みかんの黒い点:原因、対策、安全性と消費者が知るべき知識
冬の食卓を彩るみかん。その表面に現れる黒い点に、不安を感じたことはありませんか?もしかしたらそれは「黒点病」かもしれません。農家を悩ませるこの病気は、みかんの見た目を損ねるだけでなく、品質にも影響を与えることがあります。しかし、黒い点があるからといって、すぐに捨てるのは早計です。この記事では、みかんに現れる黒い点の正体、安全性、そして私たちが知っておくべき知識をわかりやすく解説します。安心して美味しいみかんを楽しむために、一緒に学んでいきましょう。

みかんの品質を左右する「黒点病」とは?

黒点病は、みかんをはじめとする柑橘類の栽培において、特に注意すべき病害の一つです。被害を防ぐためには、具体的な症状と発生原因を正確に把握することが大切です。これらの基本情報を理解することで、効果的な対策を計画し、実行することができます。

黒点病の主な症状

黒点病は、みかんの葉や枝、そして最も重要な果実に特徴的な斑点を生じさせます。これらの斑点は、直径0.1~0.5mm程度の小さな黒色の円形で、その見た目から「黒点」と呼ばれます。葉や枝に発生した場合、二次感染の可能性は低く、樹の生育に大きな影響を与えることも少ないため、問題視されないこともあります。しかし、果実に黒点病が発生すると、外観が著しく損なわれ、商品価値が大きく低下するという問題が生じます。感染しやすい時期は雨が多い時期で、大きく分けて2つの時期があります。一つは6~7月の梅雨時期に発生する「前期感染」で、この時期にできる黒点は比較的大きく目立ちやすいのが特徴です。もう一つは8~9月の秋雨の時期に発生する「後期感染」で、こちらは黒点が小さく、表面が盛り上がらない傾向があります。特に8月下旬以降に感染した場合、黒点が小さく平らで、果実が色づいた後も緑色が残ることがあります。これらの症状を早期に見分けることが、適切な対策を行うための第一歩です。

黒点病の病原菌

黒点病の病原菌は、「Diaporthe citri(ディアポルテ・シトリ)」という種類の糸状菌(カビ)です。この病原菌の密度が、症状の現れ方に大きく影響します。病原菌の密度が低い場合、果実の表面には黒点がまばらに見られる程度ですが、密度が高くなると、雨水が流れた跡に沿って涙のような形で黒点が密集して発生するようになります。さらに密度が非常に高くなると、果実の大部分が硬い塊のようになり、深刻な被害を引き起こします。これらの斑点は、単に病原菌が増殖した結果ではなく、みかんが病原菌の侵入から身を守ろうとする反応として現れます。具体的には、病原菌が細胞に侵入すると、みかんはその細胞を茶色く変化させ、これが黒点として見えるようになります。さらに、茶色く変色した細胞の周りの細胞が異常に分裂し、細胞壁が厚く硬くなることで、盛り上がった斑点が形成されます。このメカニズムを理解することは、黒点病の進行を予測し、より効果的な対策を立てる上で非常に重要です。

黒点病の発生原因

黒点病は、主に柑橘類の不要な枝や、剪定後の放置された枝から広がります。これらの枝の中で、病原菌は厳しい冬を乗り越えます。具体的には、果樹内の枯れ枝には「柄子殻」という構造が、地面に置かれた枯れ枝には「子のう殻」という構造ができ、その中で病原菌の胞子が眠りにつきます。春になり、気温が20℃くらいになると、殻の中の胞子が活動を始めます。特に果樹の枯れ枝にある柄子殻は、雨で濡れると糸状の胞子が溢れ出し、雨水によって拡散して周囲の葉や果実に感染します。一方、地面の枯れ枝からは、風によって胞子が広範囲に飛び散り、果実や葉に付着して病気を引き起こします。一度黒点病が発生した場所では、病原菌は約3年間生き続けることがあり、雨が降るたびに新しい胞子を放出し続けるため、注意が必要です。気温が22℃を超えると感染しやすく、葉や果実が長時間湿っていると発病が進むため、6~7月の梅雨時期や8~9月の秋雨時期に多く発生する傾向があります。これらの条件を理解し、適切な時期に対策を行うことが大切です。

