鳥取県が誇る味覚、それはみずみずしい甘さが自慢の「梨」。中でも「二十世紀梨」は全国トップクラスの生産量を誇り、その名を知らしめています。しかし、鳥取の梨の魅力はそれだけではありません。オリジナル品種の「新甘泉」をはじめ、「なつひめ」「優秋」など、個性豊かな品種が次々と旬を迎え、私たちの舌を楽しませてくれます。長年の歴史と風土が育んだ、鳥取の梨。その奥深い魅力に迫ります。
鳥取の梨とは?比類なき名産品の真価
鳥取といえば、誰もが思い浮かべる果物、それが「梨」です。中でも、市場への出荷量で日本一を誇る「二十世紀梨」に加え、鳥取県が独自に開発した「新甘泉(しんかんせん)」、みずみずしい「なつひめ」、上品な甘さの「優秋」など、多種多様な品種が夏の終わりから秋にかけて旬を迎えます。これらの梨は、その卓越した品質で知られ、その味を求めて全国各地から注文が殺到する、まさに鳥取の宝とも言える名産品です。贈り物としても大変喜ばれています。
鳥取を代表する「二十世紀梨」のすべて
鳥取における二十世紀梨の栽培は、100年以上の歴史を誇り、今や全国屈指の産地として、鳥取県を象徴する果物となりました。青梨の代表的な品種であり、その特徴は、さっぱりとした甘さとほどよい酸味の絶妙なバランス、そして滴るほどの潤沢な水分です。口にした瞬間、とろけるような果肉と、ジューシーで爽やかな食感が広がり、多くの人々を魅了し続けています。
二十世紀梨、誕生から鳥取へ:百有余年の物語
二十世紀梨は、明治21年(1888年)に千葉県松戸市で、当時13歳だった松戸覚之助氏が偶然発見しました。廃棄物の集積地の近くに生えていた一本の梨の木から生まれたその果実は、当時一般的だった果皮が茶色の赤梨とは一線を画し、淡い緑色の美しい果皮、きめ細かく柔らかな果肉、そして口の中で自然に溶け出すような豊かな水分が大きな注目を集めました。その優れた美味しさと将来性から、「二十世紀には梨の王様になるだろう」という願いを込めて「二十世紀梨」と命名され、その名の通り、日本を代表する梨へと成長を遂げました。鳥取県への導入は明治37年(1904年)。鳥取市桂見の北脇永治氏が10本の苗木を購入したのが始まりです。その後、傾斜地でも栽培しやすいという特性が評価され、昭和8年頃から栽培面積が急速に拡大。現在では、鳥取県が生産量日本一を誇り、地域を代表する特産品としての確固たる地位を築いています。
二十世紀梨、旬の時期と収穫最盛期
二十世紀梨の収穫期間は、8月下旬から10月上旬と比較的長く続きます。中でも、9月は二十世紀梨の出荷量が最も多くなる最盛期であり、この時期に収穫される梨は、品質が最も高く、最高の状態で市場に出回ります。みずみずしく、とびきり美味しい二十世紀梨を堪能したいなら、9月の最盛期を狙って購入するのがおすすめです。この時期には、鳥取県内の農産物直売所や観光梨園、オンラインストアなどで、旬の二十世紀梨を思う存分楽しむことができます。
美味なる二十世紀梨の選び方:見極めのコツは模様と重量
極上の二十世紀梨を手に入れるには、いくつかの着眼点があります。まず注目すべきは、果皮全体に広がる淡い黄緑色です。中でも、緑の地色に黄色い斑点が現れている状態は「トラ熟れ」と呼ばれ、これは甘味が凝縮され、まさに食べ頃を迎えたサインとされています。また、手に取った際に心地よい重さを感じる梨は、たっぷりの果汁を含んでおり、口にした時の爽やかな潤いが期待できます。表面に傷がなく、左右対称に近い形状であることも、良質な梨を選ぶ上で重要な要素です。食感の好みによって選び分けることも可能です。シャキッとした歯ごたえがお好みであれば、やや緑がかったものを選び、より濃厚な甘さを求めるのであれば、全体的に黄色味が強く、熟度の進んだものを選ぶと良いでしょう。これらのポイントを参考に、至高の二十世紀梨を見つけ出してください。
梨をさらに美味しく味わう秘訣と健康への恵み
梨は、その美味しさだけでなく、選び方や食べ方を工夫することで、さらに奥深い味わいと、私たちの健康を支える力を秘めた果実です。ここでは、極上の梨を見分けるための更なる秘訣と、梨が持つ豊かな栄養価と健康効果について、詳細にご紹介いたします。
梨選び、もう一歩踏み込んだポイント
