夏の到来を告げる暑中見舞い。近年ではメールやSNSでの挨拶も増えましたが、手書きの暑中見舞いは、相手への心遣いがより伝わる特別なコミュニケーションです。しかし、いざ書こうとすると、その意味や由来、適切な時期、書き方マナーなど、意外と知らないことが多いのではないでしょうか。この記事では、暑中見舞いの基礎知識から、相手に喜ばれる例文までを徹底解説。この夏、大切な人に心を込めた暑中見舞いを送りませんか?
暑中見舞いとは? 意味・由来・起源
暑中見舞いとは、厳しい暑さの中で相手の健康を気遣い、無事を祈る気持ちを伝える季節の挨拶状です。そのルーツは古く、直接訪問して贈り物をしていた風習にあります。現在のような手紙やハガキの形式になったのは、明治時代以降の郵便制度の発展に伴い、挨拶が簡略化されたためです。単なる形式的な挨拶ではなく、相手への思いやりを形にする、日本の大切な文化と言えるでしょう。

暑中見舞い・残暑見舞いを出す時期・期間
暑中見舞いを出す時期は、二十四節気の小暑(7月7日頃)から立秋(8月7日頃)の前日までとされています。しかし、実際には7月上旬はまだ梅雨の時期で、暑さを感じにくいこともあります。そのため、梅雨明け後に出す方が、季節感に合うでしょう。立秋を過ぎると、暦の上では秋ですが、厳しい暑さが続く「残暑」の時期となり、挨拶状も「残暑見舞い」に変わります。立秋に近い時期に送る際は、相手に届く日を確認し、暑中見舞いか残暑見舞いかを適切に使い分けることが大切です。
暑中見舞い・残暑見舞いの書き方マナーと例文
暑中見舞い・残暑見舞いの書き方や形式を理解した上で、自分らしいアレンジを加えてみましょう。
暑中見舞いの基本的な構成と書き方
暑中見舞いの文面は、一般的に以下の要素を盛り込むと良いでしょう。基本となる構成は次の通りです。1. お見舞いの言葉、2. 相手の状況を気遣う言葉、3. 自身の近況報告、4. 今後の関係をお願いする言葉、5. 相手の健康を願う言葉、6. 日付。それぞれのポイントについて説明します。まず、「お見舞いの言葉」は、やや大きめに書くと、はがき全体のバランスが整います。暑中見舞いでは、頭語や結語(拝啓・敬具など)は使用せず、句読点(「。」や「、」)も省略するのが一般的です。相手の状況を気遣う言葉から、自身の近況報告、今後の関係のお願い、相手の健康を願う言葉までは、はがきの本文として考えると良いでしょう。まず相手の安否を尋ね、次に自分の近況を伝え、今後の交流をお願いし、最後に相手の健康を祈る言葉で締めくくるのが基本的な流れです。この構成に沿って書けば、誰に送る場合でもスムーズに作成できるでしょう。日付に関しては、具体的な日付は不要で、「盛夏」と記すのが一般的です。その他、「文月」「七月」「葉月」「八月」といった月名を用いることも可能です。
相手に合わせた暑中見舞いの例文
暑中見舞いは、相手との関係性に応じて表現や言葉遣いを調整することが大切です。ここでは、様々な相手別の例文をご紹介します。これらの例文はあくまで参考として、基本構成を参考にしながら、相手への心遣いを込めた文章を作成しましょう。
友人・知人宛
友人や知人に送る暑中見舞いは、縦書きで丁寧に書くとフォーマルな印象になりますが、横書きで親しみを込めても良いでしょう。書き出しは率直な言葉を選ぶと好印象です。個人的な思い出やユーモアを交えることで、より温かく、印象的な便りになります。今後の関係をお願いする際には、具体的な誘いの言葉を添えると、より親睦を深めるきっかけになるでしょう。
ビジネスにおける取引先宛
