秋の味覚、柿。あのとろけるような甘さは格別ですが、食べた後に「なんだかお腹が痛い…」と感じたことはありませんか? 実は、柿に含まれる成分が原因で、腹痛を引き起こすことがあるんです。特にタンニンやペクチンなどは、摂りすぎるとお腹の不調につながることも。この記事では、管理栄養士監修のもと、柿で腹痛が起こる原因を徹底解説!安全に美味しく柿を味わうための対策や、万が一の時の対処法まで、詳しくご紹介します。旬の味覚を安心して楽しむために、ぜひ参考にしてください。
柿を食べて腹痛になるのはなぜ?
柿を食べた後にお腹が痛くなる原因として、最も多いのは「食べ過ぎ」です。もちろん、柿が傷んでいたという可能性も考えられますが、一般的には柿に含まれる特定の成分が影響していると考えられます。柿による腹痛は、その成分の性質から、便秘や下痢、重症化すると胃石を引き起こすなど、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。ここでは、それぞれの主な原因となる成分と、そのメカニズムについて詳しく解説していきます。

タンニンによる便秘と胃石のリスク
柿に含まれるタンニンは、コーヒーや赤ワインなどにも含まれるポリフェノールの一種ですが、過剰摂取は便秘を引き起こす可能性があります。特に、大量に柿を食べると、タンニンの一種であるシブオールが胃酸と結合し、胃の中で石のような塊「胃石」を形成することがあります。日本では、胃石の原因の多くが柿の食べ過ぎによる「柿胃石」です。空腹時は胃酸濃度が高く、胃石ができやすい状態です。柿胃石ができると、腹痛、吐き気、食欲不振などの症状が現れ、悪化すると胃潰瘍や腸閉塞といった重篤な合併症を引き起こす危険性があります。これらの症状は、胃や腸の物理的な閉塞や刺激によるものです。柿を大量に食べる習慣がある方は、量や頻度を控えるように注意しましょう。
ペクチンとソルビトールによる下痢のメカニズム
柿にはペクチンやソルビトールといった成分が含まれ、適量なら健康に良い効果をもたらしますが、過剰摂取は下痢の原因となります。ペクチンは水溶性食物繊維として便を柔らかくしたり、血糖値上昇を抑制したり、腸内環境を整えたりする効果が期待できますが、大量摂取すると腸の蠕動運動が活発になりすぎて下痢を引き起こすことがあります。ソルビトールは消化されにくい性質のため、摂りすぎると腸内の水分量を増加させ、同様に下痢の原因となることがあります。これらの成分はバラ科の果物に多く含まれ、ソルビトールは加工食品にも使用されているため、柿に限らず摂取量には注意が必要です。
柿による体の冷えと腹痛の関係性
柿を食べ過ぎると、お腹の調子が悪くなったり、体が冷えるように感じることがあります。それは、「柿は体を冷やす」という考え方があるためです。東洋医学では、昔から柿は体を冷やす食べ物とされてきました。研究結果でも、柿を食べた後に手足の皮膚温度が下がる傾向が報告されており、冷えやすい方は特に柿の食べ過ぎに注意が必要です。さらに、柿に含まれるカリウムは利尿作用があり、体内の水分を排出する際に体温を奪うため、結果として体が冷えやすくなり、お腹の不調につながる可能性があると考えられています。このように、柿の過剰な摂取は体の冷えを招き、それが腹痛といった消化器系のトラブルを引き起こすこともありえます。
柿による腹痛を防ぐための対策
柿が原因で起こる腹痛の多くは、食べ過ぎが原因です。そのため、適切な食べ方と量を守ることが非常に大切です。柿に含まれるタンニン、ペクチン、ソルビトールといった成分は、適量であれば健康に良い影響をもたらしますが、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、美味しい柿を安心して楽しむために、腹痛や下痢を予防するための具体的な対策をご紹介します。
柿を食べるタイミング:空腹時は避ける
柿に含まれる成分は、空腹時に摂取すると体に吸収されやすくなります。特に、胃石のリスクを高めると言われているタンニンは、空腹で胃酸が多い状態で大量に摂取すると、胃酸と結合しやすくなります。また、下痢を引き起こす可能性があるペクチンやソルビトールも、空腹時に摂取すると吸収が早まり、お腹の不調を引き起こす可能性があります。したがって、柿を美味しく安全に食べるためには、空腹時を避け、食後に適量を摂取するように心がけましょう。食後であれば、胃腸への負担を軽減できるため、食べるタイミングは非常に重要です。
1日に食べる柿の適量:大人は1個(小さめなら2個、約200g)を目安に
