【決定版】日本茶の種類一覧:特徴、選び方、楽しみ方を徹底解説

日本人に馴染み深い日本茶。緑茶、抹茶、ほうじ茶…名前は知っていても、それぞれの違いや特徴を詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか?この記事では、日本茶の種類を網羅的に解説します。それぞれの特徴はもちろん、選び方や最適な楽しみ方まで、あなたの日本茶ライフを豊かにする情報が満載です。さあ、奥深い日本茶の世界へ足を踏み入れてみましょう。

お茶の定義と分類:カメリア・シネンシスを中心に

お茶とは、ツバキ科に属する「カメリア・シネンシス(学名:Camellia sinensis)」という植物の葉を原料とする飲料(食品)のことです。このカメリア・シネンシスは、椿に似た白い花を咲かせるのが特徴です。厳密には、カメリア・シネンシスの茶葉のみが「茶」として分類されます。例えば、「麦茶」や「ルイボス茶」、「グァバ茶」などは、カメリア・シネンシスを原料としていないため、厳密には「茶」ではなく「お茶に似た飲料」とみなされます。しかし、日本茶はもちろんのこと、烏龍茶や紅茶など、世界中で親しまれているお茶の多くは、同じカメリア・シネンシスという茶葉から作られており、広義には全て「お茶」として扱われます。同じ茶葉から作られていても、栽培方法や加工方法の違いによって、様々な味や香りのお茶が生まれます。それぞれのお茶の個性を知り、シーンに合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

カメリア・シネンシスには、大きく分けて二つの主要な種類が存在します。一つは、中国雲南省が原産とされる「中国種」で、葉のサイズが数センチから10センチ程度のものが多いのが特徴です。日本の主要な茶葉も、この中国種に分類されます。もう一つは、インドのアッサム地方が原産とされる「アッサム種」で、こちらは葉が大きく、長さが20~30cmに達するものもあります。アッサム種は、一般的に渋みが強い傾向があります。

これらのお茶は、摘採後の「発酵」の度合いや方法によって大きく分類されます。主な分類としては、酸化発酵させない「不発酵茶(緑茶)」、部分的に酸化発酵させる「半発酵茶(烏龍茶)」、完全に酸化発酵させる「発酵茶(紅茶)」、そして微生物の力で発酵させる「後発酵茶(プーアル茶)」の4種類があります。この発酵の過程の違いが、お茶の色、香り、風味に様々な特徴をもたらします。

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日本茶特有の製法:蒸し製法の詳細

日本で生産されるお茶のほとんどは、酸化発酵させない不発酵茶である「緑茶」に分類されます。日本の緑茶は、製造方法によって大きく「蒸し製」と「釜炒り製」に分けられますが、主流は圧倒的に「蒸し製法」です。釜炒り茶の生産量は全体の1%以下とわずかであり、日本茶を特徴づける製法がこの蒸し製法であると言えます。

お茶の葉は、摘み取られた瞬間から酸化酵素が働き始め、酸化発酵が進行します。日本茶、特に緑茶においては、この酸化発酵を抑制することが重要です。そのため、摘採された生葉は速やかに蒸され、熱によって酵素の働きを止めます。この工程を「殺青(さっせい)」と呼び、日本茶の鮮やかな緑色と独特の風味を保つために欠かせません。蒸された茶葉は、その後、様々な工程を経て揉まれ、乾燥されます。

具体的な蒸し製法の工程は以下の通りです。まず、「蒸す」ことで殺青を行います。次に、「粗揉(そじゅう)」と呼ばれる工程で、茶葉を攪拌し、水分を均一に飛ばします。その後、「揉捻(じゅうねん)」で茶葉に圧力をかけ、細胞を破壊して成分が出やすいようにしっかりと揉み込みます。さらに、「中揉(ちゅうじゅう)」で乾燥させながら揉みを入れ、最後に「精揉(せいじゅう)」で茶葉を針状に整え、煎茶特有の美しい形状を作り出します。これらの工程を経て「乾燥」させると、「荒茶」が完成します。この荒茶が出来上がる頃には、元の生葉の約5分の1の重さになります。この一連の緻密な工程が、日本茶の繊細な味わいと香りを生み出しているのです。

