懐かしさと新しさが織りなす、魅惑のバタークリームケーキの世界
幼い頃、特別な日に食べたバタークリームケーキ。あの濃厚で優しい甘さは、どこか懐かしい思い出を呼び起こします。近年、レトロブームとともに、そのバタークリームケーキが再び脚光を浴びているのをご存知でしょうか?昔ながらの製法を守りつつ、現代風にアレンジされた美しいデコレーションや、斬新なフレーバーとの組み合わせが、新たな魅力を開花させています。今回は、懐かしさと新しさが融合した、魅惑のバタークリームケーキの世界へご案内いたします。

バタークリームとは?定義と生クリームとの違いを解説

バタークリームとは、その名の通り、バターを主成分とするクリームのこと。具体的には、バターに砂糖、牛乳、そして卵を加え、空気を抱き込ませるように丁寧に混ぜ合わせて、ふんわりとしたクリーム状に仕上げたものを指します。現在では、生クリームを贅沢に使用したケーキが主流ですが、かつてバタークリームは、その濃厚な風味と強い甘みが特徴で、日本の洋菓子店ではケーキの定番として広く用いられていました。バタークリームの特筆すべき点は、その保存性の高さです。よく比較される生クリームは、生乳を使用しているため日持ちがしませんが、バタークリームは常温でも1週間程度は品質を保てます。さらに、シロップを加えたものであれば、常温で1ヶ月程度保存できる場合もあり、その保存性の高さは大きな魅力です。また、生クリームと比較して、やや固めの質感であることも特徴の一つです。この固さゆえに、繊細なデコレーションに適しており、カップケーキの装飾などにも頻繁に用いられ、その自由度の高さも人気の理由となっています。上質なバターの風味をダイレクトに味わえる点も、昨今のバタークリームケーキ再評価の大きな要因と言えるでしょう。

バラエティ豊かなバタークリームの世界:種類と特徴

一口にバタークリームと言っても、そのバリエーションは実に豊富です。日本ではバターと砂糖、卵を混ぜて作るのが一般的ですが、地域によって材料や製法が異なるため、風味や口当たりも様々です。例えば、フランス式バタークリームは、卵黄のみを使用するのが特徴で、そのため色味が濃く、非常に滑らかな仕上がりになります。濃厚なコクがあり、チョコレートのような風味の強い素材との相性が抜群です。一方、イタリア式バタークリームは、イタリアンメレンゲと混ぜ合わせて作られます。形状が崩れにくく、口当たりが軽やかなのが魅力です。基本的な材料は、無塩バター、卵白、グラニュー糖の3つで、卵黄を使用しないため淡い色合いで、多様なデコレーションに活用しやすい点も特徴として挙げられます。スイス式バタークリームは、砂糖と卵白を湯煎にかけて砂糖を溶かす工程が特徴的です。なめらかで非常に柔らかく、それでいて型崩れしにくいため、ケーキの仕上げや繊細な装飾に重宝されます。ドイツ式バタークリームは、全卵や牛乳を使用し、甘さを抑えて仕上げるのが一般的です。濃厚でありながらも、とろけるような口当たりが特徴で、ロールケーキのフィリングなどによく用いられます。そして、アメリカ式バタークリームは、バターにたっぷりの砂糖(グラニュー糖)を加えて作るのが特徴です。アメリカでは、砂糖をバターの2倍近く加えることもあり、非常に濃厚で甘みの強いバタークリームに仕上がります。

バタークリームケーキ、日本のクリスマスを彩った軌跡

かつての日本では、クリスマスと言えばバタークリームを使ったケーキが定番でした。日本でバターケーキが広まったのは、1950年代頃のこと。その背景には、第二次世界大戦終結後のアメリカ軍の影響がありました。当時、多くのアメリカ兵が日本に駐留していましたが、実はアメリカ本国では、クリスマスにケーキを食べる習慣は一般的ではありませんでした。しかし、海外に駐在するアメリカ兵の間では、クリスマスをデコレーションケーキで祝う習慣があったのです。この光景を目にした日本人が、「クリスマスはケーキでお祝いするのが世界のスタンダードだ」と認識したことが、普及の大きなきっかけとなりました。また、戦後に民間企業が小麦の輸入を始めたことも、普及を後押ししました。大量生産されるようになったケーキがクリスマスシーズンに市場に出回り、それまで洋菓子に馴染みの薄かった日本人の間で、クリスマスにケーキを食べる習慣が一気に広まっていったのです。

バタークリームが敬遠された背景とは?

