芳醇な香りととろけるような舌触りが魅力のラ・フランス。しかし、この美味なる洋梨が、世界中でほとんど日本でしか栽培されていないことをご存知でしょうか?かつてはヨーロッパ各地で栽培されていたラ・フランスが、なぜ日本でのみ生き残り、愛され続けているのか。本記事では、ラ・フランスが辿った数奇な運命を紐解きます。海外での絶滅寸前の状況、日本での栽培成功の背景、そしてラ・フランスと一般的な洋梨との違いまで、その知られざる真相に迫ります。
日本におけるラ・フランス栽培100年の軌跡と浸透の物語
栽培の難易度が高いとされるラ・フランスが日本の風土に根付き、今日、多くの人々に愛される果物になるまでには、1世紀を超える長い歳月と、数えきれないほどの関係者の情熱がありました。ここでは、ラ・フランスが海を渡り、私たちの食卓に欠かせない存在となるまでの道のりを詳しく見ていきましょう。
黎明期の導入と初期の壁
日本に西洋梨が本格的にやってきたのは、明治時代の初期、1875年頃のことです。ラ・フランスはそれより少し遅れて、1903年頃に日本へ、そして大正時代に入ってすぐに山形県に伝わったと言われています。しかし、当時の日本では、昔から親しんできた和梨の栽培方法や食習慣が深く根付いており、西洋梨の栽培の難しさ、特に収穫後の「追熟」という工程の必要性、そして最適な食べ頃を見極めることの難しさに直面しました。そのため、当初は西洋梨全般、そしてラ・フランスの普及はなかなか進みませんでした。西洋梨の栽培が本格的に動き出したのは、1909年頃のことです。この年、山形県を訪問された大正天皇が、西洋梨の一種である「バートレット」の苗を贈られたことがきっかけとなり、西洋梨栽培への関心が高まり、新たな可能性が広がりました。
「みだぐなす」と呼ばれたラ・フランスの初期の役割とは
1909年から西洋梨の生産は活発化しましたが、当時、主に栽培されていたのは缶詰の材料として使われる「バートレット」でした。ラ・フランスの普及がバートレットに比べて遅れた背景には、いくつかの理由が存在します。まず、他の西洋梨と比較しても、栽培が特に難しいという点が挙げられます。次に、収穫後に一定期間、置いて熟成させる追熟が必要であり、そのタイミングを素人が判断するのは至難の業でした。さらに、ラ・フランスの独特な外観、凸凹とした形が、当時の美意識にそぐわず、山形県では「みだぐなす(見栄えが悪い、不恰好)」という方言で呼ばれ、避けられる傾向にありました。このような事情から、ラ・フランスは食用として直接的に人気を集めることはありませんでしたが、幸いにもバートレットの受粉樹として非常に適していることが分かりました。その結果、ラ・フランスはバートレット畑の隅でひっそりと栽培され、命脈を保つことになったのです。
昭和時代の生食ブームと研究開発による大量生産の実現
ラ・フランスが日本の家庭で広く食されるようになったのは、苗が日本に渡ってからおよそ100年後の昭和60年代(1980年代後半)のことです。この普及を大きく後押ししたのは、昭和40年代(1960年代後半)から始まった食生活の変化でした。それまで缶詰の果物を食べるのが一般的だった日本で、生の果物をそのまま味わう「生食」の文化が広がり始めたのです。この生食ブームが、滑らかな舌触りと豊かな香りが特徴のラ・フランスにスポットライトを当てました。同時期に、ラ・フランスの栽培に関する研究も大きく進展しました。長年の研究により、栽培に適した気候条件や、複雑な追熟のメカニズムが科学的に解明され、それまで困難だった安定供給が可能になりました。生で食べるラ・フランスの美味しさが広く知られるようになったのは1980年代以降のことで、現在では山形県で生産される西洋梨の約7割をラ・フランスが占めるほど、秋の味覚を代表する人気の果物としての地位を確立しています。
大玉ラ・フランス普及への挑戦:情熱とたゆまぬ努力