栽培方法による分類:露地栽培と被覆栽培

お茶の栽培方法には、主に「露地栽培」と「被覆栽培」の二種類があります。茶畑一面に黒い覆いがかけられている光景を見たことがあるかもしれません。この覆いをかける栽培方法を「被覆栽培(ひふくさいばい)」と呼び、そのようにして栽培されたお茶を「覆い茶(おおいちゃ)」と総称します。覆い茶に分類される代表的なお茶としては、通常の煎茶を被覆栽培した「かぶせ茶」、抹茶の原料となる「碾茶」、そして高級茶として知られる「玉露」があります。

特に玉露は、茶葉に覆いをかけて日光を遮ることで、茶葉の光合成を調整し、旨味成分であるアミノ酸(テアニン)を多く生成させます。そのため、旨味が強く苦味が少ないのが特徴で、高級茶の代表格として知られています。玉露や碾茶は、通常のかぶせ茶よりも被覆期間が長く、2~3週間ほどにも及びます。さらに高級なものでは、単に黒い覆いを使用するだけでなく、茶畑に棚を設けてその上に藁などを被せた伝統的な栽培方法が用いられます。これらの高級茶は、機械摘みではなく、良質な芽だけを厳選して手摘みされるため、非常に高品質で高価になります。玉露の主な産地としては、京都や福岡県八女市などが有名です。

一方、被覆せずに、日光を十分に当てて栽培するお茶を「露地栽培(ろじさいばい)」と言います。露地栽培のお茶と被覆栽培のお茶では、成分や風味に大きな違いが生じます。かぶせ茶や玉露などの覆い茶は、日光を遮ることで旨味成分である「テアニン」が多く生成され、まろやかな味わいとなります。また、葉緑素(クロロフィル)が増加することで、お茶の色も濃い緑色になり、さらに「覆い香(おおいか)」と呼ばれる海苔に似た独特の香りがするのも特徴です。対照的に、露地栽培のお茶は日光を十分に浴びることで、健康効果で知られる「カテキン」が多く含まれ、しっかりとした渋味と爽やかな香りが特徴となります。

抹茶の原料「碾茶(てんちゃ)」とは?

碾茶(てんちゃ)は、前述の通り抹茶の原料となる茶葉です。栽培方法は玉露と基本的に同じ被覆栽培ですが、製造方法に明確な違いがあります。玉露は蒸した後に揉み、煎茶と同様に仕上げられますが、碾茶は蒸した後に揉まずに乾燥させます。この揉まない製法により、碾茶は海苔のような独特の形状をしています。そして、この乾燥させた碾茶を石臼などで挽いて粉末にしたものが「抹茶」となります。抹茶は、特殊な製法で栽培された碾茶を、石臼などで粉末にしたお茶なのです。

碾茶の主な産地としては、愛知県西尾市や京都府宇治市が古くから有名です。近年では、福岡県八女市(星野村、黒木町など)でも玉露生産で培われたノウハウを生かし、碾茶の生産が盛んになっています。さらに、鹿児島県が碾茶の生産量で全国1位となるなど、新たな産地も登場しています。海外での抹茶需要が非常に高まっている現状を考えると、今後も碾茶の生産拡大の動きは加速すると予想されます。

茶葉の形状による違い:煎茶と玉緑茶(ぐり茶)

日本茶を代表する「煎茶」と「玉緑茶」の大きな違いは、茶葉の形状にあります。煎茶は、まっすぐな針のような形状が特徴ですが、玉緑茶は丸みを帯びた形状をしています。

この形状の違いは、製造工程の最終段階における「精揉」という工程の有無によって生まれます。煎茶の場合、粗揉、揉捻、中揉といった工程を経て、最後に茶葉を針状に整える精揉が行われます。蒸し時間が比較的短いため、「浅蒸し」や「普通蒸し」と呼ばれることもあり、水色が澄んでいるのが特徴です。一方、玉緑茶はこの精揉の工程を行わないため、茶葉が丸く自然な形状になります。玉緑茶には、蒸して作るものと、釜で炒って作るものがあります。

