健康志向が高まる現代において、低脂肪牛乳は多くの人に選ばれる一方で、「体に悪い」「危険」といったネガティブな噂も耳にします。果たして、これらの噂は真実なのでしょうか?低脂肪牛乳は本当に健康に悪影響を及ぼすのでしょうか?本記事では、低脂肪牛乳に関する様々な噂の真相を徹底的に解明し、そのメリット・デメリット、そして健康への影響について詳しく解説します。科学的な根拠に基づき、低脂肪牛乳を飲むべきか、普通の牛乳を選ぶべきか、あなたの疑問に明確にお答えします。
「低脂肪牛乳は体に悪い」「太る」って本当?論文とデータで徹底検証
「低脂肪牛乳は体に良くない」「太りやすい」といった話を聞くことがありますが、これは必ずしも正しいとは言えません。牛乳アレルギーや乳糖不耐症*の方にとっては、牛乳の成分が体調不良を引き起こす可能性があります。しかし、健康な人が適量を飲む分には、低脂肪牛乳は栄養を補給できる飲み物のひとつと言えるでしょう。
*乳糖不耐症……牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロしたり、下痢をしたりする症状のこと。牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が不足しているために起こると考えられています。
ただし、インターネットやSNSでは、栄養に関する情報が簡略化されて伝わりがちです。その結果、「脂肪=悪」というイメージが広まり、低脂肪牛乳は健康に良いという認識が浸透する一方で、「脂肪が少ない分、かえって体に良くないのでは?」という誤解や、健康効果を疑問視する声も上がっています。実際には、低脂肪牛乳の健康への影響や肥満との関係については、様々な研究データが存在しており、一面的な見方をするのは危険です。
本当に低脂肪牛乳は体に悪いのか、太る原因になるのか、具体的な研究結果を見ていきましょう。2007年にハーバード大学が行った研究では、1日に500g以上の低脂肪ヨーグルトや低脂肪乳を摂取する女性は、そうでない女性に比べて不妊になる確率が85%も高いという結果が報告されました。原因として、乳脂肪分を取り除く過程で、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンなどが失われる一方で、男性ホルモンの一種であるアンドロゲンやインスリン様成長因子1が残ることが考えられています。その結果、低脂肪牛乳の摂取が男性ホルモンの過剰を引き起こし、卵胞の成熟や排卵を妨げる可能性があるのです。妊活中の女性は、低脂肪牛乳の摂取を控えることも検討する価値があるかもしれません。
さらに、ダイエットの視点から見ると、低脂肪牛乳はカロリーが低いので肥満予防に良いというイメージがあるかもしれませんが、意外な研究結果も存在します。カナダのマクマスター大学の研究グループが、21か国、約15万人を対象に9年間追跡調査を行った結果、全脂肪牛乳の方がメタボリックシンドロームの予防効果が高いことが示されました。この調査(日本は含まれておらず、南米・アジア・中東・アフリカなど様々な国を対象)によると、牛乳や乳製品をたくさん摂取する人は、摂取量が少ない人に比べて、2型糖尿病、高血圧、肥満、メタボリックシンドローム、心臓病、脳卒中のリスクが低い傾向にあると報告されています。特に、低脂肪牛乳と全脂肪牛乳を比較した場合、全脂肪牛乳の方がメタボリックシンドロームの予防効果が高いという結果は、低脂肪牛乳が必ずしもダイエットに有効とは限らないことを示唆しています。また、この調査における介入研究では、食事全体のカロリーを制限し、牛乳製品の摂取量を増やすことで、体重や体脂肪が減少することが示されています。さらに、カロリー制限なしで牛乳や乳製品の摂取を増やした場合でも、体に悪い影響はなく、生活習慣病のリスク低下に繋がることも明らかになっています。これらの結果から、減量を考えている場合でも、牛乳や乳製品を制限する必要はなく、むしろ減量効果が期待できる可能性があるという驚くべき事実が浮かび上がってきます。
