秋の味覚として親しまれる柿。一口に柿といっても、その甘さや食感は品種によって大きく異なります。「甘柿」と「渋柿」の違いはもちろん、同じ品種でも育て方や熟し具合で糖度が変化する奥深さも魅力です。この記事では、柿の糖度に焦点を当て、甘さの秘密を徹底解剖。糖度を測る方法から、甘さを引き出す栽培の工夫、さらにはおすすめの甘柿品種まで、柿の甘さを存分に楽しむための情報をお届けします。今年の秋は、とっておきの甘い柿を見つけて、至福のひとときを過ごしてみませんか?
6位 次郎柿:シャキッとした甘さと、追熟による芳醇な香り
第6位に選んだのは、静岡県原産の完全甘柿「次郎柿」です。その美味しさから「富有柿」と比較されることも多く、しっかりとした歯ごたえと高い糖度が特徴です。一口食べると、心地よい食感とともに、濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。一般的に「次郎柿は追熟させると味が落ちる」と言われることもありますが、私の経験では、少し追熟させて柔らかくすることで、果汁が増し、よりジューシーで美味しくなるという発見がありました。この意外な一面こそが、次郎柿をランキングに選んだ理由です。シャキッとした食感はもちろんのこと、追熟によって生まれるとろけるような甘さと芳醇な香りもまた格別で、二つの異なる魅力を堪能できる贅沢な柿と言えるでしょう。旬の時期は10月中旬から11月中旬と短いですが、種がほとんどなく食べやすいので、見かけたらぜひお試しください。
5位 富有柿:甘さ際立つ柿の代表格、品種改良の礎
誰もが知る「富有柿」は、まさに“柿の王様”と呼ぶにふさわしい存在です。スーパーマーケットなどでもよく見かけるため、「柿といえば富有柿」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。富有柿がこれほどまでに広く愛される理由は、何と言ってもその「強い甘さ」にあります。収穫したてのシャキシャキした状態でも、追熟させてとろとろになった状態でも、一口食べれば思わず「甘い!」と声に出してしまうほどの濃厚な甘さを楽しめます。近年では糖度計の数値で富有柿を上回る品種も登場していますが、実際に口にした時の「体感的な甘さ」では、やはり富有柿が一番だと感じる方も多いようです。また、富有柿はその優れた特性から、多くの新品種の開発におけるベースとなっており、「新品種を生み出す偉大な父」とも言える存在です。旬は11月中旬から12月中旬です。
4位 平核無柿:種なし柿として全国で親しまれる代表品種
「平核無柿(ひらたねなしがき)」という名前を聞いても、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この平核無柿は、実は私たちが一度は口にしたことがある、日本で最も多く栽培され、流通している柿の品種の一つなのです。その最大の魅力は、名前の通り「種がない」ことです。そのため、非常に食べやすく、お子様からご年配の方まで、幅広い世代の方が安心して楽しむことができます。上品な甘さとフルーティーな味わいで、誰からも愛される「定番の柿」として、確固たる地位を築いています。さらに、新潟県の「おけさ柿」(別名:八珍柿)、山形県の「庄内柿」、和歌山県の「紀の川柿」といった、全国的に有名なブランド柿の多くが、実はこの平核無柿であるという事実は、その普及度を物語っています。同じ平核無柿でも、栽培される地域や気候、土壌の違いによって、味や風味には微妙な差が生まれ、それぞれの土地で独自の美味しさが育まれます。個人的には、発祥の地である新潟の「おけさ柿」の、濃厚でありながらも後味すっきりとした甘さが特に好きです。旬の時期は10月下旬から11月下旬です。
3位 輝太郎柿:とろける食感と上品な甘さが魅力の早生品種
第3位には、鳥取県で生まれたオリジナル品種「輝太郎柿」がランクイン。10年以上の歳月をかけて開発され、2010年に品種登録された、まさに柿界のニュースターです。輝太郎柿の特徴は、何と言ってもそのとろけるような舌触り。きめ細かい果肉が口の中でなめらかに溶け出し、上品な甘さが広がります。大玉ながらも繊細な食感は、他の柿ではなかなか味わえません。また、早生品種であることも魅力の一つ。9月下旬から収穫が始まるにもかかわらず、すでに十分な甘さを蓄えており、完成度の高い味わいを楽しめます。旬の時期は10月上旬から中旬と短いので、見つけたらぜひお試しください。種は少なめで食べやすいです。