日本では煎茶が一般的ですが、玉緑茶は主に佐賀県や熊本県、鹿児島県の枕崎市、静岡県の伊豆地方などで生産されています。地域によっては、煎茶を「のび」、玉緑茶を「ぐり」と呼ぶことがあり、「ぐり茶」という名前は玉緑茶の形状を表しています。

蒸し時間による分類:普通煎茶・深蒸し茶・特蒸し茶

煎茶は、蒸し時間の長さによって「普通煎茶」「深蒸し茶」「特蒸し茶」に分類されます。蒸し時間は、お茶の風味、水色、香りに大きく影響します。

普通煎茶は、通常30秒から40秒程度蒸します。水色が透き通っているのが特徴です。深蒸し茶は、普通煎茶の2~3倍の時間をかけて蒸します。鹿児島県の知覧茶の多くは深蒸し茶です。さらに長く蒸したものが特蒸し茶と呼ばれます。

蒸し時間が長い深蒸し茶や特蒸し茶は、茶葉の組織が壊れやすく、お茶の成分が溶け出しやすくなります。そのため、水色は濃い緑色になり、渋みが少なく、まろやかでコクのある味わいになります。また、茶葉が細かくなり粉が多く含まれるため、水色と味が濃く、深みのある味わいが特徴です。湯飲みの底に粉が溜まりやすいのも特徴です。一方、蒸し時間の短い普通煎茶は、茶葉がしっかりしており、水色はやや薄い緑色で、香りや渋みが強く、すっきりとした味わいです。お好みに合わせて、蒸し時間の異なる煎茶を選んでみてください。

日本の希少な緑茶:釜炒り茶

日本の緑茶のほとんどは蒸して作られますが、ごく一部に釜で炒って作る緑茶も存在します。釜炒り茶は、摘んだ茶葉を釜で炒ることで酸化酵素の働きを止めます。蒸し製とは異なり、さっぱりとした味わいと「釜香」と呼ばれる独特の香ばしさが特徴です。水色は蒸し製緑茶のような鮮やかな緑色ではなく、黄色っぽくなります。茶葉の中に白いものが見られることがありますが、これはカビではなく、良質な釜炒り茶の証です。例えば、写真の釜炒り茶は嬉野で作られた被覆栽培の最高級品で、品種はおくみどりです。

現在、釜炒り茶は九州の一部地域、特に佐賀県の嬉野や熊本・宮崎の山間部でのみ生産されています。嬉野の釜炒り茶は、中国から製法が伝わり、大きな丸釜で炒るのが特徴です。熊本・宮崎の釜炒り茶は、加藤清正の朝鮮出兵を機に伝わったとされ、「青柳茶」とも呼ばれています。

ちなみに、中国の緑茶は、日本の蒸し製とは異なり、ほとんどが釜炒り茶です。中国茶と聞くと烏龍茶を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、中国では釜炒りの緑茶が最も多く生産されています。

香ばしい風味:玄米茶

玄米茶は、煎茶などを加工して作られるお茶です。煎茶(または玉緑茶)と、炒った玄米を混ぜ合わせたもので、玄米の香ばしさが特徴で飲みやすいお茶として親しまれています。番茶や煎茶のさっぱりとした味と、玄米の香ばしい香りを楽しめます。一般的には、苦渋みが少なく手頃な価格の番茶が使われますが、上質な煎茶を使ったものもあります。また、玄米茶に抹茶を加えた「抹茶入り玄米茶」も人気があります。香ばしい香りはリラックス効果をもたらし、日常的に楽しめるお茶として広く愛されています。

