太陽の恵みをたっぷり浴びて育つマンゴーは、その甘美な味わいで私たちを魅了します。近年、温暖化の影響もあり、日本国内でも栽培に挑戦する方が増えてきました。しかし、マンゴー栽培は品種選びから日々の手入れ、そして収穫まで、確かな知識と丁寧な作業が求められます。この記事では、マンゴー栽培を成功させるための秘訣を徹底解説。初心者の方でも安心して挑戦できるよう、わかりやすくステップごとにご紹介します。
マンゴーとは?基礎知識と魅力

マンゴーは、ウルシ科のマンゴー属に分類される、トロピカルフルーツの代表格です。芳醇な香りと濃厚な甘みが特徴で、原産はインドや東南アジアといった温暖な地域。日本国内では、主に鹿児島県、宮崎県、沖縄県、そして小笠原諸島などで、「アップルマンゴー」が中心に栽培されています。果肉はとろけるような舌触りで、鮮やかなオレンジ色が食欲をそそります。
マンゴーの主な特徴
マンゴーは常緑性の高木で、原産地では40メートルにも成長することがありますが、鉢植えで育てる場合は1.5メートル程度に抑えることも可能です。開花の時期には、小さな花が房状に密集して咲き、受粉を促すために独特の香りを放ちます。果実の大きさや色合いは品種によって異なり、黄色、緑色、桃色など、様々なバリエーションがあります。国内での収穫シーズンは4月~8月頃で、特に7月頃が出荷の最盛期です。輸入されたものや、ハウス栽培されたマンゴーは、一年を通して手に入れることができます。
マンゴーの種類:人気品種をご紹介
ここでは、日本でよく見かける代表的な品種をご紹介します。それぞれの個性を知ることで、あなたにとって最高のマンゴーを見つけることができるでしょう。
アップルマンゴー:日本で最もポピュラーな品種
アップルマンゴーは、日本国内で最も広く栽培されている品種です。その名の通り、果皮がリンゴのように赤く色づくのが特徴で、強い甘さと香り、そしてほのかな酸味が絶妙なバランスを生み出しています。
緑色のマンゴー:熟しても変わらない希少種
熟しても皮が緑色のままという、一風変わったマンゴーがあります。主に沖縄県で栽培され、果肉は鮮やかなオレンジ色や黄色をしており、とろけるような舌触りが特徴です。外見からは想像できない、独特の味わいを楽しめます。
ペリカンマンゴー:その名の由来はユニークな形状
フィリピンで広く栽培されているのがペリカンマンゴーです。果実の形がペリカンのくちばしに似ていることから、この名前が付けられました。芳醇な香りと甘さ、そして程よい酸味が絶妙なバランスで、滑らかな食感が魅力です。他の品種と比べると、あっさりとした味わいかもしれません。
タイマンゴー:お手頃価格で気軽に楽しめる
タイ産のマンゴーは、全体的に比較的安価に入手できるのが特徴です。特にナンドクマイ種は、際立った甘さが特徴で、マンゴーの中でも非常に高い評価を得ています。その他にも、マハチャノック種、チョークアナン種、ナンカンワン種など、様々な種類が存在します。
インドマンゴー:高級品種アルフォンソの魅力
世界最大のマンゴー生産国であるインドですが、国産のインドマンゴーは日本国内ではあまり見かけません。中でもアルフォンソ種は、「マンゴーの王様」と称され、その香りと味は最高級品として知られています。もし機会があれば、ぜひ一度味わってみてください。
アップルマンゴー:リンゴのような赤い果皮が特徴
アップルマンゴーは、アーウィン種という品種で、果皮がリンゴのように鮮やかな赤色になるのが特徴です。主に沖縄県で栽培され、6月から8月頃に収穫されます。重さは500g程度まで大きくなり、濃厚な甘さととろけるような食感が魅力です。
マンゴーの育て方:栽培方法の基本
マンゴー栽培で成功するためには、土壌の準備、苗の植え付け、水管理、肥料の与え方、受粉、剪定、摘果といった要素を適切に管理することが不可欠です。これらの基本をマスターすれば、初心者の方でも美味しいマンゴーを育てることが可能です。栽培を始める前に、必要な資材を揃え、計画的に作業を進めることが重要です。
土づくり:排水性と保水性のバランスが重要
マンゴーは水はけの良い土壌を好みます。根腐れを防ぎ、健全な成長を促すためには、排水性と保水性のバランスがとれた土壌を選ぶことが重要です。例えば、小粒の赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜたものや、鹿沼土やパーライトなどをブレンドした培養土などが適しています。有機質に富んだ肥沃な土壌は、マンゴーの生育を力強くサポートします。
苗植え:最適な時期と手順
