食卓の定番であり、お子様にも人気のトマトは、多くの家庭で重宝されています。サラダや料理のアクセントとして、その鮮やかな赤色と爽やかな酸味は、食欲をそそりますよね。トマトには、健康維持に欠かせない多種多様な栄養成分がバランス良く含まれており、美容にも良い影響を与えることが期待できます。この記事では、トマトに含まれる栄養成分とその効果を解説。食べ過ぎのリスクや、栄養を効率的に摂取できる方法もご紹介します。トマトを毎日美味しく、そして健康的に楽しむための情報が満載です。
※本記事は情報提供を目的とするものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。持病をお持ちの方や健康に関して不安がある方は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
トマトに含まれる主な栄養素と健康サポートの可能性

トマトには、リコピンやβ-カロテンをはじめとした栄養成分が含まれており、これらが私たちの体にさまざまな形で役立つと考えられています。ここでは、それぞれの栄養素についてご紹介します。
リコピンとβ-カロテン:日々の健康を支える成分
完熟したトマトの赤い色は、カロテノイドの一種である「リコピン」によるものです。リコピンには抗酸化性があり、紫外線やストレスなどで生じる酸化ダメージから体を守る働きをサポートするとされています。
また、リコピンと同じくカロテノイドであるβ-カロテンも、トマトに含まれており、体内で必要に応じてビタミンAに変わる「プロビタミンA」として知られています。ビタミンAは、視覚や皮膚・粘膜の健康維持に関わる栄養素です。
これらの成分は、健康的な毎日を支える栄養素として注目されており、食生活に取り入れることで、日々のバランスを整える助けになると考えられています。
リコピンはトマトの細胞壁の中に存在しており、加熱やすり潰すなどの調理によって吸収率が高まるといわれています。トマトジュースやトマトソース、煮込み料理などで摂ることで、より効率的に体に取り入れやすくなると考えられています。
また、油と一緒に摂ることで、リコピンが脂溶性である性質から吸収がスムーズになるとされ、オリーブオイルなどと合わせて調理するのもおすすめです。
ビタミンC:日々のコンディション維持や美容面でのサポートに
トマトにはビタミンCが含まれており、100gあたり約15mg、ミニトマトでは32mgほど含有されていると報告されています(※出典参照)。加熱によって失われやすいビタミンCですが、トマトは生のまま食べることが多いため、日常的にビタミンCを取り入れやすい食材です。
ビタミンCは、健康的な肌を保つうえで欠かせない栄養素のひとつであり、コラーゲンの生成をサポートしたり、体のコンディションを整えるのに役立つと考えられています。また、鉄の吸収を助けたり、ストレスの多い環境で消耗されやすい栄養素としても知られています。
カリウム:塩分の取りすぎが気になる方の味方に
トマト100gあたりに含まれるカリウムの量はおよそ210mg。カリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)の排出をサポートし、体内の水分バランスを整える働きがあるとされます。
このため、日々の塩分摂取が気になる方や、むくみが気になる方の食生活においても、カリウムを含む野菜は取り入れやすい存在です。なお、茹で調理では一部が水に溶け出すため、生食での摂取も一案です。
食物繊維:お腹の調子を整える成分として注目
トマトには、水溶性と不溶性、2種類の食物繊維がバランス良く含まれています。水溶性食物繊維の代表であるペクチンは、腸内の環境バランスを整えたり、食後の血糖値やコレステロール値の急激な上昇を穏やかにする働きがあるといわれています。
また、不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸の動きをサポートすることでスムーズな排便に役立つとされ、日々の食生活で意識したい成分のひとつです。トマトの厚みや歯ごたえにも、この繊維成分が関係しています。
