天然の着色料

食品の着色には、化学合成された着色料が長らく使用されてきましたが、近年では天然由来の着色料が注目を集めています。健康志向の高まりや環境への配慮から、食品メーカーは天然の着色料を使った商品開発に力を入れるようになっています。天然の着色料には、植物や動物、鉱物由来のさまざまなものがあり、色鮮やかで魅力的な製品作りに貢献しています。本記事では、天然の着色料の種類や特徴などを紹介します。

着色料とは

私たちの食生活に欠かせない色彩を演出してくれるのが着色料です。食品やさまざまな製品に彩りを添え、魅力を高めるその存在は、視覚を通して私たちに喜びと食欲をもたらしてくれます。 着色料には、自然界に存在する天然色素と、化学的に合成された人工色素があります。植物や動物、鉱物などの自然素材から抽出された天然色素は、安全性が高く環境にも優しいことから注目が集まっています。一方、石油や石炭を原料とする人工色素は、色鮮やかで安定性に優れていることから広く利用されてきました。 食品や化粧品などに使用できる着色料は、安全性と品質を確保するため法的な規制があります。認可を受けた着色料のみが製品に使用できるようになっており、私たちの健康が守られています。時代とともに変化する消費者ニーズに応じ、より安心で美しい色彩が私たちの生活を彩り続けることでしょう。

着色料の使用目的

着色料は、製品の視覚的な魅力を高め、品質や鮮度を直観的に伝えるために使用されています。製品の変色や退色を防ぎ、一定の色味を維持することで、消費者に新鮮さと品質を感じさせます。また、色彩による食欲増進効果もあり、製品の味わいや美味しさを印象づけます。さらに、色によってブランドアイデンティティを確立し、マーケティングにも役立っています。このように、着色料は製品の品質保持と販売促進の両面で重要な役割を果たしています。

合成着色料と天然着色料の違い

着色料には、合成着色料と天然着色料の2種類があり、その特性は大きく異なります。合成着色料は化学合成された人工的な着色料で、鮮明な発色と優れた光や熱に対する安定性を備えています。一方で、体内への蓄積やアレルギー反応の懸念があるため、使用には細心の注意を払う必要があります。 一方の天然着色料は、植物や動物由来の自然素材から抽出された色素です。人体や環境に優しく、素朴で柔らかな色調や独特の風味を付与することができます。しかし、光や熱に弱く、変色や褪色しやすいデメリットがあり、また、天然由来のため色の再現性にも課題があります。 近年、健康志向や環境配慮の高まりから、食品はもちろん、化粧品や服飾雑貨など、様々な分野で天然着色料への需要が高まっています。用途によっては合成着色料と天然着色料を適切に使い分ける必要がありますが、天然着色料は魅力的な選択肢となっています。

着色料の種類と含まれる食品例

では、代表的な着色料の種類を紹介します。

合成着色料:タール系色素
タール系色素は、石油製品から化学的に合成された着色料です。着色性と色もちが良く、少量で効果的な発色が可能です。日本で認可されているタール系色素には、赤色素、黄色素、青色素、緑色素の合計12種類があります。お菓子、アイスクリーム、明太子、漬け物などに含まれています。

天然着色料:カラメル色素
カラメル色素は、砂糖やでんぷんなどを原料とした、日本で最も使用されている着色料です。褐色で香りや風味付けの役割もあります。製法により4種類に分類され、亜硫酸やアンモニウムを使った「カラメルIII・IV」が主流です。お菓子、醤油、ソース、ビール、清涼飲料水などに含まれています。

天然着色料:クチナシ色素
クチナシの果実から抽出された着色料で、黄色素、青色素、赤色素の3種類があります。pHに左右されにくく、混ぜ合わせで多彩な色調が得られます。お菓子、アイスクリーム、中華麺、漬け物などに幅広く使用されています。

着色料のよくあるQ&A

ここからは、着色料のよくあるQ&Aを見ていきましょう。 

タール系色素やカラメル色素は発がん性があるのですか?
タール系色素やカラメル色素には発がん性は確認されておらず、安全性に問題はないとされています。これらの添加物は、食品安全委員会によって安全性が確認された後に認可され、使用基準も定められています。タール系色素は登録検査機関による検査が義務づけられ、カラメル色素も多くの試験をクリアしています。さらに、厚生労働省の調査によると、実際の摂取量は「一日摂取許容量(ADI)」を大きく下回っているため、普段の食生活で過剰に心配する必要はありません。

着色料に使われる虫について教えてください。
着色料で使用される虫は「エンジムシ」です。この昆虫はスペイン南部や中南米のサボテンに寄生し、その乾燥体から「コチニール色素」が抽出されます。コチニール色素は鮮やかな橙から赤紫色を持ち、安定性が高いため、清涼飲料水やお菓子、ハム、かまぼこなどさまざまな食品に用いられています。

着色料はどのように表示されますか?
着色料の表示は、用途名と物質名が記載されます。物質名に「色」が含まれていれば、用途名は省略可能です。具体的な表示例は以下の通りです:

タール系色素:着色料(赤102、黄4)、赤色2号
カラメル色素:着色料(カラメル)、カラメル色素
(カラメルⅠ~Ⅳは省略して類別名で表示)
クチナシ色素:着色料(クチナシ)、クチナシ色素、カロチノイド色素
このように、着色料の表示には基準があり、消費者が確認しやすくなっています。

着色料が含まれているかは原材料表示で確認を

食品を選ぶ際、着色料の有無は重要なチェックポイントの一つです。着色料には天然由来と合成品があり、合成着色料には安全性の懸念があります。しかし、着色料は食品の見た目を良くする役割もあり、一定の需要があります。 着色料は、食品の変色や退色を防ぐだけでなく、色味をよくして食欲を増進させる効果もあります。お菓子やアイスクリーム、麺類、漬け物など幅広い食品に使われています。着色料は国が安全性を確認した添加物で、明確な使用基準が定められています。実際に含まれる量も、国が認めた安全量を下回っているため、過剰に避ける必要はありません。 一方で、着色料無添加の食品を望む方は、原材料表示をよく確認しましょう。食品メーカーは消費者の安全と好みのバランスを取るため、天然着色料の使用を増やす努力をしています。原材料表示を見ることで、着色料の有無と種類を知ることができます。食の安全を守るためにも、原材料表示のチェックは大切な習慣です。

まとめ

天然の着色料は、化学合成された着色料に比べて安全性が高く、環境にも優しいため、食品業界で広く活用されるようになっています。植物由来のクチナシ青や赤麹、動物由来のカロチノイド、鉱物由来の酸化鉄などの天然着色料は、鮮やかな発色と風味の付与に貢献しており、消費者の健康志向と環境への配慮に応える食品開発の重要な役割を果たしています。

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