ラ・フランスは、そのデリケートな栽培方法に加え、市場への流通にも特別な配慮が必要でした。清川屋がラ・フランスと出会ったのは1995年。当時、市場にはほとんど出回らない、4~6Lという特大サイズのラ・フランスを栽培している農家さんがいました。しかし、その大きさから「味が大味なのでは?」という先入観を持たれやすく、市場では「規格外」として扱われ、なかなか消費者の手に取ってもらえませんでした。それでも、農家の方々は「この大玉こそ美味しいラ・フランスだと知ってほしい」という熱意を持ち続け、清川屋と二人三脚で試行錯誤を繰り返しました。数年後、生産者の愛情と、規格外とされたラ・フランスの潜在的な美味しさを信じる粘り強い努力が実を結び、「大玉ラ・フランス」は多くの人々に愛される人気商品へと成長を遂げたのです。この物語は、優れた栽培技術だけでなく、消費者へその価値を伝え、新たな市場を切り開くための地道な努力こそが、ラ・フランス普及に不可欠だったことを示しています。
ラフランス生産量日本一!山形県が誇る栽培の地
世界で唯一、ラ・フランスの商業的な栽培に成功している日本。中でも、群を抜く生産量を誇り、日本のラ・フランス栽培をリードしているのが山形県です。農林水産省が発表した令和4年度の「西洋梨の都道府県別収穫量」調査によると、山形県は全国の西洋梨収穫量の約7割を占め、他県を大きく引き離して堂々の全国1位に輝いています。さらに、山形県内の西洋梨栽培面積の約65%がラ・フランスで占められており、まさに栽培の中心的存在です。山形県は、ラ・フランスの収穫量でも日本一であり、全国の約8割を占めています。また、山形県は洋梨全体の収穫量でも日本一であり、国内で生産される洋梨のおよそ65%が山形県産です。この圧倒的な実績は、山形県がラ・フランス栽培に最適な地理的・気候的条件を備え、長年にわたる高度な栽培技術を培ってきた証と言えるでしょう。山形県がラ・フランスの主要産地として確立された背景には、大きく分けて2つの理由があります。それは、ラ・フランス栽培に最適な盆地の気候と肥沃な土壌、そして品質を維持するための収穫解禁日制度です。これらの恵まれた自然環境に加え、明治時代から受け継がれてきた農家の熟練した技術、品種改良や追熟技術の研究が、山形県をラ・フランス栽培の聖地へと押し上げました。山形県の生産者が手間暇を惜しまず、一玉一玉に愛情を込めて育てることで、世界に誇る高品質なラ・フランスの安定供給が実現しているのです。
ラフランス栽培に最適な盆地特有の気候と豊かな土壌
盆地の地形を持つ山形県は、ラ・フランスの生育に理想的な気象条件を備えています。特に、昼夜の寒暖差が大きいことが特徴で、この温度差がラ・フランスをはじめとする西洋梨の果実を大きく、甘く育てる上で重要な役割を果たします。また、山形盆地は周囲を山々に囲まれているため、外部からの気象の影響を和らげる自然のバリアとして機能します。具体的には、梅雨時期の降水量が比較的少なく、台風の強い風も山々が遮るため、雨や風に弱いラ・フランスにとって理想的な環境です。さらに、冬に降り積もった雪が春にゆっくりと溶け出し、清らかな水となって土壌を潤すことも、山形県でラ・フランス栽培が発展した理由の一つです。水はけの良い土壌と適切な湿度は、ラ・フランスの繊細な生育を支える重要な要素であり、山形県の豊かな自然環境が、高品質なラ・フランスの安定生産に不可欠な基盤を提供していると言えるでしょう。洋梨は冷涼で降水量の少ない地域での栽培に適しており、山形県内陸部はこの条件に合致しているため、100年以上前から洋梨栽培が盛んに行われています。
ラフランスの品質維持を支える収穫解禁日制度
