生菓子の種類:和菓子と洋菓子の世界
生菓子は、水分を多く含んだ、みずみずしいお菓子のこと。日本の伝統的な和菓子と、西洋から伝わった洋菓子、それぞれに魅力的な生菓子が存在します。この記事では、和菓子の繊細な美しさ、季節感を表現する奥深さ、そして洋菓子の豊かな風味と洗練された技術、それぞれの世界を覗いてみましょう。代表的な生菓子の種類から、素材、製法、歴史背景まで、その多様な魅力に迫ります。今日のおやつ選びが、きっと楽しくなる情報が満載です。

はじめに:奥深い和菓子の世界へ

日本の伝統と美意識が息づく和菓子は、その繊細な味わいと見た目の美しさで、私たちを魅了し続けています。単なる甘味としてだけでなく、日本の歴史や文化、そして職人の熟練した技術が凝縮された芸術品とも言えるでしょう。この記事では、和菓子の豊かな種類、その緻密な分類、そして和菓子をより深く味わうための用語を解説し、その奥深い世界へとご案内します。日常のお茶請けから特別な日を彩る上生菓子まで、和菓子の魅力とその背景にある文化を、余すところなくご紹介します。

饅頭の基本:蒸しと焼き

私たちに身近な和菓子である饅頭は、製法の違いから大きく「蒸し饅頭」と「焼き饅頭」に分けられます。蒸し饅頭は、餡を皮で包み、蒸し器で蒸して作るのが特徴です。一方、焼き饅頭は、オーブンなどで焼いて作られ、それぞれ異なる風味と食感が楽しめます。

蒸し饅頭を彩る、餡のバリエーション

蒸し饅頭の魅力の一つは、その中に詰まった餡の種類の豊富さです。伝統的なものから、現代的なアレンジを加えたものまで、様々な餡が存在します。例えば、小豆を丁寧にこした、なめらかな「こし餡」、小豆の風味をしっかりと感じられる「つぶ餡」、こし餡に蜜漬けした小豆を加えた「小倉餡」などがあります。他にも、鮮やかな緑色が美しい「うぐいす餡」、卵黄の風味が豊かな「黄身餡」、栗の香りが食欲をそそる「栗餡」、香ばしい「ごま餡」、爽やかな柚子の香りが特徴の「柚子餡」、ほろ苦さが大人な味わいの「抹茶餡」、そして、意外な組み合わせが人気の「味噌餡」など、様々な餡が饅頭の味わいを豊かにしています。これらの餡は、職人の技術によって様々な組み合わせが生まれ、多様な味わいを生み出しています。

蒸し饅頭の皮(種)に見る素材の工夫

蒸し饅頭の外側を包む皮である「種」も、餡と同様に多種多様な素材と製法で作られています。一般的な小麦粉を使ったものに加え、米粉の一種である「上用粉」を使った、きめ細かくもっちりとした食感の「上用饅頭」があります。また、そばの風味が香る「そば饅頭」、もち米を原料とした「かるかん粉」を使った、ふんわりとした「かるかん饅頭」、透明感ともっちりとした食感が特徴の「葛饅頭」なども存在します。さらに、山芋の一種である「つくね芋」などを用いて自然な甘みと粘りを出す「薯蕷饅頭」は、上品な味わいでお祝いの席にも用いられ、紅白のものは慶事に配られることもあります。日本酒造りの技術を応用した「酒饅頭」は、酒麹の発酵による豊かな香りが特徴です。その他、皮や餡に「黒糖」を練り込んでコクを出したり、「きなこ」や「味噌」を加えて風味豊かに仕上げたりと、地域ごとの特色を活かした饅頭も数多く存在します。これらの皮の素材と製法の組み合わせが、饅頭の食感と味わいを大きく左右する要素となっています。

焼き饅頭の代表例と地域ごとの発展

焼き饅頭の世界もまた、蒸し饅頭とは異なる独自の進化を遂げています。その代表格として挙げられるのは、甘く煮た栗を餡として包み込み、丁寧に焼き上げた「栗饅頭」。また、ふんわりとしたカステラ生地で餡を包んだ「カステラ饅頭」も人気があります。焼き上げることで生まれる香ばしさや、サクッとした食感が特徴で、蒸し饅頭とは一味違った魅力があります。各地の和菓子店では、その土地ならではの素材や製法を活かした焼き饅頭が作られており、旅行の際のお土産としても喜ばれています。和菓子の魅力は、その自由な発想にあります。職人の技によって、形、大きさ、餡の種類など、無限の組み合わせが生まれるため、全国に一体どれだけの種類の饅頭が存在するのか、正確に把握することは非常に困難です。まさに、「作り手の数だけ種類がある」と言っても過言ではないほど、和菓子の世界は奥深く、多様性に富んでいます。

