種なし皮ごと!長野パープルが革命を起こした理由
長野県生まれの黒ぶどう、ナガノパープル。その登場は、ぶどう界にまさに革命を巻き起こしました。大粒で濃厚な甘さ、そして何よりも画期的だったのが、種がなく皮ごと食べられるという点です。「皮むきが面倒…」そんな消費者の悩みを一気に解決し、手軽さと美味しさを両立。巨峰をルーツに持ちながらも、全く新しい価値を生み出したナガノパープル。その人気の秘密を紐解きます。

ナガノパープルとは:長野県が生んだ、大粒黒ぶどうの魅力

ナガノパープルは、長野県で誕生し、品種登録された大粒の黒色ぶどうです。長野県須坂市の長野県果樹試験場での研究開発を経て、2004年(平成16年)にその名が登録されました。この革新的な品種は、広く知られる「巨峰」と「リザマート」を親に持ちます。品種登録当初は「巨峰」×「ロザリオビアンコ」とされていましたが、後に花粉親が「リザマート」に訂正されました。ナガノパープルは、見た目は巨峰に似ていますが、種がなく皮ごと食べられる点が特徴です。「ぶどうは好きだけど、皮むきや種取りが面倒」というニーズに応え、皮ごと食べられる手軽さと、大粒ならではの豊かな味わいが人気を集めています。果皮は美しい黒紫色で、糖度は18~20度と高く、酸味は穏やかで渋みがありません。果汁が多く、香りも豊かで、深い味わいを楽しめます。黒ぶどうの皮にはポリフェノールが豊富に含まれており、皮ごと食べることで効率的に栄養を摂取できるのも魅力です。皮をむいて食べることもできますが、果肉と皮が剥がれにくい性質があるため、少しむきにくいかもしれません。

日本のぶどう栽培史とナガノパープルが生まれた背景

日本のぶどう栽培は、多湿な気候が原因で多くの困難に直面してきました。特にぶどうは雨に弱く、雨による裂果が起こりやすい性質があります。戦後、日本では「デラウェア」や「キャンベルアーリー」など、病害に強い米国系ぶどう(Vitis labrusca系)が主に栽培されてきました。これらの米国系ぶどうは、特有のフォクシー香(ぶどうジュースのような香り)を持つ一方で、皮が厚いという特徴がありました。生食用として好まれる、皮ごと食べられる肉質の品種は、ほとんどが欧州系ぶどう(Vitis vinifera系)でした。日本の気候に適し、消費者の好みに合うぶどうを求めて、農学者の大井上康は、米国系ぶどうと欧州系ぶどうを交配し、「巨峰」を生み出しました。しかし、画期的な品種であった巨峰も、皮ごと食べられるほど皮が薄くはありませんでした(欧州系と米国系の交配種は、両者の中間的な性質を持つためです)。一方で、輸送技術の進歩とともに食生活が豊かになり、手軽で高品質な果物へのニーズが高まりました。「ぶどうは食べたいけれど、皮をむいたり種を取り出すのが面倒」という消費者の声が大きくなっていきました。こうした背景に加え、産地間の競争が激化する中、1998年に公布された種苗法による品種登録制度の育成者権付与が、各地の果樹研究を後押しし、独自の新品種開発が活発化しました。

長野県における独自品種開発の軌跡と戦略

消費者の「大粒で種なし」という要望に応えるため、ぶどうの主要産地である長野県でも独自の品種開発が進められました。ピオーネ(1973年)、シャインマスカット(1985年)などの大粒ぶどうが先行して品種登録される中、長野県は「大粒で種無しのオリジナル品種」を目標に育種試験を開始しました。その結果、育成され、2004年に品種登録されたのが「ナガノパープル」です。ナガノパープルは、巨峰とリザマートの交配によって誕生しました。この品種は、広く親しまれている巨峰と見た目が似ているにもかかわらず、種がなく皮ごと食べられる点が大きな特徴であり、他品種との差別化に成功しました。この優れた特性により、ナガノパープルは手軽に楽しめる高級ぶどうとして、多くの消費者に支持され、長野県を代表するオリジナル品種としての地位を確立しました。

ナガノパープル:最高の味わい方

ナガノパープルを存分に楽しむには、選び方から保存方法、食べ方まで、いくつかのポイントがあります。まず、**選び方**ですが、房全体が濃い黒色で、果皮に張りがあり、みずみずしさを感じるものを選びましょう。新鮮なナガノパープルは、軸が緑色で、果皮に白い粉(ブルーム)が付着しています。ブルームはぶどう自身が作り出す自然な成分で、品質が良い証拠です。次に、**保存方法**について。ナガノパープルの水分が失われないように注意が必要です。ポリ袋に入れるか、新聞紙やラップで丁寧に包み、冷暗所または冷蔵庫の野菜室で保存してください。特に気温の高い時期は、冷蔵庫の野菜室に入れるのがおすすめです。そして、**美味しい食べ方**ですが、ナガノパープルは皮ごと食べられるのが魅力です。軽く水洗いするだけで、皮をむく手間なく丸ごと味わえます。果皮のブルームも自然な成分なので、そのまま食べても問題ありません。種もないので、手軽に楽しめます。