取引先や目上の方へ送る場合は、「お見舞い」という言葉が相手を見下す意味合いを含む可能性があるため、「お伺い」または「御伺い」を使用するのが一般的です。ビジネスシーンでの手紙は堅苦しくなりがちですが、暑中見舞いは簡潔にまとめるのが望ましいでしょう。相手も読みやすくなります。せっかく暑中見舞いを送るなら、相手に役立つ情報を伝えるのも良いでしょう。たとえば、店舗であれば「夏のセールを開催しておりますので、ぜひお越しください」といった情報を簡潔に盛り込むことで、今後の取引につながる可能性もあります。
会社の上司へ
上司など、敬意を払うべき方へは、「お伺い」の語を用いましょう。普段から顔を合わせる上司には「ご健勝のこととお慶び申し上げます」といった表現が適しています。一方、遠方にお住まいの上司には「いかがお過ごしでしょうか」など、相手の状況を推し量る言葉を選ぶと良いでしょう。日頃の指導に対する感謝、仕事が順調に進んでいることの報告、そして今後の抱負を伝えることで、尊敬の念と意欲を示すことができます。
会社の部下へ
部下や同僚に送る場合は、親しい友人宛の文面をやや丁寧にしたものが適切です。くだけすぎた表現は避け、節度を保つように心がけましょう。近況報告やちょっとした話題を盛り込むと、相手も喜んでくれるはずです。その上で、相手を気遣う言葉を添えることで、より良好な関係を築けるでしょう。
学生時代の恩師へ
恩師へ宛てる場合は、「暑中お伺い」よりもさらに丁寧な「暑中ご機嫌伺い」という表現を用いると、より一層丁寧な印象となります。卒業以来、なかなか会えていない、あるいは連絡を取れていない場合に暑中見舞いを出すことが多いかもしれません。ご無沙汰しているお詫びとともに、充実した日々を送っていることを伝えることで、恩師も安心してくれるでしょう。近況報告を通して、感謝の気持ちを伝える絶好の機会です。
暑中見舞いをもらった相手へ
先に暑中見舞いをいただいた相手への返信は、まず感謝の気持ちを伝えることが重要です。相手との関係性に応じて、「お見舞い」と「お伺い」を使い分けましょう。立秋を過ぎてからの返信となる場合は、「残暑見舞い」または「残暑お伺い」として送ります。書状への感謝、気遣ってくれたことへの感謝を率直に伝え、自身の近況を書き添え、最後に相手の健康を願う言葉で締めくくるのが一般的です。
喪中の相手に暑中見舞いを送っても大丈夫?
暑中見舞いは、お祝いのメッセージではなく、相手の体調を気遣う「季節の挨拶」という性質を持つため、喪中の方へ送ることも可能です。ただし、相手の心情を考慮し、ハガキのデザインは派手なものを避け、落ち着いたデザインを選ぶことが大切です。また、文章についても、お悔やみの言葉を入れるかどうか、どこまで書くかなど、状況に合わせた配慮が求められます。特に、ご逝去されてから日が浅い場合(四十九日前など)は、相手に精神的な負担をかけてしまう可能性も考慮し、送るのを控えることも相手への思いやりとなります。
お中元と暑中見舞いの違いとは?
暑中見舞いがハガキによる挨拶状であるのに対し、お中元は品物を贈る習慣として広く認識されています。この贈るものの違いに加えて、時期や由来にも違いがあります。お中元は元々、道教の行事である上元、中元、下元のうちの「中元」と、仏教の盂蘭盆会(お盆)が組み合わさってできたものです。本来は旧暦7月15日までに、日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちを込めて贈答品を贈る習慣でした。明治時代に暦が新暦に変わる際、お盆の時期が7月15日に行われる地域と、月遅れの8月15日に行われる地域に分かれたため、お中元の時期にも地域差が生じました。しかし、近年では7月中旬までに贈るのが一般的です。「お中元 → 暑中見舞い → 残暑見舞い」の順で時期が移り変わると考えると理解しやすいでしょう。お中元の時期を逃してしまった場合でも、「暑中御伺」として品物を贈ることで、暑中見舞いの意味合いを込めて贈ることもできます。

どんなデザインを選んだらいい?