焙煎が生み出す芳醇な香り:ほうじ茶

ほうじ茶は、番茶や煎茶などを約300℃という高温の釜で焙煎したお茶です。この焙煎という工程で、独特のこうばしい香りが生まれます。透き通った茶色の水色と、その香ばしい香りが特徴です。「くき茶」と呼ばれる茎を多く含むお茶を焙煎したものは、「くきほうじ」や「棒ほうじ」とも呼ばれます。茎は高温で焙煎されると、まるでポップコーンのように膨らみ、体積が増えるのが特徴です。 ほうじ茶の香ばしい香りの秘密は、「ピラジン」という成分にあります。近年、このピラジンにリラックス効果があることが明らかになり、注目を集めています。ほうじ茶の原料には、一般的に苦味や渋味が強い三番茶や秋冬番茶が用いられることが多いですが、一番茶を原料としたものは、より上質で洗練された味わいを楽しめます。また、カフェイン含有量が少ないため、就寝前や小さなお子様、妊娠中の方にも安心して飲んでいただけるお茶として人気です。

荒茶、仕上げ茶、そして「出物」とは

お茶の製造過程において、農家から出荷される段階のお茶は「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれます。この荒茶は、まだ茎や粉、形が不揃いな葉などが混ざった状態です。茶商(主に茶問屋)は、この荒茶を仕入れ、さらに加工を施します。具体的には、茎や粉といった不要な部分を取り除き、「火入れ」と呼ばれる工程で茶葉を再度乾燥させます。この火入れによって、お茶の風味や香りが安定し、保存性も向上します。こうして、私たちが普段目にする品質に整えられたお茶が「仕上げ茶(本茶)」と呼ばれるものです。 仕上げ茶を製造する過程で取り除かれた茎や粉、形の不揃いな茶葉などは、「出物(でもの)」として分類されます。茶業界では、出物の中でも比較的葉が大きいものを「頭(あたま)」、茎の部分を「棒または木」、芽茶や粉茶を「浮(うき)」と呼ぶことがあります。これらの出物も、それぞれに特徴があり、さまざまな形で消費者に届けられています。

茶葉の部位が織りなす多様性:くき茶、粉茶、芽茶

荒茶から仕上げ茶を選別する過程で生まれる「出物」には、それぞれ異なる風味や特性を持つお茶が含まれています。「くき茶」は、お茶の製造過程で選別された茎のみを原料とするお茶で、地域によっては「白折(しらおれ)」「かりがね」「棒茶」などとも呼ばれます。茎ならではの青々しい香りと、清涼感のある香りと甘みが特徴で、すっきりとした軽やかな味わいが楽しめます。 「粉茶」は、お茶を製造する過程でふるい分けされた粉状のお茶です。荒茶を篩(ふるい)にかけて集められた細かい茶葉が集まったもので、茶葉が細かいため、お茶として淹れると成分が濃く抽出され、色が濃く、旨味が凝縮された味わいになります。お寿司屋さんで提供される「あがり」は、一般的にこの粉茶を指します。近年では、手軽さを重視して「粉末茶」が使用されることも増えていますが、粉茶は茶葉が細かいため、急須で淹れると網目が詰まりやすいという難点があります。 「芽茶」は、茶葉の芽や葉の先端部分を集めたお茶です。新芽の部分は旨味が凝縮されており、味わいにおいては仕上げ茶に匹敵する品質を持つこともあります。出物であるため比較的安価で手に入ることも多く、品質の割にお得感があると言えるでしょう。これらの出物のお茶は、それぞれ独自の個性があり、お茶のさまざまな楽しみ方を提案してくれます。

「粉茶」「粉末茶」「抹茶」の違いを明確に

細かい粉状や粒状のお茶として混同されがちな「粉茶」「粉末茶」「抹茶」ですが、それぞれ明確な違いがあります。「粉茶」は、先述の通り、荒茶を篩にかけて集めた「細かい茶葉」そのものです。水には溶けないため、急須や茶こしを使って淹れる必要があります。 「粉末茶」は、煎茶などを機械で細かく「挽いたもの」です。文字通り粉末状になっており、水やお湯に溶かすことができるのが大きな特徴です。茶葉の栄養をまるごと摂取できるため、健康志向の方から注目されており、手軽に飲めることから近年人気が高まっています。 「抹茶」は、原料と製法が他の二つとは大きく異なります。抹茶は、被覆栽培された「碾茶(てんちゃ)」を原料とし、石臼などで非常に細かく挽いて作られます。水には溶けず、懸濁した状態でいただきます。価格帯を比較すると、荒茶の出物である「粉茶」が最も安価で、煎茶などを加工する手間がかかる「粉末茶」が高価になります。そして、特別な栽培方法と手間暇をかけて作られた碾茶を原料とする「抹茶」が、最も高価になる傾向があります。

