みずみずしい甘さが魅力の桃。しかし、デリケートな桃は、気づけば黒ずんで腐っていた…なんて経験はありませんか? 特に梅雨時期から夏にかけては高温多湿なため、桃の扱いはより慎重になる必要があります。「この黒い部分はカビ?」「まだ食べられる?」そんな疑問を抱く方も多いはず。この記事では、桃が黒くなる原因と腐敗の見分け方を徹底解説します。安全に美味しく桃を味わうための保存方法もご紹介。最後まで安心して旬の味覚を堪能しましょう。
桃が腐る・カビる原因と特徴
桃はデリケートで、夏の高温多湿な環境ではカビが生えやすく腐敗しやすいです。カビ菌が付着すると増殖し、カビが発生。腐敗の原因は「外傷」「常温での長期放置」に加え、農家が苦心する「エボ(枝側)の穴」「虫害」「病気」「核割れ」など。これらの腐敗は、保管方法に関わらず時間経過で進行するリスクがあります。生産者は選果に尽力しますが、ヒューマンエラーも発生します。

エボ(桃の枝側)の穴から腐敗
桃の枝と繋がっていた部分「エボ」に穴が開いている場合、内部の種が割れる「核割れ」が原因です。この穴から雨水やカビが入り込み、種の中で細菌が繁殖し、桃全体が腐敗します。農家組合の出荷基準では、楊枝の先程度の穴なら許容されることもありますが、大きい穴は腐敗のリスクが高く販売できません。ただし、産地によって基準が異なるため、産地や個人の品質を見極める必要があります。
害虫(ヤガ、カメムシ)による腐敗
桃が成熟期を迎えると、ヤガやカメムシが果実を吸汁します。初期段階ではわずかな点ですが、時間とともに黒ずみ腐敗します。吸汁されて間もない頃は小さく見落としがちです。農家は選果時に注意しますが、すべての虫害を見つけるのは困難です。購入者が発見した場合は、品質維持に注意が必要です。
病気による腐敗:灰星病とホモプシス腐敗病
桃の腐敗の主な原因として、「灰星病」や「ホモプシス腐敗病」といった病害が挙げられます。これらの病気は桃栽培において深刻な問題であり、収穫間際や流通段階で発生し、産地の評判を損なう可能性があります。農薬による防除は有効な手段ですが、長雨などで防除適期を逃すと、発生が広がることもあります。写真では腐敗の進行が比較的わかりやすい場合もありますが、実際には初期の小さな腐敗から進行するため、見過ごされることも少なくありません。その結果、消費者の手に渡った時点で腐敗が表面化することがあります。
核割れによる内部からの腐敗
桃を切ったときに内部に空洞がある現象は「核割れ」と呼ばれ、内部からの腐敗原因のひとつです。これは生育中に胚が複数できたり、急な降雨で果肉が急激に膨らみ、種との間に隙間ができることで発生します。その空洞に雨水やカビの胞子が入り込んだり、結露によって雑菌が繁殖することで、内側から腐敗が進行します。見た目では分からないことも多く、特に幅広の桃は核割れしやすい傾向があります。高品質とされるロイヤル等級では発生が少ないかもしれませんが、形が不揃いな下位等級ではリスクが高くなります。白桃の等級にはロイヤル(糖度12度以上)、キング(11.5度以上)、エース(10.5度以上)があります(出典: JA岡山(はなやかオンライン), URL: https://www.hana-yaka.jp/page/2, 2024-07-01)。ただしロイヤル等級でも核割れがないとは限りません。空洞に黒い斑点や綿状のものがあれば黒カビの可能性が高いため、食べずに処分してください。カビは内部に広がることもあるため注意が必要です。一方で、果肉にカビがなく異臭もない場合は食べても問題ないとされます。核割れはあくまで生理現象で、必ずしも腐敗を意味するわけではありません。カビの兆候がなく、乾燥して変色も軽微なら、周囲の果肉は安全に食べられますが、少しでも異変を感じた場合は無理せず廃棄しましょう。
ヒューマンエラーと流通・選果の現実
