メロンの木から食卓へ:甘さと栄養の秘密
芳醇な香りと上品な甘さが魅力のメロン。その美味しさは、贈答品としても重宝されるほど特別なものです。この記事では、メロンがどのように私たちの食卓に届くのか、その秘密を紐解きます。豊富な品種、甘さの秘密、そして栄養価。知れば知るほど奥深いメロンの世界へご案内します。メロンの木から食卓へ、甘さと栄養の秘密を一緒に探求しましょう。

メロンとは:特徴と魅力

メロンは、キュウリやスイカと同じウリ科の植物です。特に、芳醇な香りと上品な甘さは、高級フルーツとしての地位を確立しています。お中元やお見舞いなど、特別な贈り物としても選ばれ、贈る側も贈られる側も満足できる存在です。代表的なマスクメロンをはじめ、アンデスメロン、夕張メロンなど、地域性や特徴を活かした多様な品種が存在します。日本ではデザートとして親しまれていますが、海外では生ハムメロンや、肉・魚料理の付け合わせとしても楽しまれており、食文化の多様性を示しています。

メロンは、味と香りの良さに加えて、栄養価が高いことも魅力です。特に、糖質と食物繊維が豊富で、健康を意識する人にも適しています。メロンに含まれる糖質は、素早くエネルギーに変換されるため、朝食や体調不良時の栄養補給に最適です。また、むくみ対策に役立つカリウムがスイカよりも多く含まれている点も注目されます。さらに、美容に良いとされるビタミンAやビタミンCも含まれており、健康と美容の両面から支持されています。
メロンをより美味しく味わうには、適切な調理と保存方法が重要です。購入後は、熟すまで常温で保存し、食べる直前に冷蔵庫で冷やすのがおすすめです。冷やしすぎると風味が損なわれるため、2~3時間程度が最適です。メロンの皮は厚めにむくことで、より甘みの強い部分を味わえます。ただし、品種によっては皮の近くまで甘いものもあり、様々な品種を試すのも楽しみの一つです。例えば、タキイ種苗の赤肉メロン「レノン」シリーズは、果肉全体が甘く、おすすめです。

菜園向けメロン栽培カレンダー

メロン栽培を成功させるには、年間を通じた計画的な管理が欠かせません。適切な時期に適切な作業を行うことで、美味しいメロンを収穫できます。一般的な菜園でのメロン栽培は、春に種をまき、夏から秋にかけて収穫します。種まき時期は2~3月、育苗は3~4月、定植は4月下旬~5月、交配は5~6月、摘果・玉直しは6~7月、収穫は7~9月が目安です。ただし、品種や栽培方法(露地栽培、トンネル栽培、ハウス栽培など)、地域によって最適な時期は異なります。このカレンダーを参考に、準備を進めましょう。

育苗

メロンの育苗期間は約1ヶ月と比較的短いため、家庭菜園でも挑戦しやすいです。育苗に適した温度管理ができる場所があれば、十分に高品質な苗を育てられます。9~12cmのポリポットに直接種をまき、そのまま育苗するのが一般的です。発芽までは、温度と湿度を適切に管理し、発芽後は、本葉が1枚になった段階で、生育の良い株を1本残して間引きます。この間引き作業は、健全な株を育て、良質な果実を実らせるために非常に重要です。

定植適期苗

メロンの定植時期は、その後の生育を左右する重要な要素です。12cmポットで育苗する場合、育苗期間は約35日、本葉が3.5枚程度に育った苗が定植に適しています。この時期を逃さずに定植することで、根付きが良くなり、スムーズな生育を促せます。畑の準備が遅れるなどして定植時期が遅れると、苗が老化し、生育不良の原因となることがあります。もし、老化苗を定植してしまった場合や、定植後の環境が悪い場合は、液肥や葉面散布で株の勢いを回復させることが大切です。早期の対策が、収穫量と品質に大きく影響します。

