太陽の恵みをたっぷり浴びて育った、甘酸っぱくてジューシーなすもも。初夏の訪れとともに店頭に並び、その鮮やかな色合いと爽やかな甘さで私たちを魅了します。一口食べれば、みずみずしい果汁が口いっぱいに広がり、夏の暑さを忘れさせてくれるでしょう。この記事では、日本各地で栽培されている代表的な品種から、めったにお目にかかれない希少品種まで、すももの世界を徹底的にご紹介します。それぞれの品種が持つ個性的な特徴を知れば、きっとあなたのお気に入りのすももが見つかるはずです。
すもも(プラム)とは?夏に嬉しい甘酸っぱい果実
みずみずしく甘酸っぱいすももは、夏の訪れを感じさせる人気の果物です。栽培されているすももは、大きく分けて中国原産の「日本すもも」とヨーロッパ原産の「西洋すもも(プラム)」の2種類が存在します。一般的に「すもも」という場合は、「日本すもも」を指すことが多いです。すもも(プラム)は、その美しい色合いと豊かな果汁が特徴で、丸みを帯びた形と、熟すと鮮やかな赤色になる果皮が目を引きます。十分に熟した果実は、濃い紫色へと変化します。果肉は薄い黄色で、口に含むと果汁が溢れます。日本国内では、主に夏から秋にかけて、山梨県、和歌山県、長野県などで盛んに栽培されており、生のまま食べるのが一般的です。大石早生や貴陽といった品種は特に有名で、それぞれ異なる風味と食感を楽しむことができます。
硬くて酸っぱいすももを美味しく食べるには?すもも選びのポイント
すももを買って食べてみたら、硬くて酸っぱくて、あまり美味しくなかったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。すももは、収穫直後は酸味が強く感じられることがありますが、適切な追熟を行うことで、甘みが増し、より美味しく味わうことができます。ここでは、すもも選びで失敗しないためのポイントと、硬いすももを美味しくする方法について解説します。まだ完熟していないすももは、果皮に張りがあり、硬さを感じますが、常温で数日間置くことで追熟が進みます。十分に追熟したすももは、果皮の色が濃くなり、特有の甘い香りが際立ってきます。また、触った時に少し弾力があるものが、食べ頃のサインです。すももは、完熟すると基本的に甘くなります。食感の好みは人それぞれなので、ご自身の好みに合った美味しいすももを選び、追熟の状態を見極めることで、最高の味わいを堪能することができるでしょう。
すももの表面の白い粉「ブルーム」とは?新鮮さを見分けるポイント
すももの表面にうっすらと見られる白い粉をご存知でしょうか?これは「ブルーム」と呼ばれる、すもも自身が作り出す自然由来の物質で、果物の鮮度と品質を示すバロメーターのようなものです。特にすももなどの果物において、ブルームの存在は重要な意味を持ちます。ブルームは、果実から水分が蒸発するのを防ぎ、病原菌から守る天然の保護ワックスであり、収穫後の時間が短く、適切な熟成を経ている証拠です。ブルームが確認できる果物は、店頭に並ぶまでの取り扱いが丁寧で、触れられる回数が少ないことを示し、新鮮さの目安となります。果物を選ぶ際には、ブルームの状態を確認し、しっかりとブルームが付いているものを選ぶことが、より美味しいすももを選ぶための秘訣です。また、ブルームは果物が健康に育った証でもあり、自然な状態の果物を見分ける上で役立ちます。食べる際は、軽く水で洗い流すだけで美味しくいただけます。
主なすももの品種一覧とその特徴
すももは多種多様な品種が存在し、それぞれに独特の風味、特徴、そして旬の時期があります。ここでは、日本国内で栽培されている代表的なすももの品種を一覧形式でご紹介し、各品種のルーツ、特徴、交配に関する情報などを詳しく解説します。
秋姫(あきひめ)