梨の美味しさは、その外観に秘められています。一般的に、軸が細く、梨の上部(肩)と下部(お尻)がふっくらと張り出しているものほど、美味しい梨である可能性が高いと言われています。このような形状の梨は、果肉がぎっしりと詰まっており、全体に栄養分がしっかりと行き渡っている証拠です。また、梨の中でも特に甘みが強いとされるのは、お尻の部分です。お尻の部分は糖度が高く、濃厚な甘さを堪能できます。一方で、芯に近い部分は酸味が強いため、食べ進めるにつれて変化する味わいを楽しむことができます。これらのポイントを参考に、ご自身の好みに合った梨を選び、部位ごとの味の違いをじっくりと味わってみてください。
梨がもたらす、驚くべき健康への貢献

梨は、その約89%が水分で構成されており、みずみずしい食感に加え、多岐にわたる健康効果が期待できる果物です。特に、古くから民間療法にも用いられてきた解熱作用はよく知られており、風邪による発熱時や喉の不調時に摂取することで、体の熱を穏やかに下げ、咳を鎮め、乾燥した喉を潤す効果が期待できます。「梨のど飴」が存在することからも、梨が喉に優しい果物であることが伺えます。
また、梨には豊富な「カリウム」が含まれています。カリウムは、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を促進する働きがあり、塩分の過剰摂取によって上昇した血圧を安定させる効果が期待できます。血圧が気になる方は、日々の食生活に梨を積極的に取り入れることをお勧めします。
さらに、梨特有のシャリシャリとした食感は、「ペントザン」や「リグニン」といった成分から形成される「石細胞」によるものです。この石細胞は、食物繊維と同様に腸を穏やかに刺激する作用があり、便秘の予防や改善に役立つとされています。水分補給、解熱作用、血圧の安定、そして便秘の予防と、梨は私たちの健康を様々な側面からサポートしてくれる、まさに天然の恵みとも言えるでしょう。
まとめ
鳥取県は、日本有数の梨の産地として知られ、「二十世紀梨」とオリジナル品種である「新甘泉」は、その品質を代表する存在です。明治21年に偶然発見されてから1世紀以上もの間、二十世紀梨は、そのさわやかな甘酸っぱさと、みずみずしい食感で多くの人々を魅了してきました。丁寧な人工授粉作業、二重の袋がけ、そして光センサーによる選果といった、長年の経験と最新技術を組み合わせた栽培方法によって、その品質は高く保たれています。東南アジアやアメリカへの輸出も長く行われており、国際交流にも貢献しています。一方、新甘泉は平成20年に誕生した鳥取県オリジナルの品種で、糖度15度にもなる濃厚な甘みと、豊富な果汁、シャリシャリとした食感が特徴です。
鳥取県では、これら二つの代表的な品種に加えて、「なつひめ」「幸水」「豊水」「新興」「あたご梨」「新雪」「秋栄」「王秋」など、夏から冬にかけて様々な種類の梨が収穫され、それぞれの個性を楽しむことができます。梨は水分を多く含み、解熱効果が期待できるほか、カリウムによる血圧安定作用、石細胞による便秘予防効果など、健康面でも優れた効果が期待できる果物です。美味しい梨を見分けるポイントは、「トラ熟れ」と呼ばれる状態や、「肩や尻の張り」を確認することです。鳥取砂丘周辺の「ふくべ梨狩り街道」や八頭町の「はっとうフルーツ観光園」などでは、収穫したばかりの新鮮な梨を自分で味わう体験もでき、多鯰ヶ池近くの「さんこうえん」では10種類以上の梨狩りを楽しむことができます。
さらに、鳥取市湖山町には、二十世紀梨の原木をご神体として祀る「木乃実神社」があり、豊かな実りを願う生産者の心の拠り所となっています。インターネットショップ「とっとり市」や梨狩り園の直売所、道の駅などで、鳥取が誇る美味しい梨をぜひ味わってみてください。
鳥取の梨を代表する品種は何ですか?
鳥取県を代表する梨としては、全国的に有名な青梨である「二十世紀梨」と、鳥取県が独自に開発した赤梨のオリジナル品種「新甘泉(しんかんせん)」が挙げられます。その他にも、「なつひめ」や「優秋」といった独自の品種に加え、「幸水」「豊水」「新興」「あたご梨」「新雪」「秋栄」「王秋」など、様々な品種が栽培されており、それぞれ異なる魅力を持っています。
二十世紀梨の旬な時期はいつですか?
二十世紀梨の収穫時期は、主に8月下旬から10月上旬にかけてです。特に9月は出荷の最盛期を迎え、最も美味しい状態で味わうことができます。また、ハウス栽培された二十世紀梨は8月中旬頃から出荷され、いち早く旬の味を楽しむことができます。
新甘泉(しんかんせん)の一番の魅力は何ですか?
新甘泉の一番の魅力は、「濃厚な甘さ」と「口の中に広がる豊富な果汁」、そして「シャリシャリとした独特の食感」です。糖度検査では15度に達することもあり、早生品種の赤梨としてはトップクラスの甘さを誇ります。