山形県では、ラ・フランスの生産量と品質を安定させるために、シーズンごとに最適な収穫時期を示す「収穫解禁日」を厳格に定めています。この解禁日は、山形県とJA(農業協同組合)が緊密に連携し、その年の気候やラ・フランスの糖度を詳細に調査した上で決定されます。これにより、最高の品質でラ・フランスが収穫・出荷されることが保証されるのです。解禁日は通常、10月上旬から中旬に設定されますが、例えば令和5年度は、例年よりも遅い10月27日(金)に決定されました。このように、最適なタイミングを見極めることで、常に最高のラ・フランスを消費者に届けようとする生産者の努力がうかがえます。山形県では、この収穫解禁日制度に加え、ラ・フランスの消費拡大とブランド力強化に向けた様々な取り組みを県全体で推進しています。高品質なラ・フランスの安定生産はもちろんのこと、国内外でのPR活動にも力を入れ、世界に誇る山形県産ラ・フランスの価値を広く発信し続けています。
日本でラフランスが愛されるワケ
日本においてラフランスが広く受け入れられ、多くの人々に愛される背景には、栽培技術の確立や安定供給だけでは語り尽くせない魅力があります。その独特な風味と香りが、日本人の繊細な感性を強く惹きつけ、特別な存在としての地位を確立しています。洋梨の女王と称されるラフランスは、他に類を見ないなめらかな舌触りと、口の中に広がる豊かな果汁が特徴です。特に、その優雅で気品あふれる香りは、日本人の繊細な味覚に響き、忘れられない印象を与えます。確かに、ラフランスは皮むきの手間や、食べ頃を見極める追熟といったプロセスを必要とするため、手軽さという点では他の果物に劣るかもしれません。しかし、そうした手間をかけることで得られる、とろけるような食感と奥深い味わいが、日本のフルーツ市場において確固たる地位を築き上げています。この唯一無二の魅力こそが、多くの日本人にとって秋の味覚を代表する存在として、深く愛され続ける理由と言えるでしょう。
日本のラフランスは海外にも進出
近年、日本のラフランスは、国内市場に留まらず、海外においてもその卓越した品質と独自の風味が評価され、注目を集めています。特に台湾、香港、シンガポールをはじめとするアジア地域への輸出が盛んであり、その人気は着実に拡大しています。注目すべきは、ラフランスの原産国でありながら、20世紀初頭に栽培が途絶えてしまったフランスに対し、日本がラフランスの苗木を贈呈するという心温まるプロジェクトが行われていることです。明治時代に日本へ伝わり、その後フランスでは姿を消してしまったラフランスですが、現在では日本の高度な栽培技術と尽力によって育てられた苗木が、再び原産地であるフランスの地で実を結ぶ可能性を秘めています。これは、日本が長年にわたり培ってきた栽培技術と、ラフランスへの深い愛情が、国際貢献へと結びついた象徴的な事例であり、ラフランスの歴史が新たな一章を迎えようとしていることを示唆しています。
日本国内で栽培されている主な洋梨の種類と特徴
日本国内で栽培されている洋梨の種類は約20種類と言われていますが、その中でも最も多く栽培されているのがラ・フランスです。国内の洋梨栽培面積の56.8%をラ・フランスが占めており、「洋梨といえばラ・フランス」というイメージを持つ人が多いのも納得できる数字でしょう。しかし、日本にはラ・フランス以外にも個性的な魅力を持つ様々な洋梨が栽培されており、それぞれに独自の風味や特徴があります。ここでは、ラ・フランスに次いで国内で広く栽培されている品種を中心に、日本の洋梨の多様性と、それぞれの魅力について詳しくご紹介します。
栽培面積第1位「ラ・フランス」 国内シェア56.9%
「ラ・フランス」は、日本で栽培されている洋梨の中で圧倒的なシェアを誇り、国内栽培面積の半分以上を占めています。1864年にフランスで誕生した品種で、その名の通り「洋梨の女王」と呼ばれるほどの人気を持っています。果皮はゴツゴツとして見た目はやや不格好ですが、果肉はとろけるようになめらかで、濃厚な甘さと上品な香りが楽しめます。追熟させることで甘みと香りがさらに引き立ち、熟した果肉はクリーミーでデザートのような食感を味わえるのが特徴です。