摘採時期による分類:新茶、二番茶、番茶、刈番とは

お茶は年に数回摘み取られ、その時期によって品質や風味が大きく変わります。最初に摘まれるのは「一番茶」で、4月下旬から5月中旬にかけて収穫されます。特にこの時期のお茶は「新茶」と呼ばれ、その年の最初のお茶として珍重されます。その後、5月末から6月には「二番茶」、さらに三番茶、四番茶と続きます。秋に摘まれるものは「秋冬番茶」と呼ばれます。

二番茶以降のお茶は一般的に「番茶」と総称されます。これには、9月頃から摘まれる硬い茶葉や茎を使ったお茶が含まれます(ただし、京都ではほうじ茶を「番茶」と呼ぶこともあります)。品質面では、一番茶が最も優れており、次いで二番茶、三番茶の順になります。一番茶はアミノ酸、特にテアニンを豊富に含み、まろやかで深い味わいが特徴です。一方、二番茶や三番茶はカテキンが多く、タンニンも多いため、さっぱりとしていますが、渋みがあります。カフェインが少ないため、ほうじ茶や玄米茶に使われることが多いです。

「刈番」と呼ばれるお茶もあります。これは、一番茶を摘んだ後、二番茶を摘む前に伸びてきた芽を刈り揃えたものです。刈番の茶葉は、精揉工程を経ていないため、チップ状になっていることが多く、主に玄米茶や比較的安価なお茶の原料として使われます。

日本茶の産地と品種:多様な風味

日本茶は、製法や栽培方法、摘採時期だけでなく、産地や品種によっても大きく異なります。静岡茶、宇治茶(京都)、狭山茶(埼玉)、八女茶(福岡)、嬉野茶(佐賀)、鹿児島茶など、各地に有名なお茶の産地があり、それぞれが独自の気候風土と伝統的な製法でお茶を生産しています。

品種も様々です。「やぶきた」は最も多く栽培されている品種で、日本の煎茶の約75%を占めると言われています。「ゆたかみどり」などの品種も多く、「おくみどり」「さえみどり」「つゆひかり」といった高級品種もあります。これらの品種は、それぞれ独自の風味、水色、香りを持ちます。品種は、収穫時期によって早生や晩生に分けられたり、煎茶用、抹茶用、紅茶用など、用途に特化したものが開発されたりもします。品種の違いを知ることで、お茶の世界をより深く楽しめるでしょう。

半発酵茶:中国茶の代表、烏龍茶

半発酵茶は、緑茶のように発酵を完全に止めず、紅茶のように完全に発酵させもしないお茶です。烏龍茶に代表される中国茶の多くが半発酵茶に分類されます。中国では、発酵度合いによって「白茶」や「青茶」などとも呼ばれます。

「白茶」は、摘採した茶葉をしばらく置いて、わずかに酸化発酵させる「萎凋」という工程の後に乾燥させて作られます。日本ではあまり馴染みがありませんが、上品な香りとほのかな甘みが特徴です。中国福建省で生産される「白毫銀針」や「白牡丹」などが有名です。

「青茶」は、半発酵茶の中でも発酵度合いが20%~80%と幅広く、多様な種類があります。発酵が軽いものは「包種茶」などがあり、緑茶のように黄色みがかった色をしています。中程度の発酵度のものとしては、台湾の「凍頂烏龍茶」や中国福建省の「鉄観音」が挙げられます。発酵が進んだものには、甘く華やかな香りの「東方美人」などがあります。これらの青茶は、主に中国の福建省や広東省、台湾などで生産されています。