接ぎ木栽培のメリットと方法

メロン栽培において、成否を左右するほど重要なのが「接ぎ木」です。接ぎ木とは、異なる種類の植物を、意図的に作った切断面でつなぎ合わせ、一つの植物として育てる技術のこと。これにより、それぞれの植物が持つ優れた特性を組み合わせることが可能です。具体的には、病気に強く丈夫な植物を「台木」として根の部分に使い、美味しく高品質なメロンを実らせる植物を「穂木」として上部に接合します。メロンの穂木は繊細で病気に弱いことが多いため、抵抗力のある台木と組み合わせることで、病気への耐性を高め、安定した栽培を可能にするのです。つまり、丈夫な台木と美味しいメロンが育つ穂木のそれぞれの長所を最大限に活かすのが、接ぎ木の目的です。

接ぎ木の作業は大手術

メロンの接ぎ木は、植物にとって「大手術」とも言える、非常に精密で慎重な作業です。まず、台木の芽かきから始めます。台木が自身の成長にエネルギーを使わないように、すべての芽を丁寧に取り除きます。これにより、穂木がスムーズに成長するための準備をします。次に、穂木の準備です。育てたいメロンの苗(穂木)を、清潔で鋭利な刃物で慎重に切断します。切断後は、乾燥を防ぐためにすぐに水に浸けることが大切です。この工程はやり直しがきかないため、細心の注意を払い、迅速に行います。さらに、台木との接着面がしっかり密着するように、穂木の切り口を丁寧に加工します。この切り口の正確さが、接ぎ木の成功を左右します。
穂木の準備が終わったら、台木に穂木を差し込むための穴を開けます。加工した割り箸などを使い、台木の葉が分かれる手前の適切な場所に慎重に穴を開けます。この作業は非常に繊細で、穴の位置がずれると、穂木と台木の細胞がうまく接着せず、失敗の原因となります。正確に開けられた穴に、準備しておいた穂木を差し込みます。この時、穂木と台木の切り口(形成層)がしっかりと接触していることが最も重要です。細胞同士が密着することで、水分や養分の通り道が繋がり、一つの植物として機能するようになります。

穂木と台木を接合した後、適切な力で固定するために「接ぎ木クリップ」を使います。クリップは接ぎ木面を支え、両者が密着した状態を保ちます。クリップで固定した接ぎ木苗は、温度と湿度を適切に保った場所で約1週間養生させます。この間、接ぎ木部分が乾燥しないように覆いをかけ、直射日光を避けることが推奨されます。養生期間中に、穂木と台木の細胞が融合し、組織が結合していきます。まさに「手術」後の回復期間であり、毎日苗の状態を観察し、適切な環境を維持することが成功の鍵となります。
約1週間後、接ぎ木クリップを外し、覆いを取り除くと、穂木が台木にしっかりと活着し、元気に成長しているのを確認できます。これで接ぎ木作業は完了です。成功した接ぎ木苗からは、穂木を成長させていきます。台木の丈夫な根から養分を吸収し、穂木の優れた果実の特性を最大限に引き出し、美味しいメロンを育てます。接ぎ木は手間のかかる作業ですが、病気に強く、安定して高品質なメロンを栽培できる大きなメリットがあります。

定植

メロンは、他の果菜類よりも温度管理と水分管理が特に難しい作物であり、高品質な果実を収穫するには細心の注意が必要です。定植時期の目安は、最低気温が14℃以上、最低地温が16~18℃以上になった頃です。メロンは温暖な環境を好むためです。特にトンネル栽培の場合は、4月中旬頃から定植が可能です。苗が畑にスムーズに活着し、良質な雌花をたくさん咲かせるためには、定植の準備も重要です。定植の約2週間前にトンネルを設置し、地温を十分に上げておくことで、定植後のストレスを軽減し、根の生育を促進します。
メロンの根は浅く、土壌中の酸素を多く必要とします。そのため、栽培に適した土壌は、排水性と通気性に優れた土壌です。土壌が過湿になると根腐れを起こしやすく、生育不良につながるため、水はけの悪い場所での栽培は避けるべきです。また、土壌水分はメロンの生育段階ごとに必要な量が異なります。特に幼苗期や果実肥大期には適切な水分供給が重要ですが、過剰な水分は品質低下や病気の原因にもなります。したがって、トンネルやマルチなどの資材を効果的に利用し、天候による土壌水分の急激な変動を抑える栽培管理が、健全なメロンの成長には不可欠です。