暑中見舞いのハガキには、夏らしい涼しげなデザインのものが多く販売されています。一般的には、ヒマワリ、アサガオ、スイレンなどの夏の花、金魚、スイカ、かき氷などがよく使われるモチーフです。親しい人に送る場合は、市販のハガキだけでなく、自分で切り絵をしたり、イラストを描いたりするのもおすすめです。手書きの温かみや、心を込めて作られたメッセージは、受け取った人に強く印象を与え、より気持ちが伝わるでしょう。また、夏祭りや旅行で撮った写真をハガキに使うのも、相手に近況を伝えることができ、好印象につながります。現代のスピードが重視される時代において、手間をかけて手作りされた暑中見舞いは、デジタルにはない「心」がこもった大切なコミュニケーション手段となるでしょう。
本当に書きたい気持ちを大切に
暑中見舞いや残暑見舞いは、「送りたい」という気持ちを大切にすることで、より楽しめるでしょう。
旅先からの便り
旅行先から暑中見舞いや残暑見舞いを送ってみるのはいかがでしょうか。旅行先からの季節の挨拶は、受け取った相手にとって特別な喜びとなるでしょう。
まとめ
暑中見舞いと残暑見舞いは、日本の美しい四季の中で育まれた、相手への心遣いを表す素敵な習慣です。その意味や由来、適切な時期、そして相手に合わせた書き方の作法や例文を知ることで、より気持ちのこもった挨拶状を送ることができます。形式にこだわりすぎず、「伝えたい」という素直な気持ちを大切にして、夏の挨拶を楽しんでみてください。手書きならではの温かさや、清涼感あふれるデザインの葉書一枚が、遠く離れた大切な人との繋がりをより強くしてくれるでしょう。今年の夏は、あなたらしい暑中見舞いを送り、大切な方々への想いを伝えてみませんか。
暑中見舞いと残暑見舞いの使い分け方は?
暑中見舞いは、一般的に二十四節気の小暑(7月7日頃)から立秋(8月7日頃)を迎える前までに送るとされています。立秋を過ぎると、暦上は秋となりますが、厳しい暑さが続くため「残暑見舞い」として送るのが適切です。特に、立秋の頃に送る場合は、相手に届くタイミングが立秋の前か後かを確認し、適切な方を選びましょう。
喪中の人に暑中見舞いを送っても大丈夫ですか?
暑中見舞いは、お祝い事ではなく季節の挨拶状なので、喪中の方へ送っても問題ありません。ただし、相手の気持ちを考慮し、葉書のデザインは派手なものを避け、文章も簡潔にするなどの配慮が必要です。特に四十九日を過ぎていないなど、相手が深い悲しみの中にいる場合は、送るのを控えることも相手への思いやりとなります。
ビジネスシーンで暑中見舞いを送る際、注意すべき点は?
ビジネスの関係にある方や、目上の方へ暑中見舞いを送る場合、「お見舞い」という表現は相手によっては失礼にあたることも考えられます。そのため、「暑中お伺い」という形を用いるのが一般的です。手紙のような形式ばった構成は避け、時候の挨拶、日ごろの感謝、今後の関係構築を願う言葉などを簡潔に述べると良いでしょう。もしセールなどの相手にとって有益な情報があれば、それらを加えるのも効果的です。
暑中見舞いの文面に句読点は必要でしょうか?
暑中見舞いをはじめとする季節の挨拶状では、手紙のような決まり文句である頭語・結語を用いないのが一般的です。同様に、「。」や「、」などの句読点も使用しないことが推奨されます。これは、句読点が文章を区切る役割を持つため、相手とのご縁が途切れないように、という願いが込められているためです。読みやすさを考慮し、文字のサイズを調整するなどの工夫を凝らしましょう。
お中元と暑中見舞いの違いは何ですか?
暑中見舞いは、主に「はがき」を用いて相手の健康を気遣う「挨拶状」としての役割を担います。一方、お中元は「品物」を贈ることで、日頃の感謝の気持ちを伝える「贈答の習慣」です。お中元の起源は、道教の風習とお盆の行事が融合したもので、もともとは旧暦の7月15日までに贈る習慣がありましたが、現在では7月中旬までに贈ることが一般的です。時期的な流れとしては、「お中元」を贈った後に「暑中見舞い」を送る、と考えると分かりやすいでしょう。