柿の産地ランキング:都道府県別生産量と人気品種

秋の味覚として親しまれる柿は、日本各地で栽培されている身近な果物です。スーパーで見かける柿も、もしかしたらあなたの地元で育ったものかもしれません。本記事では、気になる柿の産地を都道府県別の生産量ランキングでご紹介します。日本一の柿の産地はどこなのか?上位を占める県は?ランキングを通して、各産地の気候や土壌、育まれてきた品種の違いなど、柿の奥深い世界を覗いてみましょう。食欲の秋、美味しい柿を選ぶ際の参考に、ぜひご活用ください。

主要産地の特徴と有名な柿品種を徹底解説

ここでは、柿の生産量が多い都道府県と、そこで栽培されている柿について詳しく見ていきましょう。各産地が持つ独自の気候や土壌、長年にわたる栽培技術が、それぞれの地域で特色ある柿を生み出しています。その違いを知ることで、柿の世界の奥深さをより一層感じられるはずです。

1位 和歌山県:柿のトップブランドを誇る一大産地

和歌山県は柿の生産量日本一を誇り全国シェアの約20%を占める、まさに柿の一大産地です。和歌山県で生産される柿の約6割は伊都地方で栽培されており、この地域は保水性と排水性のバランスが良い土壌と、昼夜の寒暖差が大きい気候が、柿の栽培に非常に適しています。柿の栽培面積は約4万3千ヘクタールにも及び、これは和歌山県全体の約0.5%を占める広さです。「都道府県面積に対する柿の栽培面積の割合」では、和歌山県が全国1位となっています。和歌山県で収穫される柿の約8割は渋柿ですが、アルコールや炭酸ガスによる渋抜き処理を行うことで、甘い柿として販売されています。主な渋柿の品種としては、刀根早生や平核無が挙げられ、これらを渋抜きした「和歌山県産たねなし柿」として広く親しまれています。渋柿は、生食だけでなく、干し柿やあんぽ柿、串柿など、様々な加工品としても楽しまれています。特に柿を串に刺して乾燥させる「串柿」の風景は、晩秋の和歌山県を象徴する風物詩として有名です。さらに、和歌山県はブランド柿の価値向上にも力を入れており、渋柿を樹上で袋掛けして渋抜きする「紀の川柿」や、甘柿である富有柿を袋掛けして樹上で完熟させる「甘熟」など、高品質な品種を市場に供給し、全国の消費者から高い評価を得ています。

2位 奈良県:ハウス栽培と豊富な品種で長期間出荷

柿の生産量で全国2位の奈良県は、生産量シェア約14%を占めています。収穫期の温度差や水はけの良い傾斜地など、自然環境が柿の栽培に最適です。年間生産量は約3万1千ヘクタールで、奈良県全体の約0.4%を占め、県面積に対する柿の栽培面積の割合も高い水準にあります。奈良県はハウス柿の生産量が全国1位であり、ハウス柿から冷蔵柿まで幅広く手掛けることで、夏頃から翌年の冬にかけて、およそ半年もの間、新鮮な柿を市場に提供しています。主要品種である刀根早生は不完全渋柿で、奈良県の天理市が発祥の地とされ、特に贈答用として夏頃から流通しています。その他にも、甘柿の代表格である富有柿や、かつて天皇や将軍への献上品とされていた御所柿、そして渋柿の平核無などが栽培されています。中でも「御所柿」は、奈良県の御所市原産の甘柿で、大玉で上品な甘さが特徴です。富有柿などの台頭により、一時生産量が減少しましたが、近年ではこの歴史ある御所柿を復活させようという動きも出てきています。

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3位 福岡県:甘柿生産量で全国トップクラス、品質にこだわる産地

全国3位の柿生産量を誇る福岡県は、国内シェアの約7.8%を占めています。特に、筑後川沿いの地域で栽培が盛んです。豊かな日照時間や水はけの良い土壌といった恵まれた自然環境を活かし、鮮やかな色合いと優れた品質の柿を育てています。福岡県の柿畑の面積は約220ヘクタールに及び、県全体の約0.245%、つまり「福岡県の約409分の1が柿畑」という計算になります。多種多様な品種と冷蔵技術を組み合わせることで、9月から翌年の2月頃まで、長期間にわたって市場へ供給しています。福岡県は特に甘柿の栽培において全国有数の産地であり、中でも注目すべきは、福岡県が独自に開発したブランド品種「秋王」です。「秋王」は、2012年に「福岡K1号」として品種登録され、苗木や果実、加工品に至るまで「秋王」という名称で商標登録されています。福岡県の公式サイトなどでも積極的に紹介されており、サクサクとした食感、濃厚な甘さ、そして美しい橙赤色が特徴で、「秋の王様」の名にふさわしいと評価されています。産地や品種の違いを意識することで、柿の味わいや見た目の個性をより深く楽しめるでしょう。