饅頭の具体的な種類例

饅頭の種類は実に豊富です。例えば、上段左から順に、上品な味わいの「薯蕷饅頭」、もっちりとした食感が特徴の「かるかん饅頭」、涼しげな見た目の「葛饅頭」などがあります。下段には、香ばしい「栗饅頭」、地域独特の製法で作られる「あずま饅頭」、洋菓子の要素を取り入れた「カステラ饅頭」などが並びます。これらの饅頭は、ほんの一例に過ぎません。各地には、さらに様々な素材や製法を凝らした、個性豊かな饅頭が存在します。

水分量による和菓子の主要な分類:生菓子、半生菓子、干菓子

和菓子は、その種類の多さから分類が難しいですが、一般的に用いられるのが、水分量による分類です。この分類では、和菓子を「生菓子」「半生菓子」「干菓子」の3つに大きく分けます。水分量が少ないほど保存性が高くなるという原則に基づき、干菓子は最も日持ちが長く、生菓子は最も日持ちが短いとされています。半生菓子は、その中間の位置づけです。生菓子は、通常2~3日程度しか日持ちしません。この水分量による分類は、和菓子の保存性や食感を理解する上で役立ちますが、実際には、製法や材料によって、さらに細かく分類することができます。

水分量分類の限界と多様な分類基準

水分量による分類は便利ですが、和菓子の多様性を完全に捉えることはできません。例えば、「焼き物」という分類でも、水分量の少ないものは干菓子に、多いものは半生菓子や生菓子に分類されることがあります。これは、和菓子の分類が単純ではないことを示しています。羊羹を例にとると、煉りが強く水分量の少ないものは「半生菓子」に、柔らかく水分量の多いものは「生菓子」に分類されます。また、もち米を原料とする「ぎゅうひ」も、水分量によって生菓子と半生菓子のどちらに分類されるかが変わることがあります。このように、水分量だけでは判断できない場合も多いのです。和菓子の分類が複雑な理由の一つに、分類基準が多岐にわたることが挙げられます。「餅物」や「あん物」のように材料による分類がある一方で、「蒸し物」や「流し物」のように製法による分類もあります。さらには、「平なべ物」や「オーブン物」のように、使用する器具による分類も存在します。これらの異なる視点からの分類基準が混在しているため、和菓子の分類体系は複雑で、一貫性がないと言えるかもしれません。しかし、この多様な基準こそが、和菓子の奥深さを物語っているとも言えるでしょう。

和菓子分類の難しさの歴史的背景と地域性

和菓子の分類が複雑である理由は、日本の長い歴史と各地の独自な発展に根ざしています。昔は現代ほど流通や情報伝達が発達しておらず、和菓子は特定の誰かから教わるのではなく、各地の農産物、風土、文化を取り入れ、工夫を凝らして発展しました。そのため、同じ素材でも地域によって全く異なる和菓子が生まれたり、遠く離れた土地で驚くほど似た和菓子が存在したりします。このように、各地で独自に発展してきた歴史が和菓子の多様性を生み出し、統一的な分類を困難にしています。

洋菓子文化の影響と和菓子の進化

和菓子の種類が多岐にわたり、分類が複雑化したもう一つの理由として、洋菓子の技術や道具の導入が挙げられます。明治時代以降、西洋文化が日本に流入し、洋菓子の製法や素材が和菓子の世界にも影響を与えました。これにより、従来の和菓子の枠を超えた新しい発想の和菓子が生まれ、その種類はさらに拡大しました。例えば、オーブンを使った焼き菓子や、カステラ生地を使った饅頭などが挙げられます。伝統的な和菓子の製法に加えて、洋菓子の技術が融合することで、和菓子は常に進化を遂げ、多様性を深めてきました。このような歴史的背景と文化交流が、現代の和菓子の複雑で豊かな世界を形作っています。

