柿 産地
秋の味覚として親しまれる柿。その甘く、とろけるような味わいは、私たちを魅了してやみません。日本各地で栽培されていますが、特に和歌山県は45年連続で生産量日本一を誇り、柿の里として知られています。この記事では、和歌山、奈良、福岡といった主要産地にスポットを当て、それぞれの地域で育まれる柿の特徴やブランド柿を徹底解剖。産地ごとの気候や風土が、柿の味にどのような影響を与えているのか、深掘りしていきます。
柿の生産量ランキング(2023年)
国内で最も柿の生産量が多いのは和歌山県であり、その首位の座を45年もの間、維持し続けています。2023年の統計データによれば、和歌山県が全国の柿生産を牽引し、それに次いで奈良県、福岡県、岐阜県、愛知県が主要な産地として名を連ねています。特に上位5県で、国内の柿生産量の半分以上を占めるという状況です。市町村別の生産量(収穫量)では奈良県五條市が日本一で、ハウス柿に限ると全国シェアの約70%を占めています。
都道府県別 柿の生産量ランキング(2023年)
1位:和歌山県
2位:奈良県
3位:福岡県
4位:岐阜県
5位:愛知県
市町村別 柿の生産量ランキング(2023年)
1位:奈良県五條市(ハウス柿の国内シェアは約70%)
柿の生産量と栽培面積の推移:国内柿生産の現状
日本全国における柿の生産量と栽培面積は、減少傾向が見られます。令和5年産(2023年)のかき結果樹面積は1万7,500haで、前年産に比べ300ha(2%)減少した。収穫量は18万5,200t、出荷量は15万9,900tで、前年産に比べそれぞれ3万900t(14%)減少した。
年度別の柿生産量と栽培面積
2019年:収穫量はおよそ20万8200トン、栽培面積は約18900ヘクタールでした。
2023年:収穫量は約18万6600トン、栽培面積はおよそ17500ヘクタールとなっています。
国内の柿生産地が直面する問題点
柿の収穫量や栽培地が縮小している要因として、主に3つの問題が挙げられます。これらの問題解決に向けて、主要な産地では様々な対策が講じられています。
栽培管理における労働負荷の大きさ
摘蕾や摘果などの作業は、柿の品質向上と安定的な収穫に欠かせませんが、非常に手間がかかります。摘蕾は、余分な花芽を取り除くことで、残った花に栄養を集中させる作業です。摘果は、果実の一部を間引くことで、残った果実のサイズと品質を高める効果があります。
高齢化に伴う労働者不足と後継者問題
柿栽培の技術やノウハウの伝承が困難になり、産地の維持が難しくなっています。高齢化が進み、後を継ぐ人が少ないことが深刻な問題となっています。
集中出荷と小玉傾向による価格競争の激化
近年の気候変動は柿の生育にも大きな影響を与えており、温暖化に伴う開花時期のずれ込みや、異常気象による品質のばらつきなどが課題となっています。加えて、これまで見られなかった病害虫の発生や、既存の防除方法の効果減退も生産者を悩ませています。
産地における挑戦:収入増と働きやすさの両立
主要な柿の産地では、上述した問題点を克服し、将来にわたって柿作りを続けていくために、多岐にわたる対策を講じています。
【産地の取り組み1】和歌山県伊都地域の事例:独自品種の導入と省力化
柿の生産量日本一を誇る和歌山県伊都地域では、さらなる収益性の向上と、より働きやすい環境づくりを目指し、以下の施策に力を入れています。
柿の販売力強化に向けたオリジナル品種の展開
和歌山県では、オリジナル品種である「紀州てまり」の普及を積極的に進めています。「紀州てまり」は、その名の通り手毬のように丸く大きな見た目が特徴で、甘さとみずみずしさに加え、しっかりとした食べ応えも楽しめる柿です。この品種のブランド力を高めることで、販売価格の上昇を目指しており、主力品種である「刀根早生」への依存度を下げる狙いもあります。また、和歌山県は柿の海外輸出にも注力しており、現在は主にアジア地域への販路拡大を進めています。