みかんの皮の黒い点は「黒点病」だけではない

みかんの皮に黒い点があるからといって、必ずしも黒点病とは限りません。原因は様々で、消費者がみかんを選ぶ際や、農家が病害虫対策をする上で、これらの異なる「黒い点」の種類を知っておくことが重要です。ここでは、黒点病以外の主な黒い点の原因について詳しく説明します。

害虫による黒い点:すす病の発生

みかんの皮の黒い点は、黒点病だけが原因ではありません。害虫が原因の「すす病」も考えられます。例えば、カイガラムシなどの吸汁性害虫がみかんに寄生すると、これらの害虫が出す甘い液体が果実や葉に付着します。この甘い液体を栄養として、すす病菌というカビが繁殖し、表面に黒いすす状の膜や黒い点々を作ります。これらの黒い点は、すす病菌の集まりであり、カイガラムシの排泄物が固まって黒い点に見えることもあります。これは主にみかんの皮に影響を与えるもので、果肉にはあまり影響がないことが多いですが、見た目を悪くし、商品の価値を下げます。すす病は光合成を妨げる可能性もありますが、果実を直接腐らせることは少ないです。

カビによる黒い点:貯蔵中のリスク

みかんを収穫した後や、家庭で保存する際に、湿気の多い場所に長く置いておくと、黒点病とは違うカビが生えて、皮に黒い点や斑点が現れることがあります。特に、風通しが悪く、湿度が高くて暖かい場所でみかんを保存すると、カビが繁殖しやすくなり、果実の表面に黒いカビの塊ができることがあります。このタイプの黒い点は、カビそのものなので、食べる際には注意が必要です。表面に黒いカビが見えるだけでなく、果肉が柔らかくなっていたり、変な臭いがする場合は、安全ではない可能性があるので、食べるのを避けるべきです。

その他の要因による黒い点

みかんの皮に現れる黒い点や色の変化は、黒点病、害虫、カビといった病気や害虫だけが原因ではありません。例えば、みかんが熟していく過程で、自然な生理現象として皮が部分的に黒ずむことがあります。これは特に成熟期によく見られ、果実自体の品質には影響しません。また、栽培環境も影響し、極端な日照りや低温、土壌の栄養バランス、農薬や肥料の種類や使用方法によって、皮に色素が沈着し、黒い点として現れることがあります。これらの点は、果実の中身の品質や安全性に直接影響することは少ないものの、見た目の問題として捉えられることがあります。生産者は、これらの様々な要因を考慮して、より良い栽培方法を追求しています。

みかんの黒い点は食べられる?安全性と見分け方

みかんの皮に黒い点があると、「食べても大丈夫かな?」と心配になるのは当然です。黒い点の原因によって安全性や対処法は異なりますが、多くの場合、ある条件を満たせば安心して食べられます。ここでは、黒い点があるみかんの安全性について、原因別に詳しく説明し、見分けるためのポイントもご紹介します。

黒点病の果実は基本的に食べられる

みかんの皮に黒い点を見つけると、「これって食べても平気?」と不安になりますよね。結論から言うと、もしその黒い点が「カンキツ黒点病」によるものなら、基本的に食べても大丈夫です。黒点病は、みかんやレモンといった柑橘類の表面に黒い斑点ができる病気で、見た目は良くありませんが、果実の中身に悪影響を与えたり、人に有害な物質を作ったりするものではありません。そのため、味や栄養価はほとんど変わらず、黒い部分の皮を取り除けば、問題なく食べられます。ただし、見た目が悪いため、商品価値は下がり、市場に出回ることは少ないかもしれません。食べる前に、腐敗やカビ、その他の異常がないか確認するようにしましょう。