これらの研究結果は、牛乳が持つ多くの健康効果が、脂肪分に由来する可能性を示唆しています。例えば、乳脂肪に含まれる酪酸には、腸内の炎症を抑え、リーキーガットを防ぐ働きがあると言われています。また、乳脂肪に含まれるフィタン酸には、中性脂肪を減らし、インスリン抵抗性や血糖値を改善する効果があることが示されています。特に、高脂肪乳製品の摂取は、メタボリックシンドローム、糖尿病、心疾患のリスクを低下させる効果があると、複数の研究で認められています。牛乳が健康にもたらす良い影響は、カルシウムなどの栄養素だけでなく、乳脂肪に含まれる特定の成分が重要な役割を果たしていると考えられるでしょう。
低脂肪牛乳のメリットとデメリットを見てみよう
普通の牛乳と低脂肪牛乳を比較する際には、それぞれのメリットとデメリットを把握することが大切です。ここでは、価格、カロリー、健康への影響など、様々な面から低脂肪牛乳の長所と短所を見ていきましょう。
メリット 低脂肪牛乳の良さ
低脂肪牛乳の大きなメリットの一つは、価格が比較的安いことです。同じブランドの普通の牛乳と低脂肪牛乳を比較すると、低脂肪牛乳の方が少し安く販売されていることが多いです。これは、低脂肪牛乳を作る過程で、生乳から乳脂肪分の一部を取り除くためです。取り除かれた乳脂肪分は、バターや生クリームなどの乳製品の原料として活用されます。つまり、低脂肪牛乳を製造することで、メーカーは生乳から低脂肪牛乳だけでなく、他の乳製品も作って利益を得られるため、低脂肪牛乳の価格を抑えることができると考えられます。例えば、1リットルあたりの目安価格として、牛乳が250円程度なのに対し、低脂肪牛乳は200円程度と、毎日牛乳を飲む家庭にとっては、経済的なメリットになるでしょう。
また、低脂肪牛乳は、名前の通りカロリーや脂質が少ないこともメリットです。例えば、明治の「おいしい低脂肪乳」は200ml(紙パック1本)あたり約107kcalなのに対し、「おいしい牛乳」は約137kcalです。同様に脂質も、「おいしい牛乳」が100gあたり7.6gであるのに対し、「おいしい低脂肪乳」は4.1gと、半分近い数値になっています。これらの数値だけを見ると、カロリーや脂質を気にしている人にとって、低脂肪牛乳は魅力的に見えるかもしれません。さらに、一部の成分調整牛乳などでは、脱脂粉乳などを加えて、カルシウムやタンパク質といった栄養価を高めている商品もあります。低脂肪でありながら、必要な栄養素を効率よく摂取したい人にとっては、非常に有利な点と言えるでしょう。実際に、アメリカでは子供の肥満が深刻な問題になっていることから、2005年に米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)が、子供向けのガイドラインで低脂肪牛乳や無脂肪牛乳の摂取を推奨しています。しかし、米国心臓協会(AHA)は、子供の肥満を防ぐために、2歳以上のすべての子どもに対し、乳脂肪分1%以下の低脂肪乳あるいは無脂肪乳の摂取を推奨しましたが、その後の報告では、飲んだ牛乳の種類と体重との間に関連性はなく、むしろ低脂肪乳や無脂肪乳を飲んでいる子どもの方が、全乳を飲んでいる子どもよりもBMIが高いという結果も示されています。これは、カロリーコントロールと栄養摂取の両立を目指す上で、低脂肪牛乳の有効性を示唆する一方で、単に低脂肪であれば肥満を予防できるという単純な結論には至らないことを示しています。
デメリット 低脂肪牛乳の注意点
しかしながら、低脂肪牛乳には留意すべき点も存在します。特に注目すべきは、先行研究で示唆されている健康への影響です。具体例として、2007年のハーバード大学の研究では、低脂肪乳の過剰摂取が女性の妊娠に影響を与える可能性が指摘されました。その原因として、製造過程で乳脂肪と共に女性ホルモンが失われる一方で、男性ホルモンに似た物質が残存し、ホルモンバランスを崩すことが考えられています。また、カナダのマクマスター大学が行った大規模な追跡調査では、肥満やメタボリックシンドロームの予防効果において、低脂肪牛乳よりも全脂肪牛乳の方が効果的であるという結果が出ています。この研究は、牛乳の健康効果の多くが、乳脂肪に含まれる酪酸やフィタン酸といった成分によるものである可能性を示唆しており、低脂肪牛乳ではこれらの恩恵を十分に得られない可能性があることを示唆しています。
