みかん栽培において、肥料は人間にとってのご飯のようなもので、みかんの生育、実の品質、収穫量に大きな影響を与えます。肥料が不足すると生育不良となり、多すぎるとバランスを崩して不調をきたします。この記事では、みかんの肥料のやり方、設計の仕方を、植物にとって重要な三要素であるN(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム)を中心に解説します。
みかん栽培における肥料の重要性
肥料の三要素とは、N(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム)のことで、植物が最も多く必要とする養分です。これらの要素は、植物の成長と健康を維持するために不可欠であり、みかん栽培においても例外ではありません。自然から吸収する量だけでは不足しがちなため、肥料として適切に補給する必要があります。
肥料の三要素(NPK)とは
NPKはそれぞれみかんに対して異なる重要な役割を果たします。
NPKのみかんへの役割
これらの要素がバランス良く供給されることで、みかんは健康に成長し、美味しい実をつけることができます。
- 窒素(N):葉や茎の生育を促し、光合成を活発化させる働きがあります。
- リン酸(P):根の発達を促し、開花や実をつけるのを助ける役割があります。
- カリウム(K):植物全体の機能を調整し、病害虫に対する抵抗力を高める効果があります。
みかんに最も大きな影響を与えるのは窒素です。したがって、施肥において基本となるのは窒素の年間施用量となります。窒素の年間施用量の目安は20kg~25kg/10aです。リン酸とカリウムは窒素の60~80%(12kg~20kg/10a)ほどを施用します。
年間施肥量の目安
みかんの生育に最も大きな影響を与えるのは窒素です。そのため、肥料設計において基本となるのは、窒素の年間施用量です。窒素の年間施用量の目安は、20kgから25kg/10aとなります。リン酸とカリウムは、窒素の60%~80%程度(12kg~20kg/10a)を目安に施用します。
肥料は、一度にまとめて与えるのではなく、複数回に分けて与えることが重要です。これは、植物が一度に大量の養分を吸収できないためです。また、季節によって養分の利用方法が異なるため、適切な時期に適切な量を与える必要があります。みかんの肥料は春、夏、秋の3回、または春と秋の2回に分けて与えるのが一般的です。
施肥回数と時期
各季節に与える肥料は、それぞれ異なる役割を持っています。
春肥、夏肥、秋肥の役割
温州みかん栽培においては、春肥:夏肥:秋肥=4:2:4(主に普通温州)、または春肥:秋肥=5:5(主に早生温州)のような分配で与えるのが一般的です。
- 春肥:新しい芽の成長を促し、開花のための花芽形成をサポートします。
- 夏肥:果実が大きく育つように促し、品質向上に貢献します。
- 秋肥:収穫後の樹の体力を回復させ、翌年の生育に向けた準備を助けます。
肥料袋には、肥料の成分が表示されています。例えば、「8-8-8」という表示は、窒素8%、リン酸8%、カリウム8%が含まれていることを意味します。肥料袋が20kg入りであれば、それぞれの成分は1.6kgずつ含まれていることになります(20kg × 8% = 1.6kg)。
肥料袋の表示の見方
施肥量を計算するには、まず年間施肥量を把握し、それを各時期の割合で分配します。次に、肥料袋の表示から、肥料に含まれる成分量を計算します。最後に、必要な成分量を肥料の成分量で割ることで、施肥量を算出できます。例えば、10年生の早生温州に春肥を与える場合で、年間施肥窒素量が20kg/10a、春肥:秋肥=5:5、10aの植付本数100本、肥料成分表示がN:P:K=8:6:6である場合、春肥に必要な窒素量は20kg × 5/10 = 10kg/10a、1本あたりに必要な窒素量は10kg/100 = 0.1kg/本、肥料1kgあたりに含まれる窒素成分は1kg × 0.08 = 0.08kg、1本に必要な施肥量は0.1 ÷ 0.08 = 1.25kgとなります。
施肥量の計算方法
みかんは根から肥料を吸収するため、根がある場所に肥料を与えるのが基本です。みかんの根は、葉が茂っている部分の下に広がっています。また、太い根よりも細い根(細根)が養分を積極的に吸収するため、葉に覆われた外回りの地表面に与えると効率よく吸収されます。肥料は雨によって地下へ浸透していくため、雨の前を狙って与えると効果的です。