半発酵茶の製造工程は、茶葉を日光に当てたり室内で放置したりして水分を適度に飛ばす「萎凋」から始まります。萎凋中に茶葉を軽く揺り動かす「攪拌」や「揺青」といった工程を繰り返すことで、茶葉の細胞が傷つき、酸化酵素が空気と触れて部分的な発酵が促されます。その後、加熱して発酵を止め(殺青)、揉んで乾燥させます。半発酵茶の魅力は、発酵度合いの調整によって生まれる、花のような香りやフルーティーな香りを楽しめる点です。近年では、日本の農研機構などが開発した、緑茶でありながら烏龍茶のような香りが楽しめる新しいお茶も登場しています。

発酵茶:世界中で愛される紅茶

発酵茶とは、一般的に「紅茶」と呼ばれるお茶のことです。紅茶は世界中で最も多く飲まれているお茶であり、その消費量は他のお茶を大きく上回ります。茶葉を発酵させて作られ、発酵の度合いによって味が変わるのが特徴です。元々は中国が発祥ですが、17世紀以降にイギリスで好まれるようになり、インドやスリランカなどで大規模に生産されるようになり、世界中に広まりました。

紅茶は、摘採された茶葉を完全に酸化発酵させることで作られます。カテキンが酸化酵素の働きによって「テアフラビン」や「テアルビジン」といった成分に変化し、紅茶特有の濃い赤褐色の水色と、芳醇な香りが生まれます。

主要な生産国としては、インド(ダージリン、アッサム地方)、スリランカ(旧セイロン)、ケニアなどが挙げられ、それぞれが異なる気候風土と製法により、様々な紅茶を生み出しています。

紅茶の楽しみ方は多様です。ストレートで飲むのはもちろん、砂糖を加えて甘くしたり、ミルクティーとしてコクを加えたり、レモンやハーブを加えて香りを楽しむこともできます。紅茶には茶葉の形状によって「等級」が分けられており、これは品質を示すものではなく、茶葉の大きさや形状による分類です。好みに合った産地と等級を選ぶことで、より自分に合った紅茶を見つけることができるでしょう。

後発酵茶:微生物が織りなす奥深い世界

不発酵茶、半発酵茶、発酵茶は、茶葉自体の酸化酵素を利用したお茶でした。一方、「後発酵茶」は、カビやバクテリアといった微生物の力を借りて発酵させる、独特な製法のお茶です。微生物と聞くと抵抗があるかもしれませんが、日本酒や味噌に使われる麹菌、漬物に使われる乳酸菌など、食品に良い影響を与える微生物が使われています。

中国では「黒茶」が代表的な後発酵茶で、中でも有名なのが「プーアル茶」です。雲南省が主な産地です。プーアル茶の製法は独特で、まず緑茶のように茶葉を炒って酸化発酵を止めます。その後、茶葉を積み重ねて水をかけ、湿度を高く保ちます。約20日間、カビ付け発酵を促します。十分に発酵したら、天日干しで乾燥させて完成です。プーアル茶には「熟茶」と「生茶」がありますが、後発酵を経るのは主に「熟茶」です。プーアル熟茶は、脂肪分解酵素が多いと言われ、油を多く使う中華料理に合うお茶として親しまれています。

日本にもわずかながら後発酵茶が存在します。流通量は少ないですが、徳島県の「碁石茶」や「阿波番茶」、富山県の「バタバタ茶」などが知られています。碁石茶は、碁石のような形をしており、カビ付け発酵後、木樽に入れて重石をし、数週間漬け込んで乳酸発酵させます。最後に天日干しをして完成します。阿波番茶も、漬物のように発酵させるのが特徴です。日本の後発酵茶は、カビのような香りや、漬物のような酸味があり、独特な風味を楽しめます。

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まとめ

「お茶」はカメリア・シネンシスという一つの植物の葉から作られますが、発酵の有無や度合い、加工方法によって、多種多様な種類があることがお分かりいただけたかと思います。日本茶について詳しく解説しましたが、産地や品種によって味わいが大きく異なることを覚えておきましょう。気分や食事、好みに合わせてお茶を選び、飲み分けるのも、お茶の楽しみ方の一つです。

お茶と食文化の相性も興味深い点です。日本茶は繊細な日本食と、烏龍茶などの中国茶は油っこい中華料理と、紅茶は洋菓子と良く合います。これは、各国の風土や食文化が、お茶のスタイルを作り上げてきた結果と言えるでしょう。また、水の硬度も重要です。日本茶は軟水で淹れると美味しく、中国茶や紅茶は硬水でも美味しく飲めるように、香りを重視したお茶が多くなっています。