柿による腹痛や下痢、そして胃石の主な原因は、タンニン、ペクチン、ソルビトールといった成分の過剰摂取です。したがって、1日に食べる柿の量を意識することが、最も重要な予防策となります。柿の大きさや種類によって多少異なりますが、一般的に大人は1日に1個、小さめの柿であれば2個を目安にすると良いでしょう。これは、およそ200gに相当します。栄養豊富で美味しい旬の柿は、ついつい食べ過ぎてしまいがちですが、腹痛や胃石、下痢のリスクを避けるためにも、この適量を守るようにしましょう。また、柿は果物であるため、糖質も多く含まれています。柿100gあたりの糖質量は約14.3gであり、他の果物と比較すると、特に糖質が少ないわけではありません。糖質の過剰摂取は、中性脂肪の増加や体重増加につながる可能性があります。ダイエットの観点からも、「1日200g程度」の目安量を守ることが大切です。2歳以下の小さなお子様が柿を食べる場合は、消化機能が未発達なため、大人よりもさらに少量に留め、半分程度を目安にすると良いでしょう。

タンニンを多く含む他の飲食物に注意
柿だけがタンニンの供給源ではありません。日々の食生活で口にする様々な食品にもタンニンは潜んでいます。例えば、朝のコーヒーや午後の紅茶、食後の緑茶、ディナーの赤ワインなど、これらもタンニンを多く含んでいることで知られています。柿を味わう時期は、これらのタンニンが多い飲食物の摂取量にも気を配り、体全体のタンニン摂取バランスを調整することで、お腹の不快感や便秘を未然に防ぐことに繋がります。特に、柿をたくさん食べた日は、これらの飲み物を控えるなど、工夫してみるのがおすすめです。
柿による腹痛が起きてしまった場合の対処法
万が一、柿を食べた後にお腹が痛くなってしまった場合、その原因を個人で特定するのは困難な場合があります。そのため、焦らずに状況を把握し、症状に応じた適切な処置を行うことが重要です。下痢の症状がひどかったり、なかなか治まらない場合は、危険な状態である可能性も考えられますので、自己判断せずに医療機関を受診するタイミングも把握しておきましょう。
まずは安静にして水分を摂り様子を見る
お腹の痛みや下痢を感じたら、何よりもまず安静を保つことが大切です。横になる、または楽な体勢で、体の状態を注意深く観察しましょう。特に下痢の場合は、体内の水分が失われやすいため、脱水症状にならないようにしっかりと水分補給を行うことが重要です。水、麦茶、または経口補水液などを少しずつ飲むようにして、体が落ち着くのを待ちましょう。症状が軽い場合は、一時的な体調不良である可能性も考えられます。
市販薬の活用(胃薬、整腸剤)
もしお腹の痛みや下痢が続くようであれば、家に置いてある市販薬を試してみるのも一つの手段です。胃の調子が悪いと感じられる場合は胃薬を、下痢を伴う場合は整腸剤を服用してみるのも良いでしょう。整腸剤は腸内環境を改善する効果が期待できます。ただし、薬の使用方法と用量を守り、症状が良くならない場合や、さらに悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。
腹痛を和らげる「温溜(おんる)」の押し方
もし症状が軽い場合や、薬を飲むことに抵抗があるようでしたら、東洋医学のツボ押しを試してみるのも良いかもしれません。冷えや食べ過ぎによる腹痛に効果があるといわれているのが「温溜(おんる)」というツボです。このツボは、手の甲側、手首と肘を結ぶ線のほぼ真ん中、親指側に位置しています。反対側の手の親指で、この部分をゆっくりと5秒ほどかけて押し、それを3〜5分ほど繰り返します。このツボを刺激することで、お腹周りの血行が良くなり、腹痛の緩和に繋がると考えられています。また、リラックス効果も期待できるため、精神的な安定にもつながるでしょう。
症状が続く場合は医療機関へ
ご自身で色々試しても症状が良くならない場合や、腹痛がとても強い、吐き気や嘔吐、発熱、血便などの症状が見られる場合は、自己判断せずに、すぐに病院を受診することが大切です。特に、柿が原因の胃石による腹痛は、悪化すると腸閉塞を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。消化器内科など専門の医師に診てもらい、きちんと診断を受けて適切な治療をすることで、症状が悪化するのを防ぎ、早く良くなるようにしましょう。
柿に含まれる豊富な栄養と健康への効果
柿は、食べ過ぎると腹痛の原因になることもありますが、適量を摂取すれば、私たちの健康をサポートする様々な栄養素や体に良い成分をたくさん含んでいます。便秘や胃石の原因となるタンニンや、お腹がゆるくなる原因となるペクチンやソルビトールも、適量であれば体に良い影響を与えてくれます。また、体に必要なビタミンやミネラルもバランス良く含まれています。ここでは、柿に含まれる主な栄養成分と、それらが私たちの体にどのような効果をもたらすのかを解説します。

美肌と健康をサポートするビタミンC
柿は、特にビタミンCが豊富な果物として知られています。その含有量は、甘柿の場合100gあたり約70mgと非常に多く、ビタミンCが多いことで知られる「みかん」の2倍以上も含まれています。ビタミンCは、皮膚や軟骨などを構成するコラーゲンを作るために必要不可欠な栄養素です。十分なビタミンCを摂取することで、お肌のハリや弾力を保ち、健康的な肌を維持するのに役立ちます。また、ビタミンCは強い抗酸化作用を持つことでも知られています。体内で発生する活性酸素を除去する働きがあり、細胞のダメージを防ぎ、老化の防止や、がん、動脈硬化などの生活習慣病の予防にも効果が期待できます。その他にも、ビタミンCは鉄分の吸収を助けるなど、免疫力の維持やストレスの軽減など、体内で様々な重要な役割を果たしています。
