初夏の訪れを告げる、甘くみずみずしい枇杷。鮮やかなオレンジ色の果実は、見た目にも涼やかで、食欲をそそりますよね。庭先で実る枇杷を心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。しかし、枇杷は収穫時期が短く、あっという間に旬が終わってしまうことも。せっかくなら、一番美味しい時期に味わいたいものです。この記事では、枇杷の旬の時期や、おいしい枇杷を選ぶためのポイントを詳しく解説します。旬の味覚を逃さず、枇杷の魅力を存分に堪能しましょう。
びわとは?基本情報と特徴
びわは、バラ科に属するビワ属の常緑高木です。学名は「Eriobotrya japonica」、英語では「loquat」と呼ばれます。原産地は日本や中国で、甘くみずみずしい果実が実ることから、古くから親しまれてきました。庭木としても人気があり、初夏の訪れを感じさせる果物として愛されています。
びわの木の高さは通常2~5メートル程度まで成長し、生育は比較的早いのが特徴です。葉は大きく、長さ20センチメートルほどで、厚みがあり、濃い緑色をしています。冬の12月から2月頃には、小さくて可愛らしい白い花をたくさん咲かせます。
びわの花言葉は、「治療」や「ひそかな告白」などがあります。「治療」という花言葉は、びわの種や葉が昔から薬として利用されてきたことに由来します。「ひそかな告白」は、ひっそりと咲く花の様子からイメージされたと言われています。
びわの栽培スケジュール
びわを栽培する際の年間スケジュールは、おおよそ以下の通りです。
- 植え付け・植え替え:2月~3月中旬
- 施肥:(鉢植え)2月・6月・9月 / (地植え)2月
- 収穫:6月
- 剪定:8月~9月
- 開花:12月~翌年2月
びわの品種:代表的な種類と特徴
びわには様々な品種が存在し、それぞれに果実の味や大きさに違いがあります。ここでは、代表的な品種をご紹介します。
- 田中びわ:びわの代表的な品種の一つで、甘味と酸味のバランスが良く、大きな果実が特徴です。
- 茂木びわ:比較的小ぶりな実で、強い甘みが特徴です。
- 大房びわ:果汁が多くジューシーな果実が実ります。主に千葉県で栽培されており、「房総びわ」という名でも知られています。
- 長崎早生びわ:甘くてジューシーな実が特徴ですが、寒さに弱い品種です。ハウス栽培と露地栽培で旬の時期が異なります。
びわの収穫時期:いつが食べごろ?
びわの収穫時期は、品種や栽培地域、栽培方法によって異なりますが、一般的には5月中旬から6月中旬頃が目安とされています。市場に出回るのは、おおよそ5月から7月頃までです。この時期はびわの実が十分に熟し、最も美味しく味わえる時期です。ただし、天候の影響によって収穫時期が多少前後することもあります。
長崎県産のびわは、総称して「長崎びわ」と呼ばれています。ハウス栽培の収穫時期は2月~4月頃、露地栽培の収穫時期は5月~6月頃です。千葉県産のびわは、「房州びわ」と呼ばれ、ハウス栽培では4月末~5月末頃、露地栽培では5月末~6月末頃が旬となります。
これらの情報を総合的に考えると、びわの最も美味しい旬の時期は、ハウス栽培と露地栽培の収穫時期を考慮して、5月中旬頃と言えるでしょう。
完熟びわの見分け方:収穫サインを見逃さない
びわが収穫時期を迎えたかどうかを見極めるには、実の色と硬さを確認することが重要です。熟したびわは、鮮やかな黄橙色へと変化し、触るとわずかに柔らかさを感じます。また、甘く芳醇な香りも強くなってきます。未熟なびわは緑色がかっていて硬く、香りも弱いため、これらの特徴と見分けましょう。収穫のタイミングとしては、実をそっと押してみて、少し弾力を感じる程度が目安となります。新鮮なびわは表面にハリがありますが、鮮度が落ち始めるとハリが失われていきます。
びわは収穫後に追熟しない果物なので、しっかりと熟してから収穫することが大切です。
また、全体的にふっくらとしていて、表面に細かい毛(産毛)が残っているものが新鮮な証拠です。産毛が少ない、または無いものは、熟しすぎている可能性があるため避けましょう。
見た目の左右対称性も確認しましょう。形が不揃いなびわは、生育過程で栄養バランスが崩れた可能性があり、味が均一でない場合があります。
びわの軸についているヘタの状態も重要です。ヘタがピンとしていて、青々としているものが理想的です。ヘタがしおれていたり、元気がない場合は、果肉がパサついていたり、甘みが少ないことがあるので注意しましょう。
