パルメザン
豊かな香りと奥深い味わいで、世界中の食卓を彩るパルメザンチーズ。その魅力は、単なる調味料にとどまりません。イタリアチーズの王様と称される「パルミジャーノ・レッジャーノ」は、800年以上の歴史を持つ伝統食品。限られた地域でのみ生産され、厳しい品質基準をクリアしたものだけが、その名を許されます。本記事では、パルメザンチーズの歴史や製法、そしてその味わいを徹底解説。あなたの食卓をより豊かにする情報をお届けします。
パルミジャーノ・レッジャーノについて
パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアを代表する至高のチーズであり、「チーズの王様」とも称えられています。その歴史は8世紀以上にわたり、製法や品質は厳格に守られています。限られた地域(パルマ、レッジョ・エミリア、モデナ、ボローニャの一部、マントヴァの一部)でのみ製造が許されており、厳しい品質基準をクリアしたチーズだけがその名前を名乗ることができます。
パルメザンチーズとは
パルメザンチーズは、本来は「パルミジャーノ・レッジャーノに似せて作られたチーズ」という意味合いで使用されます。しかし、特に日本では、粉チーズ全体の名称として広く知られています。アメリカや日本などでも生産されていますが、熟成期間はパルミジャーノ・レッジャーノよりも短い場合が多く、風味も異なります。
パルミジャーノ・レッジャーノとパルメザンの違い
パルメザンチーズは、イタリア語の「パルミジャーノ・レッジャーノ」を英語表記にしたものですが、両者は異なるチーズです。パルメザンチーズは、その生産地に明確な規定がなく、一般的に粉チーズの総称として用いられています。一方、パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアを代表するチーズとして知られ、「チーズの王様」と称されるほど、世界中で愛されています。8世紀以上の歴史の中で、その伝統と品質は変わらず受け継がれており、エミリア・ロマーニャ州をはじめとする特定の地域で製造され、その製造方法や品質には厳しい基準が設けられています。
DOP認証:品質の証明
パルミジャーノ・レッジャーノは、EUの原産地名称保護制度(PDO:Protected Designation of Origin)に基づき、DOP(Denominazione di Origine Protetta)認証を受けています。この認証は、パルミジャーノ・レッジャーノが非常に厳しい基準を満たしていることの証です。パルミジャーノ・レッジャーノの最低熟成期間はDOPによって12ヶ月と定められていますが、市場で評価が高いのは24ヶ月や36ヶ月といった長期熟成タイプです。中には5年以上に及ぶものも存在します。
品質管理:メッツァーノとは
熟成12ヶ月の時点で、微小な傷や内部にわずかな欠陥が見られたものは“Parmigiano Reggiano Mezzano”(パルミジャーノ・レッジャーノ・メッツァーノ)に等級を分け、チーズの表皮に焼印などでマークを付けています。このような厳格な品質管理システムによって、消費者は正真正銘のパルミジャーノ・レッジャーノを見分け、その卓越した風味を安心して堪能できます。また、DOP認証は、模倣品や類似品の製造を抑制する上で不可欠な役割を果たしています。
パルミジャーノ・レッジャーノの製造工程
パルミジャーノ・レッジャーノの原材料には、前日に搾乳し、一晩置いてクリームを分離させた牛乳と、当日の朝に搾乳した牛乳を混ぜ合わせたものが使用されます。この製法のため、1日に製造できるのは1回のみです。水分を徹底的に除去し、最低でも12ヶ月、通常は18ヶ月から36ヶ月、長いものでは5年以上もの歳月をかけて熟成させるため、非常に硬質なチーズとなり、アミノ酸が結晶化して白い点が生じることがあります。製造過程で生じる乳脂肪分はバターなどの原料として利用され、ホエイ(乳清)は豚の飼料として活用されます。
パルミジャーノ・レッジャーノの風味と楽しみ方
D.O.Pの刻印が施された最高品質のパルミジャーノ・レッジャーノは、少なくとも2年以上の長期熟成を経ており、濃厚な旨味と塩味が特徴です。アミノ酸由来の結晶が、シャリシャリとした独特の食感をもたらします。表面に見られる白い斑点はカビではなく、アミノ酸が結晶化したものです。その奥深い風味としっかりとした歯ごたえは、現在も多くの人々を魅了し続けています。粉チーズとして使用するのが一般的ですが、本場では塊を割って食べるのが主流です。赤ワインやビールとの相性も抜群です。長期熟成されているため保存性にも優れており、長く楽しめますが、風味を最大限に味わうには、切りたてを真空パックで保存するのがおすすめです。もしカビが発生した場合は、その部分を取り除いてからお召し上がりください。