定植後の管理

メロンの定植は、苗の活着を促すために、晴れた日の午前中に行うのが理想的です。この時間帯は地温が上昇し始め、定植後の苗への負担が少ないためです。定植後の管理方法は、メロンの品種や栽培規模によって異なりますが、家庭菜園では、本葉が4~5枚になった段階で親づる(主枝)の先端を摘芯し、そこから伸びてくる子づるの中から、生育の良いものを2本選んで伸ばす「子づる2本仕立て」が一般的です。この方法により、限られたスペースでも効率的に収穫でき、株全体の栄養バランスを保ちやすくなります。摘芯は、株の栄養が不要な部分に分散するのを防ぎ、実をつけさせる果実への栄養集中を促す大切な作業です。また、定植後の地温は16~18℃以上を目標に維持することで、根の活動を促進し、苗の成長をサポートします。

仕立て方

家庭菜園でメロン栽培を行う際、一般的な仕立て方として「子づる2本仕立ての4果どり」が広く採用されています。この方法では、まず親づる(主枝)の本葉が4~5枚になった時点で、先端を摘心します。摘心によって親づるの成長を抑制し、側枝である子づるの発生を促します。その後、勢い良く、かつ均等に伸びている子づるを2本選択し、これらを主軸として育てていきます。着果節位よりも前に発生する側枝(孫づる)は、無駄な養分消費を避けるため、早い段階で取り除きます。交配予定日の2~3日前になったら、選んだ子づるの先端を25節前後の位置で摘心します。この際、着果節位以降に生じた側枝(孫づる)の中から、先端に近い3本程度を「遊びづる」として残し、それ以外の孫づるはすべて除去します。遊びづるを残すことで、株全体の成長点を確保し、根の活動を維持する効果が期待できます。さらに、遊びづるの生育状況を観察することで、株の生育状態(草勢)を判断する目安とすることができます。自然に実った果実は、遊びづると同様に養分を消費するため、発見次第摘果することで、計画的に育てている果実の品質向上に繋がります。

孫づるの摘芯

遊びづるの本数は基本的に3本が推奨されますが、栽培する場所の土壌の肥沃度や、作型(栽培時期や環境条件)を考慮し、株の維持能力が低いと思われる場合は、成長点を増やすために遊びづるの本数を増やすのも有効な手段です。遊びづるを残すことには、重要な役割がいくつかあります。まず、成長点を確保することで、株全体の根の活動を維持し、老化を遅らせる効果が期待できます。根が活発に活動を続けることで、水分や栄養の吸収が安定し、果実の肥大や甘さの向上に貢献します。また、遊びづるの生育状態を観察することで、メロンの株が現在どのような状態にあるのか(草勢)を判断することができます。遊びづるの成長が旺盛であれば、株の勢いが強いと判断し、逆に成長が鈍ければ勢いが弱まっていると判断し、追肥や水やりなどの適切な管理を行う際の判断材料とします。もし栽培中に自然に実った果実を見つけた場合は、それらが遊びづるの養分を奪ってしまう可能性があるため、こまめに摘果し、計画に基づいて育てている果実の成長に集中させることが重要です。