腸内環境を整える食物繊維(ペクチン)の働き
食物繊維とは、食品中に含まれる、人の消化酵素では分解されない成分の総称です。大腸まで届き、健康維持に様々な良い影響を与えることが知られています。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類が存在し、柿には特に水溶性食物繊維である「ペクチン」が豊富に含まれています。ペクチンなどの水溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収してゲル状になる性質があり、便を柔らかくすることで、スムーズな排便を促し、便秘の改善に貢献します。さらに、腸内に存在する善玉菌(ビフィズス菌など)のエサとなり、腸内フローラを改善することで、体の防御機能の向上にもつながります。その他、食後の急激な血糖値上昇を抑えたり、血中コレステロール値を下げたり、脂質の吸収を抑制し体外への排出を促す効果も期待されており、生活習慣病の予防にも役立つと考えられています。
高血圧予防やむくみ解消に役立つカリウム
カリウムは、人体にとって不可欠なミネラルの一種です。ナトリウムも同様に重要なミネラルであり、食塩の主要な成分として広く知られていますが、カリウムはナトリウムと共に、体内の水分量や体液の浸透圧を適切に調整する重要な役割を担っています。カリウムには、体内のナトリウムが増加しすぎた場合に、そのバランスを調整するために、過剰なナトリウムを体外へ排出する働きがあります。この働きにより、高血圧の予防や改善に役立つだけでなく、塩分の過剰摂取によって生じるむくみの解消にも効果を発揮します。特に、現代の食生活においては塩分を過剰に摂取しがちな傾向があるため、カリウムを豊富に含む柿のような食品を積極的に摂取することは、健康維持に非常に有効であると言えるでしょう。
優れた抗酸化作用を持つタンニン(ポリフェノール)
タンニンは、植物が持つ色素や渋みの元となるポリフェノールの一種であり、柿の渋み成分の主体をなしています。柿以外にも、赤ワインや緑茶、コーヒーなど、様々な食品に含まれており、緑茶に含まれるポリフェノールの多くはカテキンという種類のタンニンであることが知られています。タンニンは、先に述べたビタミンCと同様に、優れた抗酸化作用を有しています。この抗酸化作用により、体内で過剰に生成された活性酸素を除去し、細胞が酸化ストレスを受けるのを軽減する効果や、細胞の損傷や老化を遅らせる効果が期待できるため、健康の維持や美容の面でも重要な役割を果たすと考えられています。抗酸化作用は、がんや心臓病などの慢性疾患のリスクを低下させる可能性も示唆されており、加えて、二日酔いにも効果があると言われています。
柿の栄養を最大限に引き出す効率的な食べ方
柿に含まれる豊富な栄養素を効果的に摂取するためには、何よりも「食べ過ぎない」ことが大切です。その上で、柿が持つ様々な栄養成分を最大限に活かし、美味しく健康的に楽しむための食べ方のポイントや注意点について解説します。
栄養満点の柿、皮ごと賢く食べる
柿は、ビタミンCや食物繊維といった体に嬉しい栄養素が豊富ですが、実はその多くが実よりも皮に詰まっているのです。特にビタミンCは、果肉よりも皮の方に多く含まれている傾向があります。また、食物繊維も同様に皮に豊富です。ですから、柿の栄養を最大限に活かしたいなら、しっかりと丁寧に洗って皮ごと食べるのがおすすめです。もし皮の食感が気になる場合は、ピーラーなどで薄く剥くと、栄養を損なわずに食べやすくなります。無農薬や低農薬の柿を選べば、皮ごと食べる際もより安心して楽しめます。
生のままが一番!ビタミンCを逃さない食べ方
柿は、そのまま食べるのはもちろん、デザートやお菓子作りの材料としても大活躍します。どんな風に食べても美味しい柿ですが、豊富に含まれるビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱いという特徴があります。加熱すると、ビタミンCが溶け出したり、壊れてしまう可能性があるため、ビタミンCを効率的に摂取したいなら、生のまま食べるのがベストです。サラダや和え物、スムージーなど、生の柿を使った様々なレシピを試してみるのも良いでしょう。柿本来の栄養を無駄なく摂取できます。
まとめ
柿の食べ過ぎは腹痛の原因に。タンニンによる柿胃石や、ペクチン、ソルビトールによる下痢に注意が必要です。体を冷やす作用も。しかし、適量ならビタミンCや食物繊維が豊富で、美肌や高血圧予防など健康効果が期待できます。1日の摂取量を守り(大人1個目安)、ダイエット中は特に注意。上手に取り入れて、柿の風味と健康効果を楽しみましょう。
なぜ柿を食べるとお腹が痛くなるの?