秋姫は1963(昭和38)年頃に秋田県湯沢市において小嶋昭一郎氏が自園で発見した偶発実生とされる大きなスモモで、1989年(平成元年)に株式会社天香園より品種登録されました。名前が示すように、秋に収穫される晩生品種であり、大玉で高い糖度を誇り、ほどよい酸味との絶妙なバランスが特徴です。果皮は目を引く鮮やかな紅色で、果肉は密度が高く、口に含むとジューシーな食感が広がります。また、貯蔵性にも優れており、比較的長い期間美味しさを保つことが可能です。そのまま生で食べるのはもちろん、コンポートやジャムに加工しても美味しく、様々な用途で楽しめます。
大石早生(おおいしわせ)
「大石早生(おおいしわせ)」は、福島県の大石俊雄氏によって育成された品種です。日本のすももを代表する品種の一つであり、6月下旬から7月上旬にかけて収穫される早生品種として広く知られています。果皮は鮮やかな紅色で彩られ、果肉は淡い黄色をしており、一口食べると非常にジューシーな食感が楽しめます。甘みと酸味のバランスが取れており、後味さっぱりとした爽やかな味わいが特徴です。比較的栽培が容易なため、日本全国で広く栽培されており、市場にも多く流通しています。生食でその美味しさをダイレクトに味わうのがおすすめですが、爽やかな酸味を活かしてジャムやジュースにするのも良いでしょう。
花螺李(がらり/からり)
台湾をルーツとする「花螺李(がらり/からり)」は、小ぶりなサイズが愛らしいすももです。果皮は黄緑色を基調とし、熟すと淡い赤みが現れることもあります。果肉はとろけるように柔らかく、口に含むと独特の香りと甘酸っぱさが広がります。国内での栽培はごくわずかであるため、市場ではなかなかお目にかかれない希少品種です。そのまま食するのはもちろん、その個性的な風味はデザートのアクセントやカクテル素材としても重宝されます。その可愛らしい見た目は、食卓を華やかに彩ります。
貴陽(きよう)
「貴陽(きよう)」は、すももの名産地である山梨県で生まれた品種です。南アルプス市の農園で偶然発見されたこのすももは、その格別な美味しさで多くの人々を魅了してきました。何と言っても特徴はその大きさ。大玉で濃い紅色をした果皮は、見る人を惹きつけます。果肉はきめ細かく、とろけるような舌触り。糖度が高く酸味が少ないため、濃厚な甘さを堪能できます。その風味と食感から「すももの王様」と称されることも。栽培の難しさから収穫量は限られており、高級品種として珍重されています。贈答品としても喜ばれ、生のままでその豊かな味わいを心ゆくまで楽しむのが一番です。
ケルシー
「ケルシー」は、黄緑色の果皮が特徴的なすももです。果実の先端が尖っているのが外見上のポイント。アメリカ・カリフォルニアが原産で、日本には明治時代に伝わりました。果肉は比較的しっかりとしており、酸味がやや強めですが、十分に熟すと甘みが増し、独特の風味と香りが際立ちます。日持ちが良く、貯蔵性に優れているのも魅力です。フレッシュな味わいをそのまま楽しむのはもちろん、加熱しても形が崩れにくいため、タルトやパイ、コンポートなど、お菓子作りにも適しています。珍しい緑色の果皮は、食卓に爽やかな印象を与えてくれます。
サマーエンジェル
「サマーエンジェル」は、「ソルダム」と「ケルシー」を親に持つ、良いとこどりの品種です。7月下旬から8月上旬にかけて旬を迎える中生品種で、両親の優れた性質を受け継いでいます。果皮は鮮やかな赤色に染まり、果肉はみずみずしく、濃厚な甘さと爽やかな酸味のバランスが絶妙です。食べ応えのある大玉サイズで、食感も楽しめます。生のままで味わうのがおすすめですが、デザートやジャムなどの加工品にも適しています。夏の暑さを吹き飛ばすような、爽やかな味わいが特徴です。
サマービュート
「サマービュート」は、山梨県で生まれたすももの品種です。山梨県果樹試験場が開発しました。収穫時期は7月下旬から8月中旬で、中生に分類されます。果皮は明るい紅色で、見た目の美しさが際立ちます。果肉は黄色をしており、際立つ甘さと控えめな酸味が特徴で、甘いすももがお好きな方には特におすすめです。口に含むと、ジューシーでなめらかな食感が楽しめます。生で食べるのが一番美味しいですが、フルーツサラダやゼリーなどのデザートにもよく合います。夏の終わりに旬を迎える、人気の品種です。