マンゴーの苗を植えるのに適した時期は、一般的に3月から5月にかけてです。種から育てることもできますが、より早く収穫を目指すのであれば、苗木を購入するのがおすすめです。苗木は園芸店やオンラインショップなどで手に入れることができます。鉢植えにする場合は、10号以上の大きめの鉢を用意し、植え付けの際に緩効性肥料などを元肥として混ぜ込みます。植え付け後には、植物用活力剤を規定の濃度に薄めて与え、支柱を立てて苗木がぐらつかないように固定します。置き場所は、日当たりが良く、風通しの良い場所を選びましょう。
水やり:季節に応じた管理
マンゴーの水やりは、季節によって注意すべき点が変わってきます。夏場は、庭植えの場合、基本的に自然の雨水だけで十分ですが、雨が少ない場合は土の乾燥具合を見て水を与えます。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。冬場は、マンゴーの成長が鈍くなるため、水やりは控えめにします。土が完全に乾いてから2~3日後に水を与える程度で十分です。やや乾燥気味に管理することで、花芽が形成されやすくなります。
施肥:生育段階に合わせた肥料管理
マンゴーの施肥タイミングは、一般的に花芽が形成される3月、摘果作業を行う5月、そして収穫を終えた後の8月頃が目安となります。肥料が不足すると、生育に悪影響を及ぼし、葉の色が悪くなったり、花付きが悪くなる原因となります。追肥には、窒素、リン酸、カリウムの3要素がバランス良く含まれているか、リン酸がやや多めの化成肥料が適しています。リン酸は果実の生育に不可欠な成分ですので、意識して施用することを推奨します。
受粉:人工授粉による確実な結実
マンゴーは自家結実性を持つため、1本の木でも結実します。受粉は、主にハエやハチなどの昆虫が媒介します。ビニールハウス栽培の場合、魚のアラや魚粉などを設置してハエを誘引する方法が有効です。ベランダなどで栽培する場合は、筆や刷毛を用いて花穂を優しくなでるように人工授粉を行うことで、より確実に結実させることが可能です。降雨は受粉を妨げる要因となるため、注意が必要です。
マンゴーの剪定と摘果:品質向上に不可欠な手入れ

マンゴー栽培において、剪定と摘果は非常に重要な作業です。適切な剪定を実施することで、樹全体の日当たりと風通しを改善し、病害虫の発生を抑制することができます。また、摘果を行うことで、残された果実への養分集中を促し、果実の品質を向上させることが期待できます。
剪定:開放的な自然樹形を目指して
マンゴーの樹形は、開放的な自然樹形(開心自然形)に整えることが推奨されます。自然に育てると樹が大きくなり過ぎ、管理が困難になるため、定期的な剪定が不可欠です。鉢植えの場合、土から50cm程度の高さになったら切り詰め、新しい枝(新梢)を2~3本、主となる枝として育てます。接ぎ木苗の場合は、接ぎ口から30cm以上伸びたら先端を切り戻すと、そこから枝が分かれて生長します。主枝が30cm程度に成長したら剪定を行い、管理しやすい樹形に整えましょう。剪定は、風通しが悪く、枝が密集している箇所を中心に行います。伸び過ぎた枝や、見た目が悪い枝も適宜切り落としましょう。収穫時期には、実が付いている枝の先端を軽く切り落とす程度に留めます。剪定の適期は主に収穫後ですが、樹の負担を考慮し、一度に多くの枝を切り落とす『強剪定』は避けましょう。風通しを良くする目的で、混み合った枝や不要な枝を整理する『弱剪定』に留めるのがポイントです。
摘果:良質な果実を育てるための重要な作業
摘果とは、生育の悪い果実や傷ついた果実を取り除く作業のことです。多くの実がなることは喜ばしいですが、実が多すぎると養分が分散してしまい、品質の良い果実を育てることが難しくなります。十分な栄養と水分を行き渡らせ、高品質な果実を収穫するためには、摘果が欠かせません。摘果の目安としては、葉100枚あたり果実1個を目安にすると良いでしょう。鉢植えで栽培する場合は、10号鉢あたり3~5個程度の果実になるように摘果を行うのが理想的です。
マンゴーの袋掛け:病害虫予防と品質維持
マンゴーの袋掛けは、大切な果実を害虫から保護し、表面の傷を防ぐために行う重要な作業です。さらに、熟した果実が落下するのを防ぐ役割も担います。果実がウズラの卵くらいの大きさになったら、袋掛けを行いましょう。果実をネットや専用の袋で覆い、枝に固定してしっかりと支えてあげることが大切です。
マンゴーの収穫時期と追熟のポイント
マンゴーの収穫時期は、栽培されている地域や品種によって異なります。例えば、玉文種やキーツ種は、果皮の色が鮮やかになり、果実がふっくらと丸みを帯びてきた頃が収穫の目安です。収穫後、1週間ほど追熟させることで、さらに風味が増し美味しくなります。アーウィン種の場合は、完熟して自然に木から落下したものが最も美味しいとされているため、落果する前に収穫することは避けた方が良いでしょう。
マンゴーの病害虫対策:早期発見と適切な処置が重要
