日本最南端の島、波照間島。紺碧の
波照間島と黒糖:南海の楽園が生み出す恵み
日本の最南端に位置する有人島、波照間島。その島名は、遥か彼方のサンゴ礁を意味すると言われています。この島で育まれる黒糖は、熟練の菓子職人をも魅了する特別な存在です。2世紀以上の歴史を誇る京菓子の老舗「亀屋良長」の代表銘菓「烏羽玉」にも使用されており、その独特な風味は、他の黒糖では決して再現できないと評価されています。菓子職人の藤田怜美さんも、その黒糖を求めて波照間島へと足を運びました。
菓子職人・藤田怜美さんが心惹かれた波照間島の黒糖
菓子職人として活躍する藤田怜美さんは、辻製菓専門学校フランス校を卒業後、東京やパリの名だたる店舗で腕を磨きました。その後、日本の伝統的な和菓子に感銘を受け、京都の老舗「亀屋良長」で経験を積んだ後、自身の店「kashiya」をオープン。そんな彼女が波照間島の黒糖に強く惹かれたのは、その奥深い風味でした。「烏羽玉には波照間島の黒糖が欠かせません。他の黒糖で試したこともありますが、全く違う味わいになってしまうんです。波照間島の黒糖の美味しさを改めて実感しました」と、その魅力を語ります。
波照間黒糖の歴史と製法
波照間島におけるサトウキビ栽培は、1914年に石垣島から導入されたのが始まりとされ、以来、黒糖作りは島を支える重要な産業として発展してきました。現在では、年間およそ1800トンの黒糖が生産されています。品質を最優先とするため、生産量は限られていますが、島民にとっては日々の食卓に欠かせない存在です。黒糖製造を行う波照間製糖では、収穫作業の約9割が手作業で行われ、収穫されたサトウキビは24時間以内に処理・加工することで、新鮮さを保ち、風味豊かな黒糖を生み出しています。
波照間黒糖の特徴:豊かな風味とミネラル
波照間黒糖の際立った特徴は、その個性的な風味と、豊富なミネラル含有量です。波照間製糖では、島内で栽培される約20種類のサトウキビを原料として使用しています。ミネラルを豊富に含む肥沃な土壌で育ったサトウキビを、鮮度を保ったまま加工することで、上質な甘さと奥深い風味が生まれます。その風味は、一般的な黒糖と比較してより個性的で、まるでコーヒーのような野性味を感じさせると評されることもあります。
島人と黒糖の暮らし
波照間島において、黒糖は島民の生活に深く溶け込んでいます。波照間製糖の西波照間氏はこう話します。「島人は黒糖が本当に大好きなんです。私も300g入りの袋を、おやつ代わりに丸ごと一袋食べてしまうほどです(笑)。こんなに黒糖を日常的に食べるのは、おそらく日本だけでしょうね。」また、かつてパリで腕を磨いた藤田氏も、「フランスの料理人たちの間でも、黒糖は非常に高く評価されていました。ただ、ヨーロッパでは高級食材としての扱いだったんです。日本最高峰の黒糖が日々の食卓に並ぶなんて、波照間島はまさに楽園ですね!」と、その贅沢さを表現しています。
黒糖だけではない、波照間島の楽園としての魅力
波照間島の魅力は、黒糖だけにとどまりません。どこまでも広がる美しい海と大地、そして夜空を埋め尽くす満天の星は、訪れる人々を深く魅了します。島内には国道や県道といった幹線道路はなく、信号機もたった一つしか存在しません。約500人の島民は、ゆったりとした時の流れの中で、穏やかに生活を送っています。藤田氏は波照間島の印象について、「ハイビスカスが、本州でよく見かけるツツジのように、ごく普通に咲いているんです。本州や九州とは全く異なり、まるで海外を旅して、異文化に触れたような感覚を覚えました」と語ります。さらに、波照間島は緯度が低く、周囲に人工的な光が少ないため、南十字星を観測できる貴重な場所としても知られています。