サンタローザ
「サンタローザ」は、「さんたろう」という別名でも知られ、100年以上前から栽培されている歴史のある品種です。原産地はカリフォルニアで、日本には大正時代に伝わりました。果皮は濃い赤紫色で、果肉も赤みを帯びています。特筆すべきは、その強い香りと、甘みと酸味の調和がとれた濃厚な味わいです。サイズはやや小ぶりながらも、非常にジューシーで風味が豊かです。生食はもちろんのこと、ジャムやジュース、果実酒といった加工品としても広く利用されています。長い間多くの人に愛されてきた、すももの代表的な品種の一つです。
ソルダム
ソルダムは、日本の大石早生すももと交配親和性が高い品種です。果皮は最初は緑色をしていますが、熟すと赤銅色に変化します。果肉は鮮やかな赤色で、ジューシーさと甘みと酸味のバランスが絶妙な味わいが楽しめます。また、食感も柔らかいのが特徴です。生食はもちろん、ジャムやゼリー、コンポート、パイ、フルーツサラダなど、さまざまな料理でその風味を活かすことができます。その美しい色合いは、食卓を華やかに彩り、デザートとしても最適です。
太陽
「太陽」は、「大石早生」や「ソルダム」と並び、すももの代表的な品種として広く親しまれています。収穫時期は8月上旬から中旬で、晩生品種に分類されます。貴陽にも匹敵するほどの大きな果実が特徴です。果皮は濃い赤紫色をしており、果肉は黄色く、非常に高い糖度と少ない酸味のおかげで、濃厚な甘さを堪能できます。果肉は緻密でしっかりとしており、食べ応えがあります。日持ちが良い点も魅力で、贈答用としても人気を集めています。生のままでその甘さを味わうのが一番おすすめですが、贅沢なコンポートやタルトの材料としても適しています。
ハニーローザ
「ハニーローザ」は、「ホワイトプラム」から自然に生まれた実生を選抜して生まれた品種です。名前が示すように、蜂蜜のような際立つ甘さが特長で、酸味が穏やかなため、非常に食べやすいと評判です。果皮は明るい赤色を帯びており、果肉は黄色く、みずみずしく柔らかな食感が楽しめます。サイズはやや小ぶりながら、その甘さはひときわ優れています。6月下旬から7月上旬に収穫される早生品種であり、シーズン到来を告げるすももとして親しまれています。フレッシュな状態で甘みを堪能するのが一番ですが、デザートの彩りやスムージーにも向いています。
紅りょうぜん
「紅りょうぜん」は、福島県伊達市の菅野幸男氏によって育成された品種です。7月下旬から8月上旬にかけて収穫される中生品種で、果皮は鮮やかな紅色で、見た目の美しさが際立ちます。果肉は密度が高く締まっており、甘みが強く、酸味は控えめなので、甘いすももがお好きな方に特におすすめです。味のバランスが良く、ジューシーな口当たりが堪能できます。主にそのまま食されますが、その美しい色と甘さは、ケーキやタルトなどのデザートにも最適です。
李王(りおう)
「李王(りおう)」は、山梨県の深沢渉氏が「大石早生」と詳細不明の品種を掛け合わせて育成した品種です。8月上旬から中旬にかけて収穫される晩生品種で、貴陽に匹敵するほど大きな実をつけることがあります。果皮は鮮やかな紅色から紫がかった紅色で、果肉は黄色く、非常に高い糖度と穏やかな酸味により、濃厚な甘さが際立っています。果汁も豊富で、しっかりとした食べ応えがあります。栽培が比較的難しいことから、市場に出回る量は限られていますが、その優れた食味から高級すももとして高く評価されています。生のままで、その豊かな甘さを味わうのがおすすめです。
関口早生(せきぐちわせ)
