秋の味覚として人気の洋梨。中でも「ラ・フランス」は、その芳醇な香りととろけるような舌触りで、特別な存在感を放っています。しかし、「洋梨とラ・フランスって何が違うの?」と思ったことはありませんか? 実は、ラ・フランスは数ある洋梨の品種の一つ。この記事では、意外と知られていない洋梨とラ・フランスの違いを徹底解説します。それぞれの特徴を知れば、もっと美味しく、もっと楽しく洋梨を味わえるはず。さあ、洋梨の世界へ足を踏み入れてみましょう!
はじめに:山形県が誇る「果物の女王」ラ・フランス
秋から冬にかけて、山形県を彩るフルーツといえば、やはり「ラ・フランス」でしょう。口にした瞬間、芳醇な香りが広がり、とろけるような果肉はまさに「果物の女王」と呼ぶにふさわしい逸品です。「洋梨とラ・フランスは同じもの?」と思われがちですが、実は違いをよく知らない人も多いのではないでしょうか。お店で見かけても、どうやって食べたら美味しいのか、どう保存すれば良いのか分からず、購入をためらうこともあるかもしれません。この記事では、ラ・フランスと洋梨(西洋梨)の違いはもちろん、ラ・フランス以外の洋梨の種類、美味しい洋梨の見分け方や保存方法まで、詳しく解説します。いつも同じフルーツを選んでしまう人も、この機会に洋梨の奥深い世界に触れてみてください。
洋梨(西洋梨)とは?定義と和梨・中国梨との違い
結論から言うと、ラ・フランスは洋梨の一種です。では、洋梨とは一体どんな果物なのでしょうか?洋梨とは、ヨーロッパ原産のバラ科ナシ属の果実の総称で、西洋梨とも呼ばれます。そのルーツは古代中国にあり、シルクロードを通ってヨーロッパに伝わり、16世紀頃にはドイツやイギリスで栽培が盛んになりました。現在では、ヨーロッパはもちろん、日本を含め世界中で栽培されています。洋梨の特徴は、日本の和梨と比較すると分かりやすいでしょう。品種によって差はありますが、多くの洋梨は縦長の形をしており、丸い和梨とは形が大きく異なります。食感も、シャリシャリとした和梨に対し、洋梨はとろりとした舌触りが特徴です。さらに、熟すにつれて広がる芳醇な香りは、洋梨ならではの魅力と言えるでしょう。洋梨は品種が非常に多く、世界には約4000品種あると言われていますが、日本で栽培されているのは20品種程度です。そして、その中の一つが「ラ・フランス」なのです。日本には洋梨の他に、みずみずしい「和梨」や風味豊かな「中国梨」があり、それぞれ旬や形が異なります。どの梨も水分が多く、上品な甘さと優しい酸味が調和した味わいが特徴です。各地で品種改良が進められており、現在では多くの品種が存在し、消費者は様々な選択肢を楽しめます。
ラ・フランスの全て:歴史、特性、日本での独自の発展

では、ラ・フランスとはどのようなフルーツなのでしょうか?ラ・フランスは、数ある洋梨の中でも特に有名で、洋梨全体を指す言葉として使われることもありますが、実際には洋梨の一品種の名前です。その名前が示す通り、フランス生まれの洋梨で、1864年にクロード・ブランシュ氏が偶然発見しました。その美味しさに感動したブランシュ氏は、「フランスを代表する果物にふさわしい」と絶賛し、「ラ・フランス」と名付けたと言われています。日本にラ・フランスがやってきたのは1903年。山形県には大正時代初期に導入されましたが、当時は見た目の悪さや栽培の手間から、バートレットという品種の受粉樹として使われる程度で、一般には流通しませんでした。ラ・フランスが生食用として広く知られるようになったのは、意外にも1980年代以降のことです。長い歴史の中で、比較的最近になってその価値が見出されたのです。洋梨、特にラ・フランスは、冷涼で日当たりが良く、雨の少ない地域での栽培に適しています。山形県の内陸部はまさにこの条件に合致するため、100年以上前から洋梨栽培が盛んに行われてきました。山形県がラ・フランスの一大産地となった背景には、気候だけでなく、明治時代に山形に伝わった洋梨が「硬くて食べられない」と捨てられた後、黄色く色づき、芳醇な香りを放ち始めたことで、熟成させると甘みが増すことに気づいた人々の知恵と努力があります。また、明治42年に皇太子(後の大正天皇)に和梨を献上した際、その美味しさに喜ばれたことが、洋梨栽培にも力を入れるきっかけになったという話も残っています。このような先人たちの努力と情熱が、山形県をラ・フランス生産量日本一へと押し上げました。現在、日本のラ・フランス生産量の約8割を山形県が占めており、洋梨全体の生産量で見ても約65%が山形県産という圧倒的なシェアを誇ります。バラ科ナシ属の洋梨は、豊かな風味と食感のために、人工授粉や袋掛けなど、収穫までに多くの手間と愛情がかけられています。特にラ・フランスは、開花から収穫、追熟まで時間がかかるため、より繊細な管理が必要です。この手間が、1個あたり400円から800円と高価になる理由の一つです。日本における洋梨の総栽培面積に占めるラ・フランスの割合は約6割と最も高く、洋梨=ラ・フランスというイメージが定着しているのも当然と言えるでしょう。