日本では特に山形県が最大の産地で、生産量は全国シェアの7割近くを占めています。旬は10月から11月にかけてで、お歳暮や贈答品としても非常に人気があります。生食はもちろん、タルトやコンポート、ジャムなどの加工品としても愛され、国内の洋梨文化を代表する存在となっています。
栽培面積第2位「ル・レクチェ」 国内シェア8.5%
新潟県を中心に栽培されている「ル・レクチェ」は、ラ・フランスと同様にフランス原産の洋梨です。明治時代に日本に伝来しましたが、栽培が非常に困難であったため、長らく地元で消費されるにとどまっていました。しかし、近年の栽培技術の進歩により生産量が増加し、スーパーマーケットなどでも見かける機会が増えました。ラ・フランスよりもやや大きく、芳醇な香りが際立っているのが特徴です。市場に出回るル・レクチェの8割以上が新潟県産であり、その上品な味わいととろけるような甘さで多くのファンを魅了しています。ラ・フランスとの食べ比べセットも人気があり、贈り物としても喜ばれています。
栽培面積第3位「バートレット」 国内シェア5.2%
イギリス生まれの「バートレット」は、国内栽培面積でこそ第3位ですが、世界的には最も広く栽培されている洋梨の一つです。その特徴は、甘さ控えめながらも程よい酸味があること。また、果肉が比較的硬いため、加熱しても形が崩れにくいという利点があります。そのため、缶詰やジュースなどの加工品によく利用されています。国内では、北海道や青森県での栽培が盛んで、かつては日本の西洋梨生産の中心的な存在であり、ラ・フランスの受粉樹としても重要な役割を果たしました。その独特な風味は、加工品を通じて多くの人に親しまれています。
栽培面積第4位「オーロラ」 国内シェア3.3%
「オーロラ」は、マルゲリット・マリーラとバートレットを交配して、アメリカのニューヨークで生まれた品種です。1980年代に日本に導入されて以来、その濃厚な甘さと、しっとりとなめらかな食感で人気を集めています。9月上旬頃に旬を迎える早生品種であることも魅力です。国内では山形県が生産量で日本一を誇り、全国シェアの6割以上を占めています。果皮の色が鮮やかな黄色に変化するため、初めて洋梨を口にする人でも食べ頃を判断しやすいのが特徴です。収穫後すぐに味わえる早生種として、秋の訪れを感じさせるフルーツとして愛されています。
栽培面積第5位「ゼネラル・レクラーク」 国内シェア2.6%
1950年代にフランスで発見された「ゼネラル・レクラーク」は、一般的な洋梨の大きさが250g前後であるのに対し、400~600gと一回り以上大きいのが際立った特徴です。果汁が豊富で、食べ応えのあるジューシーな味わいが魅力です。日本へは1977年に青森県に初めて導入され、現在も青森県が生産量日本一ですが、山形県も第2位の生産量を誇ります。甘みと酸味のバランスが絶妙で、奥深い味わいは、特に洋梨愛好家にとってはたまらない逸品と言えるでしょう。
栽培面積第6位「マルゲリット・マリーラ」 国内シェア2.6%
フランス生まれの「マルゲリット・マリーラ」は、1913年にベルギーから日本に伝えられた、大きめの果実が特徴の品種です。発見者であるマリーラ氏の名前に由来し、マリゲット・マリラとも呼ばれます。「オーロラ」の親品種としても知られ、9月から10月にかけて旬を迎える、シーズン началу を告げる品種として親しまれています。国内の栽培面積の約半分を山形県が占めており、果汁が非常に多く、とろけるような舌触りが特徴です。比較的早い時期に洋梨の風味を堪能できるため、初秋の味覚として珍重されています。
栽培面積第7位「メロウリッチ」 国内シェア1.7%