交配

メロンの雌花は側枝の最初の節に、雄花は主枝にできるという特徴があります。自然環境では、ミツバチなどの昆虫による自然交配も行われますが、家庭菜園などで確実に受粉させ、収穫量を安定させるためには、人工交配を行うことを強くお勧めします。人工交配を行う上で、開花時の天候は非常に重要な要素となります。開花の2~3日前から雨天や曇りの日が続いたり、最低気温が13℃を下回るような低温環境にさらされると、花粉の発芽能力や花粉管の成長が妨げられ、受精がうまくいかないことがあります。そのため、人工交配を成功させるには、最低気温を15℃以上に保つように注意することが大切です。また、花粉が受精を完了し、果実の成長が始まるまでには、気温20℃の環境下で約24時間程度かかると言われています。したがって、受粉作業を行った後は、受精が確実に行われるように、トンネルやハウス内で適切な温度を維持し、保温に努めることが非常に重要です。適切な交配管理を行うことが、高品質なメロンを収穫するための基礎となります。

摘果

メロンの果実が最も大きく成長する時期は、受粉後およそ10日から15日頃ですが、その少し前の段階、具体的には受粉後7日から10日くらいの間に、果実がピンポン玉くらいの大きさから鶏卵くらいの大きさになった頃に摘果作業を行うのが最も効果的です。この時期に摘果を行うことで、株全体の栄養分が残った果実に集中し、一つ一つの果実を大きく、そしてより美味しく育てることができます。摘果を行う際には、果実がどの節に実っているかも重要な判断材料となります。一般的に、低い位置の節に実った果実は小ぶりになりやすく、形も平べったくなる傾向があります。反対に、高い位置の節に実った果実は大きくなりやすいものの、糖度が上がりにくく、細長い形になりやすいという特徴があります。これらの特性を考慮し、最終的に最も品質の良い果実になりそうなものを選ぶことが、摘果を成功させるためのポイントです。

残す果実

メロンの栽培で摘果する際、最終的に残すべき実は、理想的な球形に成長する可能性を秘めているものです。多くの場合、バランスの取れた形状で、表面に傷がなく、健全な状態の実を選びます。実の形は、収穫時の品質や市場での価値に大きく影響するため、慎重な選択が不可欠です。低い位置に実ったものは扁平になりやすく、高い位置に実ったものは縦長になる傾向があるため、中間くらいの節で、かつ理想的な形状の実を選ぶことが望ましいです。

摘果する果実

摘果の対象となる実の主な特徴として、「将来的に扁平な形になる可能性が高い、株元に近い位置に実ったもの」が挙げられます。これらの実は、十分に大きくならないか、形が不揃いになりがちです。また、「将来的に細長い形になる可能性が高い、つるの先端に近い位置に実ったもの」も摘果の対象となります。これらは、糖度が上がりにくく、品質が劣る可能性があります。さらに、傷があるもの、病害虫による被害を受けているもの、成長が著しく遅れているものなども、早めに摘み取り、残す実に養分を集中させることが重要です。適切な摘果を行うことで、残された実が健全に成長し、高品質なメロンとなるための環境が整います。

収穫

メロンの収穫時期は、品種や栽培方法によって大きく異なりますが、一般的には開花後50~60日程度が目安とされています。ただし、日数だけでなく、様々な要素を総合的に判断して収穫のタイミングを見極めることが大切です。具体的なポイントとしては、「着果している枝の葉の状態」があります。実が成熟するにつれて、その周辺の葉が黄色く変色し、枯れ始める兆候が見られます。次に、「果実表面のネットの状態」も重要なサインです。ネットメロンの場合、果実の表面に形成される網目模様が、果実の硬い部分にまでしっかりと広がっているかを確認します。さらに、「花落ち部分のひび割れ」も目安の一つです。果実の底にある花落ち部分が、成熟の過程でわずかにひび割れることがあります。これらの視覚的なサインに加え、最も確実なのは実際に一つ収穫して中身を確認することです。果肉の状態、糖度、肉質などを確認し、最適な状態で収穫するように心がけましょう。この慎重な判断が、美味しいメロンを届けるための秘訣です。
メロンの独特な風味は、その香りと甘さによって生まれます。香りは、果実内の糖分が熟成の過程でアルコールに変わり、さらに果実の酸と結合することで生成される、アルキルエステルなどの揮発性成分によるものです。特にネットメロンの場合、収穫してすぐに食べられるわけではなく、一般的に数日間の追熟期間が必要です。この追熟期間中に、果肉が柔らかくなり、香りの成分が生成され、メロン特有の豊かな香りが増します。追熟は、メロンの潜在的な美味しさを最大限に引き出すために不可欠な過程であり、この期間を適切に管理することで、最高の状態のメロンを味わうことができます。追熟が終わったメロンは、甘く香り高く、とろけるような食感が楽しめます。

