かつて、メロンは高嶺の花。そんな時代に彗星のごとく現れ、庶民の食卓を彩った「プリンス」メロン。その名の通り、気品ある甘さと手頃な価格で、一躍大衆の心を掴みました。しかし、時代の流れと共に、新たな品種の台頭や消費者の嗜好の変化により、その姿は少しずつ店頭から消えつつあります。それでもなお、プリンスメロンは多くの人々の記憶に刻まれ、懐かしい味わいとして愛され続けています。今回は、メロン界のプリンス、プリンスメロンの軌跡を辿ります。
プリンスメロン誕生秘話:サカタのタネが生んだ庶民の味覚
プリンスメロンは、種苗メーカーのサカタのタネが、1961年から開発を始め、翌年の1962年に発表した画期的な品種です。ヨーロッパ産の高級品種である赤肉系のマスクメロン「シャランテメロン」と、日本のマクワウリの一種である「ニューメロン」を掛け合わせることで誕生した、ネットのないF1(一代交配)メロンです。プリンスメロンが登場するまで、メロンは非常に高価で、一般の人々には手が届きにくい存在でした。従来の身近なマクワウリと高級なマスクメロンの中間に位置するプリンスメロンは、従来のメロンに比べて手頃な価格で販売され、当時としては非常に画期的な存在として注目を集めました。その結果、多くの家庭でメロンが楽しめるようになり、身近な果物としての地位を確立し、「大衆メロン」として一時代を築きました。しかし、その後、アンデスメロンなどネット系の安価な新品種が登場したり、消費者の好みが変化したことなど様々な要因が重なり、現在では生産量が減少傾向にあります。地域によっては店頭で見かける機会も減り、懐かしさを感じる人もいるかもしれません。それでもプリンスメロンは、その歴史的な意義と、多くの人々に愛されてきた親しみやすい味わいによって、今もなお多くの人々の記憶に残り、根強い人気を誇っています。
プリンスメロンの魅力:外観、香り、甘さ、とろける食感
プリンスメロンの大きな特徴は、表面に網目模様がない「ノーネットメロン」であることです。果皮はなめらかで、白みがかった薄緑色をしており、マクワウリを大きく丸くしたような独特の見た目をしています。大きさは500gから700g程度と、一般的なネットメロンよりもやや小ぶりで、家族で気軽に楽しめるのが魅力です。果肉は淡いオレンジ色から黄緑色をしており、特に皮に近い部分は爽やかな黄緑色で、種に近いほど鮮やかなオレンジ色に変化する美しいグラデーションが楽しめます。糖度は16度前後と高く、強い甘みが特徴で、一口食べるとジューシーでとろけるような滑らかな口当たりが広がります。プリンスメロンならではの芳醇な香りは、食欲をそそり、食べる喜びを一層引き立てます。手頃な価格で購入できる点も人気の理由の一つで、様々なメロンが登場した現在でも、多くの人々に親しまれています。店頭には通常4月下旬頃から並び始め、6月頃までが主なシーズンですが、その美味しさから旬の時期を心待ちにしているファンも少なくありません。
プリンスメロンの産地:熊本県を中心に各地で栽培
プリンスメロンは、かつて北海道から九州まで、日本各地で栽培され、その甘さと手頃な価格で広く親しまれてきました。しかし、新品種の登場や市場の変化により、現在では生産量が大きく減少しています。現在、最も多くプリンスメロンを生産し、その品質を支えているのは熊本県です。熊本県は温暖な気候と肥沃な土壌を活かし、高品質なプリンスメロンを安定して出荷しています。その他、夏の涼しい気候が栽培に適した山形県、日本海に面した福井県、北海道の中央部に位置する三笠市、関東地方の茨城県なども、プリンスメロンの主要な産地として知られています。これらの地域では、それぞれの気候や栽培技術を活かし、特色あるプリンスメロンが丁寧に育てられています。各産地が持つ独自の栽培環境や出荷時期の違いにより、様々な時期にプリンスメロンの美味しさを楽しむことができ、地域ごとの味わいの違いを楽しむことができます。このように、プリンスメロンは特定の地域で大切に育まれ、今もなお多くの食卓を彩っています。
プリンスメロンの旬:5月がピーク!4月~6月がおすすめ
プリンスメロンの旬は、一般的に4月頃から6月頃までとされ、その爽やかな甘さから「初夏の味」として親しまれています。特に5月頃は出荷のピークを迎え、市場には最も新鮮で美味しいプリンスメロンが豊富に出回ります。旬のプリンスメロンは、香り、甘み、食感のバランスが最も良く、最高の状態で味わうことができるでしょう。旬の時期は地域によって多少異なり、栽培地の気候や品種によって出荷時期が調整されています。例えば、主要産地である熊本県では、ハウス栽培の「春メロン」として毎年4月初旬から中旬にかけて出荷が始まり、5月に最も多く出回ります。一方、比較的冷涼な気候の福井県では5月初旬頃から出荷が始まり、さらに北に位置する山形県では6月頃から本格的に出荷が開始されます。このように、地域ごとのリレー出荷によって、長い期間にわたって旬のプリンスメロンを楽しむことができますが、全体として最も甘みが強く、みずみずしい旬の時期は5月から6月の初夏と言えるでしょう。この時期に購入することで、プリンスメロン本来の美味しさを存分に味わうことができます。(参考:東京都中央卸売市場)
まとめ
1962年に発表されて以来、比較的手頃な価格で多くの家庭にメロンの美味しさを届け、一大ブームを巻き起こしたプリンスメロン。網目模様のない、なめらかな薄緑色の皮と、淡いオレンジ色や黄緑色の、みずみずしい果肉、そして糖度16度前後のしっかりとした甘さと、豊かな香りが特徴です。特に5月から6月にかけての初夏が旬であり、熊本県をはじめとする日本各地で丁寧に育てられています。この記事でご紹介した選び方、保存方法、カットの仕方を参考に、プリンスメロン本来の美味しさを最大限に引き出し、旬の味覚をご家庭でぜひお楽しみください。その歴史的価値と、今も変わらない美味しさは、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。
プリンスメロンの旬はいつですか?
プリンスメロンが最も美味しくなる旬は、4月~6月頃です。中でも5月頃は出荷量が最も多く、まさに最盛期と言えます。この時期に手に入れることで、新鮮で最高の状態のプリンスメロンを堪能できます。地域によって収穫時期に多少差はありますが、一般的に初夏が旬とされています。
美味しいプリンスメロンを選ぶポイントは何ですか?
表面に傷や色の変化がなく、手に取った時にずっしりと重みを感じるものを選びましょう。すぐに食べたい場合は、メロン全体から甘く、芳醇な香りが強く感じられるものがおすすめです。それは食べ頃を示すサインです。
プリンスメロンは追熟が必要ですか?
はい、まだ熟していないプリンスメロンは、直射日光を避けた涼しい場所で常温保存し、追熟させることで、より一層美味しくなります。追熟が進み、甘い香りがより強く感じられるようになったら、食べ頃です。