洋梨と聞くとヨーロッパが故郷と思われがちですが、「メロウリッチ」は、実は日本生まれ。山形県で誕生した、知る人ぞ知る洋梨なのです。2009年に品種登録されたばかりで、主に山形県内でのみ栽培されているため、他の地域ではなかなか手に入らない、大変貴重な西洋梨と言えるでしょう。メロウリッチの特筆すべき点は、その驚くほどの甘さ。洋梨の中でもトップクラスの糖度を誇り、16~17度にも達します。ラ・フランスの糖度が12~13度程度と言われていることから、メロウリッチの甘みが格別であることがお分かりいただけるでしょう。日本国内、それも山形県内だけで栽培されている、まさに特別な西洋梨として、その希少価値と極上の甘さが多くの人々を魅了しています。
栽培面積第8位「シルバーベル」 国内シェア1.6%
「シルバーベル」もまた、メロウリッチと同様に山形県で生まれた西洋梨です。ラ・フランスの枝変わり、つまり突然変異によってラ・フランス畑の中から偶然発見されました。ラ・フランスと比較すると、その大きさは際立っており、1個がラ・フランスの約2倍にもなることがあります。見た目こそ大きいものの、味わいは繊細で、甘みと酸味の絶妙なバランスが特徴です。洋梨のシーズン終盤、クリスマスシーズンに味わえる洋梨として山形県内で特に人気が高く、その存在感と上品な味わいで、多くの洋梨ファンを虜にしています。
栽培面積第9位「マックスレッド・バートレット」 国内シェア1.1%
「マックスレッド・バートレット(レッド・バートレット)」は、アメリカ合衆国・ワシントン州で、バートレットの枝変わりとして発見されました。大きさ、形、果肉の質は通常のバートレットとほぼ同じですが、最大の特徴は、何と言ってもその目を引く果皮の色です。レッド・バートレットの名前が示す通り、果皮全体が鮮やかな赤色に染まり、その美しい外観は人々を魅了します。栽培面積が限られており、栽培地域も限定されているため、市場に出回る量は比較的少なめです。日本では秋田県が主な産地であり、国内生産量の約6割を占めています。その希少性から、贈答品としても高い人気を誇っています。
栽培面積第10位「バラード」 国内シェア1.1%
1999年に品種登録された「バラード」は、バートレットとラ・フランスを両親に持つ、山形県生まれの洋梨です。現在、日本国内で栽培されている西洋梨の中でも、トップクラスの糖度を誇り、その数値は16~18度にも達します。酸味が穏やかで、果汁が非常に豊富なため、より一層甘さが際立つ濃厚な味わいが特徴です。「バラード」という名前は、その親品種であるバートレットの「バ」とラ・フランスの「ラ」を組み合わせて名付けられました。清川屋では秋口から「バラード」の販売を開始しており、食べ頃を迎えると皮の色が黄色に変化するため、最適なタイミングを見極めやすく、贈り物にも最適です。その極上の甘さは、きっと洋梨の新たな一面を発見させてくれるでしょう。
ご紹介した洋梨以外にも、日本国内では「ドワイエネ・デュ・コミス(国内栽培面積第15位・国内シェア0.2%)」や「カリフォルニア(同第17位・国内シェア0.1%)」などが細々と栽培されています。また、市場にはあまり流通しない「ゴールドラ・フランス」のような、非常に珍しい洋梨も存在します。清川屋では、これらの希少な洋梨も取り扱っております。多種多様な品種が栽培されている一方で、ラ・フランスを除くと、いずれの品種も国内シェア率は低く、生産量が少ない希少品種ばかりであることがわかります。特にゴールドラ・フランスは市場で見かけることが少ない希少品であり、洋梨がお好きな方には、ぜひ一度お試しいただきたい逸品です。
西洋梨、ラ・フランスの最適な食べ頃:軸の周辺の様子と果肉の感触
洋梨、とりわけラ・フランスのように収穫後に熟成させる必要がある品種は、いつが一番美味しい状態なのか見分けるのが難しいと感じる方もいるでしょう。しかし、いくつかのポイントを知っておけば、とろけるような最高の状態のラ・フランスを味わうことが可能です。長年、青果に携わってきた経験から申し上げますと、食べ頃を見極める上で特に重要なのは、「軸の付け根部分の状態」と「果肉全体の柔らかさ」です。