風味の面では、低脂肪牛乳は好みが分かれることがあります。普段から普通の牛乳や豆乳を愛飲している方にとって、低脂肪牛乳は「味が薄い」「コクがない」と感じられることがあります。これは、乳脂肪が少ないため、牛乳特有の濃厚さやクリーミーさが損なわれるためです。しかし、逆に牛乳の濃さや風味が苦手な方にとっては、さっぱりとした低脂肪牛乳の方が飲みやすいと感じるかもしれません。このように、味の感じ方は人それぞれであり、一概にデメリットとは言えませんが、牛乳に濃厚な風味を求める方には、物足りないと感じられる可能性があります。
全体的に見ると、低脂肪牛乳の利点は、価格が手頃であることと、カロリーや脂質が少ないことですが、健康への影響に関しては、特に妊娠への影響や肥満予防の観点から、全脂肪乳と比較して優位性を示す研究結果は少ないのが現状です。健康効果の多くが乳脂肪に由来すると考えられるため、健康面を重視するならば、必ずしも低脂肪牛乳が最適な選択とは限りません。この点を理解した上で、選択することが大切です。
低脂肪牛乳がお手頃な理由
低脂肪牛乳が一般的な牛乳よりも安価な理由は、製造プロセスと利益構造にあります。低脂肪牛乳は、生乳から乳脂肪分を取り除くことで製造されます。この取り除かれた乳脂肪分は、バター、チーズ、生クリームなど、付加価値の高い乳製品の原料として活用されるため、製造業者は低脂肪牛乳以外からも収益を得ることができます。
つまり、「低脂肪牛乳を製造することで、生乳を最大限に活用し、低脂肪牛乳だけでなく、他の乳製品からも利益を上げられる」というビジネスモデルが成立するため、低脂肪牛乳自体の価格を抑えることが可能です。このように、原料の有効活用と多様な製品展開による収益性の向上が、低脂肪牛乳の低価格を支えていると言えるでしょう。
参考までに、1リットルあたりの価格は、一般的な牛乳が約250円程度であるのに対し、低脂肪牛乳は約200円程度と、価格差が見られます。牛乳を日常的に消費する家庭にとって、この価格差は年間で見ると大きな節約につながるため、経済性を重視する消費者にとって魅力的な選択肢となります。
低脂肪牛乳の添加物事情
一般的に販売されている低脂肪牛乳の多くは、食品添加物を使用していません。低脂肪牛乳は、「生乳から脂肪分を取り除いた製品」と定義されており、原材料表示には生乳以外の記載がないことがほとんどです。そのため、基本的には、生乳以外の成分や添加物を加えることなく製造されています。
ただし、製品によっては、風味を調整したり、栄養価を高めるために、食品添加物が使用されている場合があります。例えば、ビタミンDやカルシウムを強化したもの、あるいは風味を付加した「乳飲料」に分類される製品では、添加物が含まれていることがあります。
そのため、特定の食品添加物を避けたい場合や、シンプルな原材料の製品を選びたい場合は、購入前に製品のラベル(成分表示や原材料表示)を丁寧に確認することが重要です。不明な点があれば、製造元に直接問い合わせて詳しく確認することをお勧めします。
「低脂肪牛乳」と「牛乳」の違い
低脂肪牛乳と一般的な牛乳の主な違いは、「乳脂肪分の量」です。この乳脂肪分の違いが、風味、カロリー、そして健康への影響に影響を与えます。さらに、日本の牛乳に関する法的な分類を理解することも重要です。
低脂肪牛乳とは、生乳を原料とし、乳脂肪分が通常の牛乳に比べて「100mlあたり1.5g以上低減」されているか、「25%以上低減」されているものを指します。具体的には、乳脂肪分を0.5%〜1.5%に調整しています。これは、生乳を遠心分離にかけることで、乳脂肪分の一部を取り除くという製法によって実現されます。乳脂肪分が少ないため、カロリーも低くなりますが、カルシウムなどの他の栄養素は通常の牛乳とほぼ同程度含まれています。
一方、「牛乳」として販売されている製品は、生乳を殺菌しただけのものを指し、乳脂肪分の調整は行われていません。乳等省令により、乳脂肪分が3.0%以上であることが定められており、無脂乳固形分は8.0%以上と定められています。これにより、牛乳本来の濃厚な風味とコクが保たれています。
「低脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」の種類とそれぞれの違い
スーパーなどでよく見かける「牛乳」ですが、低脂肪牛乳以外にも、「成分調整牛乳」「無脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」など、様々な種類があります。これらの違いは、主に乳脂肪分の量と、原料が生乳100%か、または他の乳製品や成分が加えられているかによって決まります。これらの種類分けは、日本の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、通称「乳等省令」によって細かく規定されています。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
