くるみゆべし発祥の地を巡る:伝統と革新の物語

豊かな自然に育まれた、奥深い味わいの「くるみゆべし」。その発祥の地を巡る旅は、単なるお菓子探訪ではありません。古くから受け継がれてきた伝統製法と、時代に合わせて進化を遂げてきた革新の精神。その両輪が織りなす、奥ゆかしい物語を紐解きます。懐かしい風味の中に息づく、先人たちの知恵と情熱を感じてください。さあ、くるみゆべしのルーツを辿る旅へ出発しましょう。

ゆべしの名前の由来と多様な種類

ゆべしという名前は、もともと柚子(ゆず)を使ったお菓子に付けられたものでした。しかし、時が経つにつれて、各地で独自のゆべしが生まれています。ゆべしと聞いて思い浮かべるものは人それぞれですが、大きく分けると以下の3つのタイプが考えられます。

  1. くるみゆべし:醤油の香りがほんのりとする、くるみ入りの甘い茶色いお餅
  2. ゆべし:柚子の風味が爽やかな、柔らかくて甘い黄色いお餅
  3. 丸柚餅子:柚子を丸ごと使った、高級な和菓子

    現在では、様々なゆべしが全国で販売されていますが、ルーツは丸柚餅子で、室町時代には保存食として重宝されていました。作り方は、柚子の上部を切り、中身をくり抜いて、乾燥米や白味噌、砂糖などを詰めて蒸し、数ヶ月間乾燥させるという手の込んだもので、「丸柚餅子」と呼ばれていました。戦の際の携帯食としても使われていましたが、次第に茶道の高級な菓子として、甘みを増していきました。丸柚餅子は今でも、石川県や岡山県、愛媛県などで作られており、インターネット通販でも購入できます。この丸柚餅子を手軽に楽しめるように、もち粉や求肥を使って柔らかくしたものがゆべしです。では、くるみゆべしはどのようにして生まれたのでしょうか?それは、東北地方に古くからあったお餅の文化と融合し、独自の進化を遂げたものなのです。

    東北地方名物「くるみゆべし」

    東北地方には、バラエティ豊かなゆべしが存在します。それらの多くは、柚子の代わりに、くるみやゴマといった栄養価の高い食材を練り込んでいるのが特徴です。柚子を使用しない理由としては、東北地方では柚子の栽培が盛んではなかったことや、もともと独自のお餅文化が根付いていたことが挙げられます。そうした背景から、「ゆべし」という名前とともに、くるみゆべしが発展し、定着していったと考えられます。そのため、くるみゆべしは東北地方発祥の和菓子として広く知られていますが、その正確な発祥地は、八ツ橋やきびだんごのように特定の地域が「元祖」を主張するような明確な起源は分かっていません。そのため、くるみゆべしは東北地方発祥の和菓子として広く知られています。福島県が特に有名というイメージがあるかもしれませんが、地域によってさまざまな特色が見られます。例えば、秋田県には、もち粉と砂糖で作った生地をロールケーキのように巻いたゆべしがあり、「恵比須」というお祝いのお菓子が変化したものだと言われています。そんな、くるみを使った「くるみゆべし」は、その美味しさから全国で親しまれ、「ゆべし」といえば「くるみゆべし」を思い浮かべる人も多いようです。

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    「くるみゆべし」の作り方

    一般的なくるみゆべしがどのように作られるのか、その工程をご紹介します。

    1. まず、素焼きしたくるみを粗く刻みます。オーブンなどでくるみをローストし、粗みじんにすることで、大きめにカットするとくるみの食感が際立ち、細かいカットにすると生地の風味を引き立てるアクセントになります。
    2. 次に、砂糖などを溶かして蜜(シロップ)を作ります。砂糖、醤油、水を火にかけ、ベースとなるシロップを作ります。醤油を使わないレシピや、黒砂糖、みりんなどを使って風味を出す場合もあります。生地を柔らかくしたい場合は、砂糖の代わりに水飴を多めに使うと、しっとりとした生地になるそうです。
    3. そして、もち粉を加えて生地を作ります。シロップにもち粉を少しずつ加えながら、ダマにならないようによく混ぜ合わせます。白玉粉を使う場合は、先に水で練ってからシロップを加える方法もあります。
    4. その後、生地を加熱してからくるみを加え、再度加熱します。練り上げた生地を加熱し、熱い状態でくるみを混ぜ込みます。この時、生地全体に均一に熱が通るように、しっかりと混ぜ合わせるのがポイントです。もう一度加熱することで、生地に透明感が出て、美しい飴色になります。
    5. 最後に、冷やしてカットします。片栗粉(またはオブラートパウダーなど)を敷いたバットに生地を流し込み、粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やします。しっかりと固まったら、食べやすい大きさにカットして完成です!

    まとめ

    ゆべしは、元々は柚子を使った保存食でしたが、時を経て、各地で様々な進化を遂げた日本の伝統的な和菓子です。これらのゆべしは、それぞれ独自の歴史と地域性を持っており、お土産や普段のおやつとして、日本の豊かな食文化を感じさせてくれます。その土地を訪れた際にはぜひ、その土地ならではのゆべしを味わってみてください。

    ゆべしとはどんなお菓子?

    ゆべしは、そのルーツを室町時代に持つ伝統的な和菓子です。元々は柚子を材料とした保存食として生まれ、当時は「丸柚餅子」と呼ばれていました。これは柚子を丸ごと使い、中をくり抜いて米や味噌、砂糖などを詰めて蒸し、乾燥させたものでした。時を経て、茶道の世界で高級な菓子として洗練され、甘味が加えられるようになりました。現在では、柚子の香りがする柔らかい餅菓子や、東北地方を中心に親しまれている、くるみやゴマを練り込んだ醤油味の餅菓子など、地域によって様々なバリエーションが存在します。

    なぜ東北地方でくるみゆべしが有名なのでしょうか?

    東北地方は柚子の栽培に適した土地ではなかったため、代わりに身近な食材であるくるみやゴマをお餅に練り込む独自の食文化が育まれました。特に、栄養価が高く風味豊かなくるみは、お菓子やお餅の材料として重宝され、「くるみゆべし」として広く知られるようになりました。秋田県ではロールケーキのような形、山形県では指で押して形作る米粉餅など、地域ごとに特色あるくるみゆべしが作られています。くるみゆべしの明確な発祥地は特定されていませんが、東北地方を代表する和菓子であることは確かです。

    くるみゆべし