具体的には、まず**軸の付け根にしわがよっているかどうか**をチェックします。これは果実から水分が抜け、熟成が進んでいるサインです。次に、**皮を軽く押してみて、押した跡がわずかに残るくらいの柔らかさになっているか**を確認します。特に軸の周辺とお尻の部分が柔らかく感じられる場合は、食べ頃に近いと考えられます。指でそっと触れてみて、弾力がありつつも少しへこむような感触であれば、ちょうど良い状態です。また、色の変化も目安になりますが、品種によって特徴が異なります。例えば、「オーロラ」は緑色から鮮やかな黄色へと変わります。「ゼネラル・レクラーク」や「バラード」、「ドワイエネ・デュ・コミス」、「カリフォルニア」などは、緑色から黄緑色へと変化しますが、これらの品種には「さび」(果皮に見られる茶色い斑点や模様)が出やすい傾向があり、色だけで判断するのは難しい場合があります。特に「ゼネラル・レクラーク」はさびが多いです。香りは熟成が進むにつれて強くなりますが、品種によっては香りの変化が分かりにくいものも存在します。特にラ・フランスに関しては、香りで食べ頃を判断するのはかなり難しいと言えるでしょう。したがって、軸の付け根の状態や果肉の柔らかさといった触感によるサインを重視することが、失敗せずに最高のラ・フランスを味わうためのコツです。山形県は日本における洋梨の主要な産地であり、全国の生産量の約7割を占めています。ここでご紹介したポイントを参考に、ぜひご家庭で至福のラ・フランス体験をお楽しみください。
まとめ
「バターペア」とも呼ばれるラ・フランスは、19世紀中頃にフランスで発見され、「フランスの宝」と称えられました。しかし、他の洋梨と比較して栽培期間が約1ヶ月長く、長雨や強風、病害に弱いなど、栽培が非常に難しいことから、原産国であるフランスでは20世紀初頭にはほとんど栽培されなくなったと言われています。現在、商業的な栽培に成功し、世界で最も多く生産しているのは日本、特に山形県です。ラ・フランスは日本国内で栽培されている洋梨の総栽培面積の過半数を占める、最も重要な品種です。明治時代に日本に持ち込まれたラ・フランスは、当初、食べ頃の見極めの難しさや見た目の悪さから「みだぐなす(見栄えが良くない)」と避けられ、主に缶詰用の洋梨の受粉樹としてわずかに栽培されていました。しかし、1960年代以降の生食ブーム、栽培技術・追熟技術の研究の進展、さらには「大玉ラ・フランス」の市場開拓といった努力によって、安定的な供給が可能となり、秋を代表するフルーツへと成長を遂げました。
山形県が生産量で日本一を誇る理由は、昼夜の寒暖差が大きい盆地の気候、山々に囲まれており自然災害の影響を受けにくい地理的な条件、そして雪解け水が豊富に流れる肥沃な土壌といった自然環境に恵まれているからです。さらに、山形県とJAが連携して毎年定める収穫解禁日制度は、ラ・フランスの品質を高い水準で維持するために欠かせない取り組みであり、県全体でブランド力の強化やPR活動に積極的に取り組んでいます。その独特ななめらかな舌触り、芳醇な香り、上品な甘さは、手間をかけても味わいたい唯一無二の魅力として、多くの人々を魅了し続けています。近年では、日本産の高品質なラ・フランスが台湾や香港、シンガポールなどアジア地域に輸出されるだけでなく、そのルーツであるフランスに苗木を寄贈する国際的なプロジェクトも進められており、ラ・フランスが再び故郷で実を結ぶ可能性を秘めています。
日本国内では、ラ・フランスの他にも「ル・レクチェ」「バートレット」「オーロラ」「ゼネラル・レクラーク」「メロウリッチ」「シルバーベル」など、約20種類の多様な洋梨が栽培されており、それぞれが異なる特徴と魅力を持っています。洋梨を最高の状態で味わうためには、軸の付け根の様子や果肉の柔らかさから食べ頃を見極めることが大切です。このように、数々の困難を乗り越え、生産者のたゆまぬ努力と情熱によって守り育てられてきたラ・フランス、そして多様な洋梨の品種たちは、まさに日本の宝として世界へ羽ばたこうとしています。
ラ・フランスの発祥地はどこですか?