まず、牛乳(成分無調整牛乳)は、生乳を加熱殺菌しただけのものです。乳成分の調整は一切行っていません。乳脂肪分は3.0%以上、無脂乳固形分は8.0%以上と定められており、生乳本来の風味と栄養がそのまま味わえます。
次に、成分調整牛乳は、生乳から水分、乳脂肪分、ミネラルなど、乳成分の一部を取り除いて成分を調整したものです。乳脂肪分の基準は特にありませんが、特定の乳成分を減らしたり増やしたりすることで、消費者のニーズに合わせた商品になっています。例えば、さっぱりとした味わいを求める人向けに、乳脂肪分を調整した製品などがあります。
そして、今回のテーマである低脂肪牛乳は、成分調整牛乳の一種で、生乳から乳脂肪分の一部を遠心分離によって減らしたものです。乳脂肪分は0.5%以上1.5%以下と定められています。これにより、カロリーや脂質を抑えながらも、牛乳の主要な栄養素であるカルシウムなどは維持されています。
さらに乳脂肪分が少ないものとして、無脂肪牛乳があります。これは、生乳からほとんどすべての乳脂肪を取り除いたもので、乳脂肪分が0.5%以下と定められています。非常に低カロリー・低脂質ですが、牛乳特有のコクはあまり感じられません。
加工乳は、生乳や牛乳に脱脂粉乳、クリーム、バターなどの乳製品を加えて作られたものです。牛乳や乳製品以外のものは加えられません。例えば、乳固形分を増やすことで、牛乳よりも濃厚な風味や栄養価を高めている製品があります。加工乳には、クリームやバター・脱脂粉乳が加えられており、低脂肪加工乳の場合、乳脂肪分は100mlあたり0.5g〜1.5g以下という条件があります。
最後に、乳飲料は、乳製品や生乳・牛乳などを主な原料としながらも、ビタミン、ミネラル、果汁、コーヒー、香料など、乳製品以外の成分も加えたものです。牛乳をベースにした飲み物という位置づけで、牛乳そのものとは異なります。栄養を強化したものや、嗜好性の高い製品が多く、乳飲料には牛乳の成分以外の原料も使われているため、栄養強化のためにカルシウムや鉄分を加えたり、コーヒーや果汁、糖分を加えたりと、牛乳というよりも嗜好品に近いといえます。
このように、牛乳といっても、その原料、乳脂肪分の量、そして加えられている成分によって様々な種類に分けられます。それぞれの特徴を知ることで、自分の目的や好みに合ったものを選べるようになります。低脂肪牛乳だと思って買ったら、加工乳だったというような間違いを防ぐためにも、購入前に商品の成分表示をよく確認するようにしましょう。
低脂肪牛乳と牛乳、どちらが良い?
低脂肪牛乳と牛乳のどちらが良いかは、簡単には言えません。それぞれの製品が持つ栄養成分、価格、そして個人の健康状態、目的、ライフスタイルによって最適な選択肢は変わってきます。ここでは、それぞれの製品がどんな人におすすめできるのかを説明します。
▼低脂肪牛乳と牛乳の栄養成分(100gあたりの目安)
普通牛乳は100gあたり約67kcalで、たんぱく質は3.3g、脂質は3.8g、炭水化物は4.8g含まれます。カルシウムは約110mg、ビタミンB2は0.15mg、ビタミンAは38μgRAE、コレステロールは約12mgです。
一方、低脂肪牛乳(脂肪分0.5〜1.5%)は100gあたり約46kcalとカロリーが低く、たんぱく質は3.4g、脂質は1.0〜1.5g、炭水化物は約5.0gです。カルシウムは普通牛乳と同じく約110mg含まれますが、ビタミンAは20〜30μgRAEとやや少なめで、コレステロールも4〜5mgと低くなっています。
「低脂肪牛乳」がおすすめなのはこんな人
- カロリーや脂質の摂取量を抑えたい人:ダイエットをしている方や、脂質制限が必要な方には、低脂肪牛乳は普通の牛乳に比べてカロリーや脂質が少ないのでおすすめです。例えば、200mlあたりのカロリーは普通の牛乳が約137kcalなのに対し、低脂肪牛乳は約107kcalと低くなっています。脂質も、100gあたりで普通の牛乳の約半分程度に抑えられています。