玉直し

メロン栽培における「玉直し」は、受粉後およそ15日頃、果実の表面にひび割れが生じる前に実施すべき重要な作業です。この作業では、果実の底や側面が地面に直接触れないように、専用のメロンマットなどを果実の下に敷きます。玉直しの主な目的は、メロンの表面にできるネット模様を均一にすることです。果実が均等な圧力で成長し、日光を均一に受けることで、ネットが美しく、果実全体に均等に広がるように促します。また、地面との接触による傷や、病害虫のリスクを減らす効果も期待できます。適切な玉直しを行うことで、見た目が美しく、市場価値の高いメロンを収穫することに繋がります。

病害や生理障害

メロンの木を栽培する際には、様々な病気や生理的な問題が発生する可能性があります。これらの異変をいち早く察知し、適切な処置を施すことが、健全な成長と豊かな収穫へと繋がります。例えば、ウイルス性の病気の場合、新しく展開する葉に黄色の斑点や縮れが見られたり、既に開いている葉にまだら模様が現れたり、部分的に組織が破壊されることがあります。さらに、実にも不規則な緑色の模様や形の異常が現れることもあります。ウイルス病は、一度発生すると完全に治すことが難しいため、日頃からの予防が最も重要です。
また、うどんこ病は、メロンの木によく見られる病気のひとつです。この病気は、葉、茎、葉柄、そして稀に実にも発生し、植物の表面に白いカビがまるで粉を振りかけたかのように付着するのが特徴です。症状が進行すると、光合成が妨げられ、植物全体が弱体化し、最終的には枯れてしまうこともあります。風通しを良くし、適切な湿度を保つことが予防につながります。
害虫としては、アブラムシやハダニなどがメロンの木の生育に深刻なダメージを与えることがあります。アブラムシは小さな楕円形の虫で、新芽や葉の裏に群生し、植物の汁を吸い取ります。これにより、葉が変形したり、成長が阻害されたりするだけでなく、排泄物である「甘露」が原因で、すす病を引き起こすこともあります。ハダニも同様に、葉の汁を吸うことで葉の色が抜け、白っぽく変色させてしまう害虫です。これらの害虫による被害が拡大すると、光合成能力が低下し、実の成長や糖度にも悪影響を及ぼします。早期発見に努め、物理的に除去するか、適切な殺虫剤を使用することが効果的です。
これらの病害虫対策には、総監修:イラスト原図:駒田旦、本文監修:大阪府立環境農林水産総合研究所 草刈眞一、写真提供:田中寛(YT)、草刈眞一(SK)、駒田旦(HK)による病気に関する専門的な見識と、総監修:大阪府立環境農林水産総合研究所 田中寛、監修:草刈眞一、柴尾学、写真提供:田中寛(HT)、木村裕(YK)、柴尾学(MS)、池田二三高(FI)による害虫に関する専門知識が活かされています。これらの専門家による監修のもと、的確な診断と対策を行うことが推奨されます。