波照間島ラム:黒糖の新たな楽しみ方を提案
沖縄県産のサトウキビを主な原料としたラム酒を製造するプロジェクトチーム「ONERUM(ワンラム)」は、波照間島の黒糖を使用したラム酒「HATERUMA ISLAND RUM(ハテルマ アイランドラム)」を開発しました。このラム酒は、グレープフルーツやココナッツ、桃などを彷彿とさせる、華やかで豊かな香りが特徴です。ストレートで味わうのはもちろんのこと、ソーダ割りやロック、カクテルなど、様々なアレンジで楽しむことができます。波照間黒糖の新たな可能性を切り開く商品として、大きな注目を集めています。
八つの島々の黒糖:個性豊かな風味を求めて
沖縄県では、波照間島を含めた八つの島で黒糖が生産されており、それぞれの島が独自の風味を持つ黒糖を作り出しています。各島における製造方法に大きな違いは見られませんが、島の土壌や気候、サトウキビの栽培方法などのわずかな違いが、黒糖の味や香りに色濃く反映されます。伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島で製造される黒糖は、それぞれ異なる色、形、味、香り、そして食感を持っており、黒糖を愛する人々にとって、この上ない魅力的な存在となっています。
黒糖が秘める健康パワーと様々な活用方法
精製された白砂糖と比較して、黒糖は天然のミネラルとビタミンを豊富に含んでいるのが特徴です。特に、カルシウム、鉄分、カリウムといったミネラルは、健康を維持する上で必要不可欠な栄養素として知られています。さらに、黒糖に含まれるポリフェノールは、優れた抗酸化作用を発揮すると言われています。黒糖は、そのまま味わうのはもちろん、日々の料理や手作りのお菓子にも手軽に活用できます。例えば、煮物やカレーに隠し味として加えたり、ヨーグルトやトーストにかけたりすることで、食生活をより豊かに彩ることができます。
波照間島産黒糖で作る、オリジナル烏羽玉風デザート
波照間島の黒糖を贅沢に使用した、京都の伝統的なお菓子「烏羽玉」を彷彿とさせる、オリジナルレシピをご紹介します。必要な材料は、波照間島の黒糖、なめらかなこしあん、寒天、そして水です。まず、鍋に黒糖と水を入れ、黒糖が完全に溶けるまで煮詰めます。そこに寒天を加え、さらに煮詰めていきます。別で用意したこしあんを丸め、煮詰めた黒糖液で寒天が固まる前に素早くコーティングします。冷蔵庫でしっかりと冷やし固めれば、波照間黒糖の奥深い風味が際立つ、特別な烏羽玉風デザートの完成です。
まとめ
波照間島の黒糖は、その独特な風味の豊かさとともに、島の人々の暮らしに深く根ざした、かけがえのない存在です。熟練した菓子職人の創造力を刺激するだけでなく、私たちが忘れかけていた豊かな日常を思い出させてくれるでしょう。日本の最南端に位置する楽園、波照間島を訪れ、その土地で育まれた黒糖の魅力を、ぜひ五感で体験してみてください。
質問:波照間島の黒糖は、どこで購入できますか?
回答:波照間島の黒糖は、現地の波照間製糖の直売所のほか、沖縄県内の様々なスーパーマーケットや、便利なオンラインショップを通じて購入することができます。ただし、生産量が限られているため、時期によっては品切れとなる場合があることをご了承ください。
質問:波照間島行きのフェリーは予約すべきでしょうか?
回答:波照間島へのフェリーは、特に観光シーズン中は予約を推奨します。石垣港離島ターミナルやインターネットを通じて予約が可能です。
質問:波照間島で南十字星を観察するのに最適な時期は?
回答:波照間島で南十字星を観測するのに一番良い時期は、一般的に4月~6月頃です。この時期は天候が比較的安定し、南十字星が見えやすい状態となります。