2位 秋王:サクサクとした食感と極上の甘さが際立つ高級品種
第2位は、福岡県が誇るオリジナル品種「秋王」。その名の通り、秋の果物として王者の風格を備えています。「味がナンバーワン」と評する人もいるほど、その美味しさは格別です。秋王の魅力は、何と言っても柿とは思えないほどのサクサクとした食感。梨のようなみずみずしさに加え、口いっぱいに広がる豊富な果汁と、濃厚な甘みが特徴です。近年登場した新品種のため、生産量が少なく希少価値が高く、1玉800円~1000円という価格で取引されています。味の評価では1位に匹敵するポテンシャルを持ちながらも、価格の面で今回は2位となりました。旬は10月中旬~11月中旬。種がなく食べやすいのも嬉しいポイントです。特別な機会に、ぜひ味わってみてください。
1位 太秋柿:サクサク食感と濃厚な甘みで柿嫌いも虜にする絶品
栄えある第1位は、私の一押し品種「太秋柿」です。この柿の最大の特徴は、従来の柿のイメージを覆す、梨のようなサクサクとした食感。さらに、溢れんばかりの果汁と、濃厚な甘みが口の中に広がります。「柿は苦手…」という方にこそ、ぜひ一度試していただきたい逸品です。実は、第2位でご紹介した高級品種「秋王」は、この太秋柿と富有柿を掛け合わせて生まれた品種なのです(富有柿×太秋柿=秋王)。そのため、味や食感が似ているのも納得できます。秋王に匹敵する美味しさでありながら、1玉300円~500円という比較的手頃な価格で購入できる点が、太秋柿を1位に選んだ理由です。旬は10月下旬~11月下旬。種が少ないので食べやすく、サクサクとした食感を存分に楽しめます。
まとめ
柿は、豊富な品種と多様な味わい、そして食感で私たちを楽しませてくれる魅力的な果物です。今回は、果物屋の視点から厳選した6つの甘柿品種(次郎柿、富有柿、平核無柿、輝太郎柿、秋王、太秋柿)をご紹介しました。それぞれの品種が持つ独特の食感、甘さの質、旬の時期、そして価格帯を知っておくと、これからの柿選びがさらに楽しくなるでしょう。特に、梨のような食感が特徴の「太秋柿」や「秋王」、種なしで食べやすい「平核無柿」、追熟によって新たな美味しさを発見できる「次郎柿」など、個性豊かな品種が揃っています。また、甘柿だけでなく、干し柿の原料となる「渋柿」が持つ、甘柿を上回る潜在的な糖度についても触れました。渋柿は渋抜き処理をすることで生食も可能になり、その秘められた甘さを味わうことができます。柿を選ぶ際には、食感の好み(カリカリ派?トロトロ派?)、種ありor種なし、予算などを考慮し、自分にとって最高の柿を見つけてください。今回ご紹介した品種以外にも、日本各地には素晴らしい柿がたくさんあります。この記事が、皆さんの豊かな柿ライフの一助となれば幸いです。今年も美味しい柿をたくさん味わい、秋の味覚を満喫しましょう。
最も甘い柿の種類は?
柿の甘さは、品種、栽培方法、そして熟し具合によって大きく変わりますが、特に甘さが際立っていると評価されるのは、「富有柿」や「秋王」です。中でも「秋王」は、非常に高い糖度と豊富な果汁が特徴ですが、価格も比較的高めです。糖度計で測定すると、「秋王」や「太秋柿」が高い数値を示す傾向があります。また、干し柿に使われる渋柿は、渋抜きを行うことで糖度が凝縮され、甘柿よりも高い糖度になることもあります。
カリカリ?トロトロ?おすすめの食感は?
柿の食感の好みは人それぞれです。シャキシャキとした食感が好きな方には、「次郎柿」や「太秋柿」がおすすめです。特に「太秋柿」は、梨のようなみずみずしい食感が楽しめます。一方、とろけるような食感が好みの方には、熟した「富有柿」や「次郎柿」、あるいは最初から柔らかい食感の「輝太郎柿」がおすすめです。同じ品種でも、熟成の度合いによって異なる食感を楽しめるのも柿の魅力です。
柿の追熟方法とは?
柿は、常温で風通しの良い場所に置いておくだけでも自然に追熟しますが、より早く柔らかくしたい場合は、リンゴと一緒にビニール袋に入れて密封する方法が効果的です。リンゴから放出されるエチレンガスが、柿の追熟を促します。「次郎柿」のように、追熟によって風味が落ちると言われる品種もありますが、あえて少し柔らかくすることで、よりフルーティーな味わいになることもありますので、ぜひ試してみてください。