びわの栄養と食べ方:旬の味覚を堪能する
びわの果肉には、ベータカロテン、β-クリプトキサンチン、そしてポリフェノールの一種であるクロロゲン酸といった栄養素が豊富に含まれています。さらに、びわの種子にはアミグダリンという成分が含まれています。
ベータカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を維持し、細胞の機能をサポートします。ビタミンAに変換されなかったベータカロテンも、体内で抗酸化作用や免疫力強化作用を発揮し、健康維持に貢献します。
β-クリプトキサンチンは、みかん、パパイヤ、かぼちゃなどに含まれる天然の色素成分です。ベータカロテンと同様に、体内でビタミンAに変換され、免疫力向上をサポートします。免疫力が高まることで、風邪の予防や、高血圧、心筋梗塞などの生活習慣病に対する効果が期待されています。
クロロゲン酸は、ポリフェノールの一種で、血糖値の上昇を穏やかにする作用や、脂肪が体内に蓄積されるのを防ぐ効果が期待できます。これらの作用により、内臓脂肪の蓄積を抑制する効果が期待されています。
びわの種子に含まれるアミグダリンには、咳を鎮める効果があると言われています。しかし、アミグダリンは過剰に摂取すると有害となる可能性もあるため、摂取量には注意が必要です。
びわの良さを味わえる食べ方
びわ本来の美味しさを最大限に楽しむには、生のまま食べるのが一番おすすめです。旬の時期に収穫されたびわは、甘みが強く、みずみずしく、絶妙なバランスの味わいが楽しめます。軽く水洗いした後、皮を剥いてそのままお召し上がりください。皮を剥く際は、びわのお尻の部分から軸に向かって剥くと、比較的スムーズに剥けます。手で剥くのが難しい場合は、果物ナイフを使用しても良いでしょう。剥いたびわは、時間が経つと変色することがあるため、すぐに食べない場合は、レモン水や塩水に浸すと変色を抑えることができます。
びわは、ジャムやコンポートにするのもおすすめです。ジャムにしてパンに塗ったり、コンポートにしてヨーグルトやゼリーに添えれば、生のびわとはまた違った風味や食感を楽しむことができます。また、日持ちが良くなるため、旬の時期を過ぎてもびわの風味を長く楽しむことができます。
お酒好きの方には、びわ酒もおすすめです。びわ酒は長期保存が可能であるだけでなく、種子に含まれるアミグダリンの毒性を軽減できるというメリットもあります。ただし、アミグダリンは微量ながらも含まれているため、飲み過ぎには注意が必要です。
びわの保存方法:鮮度を保つためのポイント
びわは収穫後に追熟しない果物なので、購入後はなるべく早く食べるのが理想的です。しかし、どうしても食べきれない場合もあるかと思います。
そこで、びわの鮮度をできるだけ長く保つための保存方法をご紹介します。重要なポイントは2つあります。
びわは温暖な気候を好む果物であり、常温での保存が適しています。ただし、びわの皮はデリケートで傷つきやすいため、取り扱いには注意が必要です。少しでも傷がついたり、潰れてしまうと、そこから傷みが進行してしまいます。また、高温多湿や直射日光、寒さにも弱いため、これらの環境下での保存は避けるようにしましょう。冷蔵庫での保存も、低温により風味が損なわれる可能性があるため、おすすめできません。常温で保存する際は、傷や潰れがないか確認し、直射日光を避けた風通しの良い場所で保管しましょう。この方法で、2~3日程度は保存できます。
長期間保存したい場合は、冷凍保存がおすすめです。冷蔵保存は不向きですが、冷凍保存であれば、鮮度をある程度維持することができます。急速冷凍することで、びわの組織破壊を最小限に抑え、風味の劣化を遅らせることが可能です。(保存状態にもよりますが)1~2ヶ月程度の保存が可能です。ただし、冷凍保存すると、どうしても甘みが多少失われてしまう点には注意が必要です。
びわを冷凍保存する手順は以下の通りです。
- びわを丁寧に水洗いします。
- キッチンペーパーなどで水気をしっかりと拭き取ります。
- 皮を剥き、種を取り除きます。
- びわ同士がくっつかないように、一つずつラップで丁寧に包みます。
- ラップで包んだびわを、冷凍保存用の密閉袋に入れます。
- 冷凍庫で急速冷凍します。
冷凍したびわを解凍する際は、常温で自然解凍すると解凍しすぎてしまうことがあるため、冷蔵庫に移してゆっくりと解凍するのがおすすめです。
びわの収穫方法:注意点とポイント