まとめ

メロン の木の栽培は、正しい知識と丁寧な手入れがあれば、家庭菜園でも十分に楽しめる、価値のある園芸活動です。この記事では、メロンの木の基本的な情報から、種まき、育苗、接ぎ木、定植、仕立て、交配、摘果、収穫といった栽培の各段階における詳細な方法を解説しました。メロン本来の豊かな香りと甘みを最大限に引き出すためには、発芽に適した25~30℃の温度を維持すること、最低気温14℃、地温16~18℃以上を保って定植すること、そして、子づるを2本仕立てにして4つの実を収穫するといった具体的な管理が不可欠です。また、品質を向上させるためには、交配後の適切な摘果や、網目の形成を促すための玉直しが重要です。収穫時期は、開花後50~60日を目安とし、葉の状態、網目の状態、花落ち部分の状態、試し割りによる糖度と肉質の確認を行うことが成功への鍵となります。さらに、発芽不良、萎凋病、ウイルス病、うどんこ病、アブラムシ、ハダニなどの病害虫や生理障害に対する予防と早期対応は、健康な株の育成と高品質な果実の収穫には欠かせません。接ぎ木の技術を利用すれば、病気に強いメロンの木を育てることができ、連作障害のリスクを軽減することも可能です。これらの知識を活かして、ご自身で育てた甘く香り高いメロンの収穫を存分にお楽しみください。

メロン の木の栽培は初心者でもできますか?

メロン の木の栽培には、温度や水分管理など繊細な部分もありますが、この記事でご紹介した具体的な手順と注意点を守れば、家庭菜園の初心者の方でも十分に挑戦でき、美味しいメロンを収穫することが可能です。特に、病気に強い接ぎ木苗を使用したり、トンネルやマルチなどの資材で栽培環境を整えたりすることで、成功率は大幅に向上します。最初はミニメロンのような比較的育てやすい品種から始めることをお勧めします。栽培カレンダーを参考に、計画的に作業を進めることが成功への近道です。

メロン の木の種まきに適した時期と温度はどのくらいですか?

メロンの木の種まきは、一般的に2月から3月頃が適しています。メロンは高温を好む植物であり、発芽には25~30℃の高い温度が必要となるため、この時期に種まきを行う場合は、温床育苗や加温設備を利用して温度を確保することが非常に重要です。日中は25~28℃、夜間は18~20℃を目安に管理することで、発芽が均一になります。また、覆土は1cm程度にすることで、発芽不良を防ぐことができます。適切な温度管理と水管理が成功の鍵となります。

メロン栽培における「摘心」と「仕立て方」の重要性とは?

メロン栽培において、摘心と仕立ては、収穫量とメロンの品質を左右する非常に大切な作業です。摘心は、植物の成長点をカットすることで、栄養を果実に集中させ、無駄なつるの成長を抑制します。たとえば、「子づる2本仕立て」では、親づるを摘心し、選んだ2本の子づるに栄養を集中させることで、限られた空間でも効率的に、高品質なメロンを育てることが可能です。この方法により、メロンが均等に大きくなり、甘さも安定しやすくなります。適切な仕立てを行うことで、風通しと日当たりが良くなり、病害虫のリスクを減らす効果も期待できます。

メロンが大きくならない、または甘くならない原因は何ですか?

メロンが大きくならない、あるいは糖度が上がらない理由はいくつか考えられます。まず、摘果が適切に行われず、実の数が多すぎる場合、それぞれのメロンに十分な栄養が行き渡らず、成長が鈍くなります。良いメロンを選んで残す「摘果」を適切なタイミングで行うことが重要です。また、日照不足、低温、多湿などの環境要因もメロンの生育や糖度の上昇を妨げます。特に、受粉後の適切な温度管理(20℃で約24時間の保温)や、土壌の水はけ・通気性の確保、適切な水やりが求められます。さらに、株自体が弱っていると、メロンを大きくするエネルギーが足りなくなるため、追肥などで株の勢いを取り戻すことも大切です。

収穫したメロンの美味しい食べ頃を見分けるコツはありますか?