省力化を実現する「結果母枝の先端剪除技術」の普及
伊都地域では、省力化に繋がる「結果母枝の先端剪除技術」の普及も進められています。この技術は、冬季剪定時に結果母枝の先端にある芽を剪除することで、花芽の数を調整し、摘蕾作業の労力を軽減するものです。導入した結果、摘蕾作業の効率が2割改善し、1本の木あたりの摘蕾時間が約2割短縮されたというデータがあります。ただし、この効果は「刀根早生」などの品種で確認されており、その他の品種に関しては、さらなる検証が求められます。
柿の葉や摘果柿を活用した耕作放棄地の再生
伊都地域では、「省力品目化」を推進しています。これは、柿の栽培や収穫に必要な手間を削減しながら、柿の葉や摘果された未熟な果実など、これまで廃棄されていた部分も有効利用して収益を向上させる試みです。一例として、摘果柿を使用してジャムやコンポートなどの加工食品を製造・販売する取り組みがあります。これにより、栽培の効率化と収入源の多様化を両立させることができ、耕作放棄地の減少にも貢献することが期待されています。
【産地の取り組み2】奈良県五條市の事例:需要喚起イベントと規格外品の有効活用
奈良県五條市は「柿の里」として知られ、柿の生産基盤の強化とブランドイメージの向上に力を入れています。
柿の消費を促進するイベントや、技術力向上のための研修会を実施
五條市では、柿の消費を拡大するためのイベント「柿の里まつり」を開催しています。柿を使用した様々な料理を楽しめる屋台や、柿の詰め放題など、家族みんなで楽しめる企画が盛りだくさんです。また、若手農家が中心となって勉強会や研修会を自主的に開催しています。これらの活動を通じて、柿産地としての活性化とブランド力の強化を図り、「柿の里」としての地位をより強固なものにすることを目指しています。
規格外品を活かした、新たな価値創造
奈良県五條市では、規格外の柿を有効活用し、年間を通して高付加価値の商品として販売するビジネスモデルを構築する動きがあります。例えば、柿専門店の石井物産では、通常販売できない規格外の柿を有効活用し、年間を通して高付加価値の商品として販売するビジネスモデルを構築しています。農家から規格外の柿を適正な価格で仕入れることで、農家の収入安定化に貢献するだけでなく、廃棄される柿の量を減らすことにも繋がっています。さらに、加工品としての価値を高めることで、新たな需要を創出しています。例えば、規格外の柿を使用した和菓子「郷愁の柿」は、観光庁主催の「世界にも通用する究極のお土産」に選ばれるなど、地域を代表する特産品としての地位を確立しました。この取り組みは、柿農家が自ら加工・販売を手掛ける6次産業化の成功例として注目されています。
【産地の取り組み3】奈良県天理市の事例:労働力確保に向けた革新的な試み
収穫時期における人手不足は、多くの産地が抱える共通の課題です。奈良県天理市では、この問題に対し、農家と旅行者を結びつけるマッチングプラットフォーム「おてつたび」を導入しました。天理市は、大阪や京都からのアクセスが良いという地理的な利点に加え、農業体験を求める人々にとって魅力的な地域です。また、早生柿の代表的な品種である「刀根早生」の発祥地としても知られています。「おてつたび」のようなシステムは、農業未経験者に対して農業に触れる機会を提供するとともに、農業分野における新しい働き方を創造する可能性を秘めています。
美味しい柿を育むための条件
美味しい柿を栽培するためには、いくつかの重要な条件があります。これらの条件が揃った地域は、高品質な柿の産地として名を馳せています。
太陽の恵みを最大限に活かす
柿は、日当たりと風通しの良い環境を好みます。日陰での栽培は避け、温暖で日光が十分に当たる場所を選ぶことが重要です。傾斜地など、太陽光を効率的に受けられる場所も適しています。ハウス栽培の場合は、温度管理を徹底し、柿にとって最適な生育環境を作り出すことが求められます。