原産国フランスでの「絶滅」と日本だけの栽培
フランス語の“la”は、英語の“The”と同じ意味を持ちます。「フランス」という名前を持つ洋梨ですが、原産国のフランスではほとんど栽培されていません。実は1900年代初頭にはほとんど作られなくなり、現在では事実上、絶滅状態にあるのです。理由は主に2つあります。1つは、他の洋梨に比べて実をつける期間が長く、栽培に時間がかかること。2つ目は、病気にかかりやすく、手入れに手間がかかることです。さらに、ヨーロッパ各地の気候がラ・フランスの栽培に適さなかったこともあり、商業的な生産が困難になり、姿を消しました。現在、ラ・フランスを商業的に栽培しているのは世界中で日本だけであり、特に日本の生産量の約8割が山形県で栽培されているという事実は驚きです。ちなみに、毎年11月11日は「ラ・フランスの日」とされており、これはラ・フランスが最も美味しく熟す時期であることや、第一次世界大戦でフランスが勝利した記念日であることなどが由来と言われています。
まとめ
これまで見てきたように、ラ・フランスは数ある洋梨(西洋梨)の品種の一つです。日本国内で最も多く生産され、洋梨の総栽培面積の約6割を占めるため、「西洋梨とラ・フランスは同じ」と思われがちですが、その歴史や特性は奥深いものです。原産国フランスではほとんど見られなくなったラ・フランスが、日本では特に山形県を中心に栽培されており、全国生産量の約8割を占めています。山形県や新潟県などの東北地方では、ラ・フランスをはじめとする様々な洋梨が、熟練の農家によって丁寧に育てられ、海外にも輸出されています。洋梨は収穫直後は硬く、美味しく食べるためには「追熟」が不可欠です。この記事で紹介した美味しい洋梨の見分け方、自宅での適切な追熟方法、カット前後の保存方法を参考にして、最高の食べ頃を見極め、とろけるような舌触りと芳醇な香りの洋梨をぜひ味わってください。きっとその奥深い魅力に感動するでしょう。
ラ・フランスと西洋梨は同じものですか?
いいえ、ラ・フランスは西洋梨の一種です。西洋梨という大きな分類の中に、様々な品種があり、その一つがラ・フランスです。日本で最も多く栽培されている西洋梨がラ・フランスであるため、混同されがちですが、それは違います。
ラ・フランスはなぜ原産国フランスでは栽培されていないのですか?
ラ・フランスは、他の品種に比べて実がなるまでに時間がかかり、病気にも弱いため、栽培に手間がかかることが主な理由です。また、ヨーロッパの気候がラ・フランスの栽培に適していなかったことも影響し、原産国のフランスでは20世紀初頭には商業栽培がほとんど行われなくなりました。現在、商業的に栽培しているのは世界中で日本だけと言われています。日本では毎年11月11日を「ラ・フランスの日」として、その美味しさを楽しんでいます。
洋梨の美味しい食べ頃はどのように見分けられますか?また「追熟」とは何ですか?
洋梨の食べ頃を見極めるポイントは主に2つあります。まず、軸の周りにしわが出てくること。次に、果実全体、特にお尻の部分を軽く押したときに、少し柔らかさを感じることです。品種によっては皮の色が緑から黄色に変わるものもあります。形がいびつだったり、皮に薄茶色のサビがあっても、甘さには関係ありません。洋梨の美味しさを最大限に引き出すために重要なのが「追熟」です。追熟とは、収穫後の果実を一定期間保存することで、果実に含まれるデンプンが、甘み成分である果糖やショ糖、ぶどう糖に分解される現象です。果肉が柔らかくなり、特有の芳醇な香りが増します。一般的に洋梨は収穫後、2〜5度の低温で1〜3週間保存されますが、ル・レクチェのように12月から1月が食べ頃になる品種は、他の洋梨よりも追熟期間が長くなります。