ナガノパープルの最盛期、主要産地、生育状況

ナガノパープルの収穫時期、すなわち**旬**は、おおむね9月から10月にかけてです。この時期に店頭に並ぶナガノパープルは、格別な風味と際立つ甘さを堪能できます(参照:東京都中央卸売市場)。**主な生産地**は、農林水産省の統計によると、作付面積で長野県がトップで、約176ヘクタールと他を圧倒しています。「ナガノ」の名を冠するとおり、長野県がこの品種の中心的産地であることは疑いありません。次いで愛知県が約1.2ヘクタールの作付面積を有しますが、長野県との差は歴然です。ただし、これらの統計データは作付面積を公開している地域に限られており、データを公表していない都道府県は含まれていません。また、当初ナガノパープルは長野県内のみで栽培が認められていましたが、品種登録から10年以上経過した2018年以降、県外での生産も許可されるようになりました。その結果、全国各地で栽培が可能となり、より多くの消費者がナガノパープルを味わう機会が増え、市場での認知度と流通量が拡大しています。

品種保護における問題点とナガノパープルの流出の恐れ

ナガノパープルの県外生産解禁は、市場の拡大に貢献する一方で、品種管理に関する新たな問題も生み出しています。種苗法では、育成者の権利が保護されており、自家増殖した苗木を第三者に譲渡することは禁じられています。しかし、現状では苗木の譲渡にあたって認証を発行する制度が確立されていません。この制度の抜け穴を突くように、個人売買アプリやネットオークションを通じて、匿名でナガノパープルの苗木が容易に入手できる状況が見られます。さらに、高品質なナガノパープルを栽培するための詳細なマニュアル(数十ページに及ぶPDFなど)や、良品を生産するための注意点などが広く公開されており、これが無許可栽培を助長しているとも言えます。ぶどうの苗木は外見だけでは品種の判別が困難なため、これらの要因が複合的に作用し、国内における無秩序な流通のみならず、海外への品種の不正流出も強く懸念されています。日本が誇るべき農業資源である優良品種の育成者権を保護し、適切な流通を維持するためには、法制度の強化、認証制度の導入、不正流通の監視強化といった、多角的な対策が急務となっています。

まとめ

ナガノパープルは、長野県が「巨峰」と「リザマート」を掛け合わせて開発した、大粒で濃い紫色のぶどうです。2004年に品種登録され、最大の特徴は、種がなく皮ごと食べられる手軽さと、糖度18~20度にもなる濃厚な甘み、そして芳醇な香りにあります。皮にはポリフェノールも豊富に含まれており、健康面でも注目を集めています。日本のぶどう栽培の歴史における課題や、高まる消費者のニーズに応える形で生まれたこの品種は、長野県の独自開発戦略の象徴と言えるでしょう。選ぶ際には、色が濃く、張りがあるものを選び、保存は冷暗所または冷蔵庫で行い、食べる際には皮ごと気軽に味わうのがおすすめです。9月から10月が旬で、主に長野県で生産されていますが、2018年からは県外での栽培も認められました。しかし、この栽培地域の拡大に伴い、種苗法に基づく品種保護の問題や、無許可栽培、海外への流出といった懸念も生じており、育成者権の適切な保護が今後の重要な課題となっています。ナガノパープルは、その優れた食味と手軽さから、消費者に愛され続ける高級ぶどうとして、今後も市場で確固たる地位を築いていくでしょう。

質問:ナガノパープルは皮も食べられますか?

回答:はい、ナガノパープルは皮ごと食べることが可能です。この特徴は、巨峰とリザマートの交配によって実現したもので、種がなく皮が薄いため、手軽にそのままお召し上がりいただけます。皮には体に良いとされるポリフェノールも豊富に含まれています。

質問:ナガノパープルの品種登録はいつ?どこで生まれたの?

答え:ナガノパープルは、2004年に品種登録が完了しました。長野県須坂市に位置する長野県果樹試験場が、その誕生の地です。

質問:ナガノパープルの親品種は何?登録時と現在の情報に違いはある?

答え:ナガノパープルの親は、「巨峰」と「リザマート」です。品種登録当初は、「巨峰」と「ロザリオビアンコ」の組み合わせとされていましたが、その後の調査で、花粉の親が「リザマート」であることが判明し、訂正されています。

質問:美味しいナガノパープル、どうやって選べばいい?

答え:選び方のポイントは、房全体が深みのある黒色をしていること。そして、果皮にハリとみずみずしさがあるものがおすすめです。新鮮なものは軸が緑色をしており、果皮にはブルームと呼ばれる白い粉が付着しています。ブルームは鮮度を保つための自然な保護成分です。
ぶどう長野パープル