関口早生(せきぐちわせ)」というすももは、「ソルダム」や「大石早生」、「サンタローザ」などを栽培している農園で発見された品種の一つで、早生品種として6月下旬頃から収穫されます。果皮は鮮やかな赤色を呈し、果肉は黄色く、ジューシーで甘みと酸味の調和がとれています。さっぱりとした風味が特徴で、夏の訪れを感じさせてくれるすももとして親しまれています。生食はもちろんのこと、ジャムやジュースにも適しており、その鮮やかな色合いは食卓を華やかに彩ります。
すももの効果的な保存方法
すももの保存方法は、その熟し具合によって変わってきます。適切な方法で保存することで、すもも本来の風味を損なわずに、より長く楽しむことができます。
まだ熟していない場合
果肉がまだ硬く、酸味が強く感じられる場合は、常温で追熟させるのがおすすめです。直射日光を避け、風通しの良い場所で数日保管しましょう。そうすることで、果肉が徐々に柔らかくなり、酸味がまろやかになって甘みが増してきます。紙袋に入れるか、通気性の良いカゴなどに入れると良いでしょう。ビニール袋に入れてしまうと湿気がこもりやすく、カビの原因となることがあるので注意が必要です。完熟のサインとしては、皮の色が濃くなり、甘い香りが強くなること、そして軽く触れた時に少し弾力を感じられることなどが挙げられます。
熟した場合
十分に熟して食べ頃になったすももは、冷蔵庫での保存が適しています。一つずつキッチンペーパーで包み、ビニール袋に入れて野菜室で保存することで、鮮度を保ちながら美味しく食べられます。この方法で、大体1週間程度は美味しくいただけるでしょう。ただし、完熟したすももは非常にデリケートなので、丁寧に扱い、できるだけ早く食べるようにしましょう。長期保存したい場合は冷凍も可能です。洗って水気を拭き取った後、ラップで包んでフリーザーバッグに入れれば、数ヶ月間の保存が可能です。解凍後は、スムージーやジャムなどに活用するのがおすすめです。
まとめ
すもも(プラム)は、初夏から夏にかけて旬を迎える、甘酸っぱくて果汁たっぷりの果物です。この記事で紹介した品種の情報や栄養成分に関する情報を参考に、お好みのすももを見つけて、旬の時期にその豊かな風味と栄養を味わってみてください。
すももの品種にはどんなものがあるのでしょうか?
すももには実に多彩な品種が存在します。例えば、「大石早生(おおいしわせ)」、「ソルダム」、「貴陽(きよう)」、「太陽(たいよう)」、「秋姫(あきひめ)」、「サンタローザ」、「ハニーローザ」、「紅りょうぜん」、「サマーエンジェル」、「サマービュート」、「ケルシー」、「花螺李(からり)」、「李王(りおう)」、「関口早生(せきぐちわせ)」などが挙げられます。これらの品種は、それぞれの栽培地や育成者、味わい、果皮の色合い、そして旬の時期に独自の特色を持っています。甘味が際立つものもあれば、甘さと酸味の絶妙なバランスが楽しめるもの、また、大玉で食べ応えのあるものなど、バラエティ豊かな選択肢があります。
すももとプラムは同じものなのでしょうか?
広い意味では、「すもも」と「プラム」は同じ種類の果物を指します。ただし、日本国内においては、「すもも」という場合、主に中国原産の「日本すもも」を指すことが一般的です。一方、「プラム」という言葉は、より西洋的な品種や、それらを総称する際に用いられる傾向があります。果樹として栽培されているすももは、大きく分けて中国原産の「日本すもも」と、ヨーロッパ原産の「西洋すもも(プラム)」の2種類があり、どちらも丸みを帯びた形と、みずみずしい果肉が共通の特徴です。
すももの旬はいつ頃ですか?
すももは、初夏から夏にかけて市場に多く出回る果物です。品種によって旬の時期は多少異なりますが、一般的には6月から8月頃が最も多く収穫されます。早い時期に収穫できる早生(わせ)品種は6月頃から店頭に並び始め、遅い時期に収穫できる晩生(おくて)品種は8月下旬から9月頃まで楽しむことができます。「大石早生」や「ハニーローザ」は比較的早い時期に出回り、「貴陽」、「太陽」、「秋姫」などは中生から晩生に分類されます。