お茶は種類が豊富で、国や地域によって様々な種類と文化が育まれてきました。お茶を飲む際は、歴史や風土、製法を想像しながら味わうのも良いでしょう。また、お茶にはカテキン、テアニン、ビタミン、ミネラルなど、様々な健康成分が含まれています。種類や品種によって成分が異なり、期待できる効果も様々です。嗜好品としてだけでなく、健康状態や目的に合わせてお茶を選ぶのも、新しい楽しみ方かもしれません。

お茶の基本的な定義は何ですか?

お茶とは、ツバキ科のカメリア・シネンシスという植物の葉を使った飲み物です。麦茶やルイボス茶のように、カメリア・シネンシス以外の植物を原料とするものは、厳密には「お茶」とは区別されます。同じ茶葉でも、育て方や加工の違いで様々な種類が生まれるのが特徴です。

日本茶で主流の製法は何ですか?

日本で生産されるお茶の多くは「緑茶」で、酸化発酵を止めるために茶葉を「蒸す」製法が主流です。摘採後すぐに蒸すことで、茶葉の酸化酵素の働きを止め、鮮やかな緑色と風味を保ちます。

緑茶の栽培方法である「露地栽培」と「被覆栽培」では、お茶の味わいにどのような違いが生まれるのでしょうか?

茶葉を日光に当てずに育てる「被覆栽培」では、旨味成分であるテアニンが豊富に生成されます。そのため、口当たりがまろやかで、水色も鮮やかな緑色となり、独特の青海苔のような「覆い香」が生まれるのが特徴です。特に玉露は、その旨味の強さと苦味の少なさから、高級茶として知られています。一方、日光をたっぷり浴びて育つ「露地栽培」では、カテキンが多く生成されるため、しっかりとした渋みと爽やかな香りが特徴となります。

「粉茶」「粉末茶」「抹茶」は、それぞれどのように異なるのでしょうか?

「粉茶」とは、荒茶を選別する工程で得られる細かい茶葉そのものを指し、水には溶けません。濃い色と豊かな旨味が特徴です。「粉末茶」は、煎茶などを微細な粉末状にしたもので、水やお湯に溶かして飲むことができます。茶葉の栄養成分を余すことなく摂取できるため、健康志向の方から注目を集めています。「抹茶」は、被覆栽培された碾茶(てんちゃ)を石臼などで丁寧に挽いたもので、水には溶けず、懸濁した状態でいただきます。製造にかかる手間と原料の品質から、一般的に抹茶が最も高価になる傾向があります。

番茶とは、具体的にどのようなお茶を指すのでしょうか?

「番茶」は、一般的に一番茶の後に摘採される二番茶以降の茶葉や、成長して硬くなった大ぶりの茶葉の総称として用いられます。通常、9月頃から摘採されることが多く、タンニンを多く含むため、すっきりとした味わいながらも渋みが感じられます。そのため、ほうじ茶や玄米茶の原料として利用されることが多いです。また、カフェイン含有量が少ないのも特徴です。ただし、地域によってはほうじ茶のことを指したり、単に硬くて大きな葉を指す場合もあります。

後発酵茶の代表格である「プーアル茶」には、どのような特徴があるのでしょうか?

プーアル茶は、中国の雲南省などで生産される「黒茶」の一種であり、麹菌やバクテリアなどの微生物の働きを利用して発酵させるという、独特な製法で作られています。特に「熟茶」と呼ばれるものは、微生物による後発酵の工程を経ており、脂肪分解酵素を豊富に含むと言われています。そのため、油を多く使用する中華料理との相性が良いとされています。

知覧茶の製法について教えてください。

鹿児島県南九州市で作られる知覧茶は、そのほとんどが「深蒸し茶」という製法で作られています。これは通常の煎茶よりも蒸し時間を長くすることで、茶葉が細かくなり、お茶の色合いはより濃く、味わいには深みが増すという特徴があります。

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