柿でお腹が痛くなる主な原因は、やはり「食べ過ぎ」です。柿に含まれる「タンニン」は、腸の働きを鈍らせ、便秘を引き起こす可能性があります。特に空腹時にたくさん摂ると、胃酸と結合して「柿胃石」ができやすくなり、腹痛、吐き気、食欲不振、さらには胃潰瘍や腸閉塞を引き起こすこともあります。また、「ペクチン」や「ソルビトール」といった食物繊維や糖質も、過剰に摂取すると腸の活動が活発になりすぎたり、消化されずに水分を吸収して、下痢を引き起こすことがあります。
柿胃石とはどんなもの?
柿胃石とは、柿に含まれるシブオールというタンニンが、空腹時に胃酸と反応して胃の中で固まることでできる結石のことです。特に日本では、報告される胃石の多くが柿胃石であると言われています。胃や腸に詰まると、腹痛や吐き気、嘔吐、食欲不振といった症状が現れ、重症化すると胃潰瘍や腸閉塞を引き起こす可能性もあります。空腹時に大量の柿を摂取すると、柿胃石ができるリスクが高まります。
柿は一日あたり何個までなら安全?
柿に含まれるタンニン、ペクチン、ソルビトールなどの成分を摂りすぎると、腹痛や胃石、下痢などの原因になることがあります。そのため、一日に食べる柿の量には注意が必要です。柿のサイズによっても異なりますが、一般的に大人は一日一個(約200g)、小さめの柿でも二個までを目安にするのが良いでしょう。また、柿には糖質も含まれているため、ダイエットや健康管理の面からも、推奨量を守ることが大切です。二歳以下の幼児には、半分程度を目安に与えましょう。
柿が原因で腹痛になった時の対処法は?
柿を食べて腹痛になった場合は、まずは安静にして、水分をしっかり補給しながら様子を見ましょう。症状が続くようであれば、市販の胃薬や、下痢を伴う場合は整腸剤を試してみるのも良いかもしれません。「温溜(おんる)」というツボ(手首と肘の中間あたり)を刺激することも、血行促進により腹痛の緩和に効果があると言われています。ただし、症状が酷い場合や改善が見られない場合、吐き気や発熱などの症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
柿の栄養を効果的に摂取するには?
柿の栄養を無駄なく摂取するためには、まず「食べ過ぎない」ことが重要です。その上で、ビタミンCや食物繊維が豊富な皮も、丁寧に洗って一緒に食べるのがおすすめです。例えば、甘柿100gあたりには約70mgのビタミンCが含まれており、効率良く摂取できます。また、柿に含まれるビタミンCは熱に弱い性質があるため、栄養補給を目的とする場合は、加熱せずに生のまま食べるのが最適です。
柿を食べると体が冷えるというのは本当ですか?
はい、東洋医学においては、昔から柿は体を冷やす性質を持つ食品と考えられています。実際に、柿を摂取することで手足の皮膚温度が低下するという研究データも存在します。また、柿に豊富に含まれるカリウムには利尿作用があり、これが体内の熱を放出させ、冷えを感じやすくする要因となる可能性があります。冷えが気になる方は、柿の過剰な摂取を避け、特に冷えやすい体質の方は食べる量に注意することが大切です。