干菓子の世界:日持ちする多様な伝統菓子

干菓子は、和菓子の中でも特に水分量が少なく、日持ちが良いのが特徴です。保存性に優れており、贈答品やお供え物として広く用いられます。「打ち物」「押し物」「掛け物」「焼き物」「飴物」など多様な製法があり、それぞれに独特の食感、風味、美しい造形が凝縮されています。カリッとした歯触りから、ホロホロと溶けていく繊細な口どけが魅力で、お茶席や普段使いなど幅広く楽しまれています。

落雁(らくがん):甘さが広がる伝統の打ち物

代表的な干菓子として挙げられるのが落雁です。米粉や豆粉に砂糖や水飴などを混ぜて型に押し固めて作る「打ち物」に分類され、口に入れた瞬間は硬いものの、次第にフワッと溶けて甘さが広がるのが特徴です。お盆のお供え物としてのイメージが強いかもしれませんが、正月やひな祭り、クリスマスなど、季節の行事にちなんだ様々な落雁があり、幅広い場面で見られます。季節の草花や動物などを表現した美しい形も特徴で、視覚的な楽しみも提供します。

村雨(むらさめ/しぐれ):口の中でほどける、繊細なそぼろ状

村雨は、口に入れた瞬間にほろりとほどけるような、繊細な口当たりが特徴の和菓子です。米粉、餡、砂糖などを混ぜ合わせた生地を蒸して作られ、その独特のそぼろ状の形状が、雨がしとしとと降る様子を連想させることから、この名が付けられました。甘さは控えめで上品。そのまま味わうのはもちろん、村雨の生地で餡を包んだり、羊羹と組み合わせて層にしたりと、多様なアレンジが可能です。その汎用性の高さも魅力の一つと言えるでしょう。

おこし:カリッとした食感が楽しい、香ばしい米菓

おこしは、カリッとした歯ごたえと、香ばしい風味が魅力の米菓です。加工した米を水飴などで固めて作られます。地域によって製法に違いがあり、関東では米粒の形をそのまま残したものが一般的ですが、関西では米を細かく砕き、粟のように見せるのが特徴で、「粟おこし」とも呼ばれています。古くから縁起の良い食べ物とされ、「家を起こす」「名を起こす」といった願いが込められています。

ボーロ:どこか懐かしい、素朴な味わいの焼き菓子

ボーロは、素朴で優しい味わいが魅力の、親しみやすい焼き菓子です。クッキーに似たサクサクとした食感で、気軽に楽しめます。主な原料は小麦粉ですが、地域によってはそば粉を使用したボーロもあり、風味の違いを楽しめます。名前の由来はポルトガル語の「bolo(ケーキ)」であり、洋菓子の影響も受けている和菓子と言えるでしょう。特に、大きめのサイズのものは「丸ボーロ」と呼ばれ、しっとりとした独特の食感が特徴です。

有平糖(ありへいとう):職人技が光る、色鮮やかな飴細工

有平糖は、その美しい見た目が目を引く、色鮮やかな飴細工の和菓子で、「飴物」に分類されます。煮詰めた砂糖と水飴を主な原料とし、日本の四季折々の風景や縁起物を、職人の熟練した技術で細やかに表現しています。一般的な飴とは異なり、サクッと軽い口どけが特徴で、その繊細な美しさと上品な味わいから、茶席のお菓子や贈答品としても重宝されています。

生菓子の世界:和菓子の奥深さを知る

生菓子は、和菓子の中でも特に水分を多く含んだもので、そのみずみずしさが特徴です。一般的に、製造日から数日以内に賞味期限を迎えるものが多く、素材の風味や鮮度を最大限に活かした、繊細な味わいが楽しめます。茶席で用いられることも多く、季節感あふれる意匠や名前が付けられているのも魅力の一つ。職人の技術と感性が光る、まさに「芸術品」とも言えるでしょう。

練り切り:職人技が光る、繊細な芸術

練り切りは、白餡に求肥(ぎゅうひ)や芋などを加えて練り上げた「練り物」の代表格です。その柔らかく、なめらかな質感は、職人の手によって様々な形に作り上げられ、季節の花や風景、物語の一場面などを表現します。目で見て楽しみ、舌で味わう、まさに五感で楽しむことができる和菓子です。色合いも豊かで、その美しさはため息が出るほどです。