食べるのを避けるべき黒い点と見分け方

一方で、みかんの黒い点が黒点病ではなく、カビが原因の場合は、食べるのを避けるべきです。カビの種類によっては、人体に有害な物質(マイコトキシンなど)を作り出す可能性があり、食中毒や健康被害を引き起こすことがあります。カビによる黒い点は、表面的なシミとは違い、果肉が柔らかくなっていたり、変な臭いがしたり、白い綿のようなカビがはっきりと見えたりします。また、害虫の排泄物によるすす病も、直接的な健康被害は少ないものの、見た目の問題だけでなく、害虫がいる可能性を示しているので、食べる前に注意が必要です。購入時や保存中に、次のような特徴を持つ黒い点を見つけた場合は、安全のために食べるのを控えることをおすすめします。
  • カビがはっきりと生えている(白い綿状、青緑色など)
  • 果実全体または一部が極端に柔らかい
  • 酸っぱい臭いやカビ臭いなど、異臭がする
  • 皮だけでなく、果肉の中まで変色や腐っている
これらのサインを見逃さず、見た目だけでなく、臭いや感触も確かめて判断することが、安全にみかんを味わうための重要なポイントです。

発生した場合の対策:黒点病の防除

みかんの品質を保持し、黒点病の被害を最小限に食い止めるには、総合的な防除計画が不可欠です。中でも、病原菌の根絶と適切な薬剤の使用が重要なポイントとなります。

被害を受けた枝の処理

黒点病の主な感染源は、残念ながら枯れてしまった枝です。そのため、日頃から不要な枝を取り除くことが、病気の蔓延を防ぐ上で非常に大切です。枝を取り除くことで、風通しと日当たりが改善され、病原菌が繁殖しにくい環境を作れます。また、マキ、サンゴジュ、ヒノキといった防風林としてよく使われる木々も、黒点病菌の温床となることがあります。周辺の防風樹の手入れも重要です。無用な枝の発生を抑えるには、適切な剪定を行い、樹木の形を整え、太陽光と風通しを最大限に確保することが基本です。剪定した枝は速やかに処分し、切り株には肥料袋などを被せて胞子の拡散を防ぎましょう。このような対策を講じても黒点病が発生した場合は、農薬の利用を検討します。

有効な薬剤について

黒点病対策には、マンゼブ剤である「ペンコゼブ水和剤」や「ジマンダイセン水和剤」が効果的です。これらの薬剤は植物の表面に均一に広がりやすく、耐雨性にも優れているため、雨の多い時期でも安定した効果が期待できます。さらに、これらの薬剤は黒点病だけでなく、柑橘類に発生しやすい炭疽病やそうか病、さらにはミカンサビダニやチャノキイロアザミウマといった害虫にも効果があるため、一度の散布で複数の問題を解決できます。ただし、これらの薬剤は使用回数に制限があり、通常、最大4回までとなっています。そのため、ローテーション防除として、他の系統の薬剤、例えば「ストロビードライフロアブル」、「ナリアWDG」、「フロンサイドSC」、「ファンタジスタ顆粒水和剤」などを組み合わせて使用することが推奨されます。薬剤を選ぶ際には、ラベルに記載された使用方法、適用病害虫、使用時期、使用回数などを必ず確認し、指示を守って使用しましょう。

農薬散布のコツ

薬剤を散布する際は、製品ラベルに記載されている希釈倍率を守り、均一に散布することが基本です。マンゼブ剤は耐雨性に優れていますが、近年は局地的な豪雨も多いため、過信は禁物です。極端な降雨は薬剤の効果を弱める可能性があります。そのため、ラベルに記載された希釈倍率の範囲内で、できるだけ低倍率で散布することで、効果をより長く維持できる可能性があります。ただし、これは薬剤の特性や気象条件を考慮した上での判断であり、推奨される希釈倍率を超えて使用してはいけません。薬剤の使用前には必ずラベルをよく読み、指示に従って安全に散布しましょう。そうすることで、薬剤の効果を最大限に引き出し、作物への安全性を確保できます。