(出典: 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」, URL: https://medibalance.lotte.co.jp/post/369, 2023-08-24)
トマトの栄養を活かす!おすすめの食べ方と調理法
トマトはそのままでも美味しく、さまざまな料理に使える万能野菜ですが、調理方法を少し工夫することで、栄養素の特性をより効果的に取り入れやすくなります。ここでは、日常の食事にすぐ取り入れられる3つのポイントをご紹介します。
生のまま食べる:ビタミンCを効率よく取り入れるコツ
トマトに含まれるビタミンCは熱に弱く、加熱によって減少しやすい性質があります。そのため、サラダなどで生のまま食べることで、ビタミンCを比較的しっかり摂ることができるとされています。
また、トマトの皮にはリコピンやβ-カロテンなどの栄養素が含まれていることが知られています。これらをまるごと取り入れたい場合は、皮ごと食べるのがおすすめです。ただし、皮はやや消化されにくい場合があるため、胃腸の調子に合わせて調整しましょう。皮が気になる方は、湯むきや直火で軽く炙ることで簡単に除去できます。
さらに、ミニトマトを冷凍してから水に浸けると、皮が剥けやすくなるほか、旨味も感じやすくなるといわれています。冷凍保存は、風味や栄養価の面でもメリットがあります。
油と組み合わせる:脂溶性成分を活かす工夫
トマトに含まれるリコピンは脂溶性のため、油と一緒に摂取することで吸収効率が高まるとされています。特にオリーブオイルとの相性がよく、オイルをかけたサラダや炒め物、マリネなどに活用するのがおすすめです。
例えば、モッツァレラチーズとバジルを合わせた「カプレーゼ」は、風味も楽しみながら脂溶性成分を取り入れやすい食べ方のひとつ。炒め物や煮込み料理にも、少量の油を加えることで、リコピンを含む栄養素が活かしやすくなります。
加熱調理を活用する:量も摂れて吸収しやすいスタイルに
トマトを加熱することで、果肉の細胞壁が崩れ、栄養成分が体内に取り込まれやすくなるといわれています。リコピンの吸収効率を意識するなら、焼く・煮る・炒めるなどの加熱調理も効果的な方法のひとつです。
また、加熱によってトマトのかさが減るため、生で食べるよりも一度に多くの量を食べやすくなる点もポイントです。これにより、リコピンを含むさまざまな栄養素を、食事から無理なく摂ることができます。
食べ過ぎに気をつけたい!トマトと上手に付き合うためのポイント

栄養が豊富なトマトは、日々の食事に取り入れやすい野菜のひとつです。ただし、どんなに体に良いとされる食材でも、摂りすぎには注意が必要。トマトを日常的に楽しむ上で、意識しておきたいポイントを整理しておきましょう。
体を冷やしやすい性質に注意
東洋医学では、トマトは体を冷やす「陰性」の食材とされることがあります。暑い季節には、体の熱をやわらげてくれる存在として重宝されますが、冷たいまま大量に食べすぎると、体が冷えやすくなる可能性も。とくに胃腸がデリケートな方は、一時的にお腹がゆるくなることもあるため、温かいスープや煮込み料理などにアレンジして楽しむのもおすすめです。
果皮の食べすぎによるお腹の不調に配慮を
トマトの皮には、消化されにくい不溶性の食物繊維が含まれています。そのため、一度にたくさん食べると、体質によっては便秘やお腹の張りを感じることも。気になる場合は、湯むきや炙りなどで皮を取り除いたり、加熱してやわらかくすることで、体への負担を軽減できます。
なお、ミニトマトは冷凍してから水に浸けると、簡単に皮が剥けて扱いやすくなります。冷凍保存によって旨味も引き出されるとされており、調理の幅も広がります。
結石のリスクとシュウ酸の関係
トマトには、ほうれん草やコーヒーにも含まれている「シュウ酸」という成分が微量ながら含まれています。一般的な食事で問題となることは少ないとされていますが、気になる場合は、ゆでることでシュウ酸を減らす方法もあります。
また、シュウ酸はカルシウムと一緒に摂ることで、腸内で吸収されにくくなるとされています。チーズや牛乳などのカルシウムを含む食品と組み合わせて取り入れることで、バランスよく楽しむことができるでしょう。
トマトの摂りすぎで皮膚が黄色っぽく見えることも?