水はけが良い
柿栽培では、水はけの良さが重要です。土壌が常に湿った状態だと、根腐れの原因となるため、水やりは土の状態を観察しながら行いましょう。
肥料をたっぷりあげる
生育段階や開花時期に合わせて、適切な肥料を与えることが大切です。柿の木の状態をよく観察し、肥料の種類や量を調整することで、より美味しい柿を育てることができます。
柿の名産地とその秘密:和歌山県、奈良県、福岡県
日本には、特に柿の栽培が盛んな地域がいくつか存在します。その中でも、和歌山県、奈良県、福岡県は、柿の三大名産地として広く知られています。これらの地域では、独自の環境や栽培技術を活かして、高品質な柿が生産されています。
【1位】和歌山県の柿栽培の特長
和歌山県は、柿の生産量日本一を誇る県です。柿の栽培に適した条件として、「十分な日照時間」と「水はけの良い土地」が挙げられますが、和歌山県は温暖な気候と恵まれた地形により、これらの条件を満たしています。そのため、「平核無柿(ひらたねなしがき)」や「富有(ふゆう)」といった人気品種に加え、「紀の川柿」や「太秋(たいしゅう)」など、多様な品種の柿が栽培されています。また、晩秋には、串に刺して乾燥させた「串柿」が名物となっており、その風景は和歌山の秋の風物詩となっています。和歌山県の柿栽培は、自然の恵みと、生産者の長年の経験と努力によって支えられています。
【2位】柿栽培における奈良県の強み
奈良県は、柿の栽培が昔から盛んであり、「刀根早生」発祥の地としても知られています。主な産地は、五條市や天理市などです。標高100〜400mの山間部で栽培されており、年間平均気温が15度という柿の生育に適した気候と、水はけの良い土壌が特徴です。また、歴史ある「御所柿」や、「富有」「平核無」といった品種も栽培されています。
【3位】福岡県の柿栽培の特徴
福岡県は、柿の生産量が全国で3位を誇る都道府県です。特に、食感と自然な甘さが特徴の甘柿の生産量は日本一です。主な産地は、うきは市、朝倉市、久留米市などです。和歌山県や奈良県と同様に、日照時間が長く、なだらかな傾斜地で栽培されているのが特徴です。他産地の柿と比較して、「シャキシャキとした食感」と「口の中に広がる上品な甘さ」の調和が取れており、「西村早生」「早秋」「秋王」などの品種が栽培されています。
柿農家の収益向上のために
柿農家が収益を向上させるためには、様々な課題に取り組みながら、地域との連携を深め、6次産業化を見据えた経営戦略を構築することが重要です。柿栽培は長い歴史を持ち、日本の文化や食生活に深く根付いています。その伝統を守りながら、現代の課題に対応し、新たな価値を生み出すことが、日本の柿産業の未来を拓く鍵となるでしょう。
まとめ
この記事では、柿の産地ランキングから栽培方法、各産地の取り組みについて詳しく解説しました。柿は日本の秋を代表する味覚であり、各産地の努力によってその品質が維持されています。ぜひ、この記事を参考にして、お好みの柿を見つけ、秋の味覚を堪能してください。
よくある質問
質問1:柿が一番美味しい時期はいつですか?
柿の旬は秋、具体的には9月~11月頃と言われています。この時期に収穫される柿は特に味が良いとされています。様々な品種がありますので、それぞれの品種ごとの旬を調べてみるのも面白いかもしれません。
質問2:美味しい柿の見分け方はありますか?
美味しい柿を選ぶには、まず果皮に注目しましょう。ハリがあり、色合いが均一なものがおすすめです。また、ヘタがしっかりと果実に付いていることも重要なポイントです。手に取った際に、見た目よりも重く感じるものを選ぶと良いでしょう。
質問3:柿の保存方法について教えてください。
柿は常温保存も可能ですが、より長く美味しく楽しむためには冷蔵保存が適しています。乾燥を防ぐために、ビニール袋などに入れて冷蔵庫で保管することをおすすめします。