近年、日本国内でのナッツ需要が高まる中、ピスタチオ栽培が注目されています。日本の気候や土壌に適した品種の選定が進められ、新たな農業の可能性として期待されています。国産ピスタチオの栽培は、輸入に頼らず地産地消を促進する試みであり、農業の多様化と地域振興に寄与することが目指されています。果樹園から食卓まで、新しい国産ナッツの挑戦が始まっています。
需要が増加中のナッツ類。国産化の動きが本格化!?
ナッツとは「硬い殻で覆われた果実の総称」であり、例としてクルミやアーモンド、ピーナッツが挙げられます。世界的にナッツ製品の市場は拡大しており、その理由として健康志向やグルテンフリー、植物由来の製品への関心の高まりが考えられます。
日本でも、「low-carb」の考えに基づいたナッツ製品や、塩や油不使用のナッツが健康食品として支持されています。また、コロナ禍の影響で、在宅時間が増えたこともあり、ナッツの消費量が拡大しています。
アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなどが人気ですが、最近ではヘーゼルナッツやピーカンナッツへの注目も集まっています。
しかしながら、日本で流通しているナッツ類の多くは輸入品です。

国産ナッツの生産が関心を集める
埼玉県は、未利用の農地を活用して、ピーカンナッツの栽培を推進する取り組みを開始しました。ピーカンナッツは、クルミに類似する木の実であり、クルミやアーモンドに比べて柔らかく、その殻は手で簡単に割ることができるのが特徴です。
ピーカンナッツの栽培は、収穫の容易さや収益性の高さが好評です。樹上で自然に熟した実が地面に落ちるため、集めるだけで収穫が可能です。また、2018年のデータではピーカンナッツは1kgあたり2,500円で取引され、これはアーモンドやクルミの取引価格を上回っています。
また、岩手県陸前高田市でも、ピーカンナッツを利用した農業再生と地域活性化に取り組んでいます。同市は東京大学や株式会社サロンドロワイヤルと連携し、地元経済の発展を目指すプロジェクトを推進しています。
2022年7月には、「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設」内にサロンドロワイヤルの加工施設が開設され、数年後には地元産のピーカンナッツを使用した商品が店頭に並ぶ予定です。
さらに、ヘーゼルナッツについても、国内での生産を目指す動きが広がりつつあります。長野県と山形県では、生産者が中心となって研究会が組織されました。
ヘーゼルナッツは、堅い殻で保護された木の実であり、濃厚な味わいや香りが評価されています。特に堅い殻は野生動物による被害を防ぐ効果があり、また、植え付けから収穫までの期間は数年を要しますが、手間が少ない栽培が利点です。
輸送に時間がかかると香りが損なわれやすいため、国産化への期待が高まっています。
日本でのナッツ栽培は難題が多い?!
ピーカンナッツやヘーゼルナッツの事例から、日本国内での栽培が不可能ではないことがわかります。ただし、どの農作物も同様に、最適な環境条件を整えることが求められます。
アーモンドに最適な気候は、成長期に乾燥した温暖な環境です。これはオリーブやレモンが好む気候とも一致し、露地栽培では瀬戸内海沿岸地域が向いています。
アーモンドは果樹の中でも乾燥に強いですが、梅雨時には病害虫の対策が必要です。また、寒さには弱いため、早春の低温から守るための防寒対策も重要です。
対照的に、クルミはマイナス30℃近くの低温に耐えるほど耐寒性がありますが、暑さには弱く、夏に高温が続く地域での栽培は難しいです。
それでも、埼玉県、岩手県、長野県、山形県などでは、ピーカンナッツやヘーゼルナッツの栽培が広がっており、地域ごとに適した条件を工夫することで、多様なナッツ類の栽培が期待されています。