防除時期の目安

みかんに黒点病が発生すると、外観が大きく損なわれ、販売価格が低下するため、果実への感染を防ぐことが重要です。効果的な対策として、最初の農薬散布は梅雨入り前の5月下旬から6月上旬に行うのがおすすめです。この時期に散布することで、病原菌が活動を始める前に果実を保護できます。初回散布後は、降雨量を常にチェックし、散布後の累積降雨量が約250mmに達した場合、または前回の散布から約1ヶ月経過した場合に、次の散布を実施します。農薬の効果が薄れるタイミングで対策を講じることで、感染リスクを効果的に抑制できます。黒点病に有効な農薬としては、「ペンコゼブ水和剤」、「ジマンダイセン水和剤」、「ストロビードライフロアブル」、「ナリアWDG」、「ファンタジスタ顆粒水和剤」、「フロンサイドSC」などがあります。これらの農薬を順番に使用することで、薬剤耐性が生じるのを防ぎつつ、効果的な防除を継続できます。防除時期に関する具体的な指示は、地域の防除暦や自治体の農業関連部署によって異なる場合があるため、必ず確認してください。農薬を使用する際は、製品ラベルの記載内容をよく読み、使用方法、希釈倍率、使用回数、注意事項を遵守し、正しく散布することが重要です。

消費者向け!みかんの黒い点対策と賢い保存術

みかんの表面に黒い点が見られる理由は様々ですが、消費者が日常生活で黒い点の発生を抑え、より新鮮で安全なみかんを味わうための工夫はあります。ここでは、購入時と自宅での保存方法に焦点を当てて、役立つ情報をご紹介します。

購入時の選び方:良質なみかんを見極めるコツ

みかんの黒い点、特に見た目を悪くする病気やカビを防ぐためには、購入時の注意が不可欠です。家庭でみかんを育てていない場合、新たに黒点病が発生する可能性は低いので、既に問題のあるみかんを選ばないことが重要です。お店でみかんを選ぶ際には、以下の点に注目して、新鮮で健康なものを選びましょう。
  • 色鮮やかで均一な色: 品種本来の色であるオレンジ色や黄色が鮮やかで、全体的に均一に着色しているものを選びましょう。鮮やかな色は、新鮮さの目安となります。
  • 表面の状態をチェック: みかんの表面に、目立つ黒い点、凹凸、傷、カビの兆候(白い綿のようなものや、青緑色の斑点など)がないか丁寧に確認しましょう。特に、黒い点に加え、果皮が柔らかくなっている場合や異臭がする場合は避けるべきです。
  • つやとハリ: 適度なつやがあり、皮にハリがあるみかんは新鮮である可能性が高いです。ただし、過剰に光沢があるものは、人工的なワックスで加工されている場合もあるため、注意が必要です。
  • 箱買いの注意点: 箱入りみかんを購入する際は、可能であれば店員さんに中身を見せてもらい、簡単にチェックすることをおすすめします。底の方に傷んだみかんが隠れていることがあるので、注意して確認しましょう。
これらのポイントを参考にすることで、黒い点のリスクを減らし、より品質の良いみかんを選ぶことができます。

みかんの適切な保存方法:カビの繁殖を抑える

購入したみかんを正しく保存することも、カビの発生や品質の低下を防ぐために非常に大切です。特に、湿度が高く暖かい場所にみかんを置くと、カビが生えやすくなるため注意が必要です。以下の方法で保存することで、みかんをより長く美味しく楽しめます。
  • 冷暗所での保管: みかんは、直射日光を避け、涼しくて暗い場所(冷暗所)で保存するのが最適です。温度変化が少なく、湿度も安定しているため、みかんの保存に適しています。
  • 風通しの良い状態を保つ: 袋に入れたままにせず、カゴや段ボール箱に入れ、みかん同士が密着しないように並べて、風通しを良くすることが大切です。湿気がこもるのを防ぎ、カビが発生するリスクを減らすことができます。
  • 新聞紙で包んで保存: みかんを一つずつ新聞紙で包んで保存すると、新聞紙が余分な湿気を吸収し、乾燥からも守ってくれるため、みかんの鮮度をより長く保てます。
  • 冷蔵庫での保存は避ける: 冷蔵庫に入れると、みかんの皮が硬くなったり、風味が損なわれることがあります。短期間であれば問題ありませんが、長期保存にはおすすめできません。
これらの保存方法を実践することで、購入したみかんの品質を維持し、カビなどの発生を抑え、最後まで美味しく食べることができます。