肥料の与え方
みかん栽培は、春先の植えつけや施肥、収穫のサイクルを繰り返します。以下に、みかん栽培の大まかな流れと、肥料を与えるタイミングを紹介します。
肥料の種類
みかんを育てる際には、大きく分けて有機肥料と化成肥料という2つの選択肢があります。有機肥料は、動植物を由来とする自然の素材から作られており、土壌を豊かにする効果が期待できます。一方で化成肥料は、化学的なプロセスを経て製造された肥料で、効果が比較的早く現れるのが特徴です。どちらを選ぶかは、栽培方法や目指す成果によって変わってきます。
有機肥料と化成肥料
有機肥料は、効果がゆっくりと現れ、持続性があるため、最初に施す元肥や、冬に行う寒肥として適しています。化成肥料は、効果の発現が早いため、生育の途中で肥料を追加する追肥に適しています。さらに、有機肥料は土壌中の微生物の活動を促進し、土壌環境全体の改善にも貢献します。化成肥料は、必要な栄養素を的確に供給できるため、綿密な施肥計画を立てる際に役立ちます。
その他注意すべき肥料成分
みかん栽培では、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)だけでなく、他にも重要な肥料成分が存在します。例えば、カルシウムは、みかんの品質向上や、収穫後の保存期間を長く保つ効果が期待できます。マグネシウムは、葉の緑色を濃くし、光合成を盛んにする働きがあります。これらの微量要素も、みかんが健全に育つためには不可欠な栄養素です。
みかん栽培のサイクルと施肥時期
みかんは、排水性と保水性を兼ね備えた用土を好みます。小粒の赤玉土と腐葉土を7:3程度で混ぜたものが基本の配合となります。市販の培養土を買うのもひとつの方法です。
土壌準備
植えつけ前に与える肥料が元肥です。みかんの好む土を用意したら、元肥として緩効性肥料を土に混ぜ込みます。
最初の肥料(元肥)
みかんの植えつけ適期は3月~4月です。苗木を入手したら、鉢やお庭などに植えつけましょう。寒さが厳しい時期に植えつけすると弱ってしまう可能性があるため注意が必要です。地植えの場合、植え穴は大きめに掘ります。直径と深さがともに50cm程度になるよう掘るのが目安です。接ぎ木苗を植える場合は、根元の接ぎ木部分が土に埋もれないよう、浅植えにします。
植え付け
植えつけ後、6月頃になったら小さな果実が見られるようになります。収穫に備え、6月及び、9月~10月に追肥として緩効性肥料を施肥してください。また、生育の勢いが弱い場合は、1週間~10日一回、速効性肥料を与えてもよいでしょう。
追肥
寒くなってくると実が色づき、収穫時期が訪れます。必要であれば収穫時期が来るまでの7月~8月の間に摘果して、実の数を調整しましょう。ウンシュウミカンの場合は、実っている果実の7割ほどが色づいたタイミングで、徐々に収穫を始めます。果実に緑色の部分が残っておらず、オレンジ色に染まっていれば、実がしっかりと甘くなっているはずです。
収穫
2~3月頃に肥料を与えます。春に新しく伸びる芽や枝などのためにエネルギーを与えましょう。地植えの場合は、土壌改良も兼ねて有機肥料を施します。鉢栽培の場合は、再び生育が活発になる春に備え、緩効性肥料を与えてください。
具体的な施肥計画の立て方
施肥設計のポイントは、みかんの生育状況に合わせて肥料の種類と量を調整することです。例えば、生育が旺盛な場合は、窒素を控えめにし、リン酸やカリウムを多めに与えます。また、果実の肥大期には、カリウムを重点的に与えることで、糖度を高めることができます。施肥設計は、経験と知識に基づいて行う必要がありますが、基本的なポイントを押さえることで、より効果的な施肥が可能になります。
施肥計画の要点
みかん栽培における肥料の知識は、美味しいみかんを収穫するための重要な要素です。この記事で解説した内容を参考に、ご自身のみかん栽培に最適な施肥計画を立ててみてください。適切な肥料管理を行うことで、きっと素晴らしい収穫が得られるはずです。
まとめ
みかんの肥料は、一般的に春、夏、秋の3回に分けて与えます。春肥は新芽の生育を促進し、夏肥は果実の肥大を促進し、秋肥は樹の体力を回復させます。地域や品種によって最適な時期が異なる場合があるので、栽培地域の情報を参考にしてください。