みかん生産地
冬の味覚の代表格、みかん。甘酸っぱくてジューシーな味わいは、老若男女問わず愛されていますよね。この記事では、現時点で入手可能な最新の公式データである2022年の情報に基づき、みかんの生産量ランキングや各産地の特徴をご紹介します。ランキングを参考に、この冬はとっておきのみかんを選んでみませんか?※2023年のみかん生産量の公式データはまだ発表されていないため、ここでは2022年のデータを使用します。
都道府県別みかん生産量ランキング【2022年】
2022年のみかん生産量トップ3は、1位:和歌山県、2位:愛媛県、3位:静岡県という結果になりました。みかんの代表的な産地として知られる和歌山県が、今年も首位を守り、年間15万トンを超えるみかんを生産しています。
主要産地の特色と主力品種
日本には数多くの産地が存在しますが、ここでは生産量上位の和歌山県、愛媛県、静岡県に加えて、独自のブランドを確立している長崎県にスポットを当て、各産地のみかん栽培の特色や代表的な品種をご紹介します。
第1位:和歌山県 - 有田みかんの里
みかん生産量日本一を誇るのが、和歌山県です。温暖な気候と長い日照時間に恵まれた和歌山県は、みかんをはじめとする様々な果物の栽培に適しています。中でも有名なのが有田地方で、「有田みかん」の名は全国に知れ渡っています。有田地方は、温暖な気候、豊富な日照時間に加え、みかんの甘さを大きく左右する7月から8月の降水量が少ないのが特徴です。この時期に適度な乾燥状態になることで、みかんの甘みが凝縮されると言われています。また、有田地方は山が多いため、山の斜面を利用して栽培されています。斜面で栽培することで、みかんの木全体に太陽光が均等に当たり、より甘く美味しいみかんが育ちます。
第2位:愛媛県 - 多彩な品種の宝庫
みかんの生産量で全国2位を誇るのが、愛媛県です。温暖な気候は和歌山県と共通しており、年間平均気温は15度を超えます。加えて、瀬戸内海の恵みであるミネラルを豊富に含んだ土壌が、栄養満点のみかんを育みます。愛媛県の特徴は、何と言ってもその品種の多さ。なんと40種類以上ものみかんが栽培されています。中でも、「紅まどんな」と「甘平(かんぺい)」は、愛媛県オリジナルのブランドとして知られています。「紅まどんな」は、ゼリーのようなとろける食感が特徴で、濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。旬は11月下旬から1月上旬頃。「甘平」は、シャキシャキとした食感と、凝縮された甘さが魅力。1月下旬から3月上旬頃に旬を迎えます。大玉で、その名の通り平たい形をしています。
第3位:静岡県 - 温州みかんの主要産地
みかん生産量で3位にランクインするのは、静岡県です。静岡県は、12月中旬から3月下旬にかけて旬を迎える普通温州みかんの一大産地として知られています。代表的な品種としては、「青島温州」や「寿太郎温州(じゅたろううんしゅう)」などが挙げられます。「青島温州」は、静岡市で発見された品種で、全国的にも広く栽培されています。温州みかんの代表的な品種と言えるでしょう。糖度が高く、酸味が少ないため、まろやかな甘さを楽しめます。「寿太郎温州」は、静岡県沼津市生まれの品種です。青島温州よりも小ぶりで、貯蔵性に優れています。甘みがより濃厚なのが特徴です。
隠れた名産地:長崎県 - 歴史と技術が織りなす美味
長崎県は、知る人ぞ知るみかんの名産地です。みかんの産地といえば、和歌山県や愛媛県がよく知られていますが、長崎県も決して引けを取りません。生産量は全国第5位(令和5年度)で、甘みと酸味のバランスが絶妙な「長崎みかん」は、特産品として多くのファンを魅了しています。長崎県のみかん栽培は、なんと江戸時代から始まったと言われています。長い歴史の中で培われた高度な栽培技術によって、高品質なみかんが全国に出荷されています。長崎県では、「味ロマン」や「長崎の夢」といったブランドみかんが栽培されており、いずれも豊かな甘みが堪能でき、贈り物としても喜ばれます。
品種別みかん生産量ランキング
みかんは品種によって旬の時期や味わいが大きく異なります。ここでは、代表的な品種であるハウスみかん、極早生みかん、早生みかんについて、生産量ランキングとそれぞれの特徴をご紹介します。
ハウスみかん – 夏の贅沢
