があるため注意が必要です。具体的には、直射日光が当たらず、涼しい場所が理想的です。直射日光はじゃがいもの皮を緑色に変色させ、有害なソラニンを生成する原因となります。例えば、キッチンのシンク下やパントリー、または玄関の土間など、涼しく光が当たらない場所が適しています。また、じゃがいもは呼吸をしているため、通気性の悪い場所で密閉して保存すると、湿気がこもり腐敗しやすくなります。ネット状の袋に入れたり、新聞紙で包んでかごに入れるなど、空気が適切に循環するように工夫することで、品質を長く保つことができます。購入時には、芽が出ていたり、皮が緑色になっている部分があるじゃがいもは、食中毒のリスクがあるため避けるようにしましょう。また、じゃがいもに傷をつけたり、水洗いすると腐敗しやすくなるので注意が必要です。リンゴと一緒に保存すると、リンゴから放出されるエチレンガスの作用により、じゃがいもの発芽を抑制する効果が期待できます。したがって、リンゴが手に入りやすい時期には、じゃがいもの保存箱にリンゴを一緒に入れてみるのも有効な方法です。これらの対策により、じゃがいもの鮮度と栄養価を維持し、いつでも美味しい状態で調理に活用することが可能になります。

暗所保存でソラニン増加を抑制

じゃがいもを安全に保存するためには、暗所での保管が非常に大切です。光が当たると、じゃがいもの皮は緑色に変化し始めますが、これはソラニンという天然の有害物質が生成・増加しているサインです。ソラニンは、ジャガイモ自身が外敵から身を守るために作り出すもので、人が大量に摂取すると、吐き気、下痢、腹部の痛み、頭痛といった食中毒の症状を引き起こすことがあります。特に、皮の緑色化はソラニンの増加を示す明確な兆候であり、そのような状態のじゃがいもは食べるべきではありません。したがって、じゃがいもを保管する際には、光を完全に遮断できる暗い場所を選ぶことが不可欠です。たとえば、段ボール箱に入れたり、布で覆ったり、光を通さない袋に入れたりするなど、光に触れないように工夫しましょう。理想的な保存温度は10℃程度ですが、20℃を超えると芽が出やすくなるため、冷蔵庫に入れる必要はありません。このようにすることで、ソラニンの生成を抑え、じゃがいもを安全に、そして長く保存することができ、食中毒のリスクを効果的に減らすことができます。

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冷蔵庫での保存リスクとアクリルアミド生成への注意

じゃがいもの保存場所として、冷蔵庫は適しているように思えるかもしれませんが、実は低温での保存には注意すべき点があります。じゃがいもを冷蔵庫のような5℃以下の低温環境で保存すると、じゃがいもに含まれるデンプンが糖に変わり、甘みが増すことがわかっています。これは「低温障害」と呼ばれる現象で、ジャガイモにとっては自然な反応です。しかし、問題となるのは、この糖分が増えたじゃがいもを120℃以上の高温で調理する場合です。特に、揚げ物や炒め物のように高温にさらされる調理法では、糖とアミノ酸がメイラード反応を起こし、アクリルアミドという有害物質が発生しやすくなります。農林水産省の説明によると、アクリルアミドは神経毒性や発がん性が懸念される物質であり、健康への悪影響が指摘されています。そのため、もし誤ってじゃがいもを冷蔵庫で保存してしまった場合は、高温での調理、特に揚げる調理は避けることを強くおすすめします。代わりに、煮る、蒸す、焼く(ただし焦げ付かせないように低温で)といった調理法を選ぶことで、アクリルアミドの生成リスクを減らし、より安全にじゃがいもを味わうことができます。この知識を持つことで、じゃがいもの保存と調理における危険を回避し、食生活の安全性を向上させることができるでしょう。

まとめ

じゃがいもは、皮をむかずに蒸した場合、100gあたり約76kcalというヘルシーな食品でありながら、ビタミンC、ビタミンB群(葉酸も含む)、食物繊維(レジスタントスターチなど)、カリウム、マグネシウムといった、私たちの健康維持に不可欠な栄養成分をバランス良く含んでいます。この記事で紹介した情報を参考に、日々の食卓にジャガイモを上手に取り入れ、より健康的で楽しい食生活を送り、様々な品種の食べ比べを通じて、じゃがいもの美味しさと栄養を存分に味わってみてください。

じゃがいもの皮は食べても大丈夫?

ジャガイモの皮には、鉄分、クロロゲン酸、食物繊維といった栄養素が豊富に含まれており、基本的には安心して食べることができます。特に皮ごと調理することで、これらの栄養素を効果的に摂取することが可能です。ただし、皮が緑色に変色している部分や芽には、ソラニンという天然の有害物質が多く含まれているため、必ずこれらの部分を取り除くか、変色が著しい場合はそのジャガイモ自体の使用を避けるようにしてください。調理する前には、表面の土や汚れをブラシなどで丁寧に洗い落とすことも重要です。

じゃがいもは加熱しても栄養が失われないの?

ジャガイモに含まれるビタミンCは水に溶けやすい性質を持ちますが、ジャガイモのデンプン質によって保護されているため、他の野菜のビタミンCと比較して、加熱による損失が比較的少ないという特徴があります。そのため、加熱調理を行っても、ある程度の栄養価を保つことができます。しかし、カリウムなどの水溶性ミネラルは、煮汁に溶け出しやすいため、煮込み料理のように汁ごと摂取できる調理法や、蒸し料理、焼き料理、揚げ料理などを選ぶことで、これらの栄養素も無駄なく摂取できます。また、水にさらしすぎると栄養素が流れ出てしまうため、注意が必要です。ソラニンやチャコニンは加熱しても減少することはないため、芽や緑色の部分は必ず取り除くようにしましょう。

じゃがいもを冷蔵庫で保存してはいけないのはなぜ?

ジャガイモを冷蔵庫のような5℃以下の低温環境で保存すると、ジャガイモに含まれるデンプンが分解され、糖に変化して糖度が増加します。この糖度の高いジャガイモを120℃以上の高温で加熱調理(特に揚げ物)すると、アクリルアミドという有害物質が生成されやすくなります。アクリルアミドは、神経毒性や発がん性が指摘されている物質であるため、冷蔵庫での保存は避け、風通しの良い涼しい暗所で保存することが推奨されます。もし誤って冷蔵保存してしまった場合は、揚げ物以外の、煮る、蒸す、焼く(低温で焦げ付かせないように注意)などの調理方法を選ぶようにしましょう。

じゃがいもの緑色の部分は食べられますか?

いいえ、じゃがいもの表皮が緑色になっている部分や、芽が出ている箇所は食用に適しません。これらの部位には、ソラニンという天然の有害物質が通常よりも多く蓄積されているためです。ソラニンを摂取すると、吐き気、下痢、腹部の不快感といった食中毒に似た症状が現れることがあります。緑色に変色している部分や芽は、できる限り取り除くようにしてください。変色の範囲が広い場合は、思い切ってじゃがいも全体を廃棄することを推奨します。ソラニンは加熱調理では完全に除去できないため、事前の取り除きが非常に重要です。

じゃがいも