びわを収穫する際には、実を傷つけないように丁寧に扱うことが大切です。優しく摘み取るように収穫することで、美味しいびわを長く楽しむことができます。びわは日持ちがあまりしないため、収穫後は冷蔵庫や風通しの良い場所で保管し、2~3日を目安に食べきるようにしましょう。
もし大量に収穫して食べきれない場合は、ジャムやコンポート、果実酒などに加工して保存するのがおすすめです。
びわの株の手入れ:収穫後の作業
びわの収穫が終わった後は、株の剪定や肥料やりなど、来年の収穫に向けての手入れを行いましょう。適切な手入れを行うことで、翌年も美味しいびわを実らせることができます。
びわの栽培環境:最適な場所と条件
びわは、日当たりの良い場所を好みます。日照不足の場所でも生育は可能ですが、実付きが悪くなったり、実が甘くならなかったりする可能性があります。庭植えする場合は、日当たりの良い場所を選んで植え付けましょう。
びわは、-2℃を下回るような寒冷地での栽培には適していません。一般的に、関東地方以西の温暖な地域での栽培が推奨されます。寒冷地で栽培する場合は、鉢植えにして冬場は室内で管理したり、耐寒性の強い品種を選ぶなどの工夫が必要です。
びわに適した土壌:鉢植えと庭植え、理想的な土選び
びわ栽培では、水はけの良い土を選ぶことが重要です。土壌の水分が多すぎると根腐れを引き起こし、生育不良や枯死の原因となります。
【鉢植えの場合】
基本の配合は、小粒の赤玉土を7~8割、腐葉土を2~3割です。市販の果樹用培養土も利用できます。
【庭植えの場合】
植え付けを行う前に、土壌を深く耕し、排水性を高めておくことが大切です。
びわの水やり:乾燥気味に育てるコツ
びわを健康に育てるためには、やや乾燥気味に管理することがポイントです。
【鉢植えの場合】
土の表面が乾燥しているのを確認してから水を与えます。鉢底から水が十分に流れ出るまで、たっぷりと水やりを行いましょう。特に夏場は、気温の低い朝夕に水やりを行うのが理想的です。日中の水やりは、土中の温度を上昇させ、根腐れのリスクを高めるため避けましょう。冬場は、気温の高い日中に水やりを行います。毎日の水やりは控えめにしましょう。
【庭植えの場合】
基本的に、自然の降雨に任せて育てます。ただし、夏の時期に日照りが長く続く場合は、適宜水を与えてください。
びわの施肥:肥料の種類とタイミング
びわの肥料には、庭植え、鉢植えどちらの場合も有機質肥料または化成肥料(速効性)を使用します。適切な施肥は、実付きを良くし、果実の甘みを増す効果があります。
【鉢植えの場合】
肥料は、2月、6月(収穫後)、9月の年3回施します。2月、6月、9月の追肥には、肥料効果が約2~3ヶ月持続する緩効性肥料が便利です。または、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)に加え、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウム、有機成分、微量要素などがバランス良く配合された肥料もおすすめです。置肥タイプであれば、株元から少し離れた場所に置くだけで効果を発揮します。
【庭植えの場合】
肥料は2月に施します。効果がゆっくりと持続する有機質肥料が適しています。堆肥と肥料成分がペレット状に配合された肥料も使いやすいでしょう。または、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)に加え、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウム、有機成分、微量要素などがバランス良く配合された肥料もおすすめです。置肥タイプであれば、株元から少し離れた場所に置くだけで効果を発揮します。
びわの植え付け:苗木の選び方と植え付け方法
びわの植え付けに適した時期は、2月~3月中旬頃です。厳寒期の植え付けは避け、気温が上がり始めるのを待ちましょう。びわは根が浅く張る性質があるため、植え付けの際は丁寧に作業を行います。
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を土に混ぜ込んでおくと良いでしょう。
びわの苗木の選び方
元気なびわの苗を選ぶには、まず幹の太さを確認しましょう。太くしっかりとした幹で、生き生きとした葉や新しい芽がたくさん出ているものがおすすめです。逆に、枝が不自然に伸びていたり、木の表面の艶がなく状態が悪かったり、樹皮が剥がれているものは避けるようにしましょう。