パルメザンチーズの現状
日本では、パルメザンチーズは粉チーズの一般的な名称として広く認知されていますが、本場イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノとは、品質や製造方法において大きな隔たりがあります。欧州司法裁判所は『パルメザン』が『パルミジャーノ・レッジャーノ』の翻訳語にあたると判断しており、EU域内ではこの名称もDOPの保護対象です。そのため、規定を満たさないチーズに『パルメザン』という名称を使用することは法的に禁じられています。
パルミジャーノ・レッジャーノの地理的表示保護
欧州連合(EU)では、食品、特にチーズのような製品の原産地名称は法的に保護されています。パルミジャーノ・レッジャーノもその対象であり、この保護制度によって、一定の品質基準を満たした製品のみが「パルミジャーノ・レッジャーノ」として市場に出回ることが保証されています。
パルミジャーノ・レッジャーノの価格と金融
重量30kgを超えることもあるパルミジャーノ・レッジャーノは、その製造に時間とコストがかかるため、高価な食品です。最低1年の熟成期間が必要なため、すぐに現金化できないという特性から、イタリアのCredito Emiliano銀行は、1953年以来、パルミジャーノ・レッジャーノを融資の担保として受け入れており、銀行は保険としてチーズを空調設備の整った保管庫で保存し、熟成を促します。農家は運転資金を得るうえ、チーズ作りの熟成プロセスを銀行に代わりに行ってもらうことで運用コストが節約でき、銀行はリスクの高い業界に関する専門知識を得られるという仕組みです。ハーバードビジネススクールの新しいケーススタディ『Credem:Banking on Cheese』の対象にもなっています。当然ながら、すでに市場に出回っている完成品は、この融資の担保として使用することはできません。
パルミジャーノ・レッジャーノの調理法
パルミジャーノ・レッジャーノは、すりおろしてパスタにかけるのが一般的な食べ方ですが、塊のままワインと一緒に楽しむこともできます。このチーズは、料理に深みと風味を加えることができるため、「イタリアチーズの王様」と称されることもあります。
グラーナ・パダーノとの比較
パルミジャーノ・レッジャーノと類似した製法で作られるチーズとして、ポー川流域産のグラーナ・パダーノがあります。どちらも「グラーナ」と呼ばれる種類のチーズですが、パルミジャーノ・レッジャーノはより限定された地域でのみ生産されるという点で違いがあります。
まとめ
「パルメザン」という名で広く知られるチーズですが、本場イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノとは、製造方法、品質、そして味わいに明確な差異があります。パルミジャーノ・レッジャーノは、長きに渡る伝統と職人の技が息づく、まさに「チーズの王様」と称されるに相応しい逸品です。機会があれば、ぜひ一度、本物のパルミジャーノ・レッジャーノをご賞味ください。その芳醇な香りと奥深い味わいに、きっと心を奪われることでしょう。
よくある質問
質問1:パルミジャーノ・レッジャーノはどこで購入できますか?
パルミジャーノ・レッジャーノは、質の高い食品を扱うスーパーマーケット、デパート内のチーズコーナー、専門店、またはインターネット通販などで手に入れることができます。購入する際は、DOP(原産地名称保護)認定の証である刻印が施されているかを確認しましょう。
質問2:パルミジャーノ・レッジャーノの適切な保存方法は?
カットされたパルミジャーノ・レッジャーノは、乾燥しないようにラップで丁寧に包み、冷蔵庫で保管してください。真空パックされた状態で販売されている場合は、開封後も同様の方法で保存します。もしカビが発生した場合は、カビが生えた部分を切り落とせば、残りの部分は問題なく食べられます。
質問3:パルミジャーノ・レッジャーノはアレルギー体質でも大丈夫?
パルミジャーノ・レッジャーノは原料に牛乳を使用しているため、牛乳アレルギーをお持ちの方は摂取を控えるようにしましょう。乳糖不耐症の方は、少量であれば問題ないケースもありますが、ご自身の体調と相談しながら量を調整することをおすすめします。