桃の腐敗原因として前述した病害を除くと、その多くは選果段階における人的ミスに起因すると考えられます。桃農家は、腐敗した桃が消費者に届かないよう、細心の注意を払って選果作業を行っています。しかし、選果のプロセスは複雑で、多くの工程を経る必要があります。例えば、農協などに出荷され、糖度センサーを通過した桃は、消費者に届くまでに最低でも3回のチェックを受けます。まず、農家が自宅で一次選果を行い、良品として出荷します。次に、選果場で選果担当者が詳細なチェックを行い、最後に箱詰め作業者が最終確認を行います。これほど厳重なチェック体制が整っていても、腐敗した桃が紛れ込んでしまうのが現実です。個人の農家が直接販売する場合、チェック回数が1回にとどまる可能性もあり、見落としのリスクはさらに高まることが考えられます。
適切な保管状況の重要性:腐敗を招く条件
上記で述べた原因は、桃が出荷された時点で既に問題を抱えているケースですが、桃は非常に繊細な果物であるため、購入後の保管状況も腐敗の進行に大きく影響します。桃は常温保存が基本ですが、追熟が非常に早く、適切な環境で保管しないとすぐに過熟が進み、腐敗につながります。そのため、桃が手元に届いたら、まず一つずつ丁寧に腐敗やカビの有無を確認することが大切です。確認後、風通しの良い涼しい場所で常温保存しましょう。特に注意すべきは、気密性が高く熱がこもりやすいビニール袋などでの保存です。このような環境下では、健全な桃でも追熟が異常に促進され、腐敗を早めてしまいます。また、一度冷蔵庫で冷やした桃を常温に戻すと、表面に結露が生じやすくなります。この水滴が雑菌の繁殖を促し、腐敗の原因となるため注意が必要です。桃は食べる直前に冷蔵庫で冷やすのが理想的です。食後のデザートとして楽しむために、食事の直前に冷凍庫に数分間入れて冷やすといった工夫をしている農家もいます。
桃の表面に見られる変色:カビとの違いと対処法
桃は繊細な果物であり、表面に様々な変化が現れることがあります。時にはカビと見間違えるような状態になることもありますが、正しく見分けることで安心して食べることができます。ここでは、桃の表面に見られる主な現象と、その対処法について詳しく解説します。
黒い斑点の正体:黒カビのリスクと見分け方
桃の表面に黒い斑点が見られる場合、最も注意すべきは黒カビの可能性です。黒カビは見た目にも不快感を与えますが、健康への影響も懸念されます。もし黒カビが生えた桃を誤って口にしてしまうと、腹痛や下痢などの消化器系の症状を引き起こすことがあります。また、カビの胞子を吸い込むことで、アレルギー反応や喘息を引き起こす可能性も否定できません。黒カビは深く根を張る性質があるため、表面を拭き取っただけでは完全に除去することはできません。そのため、黒カビが確認された場合は、残念ながら食用を諦めるべきです。他の食品への 汚染を防ぐため、ビニール袋などに入れて密閉し、速やかに廃棄してください。一方、桃の表面に茶色い斑点が見られる場合は、黒カビではなく、桃に含まれるポリフェノールが酸化したものである可能性が高いです。この変色は自然な現象であり、異臭がなく、桃本来の甘い香りがする場合は、食べても問題ありません。ただし、少しでも異変を感じたら、無理に食べるのは控えましょう。
白いふわふわの正体:「毛じ」の特徴と適切な洗い方
桃の表面を覆う白い産毛のようなものは、カビと誤解されやすいですが、これは「毛じ」と呼ばれるものです。毛じは桃が成長する過程で自然に生じるものであり、カビではありません。毛じの役割は、害虫から果実を守ったり、強い日差しから果肉を保護したりすることです。毛じは桃の自然な一部であるため、そのまま食べても健康上の問題はありません。しかし、毛じは細かい毛であるため、人によっては口にした際に刺激を感じることがあります。特に、桃は皮と実の間が最も甘く、栄養価も高いため、皮ごと食べることでより美味しくいただけます。皮ごと食べたい場合は、食べる前に水で丁寧に洗い、指で優しくこするようにして毛じを取り除くことをおすすめします。毛じを洗い流すことで、より快適に桃を味わうことができます。また、桃アレルギーの原因物質は主に皮に含まれているため、アレルギーが心配な方は皮を剥いて食べるようにしましょう。
茶色い変色の原因:圧迫や衝撃による「アタリ」