ハウスみかんの栽培においては、和歌山県は上位に名前が挙がらず、佐賀県がトップ、次いで愛知県、大分県が続きます。秋から冬に親しまれる温州みかんとは異なり、ハウスみかんが最も美味しくなるのは夏です。温度管理された温室で丁寧に育てられたハウスみかんは、甘みが強く、見た目も美しいのが特徴です。
極早生みかん – 爽やかな酸味
鮮やかなオレンジ色ではなく、緑色の果皮が特徴的な極早生みかんは、みかん本来の甘さに加え、爽やかな酸味が感じられるのが魅力です。主な産地は、1位が和歌山県、2位が熊本県、3位が愛媛県となっています。極早生みかんは特定の品種を指すのではなく、収穫時期によって分類される名称です。
早生みかん – 甘みと酸味の調和
極早生みかんの後に市場に出回る早生みかんは、果皮の色が黄色へと変化し、酸味が穏やかになります。主要な産地は、和歌山県が最も多く、愛媛県、熊本県と続きます。10月頃に旬を迎える早生みかんは、甘みと酸味のバランスが絶妙で、両方の風味を堪能できるのが特徴です。
美味しいみかんを育む条件
味が濃く美味しいみかん、味が薄いみかん、酸っぱいみかんなど、みかんの味は様々です。美味しいみかんを育てるためには、気候、日当たり、そして水はけの良さという3つの要素が不可欠です。
条件1:温暖な気候 - 年間平均気温約17℃
美味しいみかんを育てる上で、気候は非常に重要な要素です。気温が低い地域では、みかんの酸味が抜けにくく、十分に甘くならないことがあります。また、極端に気温が低いと、みかんの木自体が枯れてしまう可能性もあります。逆に、気温が高すぎると、みかんに浮皮と呼ばれる状態が発生しやすくなり、安定した結実が難しくなることもあります。年間を通して平均気温が17℃程度で、夜間の気温が極端に下がらない温暖な気候が、美味しいみかん作りのための基本的な条件と言えるでしょう。
条件2:十分な日照時間 - 光合成の促進
みかんは植物であるため、生育には光合成が不可欠です。日光を浴びることで、みかんは養分を作り出します。日当たりの良い場所では光合成が盛んに行われ、より多くの養分が生成されます。この養分が果実にしっかりと行き渡ることで、甘くて美味しいみかんが育ちます。太陽光の強さよりも、より長い時間、均等に葉に光が当たることが重要です。様々な角度から光を受けることで、効率的に光合成を促進し、高品質なみかんを育てることができます。
条件3:良好な排水性 - 水分コントロール
みかんの生育には適度な水分が必要ですが、美味しさを追求する上では、水分量のコントロールが重要になります。水を過剰に吸収すると、みかんが水っぽくなり、糖度が低下してしまう可能性があります。ある程度の厳しさをもって育てることで、みかん本来の甘みとコクを引き出すことができます。雨が降った後でも水が溜まらず、速やかに排水されるような、水はけの良い土壌が不可欠です。
美味しいみかんが育つ場所:太陽を浴びる南向きの傾斜地
美味しいみかんが育つ理想的な場所として挙げられるのは、「太陽光をたっぷりと浴びる、太平洋に面した南向きの傾斜地」です。この地形は、日当たり、水はけ、温暖な気候という、みかん栽培に欠かせない3つの条件を満たしています。
①太陽の恵みと水捌け - 南向き傾斜地の優位性
みかん栽培において、南向きの傾斜地は理想的な場所と言えます。なぜなら、太陽の光を最大限に活用し、光合成を促進できるからです。さらに、雨水が速やかに流れ落ちるため、過剰な水分による根腐れを防ぎ、みかんの生育を助けます。
②温暖な気候と陽光 - 海沿いの立地が重要な理由
海に近い場所は、気温の変化が穏やかになるという利点があります。みかんは、日中の暖かさと夜間の冷え込みの差が小さい環境を好みます。内陸部では気温差が大きくなりがちですが、海沿いではそれが緩和され、みかんにとって理想的な環境が生まれます。また、海面からの反射光もみかんの生育を助ける要素となります。
日本のみかん産地マップ:みかんベルトとは
みかんの生産量が多い地域としては、和歌山県(有田市)、愛媛県(宇和島市)、静岡県(三ケ日)、熊本県(熊本市)、長崎県(西海市)などが挙げられます。これらの地域に加え、佐賀県(唐津市)、広島県(尾道市)、愛知県(蒲郡市)、福岡県(みやま市)、三重県(御浜町)など、太平洋沿岸に位置する地域は「みかんベルト」と呼ばれ、みかん栽培に最適な条件が揃っています。これらの地域は「みかんベルト」と呼ばれ、みかん栽培に最適な条件が揃っています。どの産地を訪れても、山から海を見渡せる、共通の風景が広がっています。
気候変動とみかんのゆくえ:適地予測マップが示す未来
