「西洋梨の貴婦人」とも呼ばれるラ・フランス。その名の通り、フランス生まれのエレガントな果実です。ゴツゴツとした見た目からは想像もつかない、とろけるような舌触りと芳醇な香りが魅力。日本へは明治時代に渡り、山形県などで大切に育てられてきました。フランスでは絶滅の危機に瀕していたラ・フランスが、なぜ日本で愛されるようになったのでしょうか?その秘密を紐解きます。
ラ・フランスとは:基本情報と概要
ラ・フランスは、フランスを原産とする洋梨の一種で、日本には明治時代に導入されました。特に山形県での栽培が盛んです。特徴的な外見を持ち、追熟することで得られる、とろけるような食感と豊かな香りが魅力です。原産国のフランスでは、かつて絶滅の危機に瀕していましたが、日本で独自の発展を遂げ、今では日本を代表する洋梨として知られています。
ラ・フランスの歴史:フランスでの発見から日本での普及まで
ラ・フランスは、1864年にフランスのクロード・ブランシュによって発見されました。彼はその風味を高く評価し、「我が国を代表する果物」として「ラ・フランス」と命名しました。日本へは1903年(明治36年)に、農事試験場園芸試験地へ受粉用として持ち込まれました。導入当初は、見た目の悪さや栽培の難しさから、受粉樹としてわずかに栽培される程度でした。しかし、1970年代頃から生の果物への需要が高まり、ラ・フランス本来の美味しさが再評価され、生産量が増加しました。中でも山形県は、1980年代から生産と品質管理に注力し、現在では国内生産量の約6割を占める主要な産地となっています。
ラ・フランスの特徴:外観、味、食感
ラ・フランスは、表面がややゴツゴツとしていて、均整の取れていない独特の形をしています。果皮は黄緑色で、熟すと茶色がかった色合いになります。大きさは一つあたり200~250g程度です。外見は決して美しいとは言えませんが、追熟することで果肉は非常に緻密になり、豊富な果汁となめらかな舌触りを持つようになります。上品な甘さと穏やかな酸味、そして豊かな香りが特徴で、口に入れるととろけるような食感と奥深い風味が広がります。その食感から「バター・ペア」という別名もあります。
ラ・フランスの追熟:美味しさの秘密
ラ・フランスは、収穫してすぐに食べられるわけではありません。収穫後、室温で10日から2週間ほどの追熟期間が必要です。この追熟の過程で、果実に含まれるデンプンが、果糖やショ糖といった糖に分解され、甘さが増します。さらに、果肉に含まれるペクチンが水溶性のペクチンに変化することで、果肉の質感がとろけるように滑らかになります。追熟が進むにつれて、香りもより一層強くなり、最高の食べ頃を迎えます。
ラ・フランスの選び方:おいしさを見極めるポイント
おいしいラ・フランスを選ぶには、いくつかの重要な点があります。まず、手に取った時にずっしりと重みを感じ、全体的にふっくらとした丸みのあるものを選びましょう。多少、表面の色ムラや小さなキズがあっても、味に大きな影響はありません。ただし、明らかに傷んでいるものは避けるのが賢明です。ラ・フランスは、見た目の色の変化や強い香りで判断しづらいため、熟度を見極めるのが難しい果物です。一般的には、軸の部分にしわが寄り始め、軸の周りを軽く指で押さえた時に、耳たぶくらいの柔らかさになっていれば食べ頃です。お店の商品を強く押すのは避け、店員さんに確認するのがおすすめです。
ラ・フランスの保存方法:追熟から冷蔵・冷凍保存まで
ラ・フランスは、状態に合わせた保存方法が大切です。まだ熟していない場合は、新聞紙で包むか、ポリ袋に入れて、直射日光を避けた涼しい場所(15~20℃が目安)で追熟させます。状態によって異なりますが、2日から1週間程度で食べ頃になるでしょう。たくさんある場合は、少しずつ温度の高い場所へ移動させ、順番に熟させていくと良いでしょう。早く熟させたい時は、りんごのようなエチレンガスを放出する果物と一緒にポリ袋に入れると、追熟が促進されます。十分に熟したラ・フランスは、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。完熟したものは日持ちしないため、早めに食べるようにしましょう。冷凍保存も可能で、皮を剥き、食べやすい大きさにカットして、保存用袋などに入れて冷凍庫へ。シャーベットのような食感で楽しめます。
ラ・フランスの主な産地:山形県が全国No.1
ラ・フランスの代表的な産地といえば、山形県です。山形県は、ラ・フランスの栽培面積、収穫量ともに日本一を誇り、国内生産量の9割以上を占めています。その他には、青森県や長野県などでも栽培されています。山形県には、ラ・フランス狩りができる観光農園もあり、9月下旬頃から収穫体験を楽しめます。
ラ・フランスの栄養価:健康と美容をサポート
ラ・フランスには、食物繊維、カリウム、ビタミンCをはじめとする、様々な栄養成分が豊富に含まれています。食物繊維は、腸内環境を改善し、便秘の解消に役立ちます。カリウムは、体内のナトリウムバランスを整え、高血圧の予防に効果が期待できます。ビタミンCは、抗酸化作用によって美肌効果や免疫力アップに貢献します。その他、疲労回復を助けるアスパラギン酸や、高血圧予防に役立つカテキンなども含まれています。
ラ・フランスの品種:ゴールド・ラ・フランス、メロウリッチなど
ラ・フランスには様々な種類が存在します。中でもよく知られているのは、表皮が全体的に褐色の「ゴールド・ラ・フランス」でしょう。これはラ・フランスの枝変わりによって生まれた品種で、味わいや食感はオリジナルと共通する部分が多いものの、より深みのある風味が際立っています。また、山形県が独自に開発した新品種「メロウリッチ」は、非常に高い糖度を誇り、きめ細かく滑らかな果肉と、豊かな香りが特徴です。「バラード」は、ラ・フランスとバートレットを掛け合わせた品種で、大ぶりな果実と高い糖度、優れた食味が魅力です。「シルバーベル」は、保存性に優れており、クリスマスシーズンに味わうのに適した品種と言えるでしょう。
ラ・フランスの旬:10月下旬から12月頃
ラ・フランスが最も美味しくなる旬な時期は、おおよそ10月下旬から12月頃です。この時期になると、スーパーマーケットや青果店などで新鮮なラ・フランスを見かける機会が増えます。また、産地から直接配送されるオンラインショップなどを活用すれば、さらに鮮度の高いラ・フランスを手に入れることも可能です。
まとめ
ラ・フランスは、その個性的な風味と食感によって多くの人々を惹きつける、まさに「洋梨の女王」と呼ぶに相応しい果物です。この記事では、ラ・フランスの歴史、特徴、選び方、食べ方、保存方法など、多岐にわたる情報をお伝えしました。ぜひ、この記事を参考にして、美味しいラ・フランスを心ゆくまでご堪能ください。