桃は非常にデリケートな果物であるため、少しの圧力や衝撃で表面が茶色く変色することがあります。この変色は「アタリ」と呼ばれ、腐敗とは異なります。例えば、指で軽く押しただけでもできる茶色い変色は「指アタリ」と呼ばれ、比較的軽度なものです。また、桃が落下したり、何かに強くぶつかったりした場合は、その部分が黒っぽく変色することもあります。一般的に販売されている桃には、収穫や輸送の際に生じた軽微なアタリが含まれていることがあります。これらの茶色や黒っぽい変色は、腐敗とは異なることが多く、異臭がなければ食べられる場合もあります。しかし、体調に不安がある場合や、変色の度合いがひどい場合は、食べるのを控えるようにしてください。ただし、アタリによって果肉が大きく損傷している場合や、異臭がする場合は、その部分を取り除くか、食べるのを控えるのが賢明です。
内部の黒っぽい変色:「ゴマ入り」(「餡入り」とも)
桃の中には、見た目は普通の白い桃でありながら、果肉の一部が黒っぽく変色している「ゴマ入り」と呼ばれる状態が見られることがあります。これは、リンゴの蜜入りと同様に、果肉内部に糖分が過剰に蓄積されたり、生育過程での何らかの生理的なストレスが原因で細胞が変化することで起こると考えられています。ゴマ入り自体は、必ずしも味が落ちるわけではなく、むしろ糖度が高くなっている場合もありますが、外観上の問題から、贈答品や高級桃としては避けられる傾向にあり、加工用としても敬遠されることがあります。これは腐敗とは異なる生理現象であり、異臭がしたり、明らかに異常な感触がなければ、基本的に食べても問題ありません。
桃の腐敗を見極めるポイントと食べられる範囲

桃が腐ってしまった場合でも、腐っている部分の広さや状態によっては、食べられる可能性もあります。長年桃を栽培し、毎日桃を食べている農家の経験を基に、腐った桃をどこまで食べられるかの目安をお伝えします。ただし、これはあくまで個人的な経験に基づくものであり、皆様の健康状態を保証するものではありませんので、少しでも不安を感じたら、無理に食べずに廃棄するのが最も安全です。
ごく一部分の虫食い・病気による腐り:直径1~2cm程度なら可食
腐っている部分が小さく、直径が1~2センチ程度であれば、その部分を少し大きめに切り取れば、ほとんどの場合、問題なく食べられます。これは、初期段階の病気による腐りや、軽度の虫食いが原因の場合に該当します。カビや腐敗の兆候がその部分に限定されていて、周りの果肉に異臭や変色がないようであれば、健全な部分を切り取って美味しく食べることが可能です。桃農家の経験上も、これくらいの腐りであれば、取り除けば美味しく食べられることが多いです。
広範囲に及ぶ腐り:種付近まで広がっている場合は廃棄推奨
しかし、腐っている部分が広範囲に広がり、特に種に近い部分まで腐りが達している場合は、食べるのを控えるのが賢明です。ここまで腐敗が進むと、見た目に腐っている部分を大きく取り除いたとしても、腐敗によって発生した物質が桃全体に浸透している可能性が高く、見た目は正常でも味が悪くなっていることが多いです。酸っぱい臭いやアルコール臭、あるいは刺激臭がする場合は、腐敗が進んでいるサインですので、食べるのは避けてください。あくまで個人的な経験として、農家自身は広範囲に腐敗した桃でも悪い部分を取り除いて食べた経験がありますが、体調を崩したことはないそうです。しかし、これは個人の体質によるもので、全ての人に当てはまるわけではありません。安全性を考慮し、種の周りまで腐敗が広がっている桃は、思い切って廃棄することをお勧めします。
まとめ
桃がカビたり傷んだ場合の対処は、桃の種類やカビの場所・進行具合によって異なります。腐敗の原因には、エボや虫の食害、病気、核割れ、保管環境の悪さなどがあり、生産者が丁寧に選果していても完全には防ぎきれません。皮や核割れ部分に黒カビが見られる場合は、健康に影響を及ぼす恐れがあるため、必ず廃棄しましょう。一方で、表面の白い毛(毛じ)や茶色い変色、「アタリ」「ゴマ入り」などは腐敗ではなく、異臭がなければ食べられます。核割れでも果肉に異常がなければ一部は食べられることもありますが、種の周囲まで腐敗が広がっている場合は処分をおすすめします。美味しく安全に桃を楽しむには、保存方法や見分け方を知っておくことが大切です。届いた時点で傷んでいた場合は、お店に連絡して対応を相談しましょう。お盆以降も旬の桃は多く出回るので、ぜひこの知識を活かして味わってみてください。
桃に生えた黒いカビは食べても大丈夫ですか?