あわせて防除すべき みかんの病害虫

みかんを栽培する上で、黒点病だけではなく、注意しなければならない病害虫が存在します。適切な時期に防除を行うことで、みかんの品質を維持し、収穫量を確保することが可能です。

そうか病

そうか病は、その名前が示すように、みかんの葉、枝、果実の表面に、まるで「かさぶた」や「いぼ」のような盛り上がった病変が現れる病気です。この病気は、発芽期に、前年に残った病変から雨によって病原菌が広がり、新しい芽や花が散った後の若い果実に感染することで拡大します。そうか病を防ぐためには、剪定時に病変のある葉を枝ごと切り取り、感染源を取り除くことが大切です。また、発芽期に農薬を散布することも効果的です。果実に発生したそうか病には、「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「フロンサイドSC」「ファンタジスタ顆粒水和剤」といった農薬が有効です。これらの農薬は、黒点病の同時防除にも効果があるため、効率的な病害対策に役立ちます。そうか病は、果実の外観を損ね、市場価値を下げるため、早期発見と適切な防除が重要となります。

灰色かび病

灰色かび病は、みかんの花びらに灰色のカビが発生することを特徴とする病害です。この病気が多発すると、花の落下を促進し、結果として実の数が減るという深刻な影響を及ぼします。さらに、発病した花びらが落ちずに果実に付着することで、果実の表面に「かさぶた状の傷」がつき、商品価値が低下する原因となります。また、灰色かび病は収穫後の貯蔵中の果実にも発生し、果実が黒く腐敗し、貯蔵中の損失につながることもあります。この病害は多くの作物で見られ、特に開花期間中に雨が多いと感染・発病しやすくなります。防除対策としては、花が満開になってから散るまでの間に、「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「フロンサイドSC」「ファンタジスタ顆粒水和剤」などの農薬を散布することが推奨されます。これらの農薬を適切な時期に散布することで、灰色かび病の発生を抑え、健全な結実と果実の品質維持に貢献します。

かいよう病

かいよう病は、みかんの葉、枝、果実に特徴的な「コルク状の病斑」を作る細菌性の病気です。この病斑は表面がざらざらして盛り上がり、外観を損ねます。ネーブルやレモンのような特定の柑橘類では、かいよう病の病斑が大きく広がり、果実の市場価値が失われるほどの被害をもたらすことがあります。しかし、温州みかんでは、かいよう病の発生は比較的少なく、病斑も小さいため、ほとんど問題にならないことが多いです。ただし、近年栽培が増えている高糖度の温州みかんは、かいよう病にかかりやすい傾向があるため、注意が必要です。かいよう病は細菌性の病気であるため、効果的な農薬の種類が限られています。そのため、農薬による防除だけでなく、栽培方法による防除が重要になります。具体的には、果実に傷がつかないように風対策をすることや、感染した枝や果実を早期に見つけて、すぐに取り除くことが、病原菌の広がりを防ぐ上で重要です。これらの総合的な対策によって、かいよう病の被害を最小限に抑え、健康な果実の生産を目指します。