- 牛乳の濃厚な味が苦手な人:低脂肪牛乳は乳脂肪分が少ないため、味がさっぱりとしています。普通の牛乳のコクや濃さが苦手な人には飲みやすく感じるでしょう。運動後にさっぱりと飲みたい時にもぴったりです。
- 食費を節約したい人:先述したように、低脂肪牛乳は製造コストの関係で、普通の牛乳よりも安く販売されていることが多いです。毎日牛乳を飲む家庭では、長期的に見ると経済的なメリットが大きくなります。
- アメリカの小児肥満対策を参考にしたい保護者:アメリカでは子供の肥満が問題になっているため、2005年に米国小児科学会が子供向けのガイドラインで低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を推奨しました。これは、成長に必要な栄養を摂りながら、過剰なカロリー摂取を避けるための選択肢として有効と考えられています。
「牛乳」がおすすめなのはこんな人
- 牛乳本来の風味やコクを楽しみたい人:乳脂肪分が豊富に含まれているため、牛乳ならではの濃厚な味わいやクリーミーな口当たりを楽しみたい人には、普通の牛乳がおすすめです。コーヒーや紅茶に入れる際にも、より豊かな風味をプラスできます。
- 健康効果として乳脂肪分の恩恵を受けたい人:研究によっては、乳脂肪分に含まれる酪酸やフィタン酸などの成分が、腸内環境の改善や中性脂肪の減少、インスリン抵抗性の改善といった健康効果をもたらす可能性が示唆されています。特に高脂肪乳製品の摂取がメタボリックシンドロームや糖尿病、心疾患のリスク低下と関連するという報告もあり、これらの健康効果を期待する人には、全脂肪牛乳が良いでしょう。
- 妊活中の女性:2007年のハーバード大学の研究では、低脂肪乳製品の過剰摂取が女性の不妊率を高める可能性が指摘されています。そのため、妊活を意識している女性は、全脂肪乳製品の摂取を検討したり、乳製品の摂取量を見直したりすることが推奨されます。
- 体重減少のために牛乳・乳製品の摂取を控えていた人:カナダ・マクマスター大学の研究では、食事全体のエネルギー摂取量を制限し、牛乳製品の摂取量を増やすことで体重や体脂肪量が減少する可能性が示されました。減量を目的としている場合でも、牛乳や乳製品を我慢する必要はなく、むしろ適切な摂取が減量効果につながる可能性もあるため、積極的に取り入れることを検討してみると良いでしょう。
まとめ
低脂肪牛乳は「体に良くない」「太りやすい」といったイメージを持たれがちですが、必ずしもそうとは限りません。しかし、いくつかの研究では、低脂肪乳製品を摂りすぎると女性の妊娠に影響が出たり、肥満や生活習慣病の予防効果で全脂肪乳の方が優れているという結果も出ています。これは、牛乳に含まれる健康に良い成分の多くが乳脂肪に含まれている可能性があることを示しており、脂肪が少ないから良い、悪いと簡単に判断できないことを意味しています。
低脂肪牛乳の魅力は、手頃な価格とカロリー・脂質が低いことです。特に、カロリーや脂質を抑えたい人、値段を重視する人、あっさりした味が好きな人にはおすすめです。一方で、牛乳本来の濃厚な味が好きな人や、乳脂肪に含まれる健康効果を期待する人、妊娠を希望する女性には全脂肪乳の方が適しているかもしれません。
日本には、「牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」など、様々な種類の牛乳があり、乳脂肪の割合や原料、添加物の有無などが異なります。それぞれの違いを理解し、自分の健康状態、目的、好みに合わせて最適な牛乳を選ぶことが大切です。低脂肪牛乳は優れた選択肢の一つですが、その特徴をよく理解し、バランスの取れた食生活に取り入れることが健康維持の秘訣です。
低脂肪牛乳が健康に良くないとされる研究結果とは?
2007年のハーバード大学の研究によると、1日に500g以上の低脂肪ヨーグルトや低脂肪乳を摂取する女性は、そうでない女性に比べて妊娠しにくい割合が85%も高くなるという結果が出ています。これは、脂肪分を取り除く過程で女性ホルモンが失われ、男性ホルモンが増えることで排卵が妨げられる可能性があることを示唆しています。また、カナダのマクマスター大学が行った大規模な調査では、低脂肪牛乳よりも全脂肪牛乳の方が、生活習慣病を予防する効果が高いことが分かっています。
低脂肪牛乳が普通の牛乳より安い理由は何ですか?