いいえ、桃に黒いカビが生えていたら、絶対に食べないでください。黒カビを摂取すると、腹痛や下痢といった消化器系の問題を引き起こす可能性があります。さらに、カビの胞子を吸い込むことで、喘息やアレルギー症状を引き起こすリスクもあります。カビは奥深くまで根を張っているため、表面だけを取り除いても、内部に菌糸が残っている可能性が高いです。黒カビを発見した場合は、すぐにビニール袋などに入れて密閉し、廃棄処分するようにしましょう。
桃の皮の白いふわふわはカビですか?
いいえ、桃の皮にある白いふわふわしたものは、カビではなく「毛じ(もうじ)」というものです。これは、桃が害虫や強い日差しから自身を守るために自然に生やす産毛のようなものです。毛じ自体は食べても問題ありませんが、気になる場合は水で丁寧に洗い流すことで取り除くことができます。桃は皮と果肉の間が最も甘いと言われていますので、毛じを洗い落として、皮ごと食べるのがおすすめです。
桃の中が黒いのはカビですか?食べられますか?
桃の内部が黒く変色している場合、核割れによってできた空洞にカビ、特に黒カビが発生している可能性があります。核割れは桃によく見られる生理現象ですが、その空洞にカビが生えている場合は、食べずに廃棄してください。ただし、核割れしていても果肉にカビが見当たらず、酸っぱい臭いやアルコールのような異臭がしない場合は、カビていない部分は食べることができます。見た目や臭いをよく確認し、少しでも不安を感じたら廃棄するのが賢明です。また、「餡入り」という状態によって内部が黒っぽく透けて見えることがありますが、これは腐敗ではないため食べても問題ありません。
桃の種が割れていて、カビが生えている場合、食べても大丈夫ですか?
桃の種にひびが入り、内部が空洞化する現象は「核割れ」と呼ばれ、カビの温床となることがあります。特に、枝が付いていた部分に穴が開いていると、雨水やカビの胞子が侵入しやすく、カビが増殖する原因となります。もし、核割れした箇所に黒いカビのようなものが確認できる場合は、残念ですが食べるのを諦めて処分しましょう。カビは目に見える部分にとどまらず、果実全体に影響を及ぼしている可能性も考えられます。安全を第一に考え、口にしないことをおすすめします。
桃が部分的に茶色く変色しているのは、傷んでいる兆候ですか?
桃の一部分が茶色く変色しているからといって、すぐに腐敗していると判断するのは早計です。桃の表面に茶色い斑点が見られる場合、それは多くの場合、桃に含まれるポリフェノールが空気と反応して酸化した結果です。また、桃をぶつけたり、落下させたりした際にできる打撲痕は「アタリ」と呼ばれ、これも茶色や黒ずんだ変色として現れることがあります。これらの変色は腐敗とは異なり、異臭がなく、果肉に張りがあるようであれば、食べても問題ないことが多いです。ただし、変色が広範囲に及んでいる、触るとぶよぶよしている、酸っぱい臭いやアルコールのような臭いがする場合は、腐敗が進んでいる可能性が高いため、食べるのを控えるべきでしょう。