4位 岐阜県:富有柿のふるさと、伝統の干し柿も

柿の生産量で全国4位の岐阜県は、国内シェアの約6.9%を占めています。岐阜県は、現在広く栽培されている甘柿の代表的な品種「富有柿(ふゆうがき)」発祥の地であり、柿の歴史において重要な役割を果たしてきた地域です。とろけるような甘さとやわらかい食感が特徴の富有柿は、全国で親しまれています。また、美濃加茂市で栽培されている「蜂屋柿(はちやがき)」という渋柿から作られる干し柿「堂上蜂屋柿(どうじょうはちやがき)」は、その高品質から贈答品として珍重されています。「堂上蜂屋柿」は、その独特の製法と地域性が評価され、知的財産として保護される「地理的表示(GI)」に登録されており、地域ブランドとしての地位を確立しています。岐阜県は、代表的な甘柿から伝統的な加工柿まで、多様な柿文化を支える重要な産地と言えるでしょう。

柿の分類:甘柿と渋柿、完全と不完全の違いとは

柿の品種について語る際によく耳にする「完全甘柿」や「不完全渋柿」といった区分は、柿の渋み成分である「タンニン」の性質と、果実に含まれる種子の有無によって決まります。柿は基本的に、この渋み成分の性質によって【甘柿】と【渋柿】に大きく分けられます。さらに、「完全」と「不完全」に分類され、その中間の性質を持つ品種も存在します。具体的には、

  • 甘柿は「不溶性タンニン」を含む品種の総称です。この渋み成分は水に溶けないため、果実が熟すと自然に渋みが抜け、特に手を加えなくてもそのまま美味しく食べられます。代表的な品種としては、次郎柿や富有柿などがよく知られています。
  • 渋柿は「水溶性タンニン」を含む品種の総称で、この水溶性タンニンは口の中で唾液と結合し、強い渋味として感じられます。そのため、生で食べると強い渋みが広がるため、一般的には干し柿に加工したり、アルコールや炭酸ガスを使った渋抜き処理を施してから出荷され、生食が可能になります。この甘柿と渋柿の分類に加え、「完全」と「不完全」という概念があります。
  • 完全甘柿や完全渋柿は、栽培するだけで品種本来の甘柿または渋柿の特性を安定して示すものです。
  • 不完全甘柿や不完全渋柿は、果実に含まれる種子の量によって渋みの程度が変化するという特徴を持ちます。例えば、種子が多い場合は渋みが抜けやすく、少ない場合は渋みが残りやすいといったことがあります。

基本的に、収穫してそのまま美味しく食べられるのは「完全甘柿」です。「不完全甘柿」は、種子が多い場合は樹上で自然に渋みが抜け甘くなりますが、種子が少ない場合は渋みが残るため、渋抜き処理が必要となる場合があります。それ以外の柿は、甘柿であっても渋抜き処理を施したものが流通し、初めて美味しく生食できるようになります。また、渋柿は生食には不向きですが、もともとの糖度は非常に高いという特徴があります。この高い糖度を活かし、干し柿やあんぽ柿などに加工することで、糖分が凝縮された濃厚な甘さを楽しめる、贅沢なデザートとして味わうことができます。

まとめ

今回は、柿の都道府県別生産量ランキングと、上位を占める主要な産地の特徴や代表的な品種について詳しく解説しました。同じ柿でも、産地や品種によって甘柿、渋柿があり、その風味や食感は大きく異なります。和歌山県のブランド柿から福岡県オリジナルの秋王、そして富有柿発祥の地である岐阜県の柿まで、それぞれの地域が育む柿には、その土地ならではの魅力が詰まっています。ぜひ、様々な産地や品種の柿を味わい、秋の味覚を存分にお楽しみください。この記事が、柿選びの参考になれば幸いです。

甘柿と渋柿、その違いとは?

甘柿には「不溶性タンニン」が含まれており、成熟するにつれて自然に渋みが消えるため、そのまま食べることができます。対照的に、渋柿は「水溶性タンニン」を含んでいるため、生のままでは強い渋みを感じます。そのため、渋抜き処理を施してから出荷されるか、干し柿などの加工品として利用されます。

「完全甘柿」「不完全渋柿」とは?その意味を解説

「完全」と名のつく柿は、特別な手を加えなくても、品種本来の甘柿または渋柿としての性質を発揮します。「不完全」と名のつく柿は、果実の中にある種子の数によって渋みの度合いが変わるという特徴を持つ品種を指します。一般的に、種子が多いほど渋みが抜けやすい傾向があります。

柿の美味しい時期はいつ頃ですか?

柿が最も美味しく味わえる時期は、種類や地域によって多少異なりますが、おおむね9月から12月にかけてです。特に奈良県では、特別な栽培方法や貯蔵技術を駆使することで、夏頃から長期間にわたり市場に新鮮な柿を提供しています。