大福:もっちりとした食感と餡のハーモニー

大福は、もち米または白玉粉で作られた柔らかい餅で餡を包んだ「餅物」です。そのシンプルながらも奥深い味わいは、幅広い世代に愛されています。餅の食感と餡の甘さのバランスが絶妙で、一口食べると幸せな気持ちになります。定番の豆大福から、フルーツ大福、塩大福など、様々な種類があり、それぞれ異なる風味を楽しむことができます。

水羊羹:夏の涼を呼ぶ、清涼感あふれる和菓子

水羊羹は、小豆餡を寒天で固めた「流し物」で、夏の代表的な和菓子です。その名の通り、水分を多く含んでおり、つるりとしたのど越しと、さっぱりとした甘さが特徴です。冷蔵庫で冷やして食べることで、より一層清涼感が楽しめます。シンプルながらも上品な味わいは、暑い夏にぴったりの一品です。抹茶や黒糖など、様々なフレーバーがあります。

錦玉羹(きんぎょくかん)の魅力:寒天が生み出す清涼感

錦玉羹は、主に寒天と砂糖を原料とする、見た目にも涼やかな和菓子です。「流し物」と呼ばれる製法で作られ、その透明感は夏の季節に特に好まれます。水分量によって分類が変わり、少ないものは半生菓子、多いものは生菓子とされることがあります。錦玉羹に羊羹を重ねて美しい層を作ったり、金箔や豆、練り切り細工の花を添えたりすることで、日本の繊細な四季を表現する芸術的な和菓子としても親しまれています。

求肥(ぎゅうひ)の特徴と用途:独特の柔らかさ

求肥は、もち米を原料に、砂糖や水飴を加えて練り上げた和菓子で、「練り物」に分類されます。餅と似ていますが、求肥は常温でも柔らかさを保つ点が大きく異なり、そのなめらかな食感が様々な和菓子の材料として重宝されています。水分量によって分類が異なり、少ないものは半生菓子、多いものは生菓子に分類されることがあります。大福や餅菓子、練り切りなど、求肥を使った和菓子は非常に人気があり、和菓子の風味と食感を豊かにする上で重要な役割を果たしています。

生菓子の醍醐味:鮮度と季節の味わい

生菓子は、和菓子の中でも特に水分を多く含み、鮮度が重要な種類の菓子です。そのため、日持ちは短く、通常2~3日以内に消費することが推奨されます。身近な生菓子としては、柏餅や草餅、わらび餅といった「餅物」や、みたらし団子、たい焼き、今川焼きなどの「焼き物」が挙げられます。分類の目安として、例外もありますが、一般的に「餅」という名前がつくものは餅物、「焼き」という名前がつくものは焼き物と考えると分かりやすいでしょう。これらの生菓子は、季節の移り変わりを表現し、作りたての豊かな風味を味わうために、職人の手によって丁寧に作られています。

おはぎ(ぼた餅):季節で変わる名前と伝統

おはぎは、蒸したもち米とつぶ餡を組み合わせた「餅物」に分類される和菓子です。春と秋のお彼岸にお供えされることが多く、季節によって呼び方が変わることが特徴です。春には牡丹の花にちなんで「ぼた餅」と呼ばれ、秋には萩の花にちなんで「おはぎ」と呼ばれます。シンプルな見た目ながら、もち米と小豆の組み合わせが生み出す優しい甘さと食感は、昔から多くの人々に愛されています。

桜餅:東西で異なる姿を見せる春の生菓子

春の訪れを感じさせる桜餅は、人気の高い生菓子のひとつです。特に有名なのは、関東風と関西風の2種類で、見た目、作り方、そして食感がそれぞれ異なります。関東風は別名「長命寺」とも呼ばれ、水で溶いた小麦粉を薄く焼き、その皮で上品なこし餡を包んだものです。製法としては「焼き物」に分類され、しっとりとしたクレープのような独特の食感が楽しめます。一方、関西風は「道明寺」と呼ばれ、もち米を蒸して乾燥させた道明寺粉を使い、つぶ餡を包み込んでいます。「餅物」に分類され、道明寺粉ならではの粒々とした食感が特徴です。どちらの桜餅も、塩漬けの桜の葉で包まれており、その豊かな香りが春の雰囲気をさらに高めます。