ミカンハダニ

ミカンハダニは、さまざまな柑橘類に寄生する一般的な害虫であり、一年を通して活動が見られますが、特に春と秋に個体数が急増する傾向があります。このダニは非常に厄介で、個体数が増加すると風に乗って近くの柑橘類の木に容易に移動し、被害が広範囲に及ぶことがあります。ミカンハダニの幼虫と成虫は、みかんの葉や果実から汁を吸って栄養を奪います。特に果実においては、着色時期以降に多く発生すると、果実の色付きが悪くなり、つやが失われるなど、外観の品質が著しく低下し、結果として商品価値が下がります。数が少ないうちは大きな被害にはつながりませんが、夏季に葉1枚あたり雌成虫が3~4匹以上確認されるようになったら、対策を検討する目安となります。対策方法として、畑にミヤコカブリダニや捕食性昆虫などのもともといる天敵が見られる場合は、それらの種類を確認し、天敵への影響が少ない農薬を選択して散布することが、より効果的な対策につながります。ミカンハダニに効果のある農薬は多数存在しますが、ミカンハダニは薬剤に対する抵抗性を獲得しやすい性質を持っているため、同じ種類の農薬を続けて使用することは避け、異なる種類の農薬を順番に使うなど、薬剤抵抗性管理を考慮した対策計画を立てることが非常に重要です。なお、この記事で紹介した農薬は、2020年9月14日現在、農薬取締法に基づいて登録されているものです。農薬を使用する際は、必ず事前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法、希釈倍率、使用回数、使用上の注意点を守って正しく散布してください。

まとめ

みかんの栽培では、多くの病気が雨によって広がる傾向があり、特に「黒点病」はその発生が多く、果実への影響が大きいため、早めの対策が重要です。農薬は散布後に雨にさらされると、効果が徐々に弱まる性質があります。そのため、雨の量を正確に測り、その情報をもとに農薬を適切な時期に散布することが、効果を維持し、病気の発生を抑えるための鍵となります。農薬の効果を維持することは、黒点病だけでなく、そうか病、灰色かび病、かいよう病といった他の病気や、ミカンハダニなどの害虫の対策にもつながり、総合的な管理につながります。枯れた枝の管理や、雨量計の活用、そして農薬の特性と使用回数を考えた計画的な散布により、みかんの品質と収量を守り、持続可能な農業を目指しましょう。
一方で、消費者の皆様がみかんの皮に黒い点を見つけた場合、その原因は黒点病だけでなく、害虫によるすす病、カビ、あるいは成熟過程や栽培環境によるものなど様々です。多くの場合、これらの黒い点は皮の表面に影響を与えるもので、皮を剥けば中身には影響がなく、美味しく安全に楽しめることがほとんどです。しかし、カビによる黒点や、果肉内部まで変色や腐敗が進んでいる場合は、安全のために食べるのを避けるべきです。黒い点の発生を抑え、安心して美味しいみかんを楽しむためには、購入時の選び方と保存方法が重要です。これらの情報を活用し、生産者と消費者が協力して、高品質なみかんの安定供給と消費拡大に貢献できることを願っています。

質問:黒点病はみかん以外の柑橘類にも発生しますか?

回答:はい、黒点病は温州みかんに多く見られますが、レモンやネーブルなど、他の柑橘類にも発生する一般的な病気です。果実の外観を損ね、商品価値を下げるため、柑橘類全体で注意が必要です。

質問:みかん(レモン)の表面に黒い点が付いていますが、食べても大丈夫でしょうか?

回答:黒点病による黒い点であれば、基本的に食べても問題ありません。黒点病は主に果実の外観に影響を与え、内部の味や栄養価を大きく変えるものではないため、黒い点が付いている部分の皮を取り除けば安全に食べられます。ただし、カビによる黒い点や、果肉まで柔らかくなっている、異臭がする場合は、安全のため食べるのを避けるべきです。購入時や家庭での保存中に見つけた場合は、腐敗や他の異常がないか確認しましょう。

質問:みかんに見られる黒い斑点は、黒点病以外にどのような理由が考えられますか?

回答:みかんの表面に黒い点が現れる原因は一つではありません。黒点病の他に、例えば、カイガラムシといった害虫の排泄物が引き起こす「すす病」という状態や、湿度の高い場所で保管した際に発生する「カビ」などが考えられます。さらに、みかんが熟していく過程で自然に起こる生理的な変化や、栽培方法(農薬や肥料の使用状況など)が影響している可能性もあります。
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