かつてクリスマスケーキの定番だったバタークリームケーキですが、いつしか人々に避けられる存在となりました。現在、ケーキの主流は生クリームであり、バタークリームを見かける機会は減っています。その理由の一つに、バターの価格高騰がありました。バターはもともと高級品であり、それを使ったケーキも高価にならざるを得ませんでした。一方、より安価な生乳から作られる生クリームケーキが普及し、消費者は手頃な価格の生クリームケーキを選ぶようになったのです。また、バタークリーム特有の風味や濃厚さが「しつこい」と感じる人もおり、それが敬遠される要因となりました。経済的な事情と嗜好の変化が重なり、バタークリームは徐々に日本の食卓から姿を消していったのです。

再燃!現代におけるバタークリームの魅力

 

かつての状況から一転し、近年バタークリームを使ったスイーツが再び注目を集めています。この再評価にはいくつかの理由があります。まず、バターの品質が向上し、風味豊かなバターが手に入るようになったこと、そして保存技術の進歩により、バタークリーム本来の美味しさが再認識されるようになったことが挙げられます。さらに、2010年代中盤から、バターに含まれる動物性脂肪に対する見方が変わり、以前のネガティブなイメージが薄れたことで、バターブームが到来しました。こうした流れの中で、バタークリームへの関心も高まっていったのです。また、テレビやメディアでの特集、コロナ禍での「おうち時間」の増加も後押しとなり、バタークリームは新たなトレンドとして確立されました。現在では、多くのケーキ店で、昔ながらの重さを抑え、現代の味覚に合わせたバタークリームケーキが販売されています。

注目すべきバタークリームスイーツ「バタークリームサンド」

バタークリームがトレンドとなっている今、特におすすめしたいのが「バタークリームサンド」です。濃厚なバタークリームを、それぞれのフレーバーに合わせて丁寧に仕込み、サクサクのクッキーで挟んだ贅沢な一品です。特に人気を集めているのは、以下の4種類です。「ラムレーズン」は、芳醇なラム酒にじっくり漬け込んだレーズンを、なめらかなバタークリームに混ぜ込んでいます。口に含むと、ラム酒の香りとレーズンの甘みが広がり、上品で高級感のある味わいです。「フランボワーズ」は、濃厚なバタークリームに、甘酸っぱいフランボワーズピューレを繊細にブレンド。ほろ苦いココアサブレでサンドすることで、甘味、酸味、苦味のバランスがとれた、大人の味わいに仕上がっています。「あんバター」は、たっぷりのあんこをバタークリームと合わせた、リッチな一品。バタークリームの甘さとあんこの風味、そして塩味が絶妙に調和し、他では味わえない満足感をもたらします。「ピスタチオ」は、香ばしくローストしたピスタチオをバタークリームに混ぜ込み、ココアサブレで挟んでいます。ピスタチオの香ばしさが後を引く、やみつきになる味わいです。これらのバタークリームサンドは、手軽に楽しめるにもかかわらず、上品で贅沢なスイーツとして、多くの人々から愛されています。

まとめ

今回は、近年注目を集めているバタークリームについてご紹介しました。バタークリームは、バター本来の濃厚な風味を堪能できるだけでなく、生クリームにはない独特の満足感を与えてくれます。かつてはクリスマスケーキを彩ったものの、一時敬遠された時代を経て、現代の技術と品質向上によって新たなブームを迎えています。特に、バラエティ豊かなフレーバーが楽しめるバタークリームサンドは、手軽でありながらも上品で深い満足感を与えてくれる、注目のスイーツです。

バタークリームとホイップクリーム、一番の違いは何?

バタークリームは、その名の通りバターをベースに、砂糖やミルク、卵などを加えて作られます。生クリームと比べて保存期間が長く、およそ1週間程度は常温で保存可能です。シロップを加えた場合は、1ヶ月ほど日持ちします。また、しっかりとした硬さがあるので、ケーキの飾り付けに最適です。対照的に、ホイップクリームは牛乳が主原料で、日持ちは短く、バタークリームのような安定した硬さはありません。

バタークリームってどんな種類があるの?

バタークリームには、主に5つの製法があります。フランス式、イタリア式、スイス式、ドイツ式、そしてアメリカ式です。フランス式は卵黄のみを使用するため、濃厚でなめらかな仕上がりになります。イタリア式は、イタリアンメレンゲと混ぜ合わせることで、軽い口当たりが特徴です。スイス式は、湯煎した卵白を使うため、やわらかく、デコレーションに向いています。ドイツ式は、全卵や牛乳を使用し、甘さ控えめです。そしてアメリカ式は、たっぷりの砂糖を使うため、濃厚な甘さが楽しめます。

昔のクリスマスケーキがバタークリーム主流だったのはなぜ?

日本でクリスマスにバタークリームケーキが普及したのは、1950年代頃のことです。第二次世界大戦後、アメリカ軍が駐留したことが背景にあります。海外に駐在していたアメリカ兵が、デコレーションケーキでクリスマスを祝う習慣を、日本人が「世界の標準」と認識してしまったことが理由の一つです。また、民間企業による小麦の輸入自由化によって、ケーキの大量生産が可能になったことも、普及を後押ししました。

バタークリームケーキ