トマトには、カロテノイドの一種「カロテン」が含まれています。このカロテンを含む食材を長期間にわたって多く摂ると、手のひらや足の裏、顔などが黄色っぽく見えることがあります。これは「柑皮症(かんぴしょう)」と呼ばれる状態で、カボチャやニンジン、ミカンなどでも知られています。
柑皮症は健康に大きな影響を及ぼすものではなく、過剰摂取を控えることで自然に元に戻るとされています。ただし、見た目が気になる場合や、食生活が偏っていると感じた場合には、一度食材のバランスを見直すのもよいでしょう。
トマトに含まれる成分でアレルギーに似た症状が出ることも
トマトに含まれる「アセチルコリン」という成分は、体質によってはかゆみやじんましん、口の中の違和感などを引き起こすことがあります。これらは「仮性アレルゲン」と呼ばれる成分によって起こる反応で、いわゆる食物アレルギー(免疫反応)とは異なる仕組みです。
必ずしもすべての人に起こるわけではありませんが、体調や摂取量によって影響を受ける場合があります。とくに、以前に似たような症状を感じたことがある方は、食べる量や調理法に配慮するのがおすすめです。
また、心配な症状が続いた場合は、無理をせず医療機関に相談するようにしましょう。
トマトはどれくらい食べてもいい?目安と注意点
トマトは、健康や美容を意識する方々に人気の高い野菜のひとつです。ビタミンやリコピンなどの栄養素が豊富に含まれていますが、毎日食べる場合には「適量」を知っておくことも大切です。ここでは、1日の目安量と過剰摂取の可能性について見ていきましょう。
リコピン量から考える1日の適量
トマトの代表的な成分である「リコピン」は、1日あたり15〜20mgの摂取がよいとされています。この量は、中サイズの生トマトで約2個分、ミニトマトで10〜15個程度が目安です。
トマトジュースなどの加工品では、1杯(約200ml)で同程度のリコピンを摂ることも可能です。また、ケチャップの場合は大さじ4杯分が目安。ただし、加工品はリコピンが効率的に摂れる反面、塩分や糖分が多く含まれていることがあるため、成分表示を確認しながら取り入れるとよいでしょう。
栄養素の上限から見る“食べすぎ”のリスク
トマトの摂取量について、明確な上限は定められていませんが、含まれる栄養素によっては注意が必要なケースもあります。
たとえば、β-カロテンは体内でビタミンAに変換されます。これを過剰に摂取すると、肌が黄色っぽく見える「柑皮症(かんぴしょう)」が起こることがありますが、一時的なもので健康への深刻な影響は少ないとされています。
ビタミンAの観点から見た場合、生トマト3~4個やトマトジュース5~6杯以上を毎日続けるような場合に注意が必要になることもあります。ただし、β-カロテンは水溶性のため、必要以上の分は体外へ排出されやすいとされています。
また、トマトに含まれる「カリウム」も摂りすぎに注意したい栄養素のひとつです。腎機能に問題がある方や、医師からカリウム制限を受けている方は、1日の摂取量に気を配る必要があります。通常であれば、6〜7個以上のトマトを毎日食べ続けるような極端な食べ方をしなければ、過剰になる心配は少ないと考えられます。
無理なく、バランスよく楽しむのがポイント
栄養豊富なトマトは、食生活にうまく取り入れることで、日々の健康づくりにもつながります。特別な疾患がある場合やサプリメントを併用している場合は医師の指導を仰ぎながら、基本的には「バランスよく・適量を」意識して楽しむことが大切です。
まとめ
トマトには、リコピンやビタミンC、β-カロテン、カリウム、食物繊維など、日々の健康を支える栄養素がバランスよく含まれています。生でそのまま食べるのはもちろん、油や加熱を活用することで、栄養の吸収率をさらに高めることも可能です。
ただし、摂りすぎには注意が必要。冷えや消化不良、柑皮症(皮膚の黄染)、仮性アレルゲン反応などが起こることもあります。リコピン摂取の目安から見ても、生のトマトなら1日2個、ミニトマトなら10~15個程度がちょうど良い量です。
毎日の食事に、無理なくトマトを取り入れて、バランスの取れた健康習慣を続けていきましょう。
トマトの過剰摂取による影響とは?