羊羹の世界:練り羊羹、水羊羹、分類の多様性

羊羹は、寒天と小豆餡を основ材料とする「流し物」に分類される伝統的な和菓子です。寒天の配合量によって大きく種類が分かれ、寒天を多く使用したものが「練り羊羹」、少なめに使用したものが「水羊羹」として知られています。練り羊羹は、しっかりとした食感と濃厚な風味が特徴で、常温での保存が可能です。対照的に、水羊羹は、つるりとした滑らかな口当たりで、冷やしていただくのが一般的であり、特に夏に人気があります。また、羊羹は水分量によっても分類され、水分が少ない練り羊羹は「半生菓子」、水分を多く含む水羊羹は「生菓子」に分類されることもあります。このように、羊羹は製法、水分量、寒天の配合によって、味、食感、分類にいたるまで様々なバリエーションが存在します。

練り切りとこなし:日本の美を表現する繊細な生菓子

和菓子として広く知られる練り切りは、白あんに求肥や山芋を加えて丹念に練り上げた「練り物」に分類される上生菓子です。四季折々の美しい自然や風情を、その色と形で繊細に表現することが、練り切りの大きな特徴であり、職人の熟練した技術と豊かな感性が光る、まさに芸術品と呼ぶにふさわしいお菓子です。練り切りと似た和菓子に「こなし」がありますが、こなしは白あんに小麦粉などを混ぜた生地を蒸してから丁寧に揉み込んで作られるため、練り切りとは製法が異なります。こなしもまた、季節の移り変わりを表現する上生菓子として、多くの人々に愛されています。

朝生菓子:当日限りの特別な味わい

和菓子をより深く楽しむために知っておくと役立つ言葉の一つに「朝生菓子」があります。これは文字通り、その日に製造されたものをその日のうちに味わうことが推奨される生菓子のことを指します。具体的には、草餅、大福、団子など、私たちにとって身近な生菓子の多くがこのカテゴリーに含まれます。これらの和菓子に使用される餅などの澱粉質は、時間が経過するとどうしても「老化」という現象が起こり、風味が損なわれ、硬くなってしまいます。和菓子の本質は、素材本来の風味と食感を最大限に引き出すことにあります。そのため、和菓子職人は毎朝、新鮮な材料を用いてこれらの菓子を作り上げ、その日のうちに食べきることで、最高の状態でお客様に楽しんでいただくという伝統を守り続けています。このような背景から、「朝生菓子」という特別な呼び名が生まれ、定着しました。

「上生菓子」:匠の技が織りなす美術品

「朝生菓子」と対比されることが多い専門用語として「上生菓子」が挙げられます。上生菓子は、単なる甘味としてだけでなく、熟練した職人の卓越した技術によって創り出される、芸術性の高い和菓子を指します。中でも、四季折々の風景や自然の美しさを繊細に表現した「煉り切り」は、その代表格と言えるでしょう。上生菓子は、見た目の美しさも非常に重要視されており、その精巧な造形や鮮やかな色彩は、日本の豊かな四季の美意識を凝縮して表現しています。多くの上生菓子は、朝生菓子と比較して日持ちが良く、2~3日程度は風味を損なわずに味わえるように作られています。特別な茶席や贈答品としても重宝され、日本の伝統文化を象徴する和菓子として広く愛されています。

「戻りが良い」:時が深める美味しさの秘密

和菓子の中には、作りたてが最も美味しいとされるものがある一方で、時間が経過することでさらに美味しくなる、という興味深い特徴を持つものも存在します。このような特徴を持つ和菓子に対して、業界では「戻りが良い」という特別な表現が用いられます。具体的には、栗饅頭やカステラ饅頭などの焼き菓子がその良い例です。これらの菓子は、製造された翌日の方が、作りたてよりも一段と美味しくなると言われています。この理由は、焼き上げた直後にはまだ十分に馴染んでいない「種(皮)」と「餡」が、時間を置くことで互いの水分や香りを程よく共有し、全体として調和のとれたまろやかな風味や、しっとりとした食感が生まれるためです。「戻りが良い」という知識を持つことで、和菓子のさまざまな楽しみ方が広がり、それぞれの菓子に最適な食べ頃を見極めることができるようになるでしょう。