低脂肪牛乳は、生乳から乳脂肪分を取り除いて作られますが、取り除かれた乳脂肪分はバターやチーズといった価値の高い乳製品の原料として再利用されます。そのため、メーカーは生乳から低脂肪牛乳だけでなく、他の製品でも利益を得られるため、低脂肪牛乳自体の価格を安く抑えることができるのです。
低脂肪牛乳はダイエットに効果がありますか?
低脂肪牛乳は、普通の牛乳に比べてカロリーや脂質が低いというメリットがありますが、必ずしもダイエットに効果があるとは言えません。カナダのマクマスター大学の研究では、全脂肪乳の方が生活習慣病の予防効果が高いという結果が出ており、乳製品の健康効果は乳脂肪分が重要である可能性が示唆されています。ダイエットをする場合でも、牛乳や乳製品を制限するのではなく、適切な量を摂取することで体重や体脂肪を減らす効果が期待できます。
低脂肪牛乳には添加物が含まれている?
一般的に、低脂肪牛乳は生乳から乳脂肪分を減らしたもので、基本的には食品添加物は使用されていません。多くの場合、原材料表示には生乳のみが記載されています。しかし、製品によっては風味や栄養価を高めるために添加物が加えられていることがあるため、気になる方は製品の表示をしっかり確認しましょう。
低脂肪牛乳と普通の牛乳、どちらが良いか悩んでいます。選び方のポイントは?
どちらを選ぶかは、あなたの目的や健康状態によって変わります。カロリーや脂質を控えたい、さっぱりした味が好み、または食費を抑えたい場合は、低脂肪牛乳がおすすめです。一方、牛乳本来の濃厚な味わいを楽しみたい、乳脂肪に含まれる健康効果を期待したい(特に高脂肪乳製品のメタボリックシンドロームや心疾患リスク軽減効果)、あるいは妊娠を考えている女性には、普通の牛乳が良いかもしれません。それぞれのメリットとデメリットを考慮して、あなたのライフスタイルに合った方を選びましょう。
乳製品は糖尿病のリスクを高める?
牛乳には炭水化物が含まれていますが、牛乳やヨーグルトのGI値は27と低く、低GI食品に分類されます(一般的にGI値55以下の食品が低GI食品とされます)。2019年の研究では、「日本人において、低GIおよび低GL(GIに糖質の割合を掛けた値)の食品を多く摂取するほど、糖尿病の発症リスクが低下する」と報告されています。さらに、欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で発表された研究によると、高脂肪乳製品の摂取量が最も多い人(1日8回以上)は、最も少ない人(1日1本以下)に比べて2型糖尿病のリスクが23%低いという結果が出ています。これらのことから、牛乳および乳製品は糖尿病に対してプラスの影響を与える可能性があると考えられます。ただし、「高脂肪乳製品」の方が効果が高いことから、低脂肪牛乳よりも普通の牛乳の方が適しているかもしれません。また、糖分などが添加された加工乳やヨーグルトは、糖尿病のリスクが高い方にとってはマイナスの影響の方が大きいため、乳製品なら何でも良いというわけではありません。
牛乳を飲むとがんのリスクは高まる?
牛乳に関する研究を見ると、がん予防に有効であるという説と、がんの発症リスクを高めるという説の両方が存在します。この理由の一つに、牛乳に含まれる「インスリン様成長因子1(IGF-1)」というホルモンが関係しています。このホルモンは細胞の成長と増殖を促進する役割があり、健康維持や成長に不可欠ですが、過剰に摂取すると異常な細胞増殖を引き起こす可能性も指摘されています。これががん化の一因となり、牛乳の過剰摂取ががん発症のリスクを高めると考えられる要因の一つです。例えば、4万3千人を対象とした調査では、乳製品の摂取量が増えるほど前立腺がんのリスクが高まることが示されました。さらに、前立腺がんの進行度についても同様の結果が得られています。つまり、1日1杯程度の牛乳であれば良い効果が期待できますが、過剰に摂取した場合はがん発症のリスクが高まる可能性があると考えられます。