牛乳の低温殺菌とは?風味や栄養、牛乳の選び方を徹底解説
牛乳売り場で「低温殺菌牛乳」を見かけたことはありませんか?普通の牛乳と何が違うのか、気になっている方もいるかもしれません。牛乳の殺菌方法にはいくつか種類があり、中でも低温殺菌は、牛乳本来の風味を損なわずに殺菌できると注目されています。この記事では、牛乳の低温殺菌について、その定義やメリット・デメリットを詳しく解説。風味や栄養への影響、牛乳を選ぶ際のポイントまで、徹底的にご紹介します。

牛乳の主な殺菌方法:高温殺菌(UHT)と低温殺菌(LTLT)

日本の牛乳市場では、牛乳の殺菌方法として大きく分けて二つの方式が存在します。一つは「超高温瞬間殺菌(UHT)」、そしてもう一つが「低温保持殺菌(LTLT)」です。これらの殺菌方法では、加熱する温度と時間に顕著な差があり、それが牛乳の風味、栄養成分の変化、保存期間、さらには腸への影響にも影響を与える可能性があります。私たちが普段飲んでいる牛乳がどのような過程を経て作られているのかを知ることは、ご自身の体質や好みに合わせて牛乳を選ぶ上で非常に大切です。

超高温瞬間殺菌(UHT):一般的な「牛乳」の特徴

超高温瞬間殺菌(UHT:Ultra High Temperature sterilization)は、120~130℃という非常に高い温度で、わずか1~3秒という短い時間だけ牛乳を殺菌する方法です。この方法は日本の牛乳の約9割を占めており、最も一般的な殺菌方法と言えるでしょう。UHT殺菌の最大の利点は、高い殺菌効果によって牛乳の保存性が飛躍的に向上する点と、大量生産に適しているため流通コストを抑えることができ、比較的安価に入手できる点です。賞味期限が長いため、遠方への輸送や長期保存が可能となり、私たちの食卓に安定的に牛乳を供給する上で欠かせない技術となっています。しかしながら、デメリットとしては、超高温での処理によって牛乳本来の繊細な風味が変化したり、タンパク質や脂質などの栄養成分が変質しやすいという点が挙げられます。この熱による変化は、牛乳特有の加熱臭の原因となることがあり、生乳本来の新鮮な風味を求める方にとっては、好みが分かれるかもしれません。

低温保持殺菌(LTLT):こだわりの「低温殺菌牛乳」の特徴

一方、低温保持殺菌(LTLT:Low Temperature Long Time)は、63~65℃という比較的低い温度で、30分間かけてじっくりと牛乳を殺菌する方法です。この方法は、日本の牛乳市場全体のごく一部でしか採用されていない希少な方法であり、製造にはより多くの手間とコストがかかります。低温殺菌牛乳の最大のメリットは、生乳に近い本来の風味を保ちやすい点と、タンパク質の熱変性が超高温殺菌に比べて少ないと考えられている点です。例えば、タカナシ低温殺菌牛乳の場合、66℃で30分間ゆっくりと殺菌することで、生乳本来の自然な甘みを感じられる、すっきりとした味わいが特徴とされています。デメリットとしては、殺菌温度が低いため賞味期限が短く、製造・流通コストがかさむため価格が高めになる傾向があり、取り扱いのある店舗が限られることが挙げられます。そのため、一般的な牛乳に比べて手に入りにくい場合があります。このように、手軽さや保存性を重視するなら高温殺菌、風味や生乳本来の特性を重視するなら低温殺菌という選び方ができます。私の経験から言っても、低温殺菌牛乳を飲むと、その香りの違いに気づくことがあります。特に香りに敏感な方であれば、利き牛乳をすることで、その違いをはっきりと感じ取ることができるかもしれません。

高温殺菌乳と低温殺菌乳の風味・栄養特性の相違点

牛乳の風味や栄養価は、殺菌方法によって変化します。牛乳を選ぶ際、味や栄養バランスを重視するならば、殺菌方法の違いを知っておくことは大切です。殺菌の工程が異なると、牛乳の品質に差が生じるためです。
超高温瞬間殺菌(UHT)乳は、高温で処理されるため、独特の加熱臭が発生し、生乳本来の繊細な香りが損なわれることがあります。この加熱臭は、牛乳に含まれる硫黄化合物が変化することで生じると考えられています。また、タンパク質などの栄養成分は、熱によって変化しやすい性質があります。特に、ホエイプロテインの一部は凝固しやすく、牛乳の風味や口当たりに影響を与えることがあります。しかし、カルシウムやビタミンDといった主要な栄養素は、殺菌方法による損失は少ないとされています。風味の変化は、牛乳を料理に使用する際や、コーヒーに入れる際にも影響することがあります。
一方、低温保持殺菌(LTLT)乳は、生乳に近い風味を保ちやすいのが特徴です。低温で処理されるため、タンパク質の変性が抑えられ、生乳が持つ自然な甘みやコクが失われにくいとされています。そのため、フレッシュで、生乳本来の豊かな風味を味わえます。筆者の経験では、低温殺菌乳を飲むと香りの違いを感じます。香りに敏感な人であれば、利き牛乳でその違いを明確に感じ取れるかもしれません。栄養面では、熱による変化が少ないため、一部のビタミンなど熱に弱い成分の損失が少ない可能性が考えられますが、主要な栄養成分に大きな差はないとされています。低温殺菌乳は、牛乳本来の味を楽しみたい方や、加熱臭が苦手な方におすすめです。

まとめ

今回は、一般的な牛乳(高温殺菌乳)と低温殺菌乳について、殺菌方法の違いから、風味、栄養特性について解説しました。高温殺菌乳は、120~130度で1~3秒の超高温殺菌処理がされており、賞味期限が長く、手軽に入手できるメリットがある一方、風味の変化やタンパク質の変性、人によっては乳糖による影響を受ける可能性があります。低温殺菌乳は、63~65度で30分間の低温殺菌処理がされており、生乳に近い本来の風味とタンパク質変性が少ない点が特徴ですが、価格が高く、賞味期限が短いというデメリットがあります。

高温殺菌乳と低温殺菌乳の主な違いとは?

主な違いは、殺菌温度と時間です。高温殺菌乳は120~130度の超高温で短時間殺菌するのに対し、低温殺菌乳は63~65度で時間をかけて殺菌します。この違いが、風味、タンパク質の変性度合い、賞味期限、価格に影響します。

低温殺菌乳の価格が高いのはなぜ?

低温殺菌乳は、生乳本来の風味を維持するために時間をかけて殺菌する製造方法に加え、賞味期限が短いため流通・在庫管理にコストがかかります。また、光を通さない遮光容器を使用するなど品質保持のための特別な配慮がされている場合が多く、一般的な高温殺菌乳よりも価格が高くなる傾向があります。

腸内環境を整えるなら、どの牛乳を選ぶべき?

高温殺菌牛乳と低温殺菌牛乳は、どちらも腸内の善玉菌(ビフィズス菌など)を増やす効果が認められており、その効果に顕著な違いは見られませんでした。しかし、高温殺菌牛乳は人によっては刺激成分である「乳糖」の影響を受けやすいため、お腹の不調を感じやすい方は、低温殺菌牛乳の方が消化しやすいと考えられます。


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