まとめ

本記事では、和菓子の奥深い魅力を、「饅頭の種類」「和菓子の複雑な分類体系」、そして「知っておくと役立つ専門用語」という3つの視点から詳しく解説しました。饅頭一つをとっても、餡や皮の素材、製法において無数のバリエーションが存在し、地域ごとの工夫や職人の創造性が活かされていることをご紹介しました。また、和菓子の分類は水分量だけでなく、原材料、製造方法、使用する道具など多岐にわたる基準が用いられており、その背景には各地での独自の発展や洋菓子文化の影響があることを深く掘り下げました。さらに、干菓子、半生菓子、生菓子といった主要な分類ごとに、落雁、最中、練り切りなどの具体的な種類と特徴を詳しく解説し、和菓子の多様な魅力を探求しました。そして、朝生菓子、上生菓子、そして「戻りが良い」といった専門用語を通じて、和菓子が持つ独特の文化や楽しみ方を理解することの重要性をお伝えしました。これらの知識は、和菓子を単なる食品として捉えるのではなく、日本の豊かな歴史と文化、そして職人技の結晶として深く味わい、その魅力を再認識するための手がかりとなるでしょう。和菓子一つ一つに込められた物語や、その繊細な味わいを心ゆくまでお楽しみください。

饅頭にはどんな種類がありますか?

饅頭は大きく「蒸し饅頭」と「焼き饅頭」に分類され、餡の種類(例えば、漉し餡、つぶし餡、小倉餡、うぐいす餡、黄身餡、栗餡、ごま餡、柚子餡、抹茶餡、味噌餡など)や皮の素材(小麦粉、上用粉、そば粉、かるかん粉、葛、つくね芋、酒麹、黒糖、きなこ、味噌など)によって、非常に多くの種類が存在します。特に薯蕷饅頭は、お祝いの席で紅白のものが用いられることがあります。地域ごとの特色や職人の創意工夫により、その種類は数えきれないほど豊富です。

和菓子の代表的な分類とは?

和菓子は通常、水分含有量に応じて「生菓子」「半生菓子」「干菓子」の3つに分類されます。この分類は一定の科学的根拠を持ちますが、和菓子の多様性を完全に網羅するものではありません。そのため、材料、製法、使用する器具など、他の要素も考慮した分類が併用されることがあります。例えば、羊羹、求肥、錦玉羹などは、水分量によって生菓子または半生菓子として扱われる場合があります。

朝生菓子と上生菓子の違い

朝生菓子とは、草餅や大福のように、製造されたその日のうちに消費されることを想定した生菓子であり、鮮度が非常に重要です。一方、上生菓子は、練り切りなどで日本の四季折々の美しい風景を表現した芸術性の高い菓子であり、製造から2~3日程度の賞味期間があります。

和菓子の分類が難しい理由

和菓子の分類が複雑な背景には、日本各地の特産品や文化を取り入れながら独自の進化を遂げてきた歴史があります。材料、製法、用具など多様な基準が存在し、明治時代以降の洋菓子の技術や道具の導入も、和菓子の種類と分類をさらに複雑化させました。加えて、水分量による分類においても、同じ種類の和菓子が製造方法や配合によって異なるカテゴリに分類される曖昧さも、複雑さの一因となっています。

「戻りが良い」の意味

「戻りが良い」とは、特に栗饅頭やカステラ饅頭などの焼き菓子において、製造直後よりも一日置くことで餡と皮が馴染み、より美味しくなる状態を指す業界特有の表現です。時間が経過することで素材が一体化し、まろやかな風味やしっとりとした食感が生まれます。

生菓子とは?和菓子の世界

和菓子における生菓子とは、水分を多く含んだお菓子のことを指します。一般的に、製造日から数日程度しか日持ちしないものが多く、みずみずしい食感と素材の風味が特徴です。練り切り、大福、おはぎなどが代表的な生菓子として挙げられます。職人の技術と季節感が凝縮された、まさに「生きているお菓子」と言えるでしょう。

生菓子とは?洋菓子の世界

洋菓子における生菓子は、ケーキやタルト、ムースなど、冷蔵保存が必要な水分量の多いお菓子のことを指します。生クリームやフルーツをふんだんに使用し、見た目も華やかなものが多く、お祝い事や特別な日のデザートとして楽しまれています。繊細なデコレーションや、口溶けの良い食感が魅力です。

生菓子の種類:和菓子編

和菓子の生菓子には、実に様々な種類があります。例えば、繊細な細工が美しい練り切りは、季節の移ろいを表現した芸術品です。柔らかいお餅で餡を包んだ大福は、老若男女問わず愛される定番のお菓子です。他にも、葛を使った涼しげな葛切りや、もち米を粒状に残したおはぎなど、素材の持ち味を生かした生菓子がたくさんあります。
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