トマトは、その豊富な栄養価で知られていますが、過剰に摂取すると体に様々な影響を及ぼす可能性があります。例えば、体を冷やす、皮が消化しにくいといったことが挙げられます。さらに、シュウ酸が原因となる胆石や尿路結石のリスク、カロテンの過剰摂取による一時的な皮膚の黄染(柑皮症)、アセチルコリンによる皮膚のかゆみや蕁麻疹といった仮性アレルギー症状などが稀に現れることがあります。適量であれば問題ありませんが、過剰摂取はこれらのリスクを高めるため、他の緑黄色野菜とバランス良く摂取することが大切です。詳しくは、「トマトの食べ過ぎが及ぼす身体への影響について」の項目をご覧ください。
トマトは一日あたり何個食べるのが適切ですか?
リコピンの推奨摂取量(1日あたり15~20mg)を目安に考えると、中サイズのトマトであれば1日に2個程度、ミニトマトの場合は10~15個程度が適切な量とされています。加工食品として摂取する場合は、トマトジュース約1杯、ケチャップ大さじ4杯程度が目安となります。過剰摂取は上記のようなリスクを高める可能性があるため、一度にたくさん食べるのではなく、適量を継続して摂取することを心がけましょう。
ミニトマトと普通のトマトで栄養価に違いはありますか?
ミニトマトと通常のトマトは、基本的に同じ栄養成分を含んでいます。ただし、一般的に、100gあたりの栄養成分含有量はミニトマトの方が高い傾向にあります。ミニトマトは、サラダや料理の彩りとして、またお弁当にもそのまま入れられるため、手軽に栄養を摂取できる便利な食材と言えるでしょう。
ケチャップやトマトジュースでもトマトの栄養は摂取できますか?
はい、ケチャップ、トマトジュース、トマト缶などの加工食品からも、トマトの栄養を摂取することができます。特に、加工用トマトは生食用トマトの約3倍ものリコピンを含んでいる品種も存在します。加工によってビタミンCは減少する傾向がありますが、リコピンや食物繊維、βカロテンなどは効率的に摂取可能です。加工によって栄養が凝縮されるため、加工食品を上手に利用することで、手軽にトマトの栄養を摂取できるでしょう。ただし、ケチャップなど、加工時に塩分が添加されているものもあるため、摂取量には注意が必要です。
トマトの皮は摂取すべき?
トマトの表皮には、リコピンやβ-カロテンといった大切な栄養成分が豊富に詰まっています。より効率的にこれらの栄養を取り入れたいのであれば、可能な限り皮ごと食するのが良いでしょう。ただし、皮は果肉と比較して消化しにくい特性があるため、消化器官が弱い方や、一度にたくさん食べる場合は、過剰摂取に注意が必要です。皮の消化が気になるようでしたら、湯むきをしたり、冷凍後に水に浸すなどして皮を取り除いてから食べることも考えてみてください。
トマトを食べると体が冷えるってホント?
その通りです。東洋医学の観点から見ると、トマトは体を冷やす性質を持つ食品とされています。特に、冷えた状態のトマトを生で大量に摂ると、体温が低下し、一時的に消化器官の活動が鈍くなったり、下痢を引き起こすことも考えられます。冷えやすい体質の方や胃腸が弱い方は、加熱調理をしたり、温かい料理と一緒に食べるなど、工夫して摂取することをおすすめします。
トマトで痒みや蕁麻疹が出ることってあるの?
はい、トマトに含まれるアセチルコリンという成分が原因で、痒みや蕁麻疹、口の中の違和感といった症状が現れることがあります。これは一般的な食物アレルギーとは異なり、「仮性アレルゲン」による反応であり、その日の体調や摂取量によって症状が出たり、出なかったりします。もしトマトを食べて何らかの不快感を覚えた場合は、自己判断せずに専門医に相談するようにしてください。