メロンは収穫後、品種によって異なりますが、およそ5日から10日間の「追熟期間」を経て最高の食べ頃を迎えます。美味しい食べ頃を見極めるポイントは、まずメロン独特の甘く豊かな香りが強くなってきたら、食べ頃が近いサインです。特に、お尻の部分(花落ち部分)を軽く押してみて、少し柔らかく感じられるようであれば、食べ頃が近いことを示しています。また、メロン全体の色のトーンがわずかに変化することもあります。これらのサインは品種によって異なるため、購入時や収穫時に追熟期間の目安を確認しておくと良いでしょう。食べる2~3時間前に冷蔵庫で冷やすと、さらに美味しく味わえます。

メロン栽培で接ぎ木をする利点は何でしょうか?

メロン栽培で接ぎ木を行う一番のメリットは、病害虫への抵抗力を高められることです。特にメロンは土壌由来の病気に弱いため、病気に強い台木に接ぎ木することで、病気の発生を抑え、安定した栽培が可能になります。さらに、連作障害を回避することにもつながり、同じ場所で繰り返しメロンを育てることができます。台木の丈夫な根は、養分や水分の吸収能力を高めるため、結果として生育が促進され、収穫量やメロンの品質向上にも貢献します。家庭菜園で連作を避けたい場合や、病害対策を強化したい場合に非常に有効な手段です。

メロンの株が元気をなくしてしまう「つる割病」をどう防ぐ?

メロン栽培においてつる割病は、特に実をつける時期の負担増、高温多湿な環境、土壌の乾燥や過度な湿り気、連作などが原因で発生しやすい厄介な病気です。予防のためには、まず同じ場所での連作を避け、可能であれば土壌病害への抵抗力を持つ台木を使った接ぎ木栽培を取り入れることが非常に重要です。土壌を準備する段階では、有機肥料を十分に施し、深く耕すことで根がしっかりと張り、病気に負けない強い株を育てることが大切です。また、実の数を調整し、株にかかる負担を減らすことも重要です。日中の気温を約30℃、夜間の気温を約20℃に保つよう心がけ、日差しを遮ったり、風通しを良くしたり、土壌水分の急な変化を防ぐマルチ栽培も効果的な予防策となります。メロンの株が健康でいられるよう、ストレスをできるだけ減らすことが、つる割病予防の重要なポイントです。

メロンにはどんな病気や害虫が発生しやすい?どんな対策をすればいい?

メロンによく見られる病気としては、新しく伸びる葉が黄色くなったり縮れたり、実が変形する原因となる「ウイルス病」、葉や茎に白い粉のようなものが広がる「うどんこ病」などがあります。害虫としては、植物の汁を吸って株を弱らせる「アブラムシ」や「ハダニ」などが代表的です。これらの問題を防ぐためには、まず予防に力を入れることが一番大切です。種をまくときから収穫するまで、丁寧な管理を心がけ、健康な株を育てることが基本となります。具体的には、風通しを良くする、適切な水やりと肥料で株を丈夫に育てる、病害虫の初期症状を見つけたらすぐに対応することが大切です。虫を手で取り除いたり、必要に応じて登録されている農薬を正しく使用することも効果的です。また、病気に強い品種を選んだり、接ぎ木栽培をすることも予防に役立ちます。

メロンの皮を厚く切るのには理由がある?

メロンをはじめとするウリ科の果物は、昔から「瓜の皮は殿様に剥かせよ」ということわざがあるように、皮を厚めに切って食べるのが美味しいとされてきました。これは、果実の中心に近づくほど糖度が高く、甘みが濃縮されている傾向があるためです。皮に近い部分は、中心部と比べて甘みが少ないことが多いため、厚く切ることで一番甘い部分だけを味わうことができるのです。しかし、近年開発された品種の中には、タキイ種苗の赤肉メロン「レノン」シリーズのように、皮のすぐ近くまでしっかりと甘みが広がっているものもあります。これらの品種では、無理に厚く切る必要はないかもしれませんが、一般的には厚めに切る方が、より濃厚な甘さを堪能できるでしょう。
メロンの木