ラ・フランスの発祥地はフランスです。1864年にクロード・ブランシュ氏によってフランスで発見され、「フランスの宝」を意味する「ラ・フランス」と名付けられました。
ラ・フランスがフランスでほとんど栽培されなくなったのはなぜですか?
ラ・フランスは、長雨や強風といった悪天候に弱く、病害にもかかりやすい非常にデリケートな果物です。加えて、実がなってから収穫するまでの期間が他の洋梨よりも長く、栽培が非常に難しいとされています。原産地であるフランスの気候や自然環境が、これらの厳しい栽培条件に適していなかったため、20世紀初頭には栽培が衰退し、ほとんど栽培されなくなったと考えられています。
なぜ日本だけがラフランス栽培に成功したのですか?
ラフランスの栽培において、日本、とりわけ山形県が特筆すべき成功を収めている背景には、他に類を見ない理想的な自然環境が深く関わっています。一日の気温差が大きい盆地の気候が、ラフランスの甘さとサイズを最大限に引き出し、周囲を囲む山々が、梅雨の時期の過剰な降雨や台風の強風から果実を守ります。さらに、雪解け水がもたらす肥沃な土壌も重要な要素です。加えて、明治時代から連綿と受け継がれてきた日本の農家の高度な栽培技術、そして品種改良や追熟に関するたゆまぬ研究が、高品質なラフランスの安定供給を可能にしました。
「ラ・フランス」と「洋梨(西洋梨)」の違いは何ですか?
「洋梨(西洋梨)」とは、ヨーロッパを原産とするバラ科ナシ属の果物の総称であり、世界にはおよそ4000もの品種が存在すると言われています。それに対して、「ラ・フランス」は、数ある洋梨の品種の中の一つであり、特に日本国内で広く栽培されている特定の品種を指します。したがって、ラ・フランスは洋梨という大きなカテゴリーに含まれる、より具体的な名称であると言えます。
日本国内では他にどのような洋梨が栽培されていますか?
日本国内では、ラフランス以外にも様々な種類の洋梨が栽培されています。例えば、新潟県が主な産地である「ル・レクチェ」、世界中で広く栽培され、加工用としても重宝される「バートレット」、山形県で多く生産されている早生品種の「オーロラ」、大玉で豊かな果汁が特徴の「ゼネラル・レクラーク」、そして非常に高い糖度を誇る日本生まれの「メロウリッチ」や「バラード」などが挙げられます。
「みだぐなす」とはどういう意味ですか?
「みだぐなす」は、山形県の方言で「見た目が悪い」「見栄えがしない」といった意味を持つ言葉です。ラフランスは、その独特な、少しデコボコとした外観から、明治時代に日本へ伝わった当初、山形県においてこの言葉で形容され、食用として受け入れられにくい傾向がありました。
ラ・フランスの「収穫解禁日」とは?
山形県とJAが連携し、その年の気候条件やラ・フランスの糖度を綿密に調査した上で決定されるのが収穫解禁日です。これは、ラ・フランスを最高の状態で収穫するための特別な日として設定されます。この制度のおかげで、常に高品質なラ・フランスが消費者の皆様にお届けできるようになっています。
西洋梨、食べ頃を見極めるコツは?
美味しい西洋梨を選ぶための重要なポイントは主に2つです。まず、「軸の周りのしわ」に注目してください。これは熟成が進んでいる証拠です。次に、「果肉全体の柔らかさ」を確かめます。果皮をそっと押してみて、わずかにへこむ程度の弾力があれば、食べ頃を迎えていると判断できます。色も参考になりますが、品種によって色の変化が異なるため、注意が必要です。
日本のラ・フランスは海外でも人気?
はい、近年、日本のラ・フランスは海外で非常に高い評価を受けており、特に台湾、香港、シンガポールなど、アジア地域への輸出が盛んです。驚くべきことに、ラ・フランスの故郷であるフランスに、日本から苗木が贈られるという国際的な交流も行われています。