びわの植え替え:頻度と時期、ポイント
鉢植えでびわを育てている場合は、定期的な植え替えを行うことが大切です。
植えかえの頻度
植え替えの頻度は、鉢のサイズやびわの成長具合によって変わりますが、一般的には2~3年に一度を目安に行いましょう。土を新しくすることで根詰まりを予防し、びわが健康に育つように促します。もし大きさを維持したい場合は、同じサイズの鉢に植え替えることも可能です。
植えかえの時期
植え替えに最適な時期は、3月から4月にかけてです。
植え替え時の注意点
枇杷を丁寧に掘り起こし、根を傷つけないように古い土を払い落とします。傷んだ根があれば取り除きましょう。植え付けの際に根がしっかりと広がるように意識することが大切です。
びわが実らない原因と対策
びわは苗木から育てた場合、実をつけるまでに通常2~3年かかります。しかし、十分に育っているはずなのに実がならない場合は、いくつかの原因が考えられます。
原因1:日照不足
びわの実がつきにくい原因として、日当たりの悪さが考えられます。十分に日が当たる場所でも、枝葉が密集して内部まで日光が届いていない可能性があります。
【日照不足の対策】
剪定を行い、枝を間引いて、株の内側までしっかりと日光と風が通るようにしましょう。
原因2:寒さの影響
もし、びわの木に実がならない、または実が途中で落ちてしまう場合、寒さが原因かもしれません。びわ自体は比較的寒さに強い植物ですが、花や蕾は-2℃を下回るような低温にさらされると、枯れてしまい、結果として実が落ちてしまうことがあります。
【寒さへの対策】
冬の間は、寒さや冷たい風からびわを守る対策が重要です。鉢植えで育てている場合は、移動しやすいので、より暖かい場所へ移動させるのも良いでしょう。
原因3:病気による影響
びわの木の幹などに傷ができると、そこから病原菌が侵入し、病気に感染する可能性があります。剪定後の切り口に保護剤を塗り忘れたり、何らかの原因で幹や枝が傷ついたりすることが原因となります。病気に感染すると、実がつかないだけでなく、幹に異常な膨らみができたり、葉に黒い斑点が現れたりする症状が見られることがあります。
【病気への対策】
病気に感染した部分が見つかった場合は、その部分を切り落とす必要があります。また、植物に傷をつけないように注意することも重要です。剪定後や台風などで傷ができた場合は、速やかに癒合剤を塗布して保護しましょう。
原因4:肥料の偏り
日当たりや寒さの問題がなく、病気の兆候も見られない場合は、肥料のバランスが適切でない可能性があります。肥料にはさまざまな栄養素が含まれており、花や実の成長にはリン酸、葉の成長には窒素、根の成長にはカリウムが特に重要です。もし、枝葉ばかりが茂っている場合は、窒素が過剰で、花芽がつきにくくなっていると考えられます。
【肥料バランスの調整】
葉、花芽、根の成長に必要な栄養素はそれぞれ異なります。肥料を与える際には、成分をよく確認し、リン酸が多めに含まれている肥料を選ぶようにしましょう。
びわの病害虫対策:注意点と予防策
びわは比較的害虫の被害が少ないため、農薬の使用を控えることができる果樹の一つです。しかし、実がなり始めると、ゾウムシなどの害虫が発生しやすくなり、果実を食害することがあります。早い段階で果実に袋かけをすることで、被害を防ぐことができます。また、傷口から病気に感染する可能性もあるため、剪定後には癒合剤を塗布することが大切です。台風の際には、倒伏防止などの保護対策も必要です。
結び
びわの栽培は、適切な知識と丁寧な手入れを行うことで、ご家庭でも美味しい実を収穫することができます。この記事を参考に、ぜひびわの栽培に挑戦して、旬の味覚を心ゆくまでお楽しみください。ご自身の庭で育ったびわを味わう喜びは、格別なものとなるでしょう。
びわの種は口にしても大丈夫?
びわの種子にはアミグダリンという物質が含まれています。多量に摂取すると健康を害する恐れがあるため、注意が必要です。少量であれば問題ないとされていますが、基本的には食べないことを推奨します。
びわの葉にはどのような効果が期待できますか?
びわの葉には、抗酸化作用や抗菌作用があると言われています。びわの葉をお茶として飲用したり、お風呂に入れたりすることで、健康への良い影響が期待できます。
びわの木は大きくなりすぎる心配はない?
びわの木は比較的成長が早いですが、剪定を行うことで樹のサイズを調整することが可能です。また、鉢植えで栽培することもできます。