地球温暖化は、みかんの栽培適地にも影響を与えています。そこで、長期的な視点での生産計画を支援するため、詳細な栽培適地予測マップが作成されました。このマップでは、温暖化によって栽培が広がる可能性のある亜熱帯果樹、特にアボカドについても適地予測が行われています。研究の結果、温室効果ガスの排出量によってみかんの生産が大きく左右されることや、アボカドの適地が今世紀半ばには現在の2.5倍以上に拡大する可能性があることが示されました。
地球温暖化とミカン・アボカド栽培適地の変化予測
米などの主要作物と比較して、果樹は気候変動の影響を受けやすく、リンゴは北日本、温州ミカン(以下、ミカン)は西南暖地といったように、主要な産地が限られています。そのため、地球温暖化が進むにつれて、現在のミカン産地が栽培に適さなくなるおそれがあり、深刻な問題となる可能性があります。特にミカン栽培に適した気温は、年平均15~18°Cと幅が狭く、わずかな気温上昇でも大きな影響を受けます。実際、ミカン産地では、日焼けや浮皮といった被害が報告されています。一度植えると長期間にわたり収穫できる果樹の特性を踏まえ、産地ごとに将来の気候変動を考慮した長期的な栽培計画を立てる必要性が高まっています。
詳細な栽培適地予測マップの開発について
農研機構は、今世紀半ばから世紀末にかけてのミカンとアボカドの適地変化を予測し、各産地レベルで適地分布を確認できる詳細なマップを作成しました。この予測結果から、(1)ミカンの適地は徐々に北へ移動するものの、高温化する地域ではアボカド栽培への転換が有効な対策となり得ること、(2)現在のミカン産地を維持するためには、地球規模での温室効果ガス削減が不可欠であること、(3)アボカドは、今世紀半ばには本州沿岸部の一部で栽培可能となり、適地面積が現在の2.5倍以上に拡大する可能性があることが明らかになりました。
今後の展望:温暖化に適応した栽培への転換
地球温暖化が進むと、対策を講じなければ果樹栽培は大きな被害を受ける可能性があります。しかし、産地ごとに適切な品種転換などの対策を実施することで、現在の生産量を維持できるだけでなく、新たな果樹栽培に挑戦することも可能です。品種転換は他の対策に比べハードルが高いものの、特に亜熱帯果樹の安定的な国内生産には、時間をかけて栽培技術を確立していく必要があります。今回開発された詳細なマップを活用し、産地ごとに将来を見据えた栽培計画を検討することが重要です。また、地方自治体によっては、「気候変動適応法」に基づく「地域気候変動適応計画」策定において、この適地予測マップが活用されることも期待されます。
まとめ
ミカンは、私たち日本人の生活に身近な果物です。産地ごとの気候、土壌、栽培方法によって、多種多様なミカンが生まれています。それぞれの特徴を知り、旬の時期に味わうことで、ミカンの魅力をより深く堪能できるでしょう。また、地球温暖化という課題に対し、未来を見据えた取り組みも始まっています。これからも美味しいミカンを味わえるように、私たち一人ひとりが関心を持ち続けることが大切です。
よくある質問
質問1:美味しいみかんの選び方は?
美味しいみかんを選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、皮の色に注目しましょう。色が濃く、光沢があるものがおすすめです。また、へたの部分が小さく、全体的に丸みのある形状をしているものが良いでしょう。実際に手に取って、見た目以上に重量感があるものは、果汁がたっぷりと詰まっている可能性が高いです。
質問2:みかんの適切な保存方法とは?
みかんをより長く美味しく保つためには、風通しの良い、涼しくて暗い場所で保存するのが基本です。箱買いした際は、傷んだみかんがないか確認し、取り除きましょう。その後、新聞紙などを敷いた上に、みかんが互いに重ならないように並べて保存するのがおすすめです。冷蔵庫に入れる場合は、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れるか、ラップで包んで野菜室で保存してください。
質問3:みかんが最も美味しい時期はいつですか?
みかんは種類によって旬の時期が異なります。一般的に広く知られている温州みかんは、10月頃から収穫が始まり、12月頃に最も味が良くなります。ハウスみかんは夏場、極早生みかんは9月頃、早生みかんは10月頃がそれぞれの旬です。それぞれの品種の旬を把握して、色々なみかんを味わってみるのもおすすめです。