マンゴー栽培において、病害虫の発生は避けて通れない問題です。早期発見と迅速かつ適切な対処を行うことで、被害を最小限に食い止め、健康なマンゴーを育てることが可能になります。日頃から注意深く観察し、適切な対策を講じることが重要です。
マンゴー栽培で注意したい主な病気
マンゴーを育てるうえで、病害対策は欠かせません。特に以下の3つは代表的な病気として知られています。それぞれの特徴と対策をわかりやすくまとめました。
炭疽病(たんそびょう)
カビ(糸状菌)が原因で発生する病気で、葉や枝、果実に黒褐色の斑点が現れるのが特徴です。アーウィン種(アップルマンゴー)はこの病気に弱いとされており、特に注意が必要です。
【対策のポイント】
- 葉に小さな斑点を見つけたら、すぐにその部分を取り除く
- 風通しと日当たりを良くする
- 被害が広がる場合は、地域でマンゴーに使用が認められている農薬を適切に使う(ラベルの使用方法や希釈倍率、回数を必ず守る)
うどんこ病
こちらもカビが原因で、葉や花、果実の表面が白い粉をまぶしたようになります。見た目だけでなく、果実の品質にも影響するため、早めの対処が重要です。
【対策のポイント】
- 株間を広くとり、風通しを良くする
- 十分な日光が当たるように管理する
- 症状がひどい場合は、適切な農薬を使用する(使用方法や回数を必ず守る)
潰瘍病(かいようびょう)
細菌が原因で発生し、葉や枝に傷のような病変ができるのが特徴です。過剰な肥料は細菌の繁殖を助けるため、与えすぎには注意しましょう。
【対策のポイント】
- 肥料は適量を守る
- 発病した葉や枝は早めに取り除く
- 症状が広がる場合は、地域で認められている農薬を使用する(必ずラベルを確認し、正しい方法で)
※農薬を使用する際は、必ず製品ラベルをよく読み、使用基準や安全対策を守ってください。ご不安な場合は、地元の農業指導機関やJAに相談しましょう。
害虫:カイガラムシ、ハダニ
カイガラムシは、マンゴーの葉や枝に吸着し、植物の樹液を吸い取る厄介な害虫です。見つけ次第、歯ブラシなどで丁寧にこすり落としましょう。カイガラムシは風通しの悪い環境を好むため、定期的な剪定を行い、日当たりと風通しを改善することが効果的な予防策となります。ハダニは、乾燥した高温条件下で繁殖しやすい微小な害虫です。葉の裏に寄生し、吸汁します。葉水(葉に水をかける)を頻繁に行うことで、ハダニの発生を抑制することができます。ハダニは、弱った植物に特に付きやすい傾向があるため、早期発見と駆除が重要です。
マンゴーの増やし方:挿し木と種子繁殖
マンゴーを増やす方法としては、挿し木と種子からの繁殖が一般的です。挿し木は、比較的温暖な4月から9月にかけて行うのが最適です。充実した枝を5~7cm程度の長さに切り取り、発根促進剤を塗布した後、赤玉土やバーミキュライトなどの清潔な用土に挿します。種子繁殖は、マンゴーの果実を食べた後に残った種を利用します。種を覆っている果肉を完全に除去し、赤玉土などの清潔な用土に種をまき、2~3cm程度の土を被せます。
マンゴーの保存方法と美味しい切り方
完熟したマンゴーは、冷蔵または冷凍で保存することが可能です。冷蔵保存する場合は、乾燥を防ぐために新聞紙で包み、さらにビニール袋に入れてください。冷凍保存の場合は、食べやすい大きさにカットし、密閉容器やフリーザーバッグに入れて保存します。マンゴーのおすすめの切り方として、「花咲カット」が人気です。種を避けて果肉に格子状の切り込みを入れ、皮の方から押し上げることで、見た目も華やかで食べやすい状態になります。
結び
マンゴー栽培は決して簡単ではありませんが、丹精込めて育てることで、その努力は甘美な果実として報われます。この記事が、あなたのマンゴー栽培への挑戦を後押しできれば幸いです。
質問1:マンゴーは種からでも育てられますか?
回答:はい、マンゴーは種から栽培可能です。食後の種を丁寧に洗い、乾燥させてから土に植えましょう。ただし、種から育てた場合、結実までには長い年月を要することがあります。また、必ずしも親木と同じ品質のマンゴーが育つとは限りません。
質問2:寒冷地でもマンゴーは栽培できますか?
回答:マンゴーは熱帯性の植物であり、寒さには弱い性質を持っています。寒冷地での栽培を試みる場合は、鉢植え栽培とし、冬季は屋内へ移動させるなどの寒さ対策が不可欠です。加温機能付きの温室があれば、より栽培は容易になります。
質問3:マンゴーの剪定は、いつ、どのように行うのが適切ですか?
回答:マンゴーの剪定は、収穫後に行うのが一般的です。不要な枝や密集した枝を取り除き、風通しを良くすることで、病害虫のリスクを軽減できます。また、翌年の開花を促進する効果も期待できます。剪定後の切り口には、癒合剤を塗布し、病気の侵入を防ぐようにしましょう。